T 照会の趣旨

当社及び甲社(いずれも5月決算)は、甲社を連結親法人、当社を連結子法人とする連結納税の承認を受けています。当社は、業績の悪化を理由として平成28年12月25日に解散し、平成29年3月31日に残余財産が確定して清算する予定です。
 この場合、連結事業年度開始の日である平成28年6月1日から残余財産の確定の日までの期間は、連結事業年度には含まれず、みなし事業年度とされるものと承知しています。
 ところで、当社に係る連結納税の承認の効力は、残余財産の確定の日の翌日である平成29年4月1日にその効力を失うこととされますので、当社は、平成28年6月1日から平成29年3月31日までの期間においてはいまだ連結法人に該当することとなります。そうすると、みなし事業年度とされる当該期間に生ずる所得については、連結親法人である甲社に申告納税義務があるのではないかとの疑問が生じたため、本件の照会を行うものです。

U 事前照会に係る取引等の事実関係

1 甲社は、当社の発行済株式の全部を保有する親法人です。当社及び甲社はいずれも5月決算法人で、その会計期間は1年です。

2 甲社及び当社は、甲社を納税義務者とする連結納税の承認を受けています。したがって、甲社は連結親法人となり、当社は連結子法人となります。

3 現在、当社は、債務超過の状態にあるため、平成28年12月25日の株主総会で解散を決定し、その後、会社法上の特別清算手続により清算する予定です。そして、資産の換価処分、債権の取立て及び債務の弁済を行い平成29年3月31日に残余財産が確定する見込みです。なお、残余財産の確定の日の属する事業年度(最後事業年度)において欠損金は生じません。

V 事前照会者の求める見解の内容及びその理由

1 事前照会者の見解の内容
 当社においては、連結親法人事業年度の中途である平成29年3月31日に残余財産が確定する見込みですので、連結親法人事業年度開始の日である平成28年6月1日から残余財産の確定の日である平成29年3月31日までの期間は、連結事業年度に含まれず、通常の事業年度とみなされます。
 したがって、当該期間に生ずる当社の所得は、連結事業年度の連結所得の金額とはなりませんので、連結親法人である甲社には申告納税義務はなく、連結法人である当社に申告納税義務があるものと考えます。

2 1の見解となる理由

(1) 法令の定め
イ 連結事業年度
連結事業年度とは、連結法人の連結親法人事業年度(当該連結法人に係る連結親法人の事業年度をいいます。以下同じ。)開始の日からその終了の日までの期間とされています(法法15の21)。
 ただし、連結親法人事業年度の中途において残余財産が確定した連結子法人にあっては、その連結親法人事業年度開始の日から残余財産の確定の日までの期間は連結事業年度に含まないものとされています(法法15の21二)。
ロ みなし事業年度
連結子法人の連結事業年度の中途において残余財産が確定した場合には、その連結事業年度開始の日から残余財産の確定の日までの期間を当該連結子法人の事業年度とみなすこととされています(法法141十)。
ハ 連結納税の承認の取消し
連結子法人の残余財産が確定した場合には、その連結子法人は、その残余財産の確定の日の翌日において、連結納税の承認を取り消されたものとみなすこととされ、その承認は、そのみなされた日以降の期間について、その効力を失うものとされています(法法4の52四)。
二 連結親法人の申告納税義務
内国法人及び当該内国法人との間に当該内国法人による完全支配関係がある他の内国法人の全てが当該内国法人を納税義務者として法人税を納めることにつき国税庁長官の承認を受けた場合には、これらの法人は、当該内国法人(連結親法人)を納税義務者として法人税を納めるものとされています(法法2十二の六の七、法法4の2)。そして、連結親法人に対しては、各連結事業年度の連結所得について、各連結事業年度の連結所得に対する法人税を課すこととされています(法法6)。
 連結親法人は、税務署長に対し、所定の事項を記載した申告書を提出しなければならず(法法81の221)、当該申告書に納付すべき法人税額として記載した金額があるときは、当該金額に相当する法人税を国に納付しなければならないこととされています(法法81の27)。
ホ 法人の申告納税義務
内国法人は、法人税を納める義務があるとされ(法法41)、内国法人とは、国内に本店又は主たる事務所を有する法人とされています(法法2三)。内国法人に対しては、各事業年度(連結事業年度に該当する期間を除きます。)の所得について、各事業年度の所得に対する法人税を課すこととされています(法法5)。
 内国法人は税務署長に対し、所定の事項を記載した申告書を提出しなければならず(法法741)、当該申告書に納付すべき法人税額として記載した金額があるときは、当該金額に相当する法人税を国に納付しなければならないこととされています(法法77)。
(2) 本件への当てはめ
イ 連結法人である当社の連結事業年度及びみなし事業年度
本照会において、連結親法人事業年度は、上記(1)イのとおり、連結親法人である甲社の事業年度となります。甲社は5月決算であることから、具体的には6月1日から5月31日までの期間となります。
 次に、連結法人(連結子法人)である当社の連結事業年度とは、連結親法人事業年度の開始の日である6月1日からその終了の日である5月31日までの期間となります。しかし、上記U3のとおり、当社は、連結親法人事業年度(具体的には平成28年6月1日から平成29年5月31日)の中途である平成29年3月31日に残余財産が確定する見込みですので、上記(1)イのとおり、連結親法人事業年度開始の日である平成28年6月1日から残余財産の確定の日である平成29年3月31日までの期間は連結事業年度に含まれないこととされます。
 そして、連結事業年度に含まれないこととされる当該期間(平成28年6月1日から平成29年3月31日までの期間)については、上記(1)ロのとおり、通常の事業年度(いわゆる単体事業年度)とみなされます。
ロ 当社に係る連結納税の承認の効力
連結法人(連結子法人)である当社に係る連結納税の承認は、上記(1)ハのとおり、残余財産の確定の日の翌日である平成29年4月1日に取り消されたものとみなされ、同日以降の期間について、承認の効力を失うこととなります。
 すなわち、当社は、上記イのみなし事業年度(平成28年6月1日から平成29年3月31日までの期間)においては、いまだ連結納税の承認の効力が失われていませんので、連結法人(連結子法人)に該当することとなります。
ハ 連結親法人である甲社の申告納税義務
上記(1)ニのとおり、連結親法人である甲社は、連結事業年度(平成28年6月1日から平成29年5月31日)の連結所得に対して法人税を課されることとなります。
 ところで、上記ロのとおり、当社は、平成28年6月1日から平成29年3月31日までの期間については、いまだ連結法人(連結子法人)に該当することとなりますが、上記イのとおり、当該期間は連結事業年度には含まれません。
 したがって、連結法人(連結子法人)である当社の平成28年6月1日から平成29年3月31日までの期間に生ずる所得は、連結事業年度の連結所得の金額とはなりませんので、当該所得について、連結親法人である甲社には申告納税義務はないものと考えます。
ニ みなし事業年度に生ずる所得に対する納税義務
上記(1)ホのとおり、内国法人は、連結事業年度に該当する期間を除く各事業年度の所得に対して法人税を課されることとなります。
 上記ロのとおり、当社は、平成28年6月1日から平成29年3月31日までの期間は、いまだ連結法人(連結子法人)に該当しますので、当然に内国法人に該当することとなります。
 また、上記イのとおり、当社において、平成28年6月1日から平成29年3月31日までの期間は、連結事業年度には含まれず、通常の事業年度(いわゆる単体事業年度)とみなされますので、当社は、平成28年6月1日から平成29年3月31日までの期間(みなし事業年度)に生ずる所得に対して法人税を課されることとなり、申告納税義務を負うものと考えます。