別紙1 事前照会の趣旨

1 事前照会の趣旨

 本県においては、津波対策を継続して実施してきましたが、東日本大震災を踏まえた新たな知見に基づいた津波対策を進めるに当たり、静岡県津波対策施設等整備基金(平成24年10月23日施行、県条例第50号に基づく基金。以下「基金」といいます。)を設置し、静岡県内外の個人及び法人(以下「県民等」といいます。)からの寄附を広く募集することといたしました(この県民等からの寄附金を以下「本件寄附金」といいます。)。
 本件の基金は、静岡県津波対策施設等整備基金管理事務処理要領に基づき管理し、津波による災害を防止し、又は軽減するための施設(以下「津波対策施設等」といいます。)の整備に要する費用に充てます。
 また、本件寄附金は当面、県内全域を対象とした津波対策施設等の整備に活用するものですが、今後、寄附をする県民等において寄附金の活用先として整備計画のある市町を希望できるようにすることを検討しています。
 ところで、同県沿岸部の個人又は法人が寄附した場合において、その寄附をした個人又は法人の近隣の津波対策施設等が整備されたときに、法人税法第37条第3項第1号又は所得税法第78条第2項第1号の括弧書にある「その寄附をした者がその寄附によって設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるものを除く。」の「特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるもの」に当たるのではないかという疑問が生ずることも考えられます。
 つきましては、本件寄附金が「特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるもの」には該当せず、法人税法第37条第3項第1号又は所得税法第78条第2項第1号の「国又は地方公共団体に対する寄附金」として取り扱われるものと解して差し支えないか照会申し上げます。

別紙2 事前照会に係る取引等の事実関係

2 本件寄附金の概要

  • (1) 寄附募集の趣旨
     ふるさとを守るために県民の力を結集し、津波対策を強力に推進するため、県民等から広く寄附を募集し、着実かつ迅速に津波対策施設等の整備を進めていきます。
  • (2) 津波対策施設等の整備
     県では、津波を防ぎ、備え、逃げる対策が有機的に連携した津波に強いまちづくりの構築に向けて、津波対策に関する計画を見直しており、新たな計画に基づき津波対策施設等の整備を進めていきます。
     なお、当該整備は、平成25年6月までに「静岡県第4次地震被害想定」と併せて新しい「地震対策・津波対策アクションプログラム」により整備計画を策定し、当該整備計画に基づき実施することとしています。

    ※ 津波対策施設等とは、津波対策施設と津波防護施設をいいます。
     また、津波対策施設とは、海岸や河川、港湾、漁港において、津波を防ぐための施設(防潮堤や河川堤防、水門、閘門等)をいい、津波防護施設とは、内陸部において後背市街地への津波による浸水の拡大を防ぐための施設(盛土構造物や閘門等)をいいます。

  • (3) 本件寄附金の活用方法
     本件寄附金は、県において受納後、基金へ積み立てられ、津波対策施設等の整備に要する費用に充てられます。
  • (4) 基金の造成
     本件寄附金を原資として基金を造成します。
     本件寄附金については、必要とする年度に、必要な額を活用できるように基金として管理することとしました。
     また、基金の造成前に県において一般会計に受納した寄附金については、基金設置後に一般会計から基金への積立てを行います。
  • (5) 基金の処分
     津波対策施設等の整備に要する費用の額は、毎年度の県の一般会計歳入歳出予算で定め、当該費用については、国庫補助金及び県の予算を充てるほか、その年度の事業実績見込みに応じて、基金を取り崩し充当することとなります。
     具体的には、毎年度の県の一般会計歳入歳出予算において、整備計画の内容に応じて「A地区の液状化対策費×××円(うち基金からの充当額×××円)」、「B地区の築堤工事費×××円(うち基金からの充当額×××円)」といった積算から工事の歳出の予算額を要求し、県議会の承認を受けて工事費の歳出及び基金の取崩しを行うこととなります。
  • (6) 寄附の方法
     寄附をする県民等は寄附申出書に、津波対策への活用を希望する旨、具体的には「津波対策の推進(静岡県全域)」と記載した上で寄附を行います。
     なお、個人からの寄附は「ふじのくに応援寄附金(ふるさと納税)の制度」(平成20年度から実施。)を活用して行います。
  • (7) 本件寄附金の活用先に関する希望について
     当面、本件寄附金の活用先は県内全域として寄附募集を行いますが、新たな整備計画策定後は、寄附金の活用を希望する地域(市町単位)を選択することができるよう検討しています。この場合であっても、これまでどおり整備箇所及びその内容までは希望することはできません。
     この寄附をする者の活用先の選択(希望)は、基金の処分において配慮されるものの、整備の進捗状況等により必ずしも希望のあった地域に活用されるとは限られないことをあらかじめ周知します。

別紙3 事前照会者の求める見解となることの理由

3 国等に対する寄附金について

  • (1) 国又は地方公共団体(以下「国等」といいます。)に対する寄附金について、法人が支出した場合には、その全額が損金の額に算入され(法法373一)、個人が支出した場合には、寄附金控除として所得から控除されます(所法782一)。
  • (2) 国等に対する寄附金とは、国等において採納されるものをいいます(法基通9-4-3、所基通78-4)が、国等において採納される寄附金であっても、その寄附をした者がその寄附によって設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるものは国等に対する寄附金には該当しないとされています(法法373一括弧書、所法782一括弧書)。

4 本件への当てはめ

 次の理由から、本件寄附金は上記3(2)の「特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるもの」には該当せず、国等に対する寄附金として取り扱われるものと考えます。

  • 1 本件寄附金は、県において受納されるものであり、基金として管理され、毎年度の事業実績見込みに応じて取り崩され、津波対策施設等の整備に用いられること。
  • 2 津波対策施設等の整備は、社会資本の整備という県の責務によるものであり、寄附の有無に関わらず、県が整備計画に基づき実施し、整備箇所は県がその裁量で定めるものであること。
  • 3 寄附をする県民等は整備箇所やその内容を指定することができないため、必ずしも便益を受けるものではないこと。また、整備計画策定後、本件寄附金の活用を希望する地域(市町単位)を選択(希望)する場合であっても、整備箇所やその内容を指定できない点は従前と同様であるほか、あくまで基金の処分において配慮されるものに留まり、その希望のあった地域に活用されるとも限らないことから、寄附をした県民等が必ずしも便益を受けるものではないこと。
  • 4 仮に、寄附をした個人又は法人の近隣の津波対策施設等が整備された場合であっても、その便益は寄附をした個人又は法人のみならず、周辺住民や企業などに幅広く及ぼされるものであることからすれば、当該寄附をした個人又は法人における便益も周辺住民等と同程度の便益を受けるに過ぎず、また、その便益は間接的、反射的な便益に過ぎないことから特別の利益を受けるとまではいえないこと。