平成23年6月

関東信越国税局

適正公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的として、各国税局に配置されている国税査察官は、厳正な査察調査に基づき、悪質な納税者に対する刑事責任の追及を行っています。
 今般、平成22年度の査察調査の結果がまとまりましたので、その概要を報告します。

1 着手・処理・告発件数、告発率の状況

主要ポイント

  • ○ 平成22年度に査察に着手した件数は19件です。
  • ○ 平成22年度以前に着手した査察事案について、平成22年度中に処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)した件数は20件、そのうち検察庁に告発した件数は16件であり、その結果、告発率は80.0%となっています。
年度
項目
平成
18
19 20 21 22
着手件数
21

21

20

21

19
処理件数(A) 20 21 19 19 20
告発件数(B) 18 17 16 17 16
告発率(B/A)
90.0

81.0

84.2

89.5

80.0
平成18年度から平成22年度の査察調査の着手・処理・告発件数、告発率の状況を表したグラフ

主要ポイント

  • ○ 平成22年度においては、従来どおり所得税、法人税事案に取り組むとともに、消費税、贈与税事案についても積極的に取り組みました。過去5年間で比較すると、消費税事案は最も告発件数が多い結果となりました。
(参考1)税目別告発件数
年度
区分
平成18 19 20 21 22
件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
所得税
4

22

5

29

3

19

3

18

2

13
法人税 11 61 11 65 11 69 9 52 9 56
相続税 1 6 1 6 3 18
消費税 2 11 2 12 1 6 4 25
源泉所得税 1 6
贈与税 1 6
合計 18 100 17 100 16 100 17 100 16 100
平成18年度から平成22年度の査察調査の税目別告発件数

2 脱税額の状況

主要ポイント

  • ○ 平成22年度中に処理した事件に係る脱税額は、総額で19億円、そのうち告発分は17億円です。
  • ○ 告発した事件1件当たりの脱税額は、平均で1億700万円となっています。
年度
項目
平成
18
19 20 21 22
脱税額 総額 百万円
3,255
百万円
2,701
百万円
2,306
百万円
2,372
百万円
1,871
同上1件当たり 163 129 121 125 94
告発分 3,176 2,323 2,195 2,265 1,716
同上1件当たり 176 137 137 133 107

(注)脱税額には、加算税額を含む。

平成18年度から平成22年度中に処理した事件に係る脱税額を表したグラフと告発した事件1件当たりの脱税額を表したグラフ
(参考2)大口事案の推移
年度
項目
平成
18
19 20 21 22
告発件数
18

17

16

17

16
うち脱税額が3億円以上 2 2 1 4 2
うち脱税額が5億円以上 1 1 0 0 0

(注)脱税額には、加算税額を含む。

(参考3)税目別の脱税額
年度
区分
平成18 19 20 21 22
脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合
所得税 百万円
410

13
百万円
1,066

46
百万円
238

11
百万円
156

7
百万円
160

9
法人税 1,940 61 932 40 1,628 74 869 38 1,067 62
相続税 764 24 325 14 1,097 49
消費税 62 2 329 15 67 3 104 6
源泉所得税 76 3
贈与税 385 23
合計 3,176 100 2,323 100 2,195 100 2,265 100 1,716 100

(注)脱税額には、加算税額を含む。

平成18年度から平成22年度の税目別の脱税額を表したグラフ

3 告発の多かった業種・取引など

主要ポイント

  • ○ 平成22年度においては、建設業が上位を占めています。
(参考4)告発の多かった業種・取引(3者以上)
平成20 21 22
業種 者数 業種 者数 業種 者数
卸売業 5 サービス業 6 建設業 3
人材派遣業 3

(注)同一の納税者が複数の税目で告発されている場合は、1者としてカウントしています。

4 脱税の手段・方法

主要ポイント

  • ○ 脱税の手段・方法としては、架空原価や架空経費を計上したり、原価や経費を水増し計上する事案が多く見られました。
  • ○ その他の手段・方法としては、消費税の申告において、課税仕入に該当しない人件費を課税仕入となる外注費に科目仮装するものなどがありました。

脱税の手段・方法としては、架空原価や架空経費を計上したり、原価や経費を水増し計上する事案が多く見られたほか、売上や雑収入を除外するなどの事案もありました。
 また、その他の手段・方法としては、消費税の申告において、課税仕入に該当しない人件費を課税仕入となる外注費に科目仮装するもの、架空仕入や架空経費を計上するなどにより課税仕入を水増ししていたものなどがありました。

5 不正資金の留保状況及び隠匿場所

主要ポイント

  • ○ 脱税によって得た不正資金の多くは、現金、預貯金として留保されていました。
  • ○ 脱税によって得た不正資金の隠匿事例としては、貸金庫に多額の現金を隠匿していたものなどがありました。
  • (1) 脱税によって得た不正資金の多くは、国内で現金、預貯金として留保されていたほか、個人的な遊興費として費消されているものも見受けられました。
  • (2) 脱税によって得た不正資金等の隠匿場所は様々でしたが、借名名義で複数の貸金庫内に多額の現金を分散して隠していた事例などがありました。