A市は、A市内に存する空き家の有効活用を通して、定住促進による集落の維持及び活性化並びにA市民と市外居住者との交流拡大を図るため空き家バンク制度(以下「A市空き家バンク」といいます。)を設けています。
このA市空き家バンクの利用促進を図るため、一定の要件の下、A市空き家バンクに登録された空き家について、賃貸借若しくは使用貸借契約又は売買契約を締結した場合には、当該空き家を登録した者に対して、A市から空き家成約奨励金(以下「本件成約奨励金」といいます。)を交付することとしています。
本件成約奨励金の所得区分については、一時所得と取り扱って差し支えないか、伺います。
本件成約奨励金は、賃貸借若しくは使用貸借契約又は売買契約を締結した場合に交付されるものですが、本件成約奨励金は、A市が定めた要綱に基づいて交付されるものであり、本件成約奨励金の交付対象者とA市との間には、賃貸借若しくは使用貸借契約又は売買契約が締結されるものではなく、交付対象者からA市に対して空き家の貸付けや譲渡の行為が行われるものでもありません。また、本件成約奨励金は、賃貸借若しくは使用貸借又は売買に係る経費の支出をしたか否かに関わらず交付され、その使途も限定されていませんので、必要経費に算入される金額を補塡するものにも該当しません。
そうすると、本件成約奨励金は不動産等の貸付けによる所得である不動産所得(所法26)又は資産の譲渡による所得である譲渡所得(所法33)には該当しないと考えられ、また、利子所得、配当所得、事業所得、給与所得、退職所得及び山林所得のいずれにも該当しないことは明らかです。
したがって、本件成約奨励金の交付に当たって、A市に対して何ら労務の提供等が求められることではなく、登録した空き家1件につき1回限り10万円の本件成約奨励金が交付されることからすれば、本件成約奨励金は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得として、一時所得と取り扱うのが相当と考えられます。