平成26年6月
関東信越国税局

適正公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的として、国税局に配置されている国税査察官は、厳正な査察調査に基づき、悪質な脱税者に対する刑事責任の追及を行っています。
 今般、平成25年度の査察調査の結果がまとまりましたので、その概要を報告します。

1 着手・処理・告発件数、告発率の状況

○ 平成25年度において査察に着手した件数は、15件でした。

○ 平成25年度以前に着手した査察事案について、平成25年度中に処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)した件数は16件、そのうち検察庁に告発した件数は10件であり、告発率は62.5%となりました。

年度 平成        
項目 21 22 23 24 25
着手件数
21

19

18

15

15
処理件数(A) 19 20 18 16 16
告発件数(B) 17 16 13 11 10
告発率(B/A) %
89.5
%
80.0
%
72.2
%
68.8
%
62.5

着手・処理・告発件数、告発率の状況(グラフ)

2 脱税額の状況

○ 平成25年度中に処理した査察事案に係る脱税額は、総額で9億円、そのうち告発分は7億円となりました。

○ 告発した事案1件当たりの脱税額は、平均で7,200万円でした。

年度 平成        
項目 21 22 23 24 25
脱税額 総額 百万円
2,372
百万円
1,871
百万円
2,748
百万円
2,199
百万円
912
同上1件
当たり
125 94 153 137 57
告発分 2,265 1,716 2,550 1,425 718
同上1件
当たり
133 107 196 130 72

(注)脱税額には、加算税額を含む。

○脱税額
脱税額(グラフ)

○1件当たりの脱税額
1件当たりの脱税額(グラフ)

(参考)大口事案の推移
年度 平成        
項目 21 22 23 24 25
  告発件数
17

16

13

11

10
    うち脱税額が3億円以上 4 2 3 2 0
  うち脱税額が5億円以上 0 0 1 0 0

(注)脱税額には、加算税額を含む。

3 税目別告発事案の推移

○ 平成25年度においても、従来どおり、所得税、法人税事案に取り組むとともに、消費税事案についても積極的に取り組みました。

(1) 税目別の告発件数
年度 平成21 22 23 24 25
区分 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
所得税
3

18

2

13

3

23

3

27

3

30
法人税 9 52 9 56 7 54 6 55 5 50
相続税 3 18 2 15 1 9
消費税
内1
1
 
6
内2
4
 
25
内1
1
 
8
内1
1
 
9
内1
2
 
20
源泉所得税 1 6
贈与税 1 6
合計 17 100 16 100 13 100 11 100 10 100

(注)消費税の内書は、消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)の告発件数である。

(2) 税目別の脱税額
年度 平成21 22 23 24 25
区分 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合
所得税 百万円
156

7
百万円
160

9
百万円
126

5
百万円
744

52
百万円
207

29
法人税 869 38 1,067 62 914 36 405 28 458 64
相続税 1,097 49 1,475 58 175 13
消費税
内67
67
 
3
内34
104
 
6
内31
35
 
1
内101
101
 
7
内24
53
 
7
源泉所得税 76 3
贈与税 385 23
合計 2,265 100 1,716 100 2,550 100 1,425 100 718 100
  • (注1)脱税額には、加算税額を含む。
  • (注2)消費税の内書は、消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)の脱税額である。

4 告発事件の概要

○ 平成25年度に告発した査察事案で多かった業種は「保険業」と「クラブ・バー」でした。

○ 脱税の手段・方法としては、これまでに引き続き、売上除外や原価・経費の架空計上がありました。

○ 脱税によって得た不正資金は、現金や預貯金として留保されていたほか、自己の遊興費、投資として充てられていた例も見られました。

(1) 告発の多かった業種・取引(2者以上)
平成23 24 25
業種 者数 業種 者数 業種 者数
卸売業 3 医療業 2 保険業 4
建設業 2 決済代行業 2 クラブ・バー 2
  1. (2) 脱税の手段・方法
     脱税の手段・方法としては、売上の除外や原価・経費を架空計上した事案が多く見られました。
  2. (3) 不正資金の留保状況
     脱税によって得た不正資金の多くは、現金や預貯金として留保されていたほか、自己の遊興費、投資として充てられていた例も見られました。

5 査察調査の状況

○ 平成25年度に着手した査察事案では1事件当たり、着手日に延130名を動員し、39箇所を調査しました。

○ 平成25年度に告発した査察事案では1事件当たり、着手から告発まで11か月半の調査期間を要しました。

○ 検察庁との連携強化を図り、悪質な脱税者に対し厳正に対応しました。

  1. (1) 動員人数及び調査期間
     平成25年度に着手した査察事案では1事件当たり、着手日に延130名を動員し、39箇所を調査しました。
     平成25年度に告発した査察事案では1事件当たり、着手から告発まで11か月半の調査期間を要しました。調査期間が1年を超えた事件は5件あり、このうち最も長いものは約1年7か月でした。
  2. (2) 検察庁との連携
     検察庁との間で、早期かつ綿密な連携を図り、悪質な脱税者に対して厳正に対応しました。また、検察官が強制捜査を行った上で、合同で捜査・調査を実施し真相の解明に至った事案もありました。
  3. (3) 国際化への対応
     税務行政執行共助条約が発効されるなど、外国と我が国との情報交換ネットワークが拡充される中、国際取引を利用した事案に的確に対応するため、租税条約等の規定に基づく情報交換制度を活用しました。
     具体的には、外国税務当局からの情報提供要請を受け、1事件について、査察官が調査を行いました。
  4. (4) ICT化への対応
     経済取引等のICT化に的確に対応するため、査察部の専門部署による調査支援及びデジタルフォレンジック用機器を活用し、電子機器等の電磁的記録の証拠保全及び解析を行いました。
     平成25年度は、電子媒体から消去されたデータを復元し証拠化を行い、真実と認められる取引金額を把握したものなどがありました。

6 査察事件の一審判決の状況

○ 平成25年度中に一審判決が言い渡された件数は13件であり、その全てに有罪判決が出され、実刑判決が1人に出されました。

項目
1
判決
件数
2
有罪
件数
有罪率
2/1
実刑判決
人数
3
1件当たり
犯則税額
4
1人当たり
懲役月数
5
1人(社)
当たり罰金額
年度
平成
23

22

22

100.0

2
百万円
67

15.8
百万円
13
24 5 5 100.0 0 185 15.0 39
25
内1
13
内1
13
 
100.0
内1
1
 
40
 
19.0
 
8
  • (注1)表中の内書は他の犯罪との併合事件を示している。
  • (注2)35は他の犯罪との併合事件を除いてカウントしている。