別紙1−1 照会の趣旨

1 照会の趣旨

埼玉県では、良好な環境を将来の世代に引き継ぐため、平成21年3月に「埼玉県地球温暖化対策推進条例(平成21年埼玉県条例第9号)」(以下「条例」といいます。)を制定し、目標設定型排出量取引制度(以下「本制度」といいます。)を導入しています(平成23年4月から適用開始)。

本制度は、条例に基づき、知事が定める「埼玉県地球温暖化対策推進条例施行規則(平成21年3月制定)」、「埼玉県地球温暖化対策に係る事業活動対策指針(平成22年3月制定)」(以下「指針」といいます。)及び各種ガイドラインに従い、大規模事業所(注)を埼玉県内に設置している者(以下「大規模事業者」といいます。)に対し、温室効果ガスの排出量を一定量以上削減することを目標として課すものです(指針第3 1)。

大規模事業者は、目標設定ガス(燃料、熱又は電気の使用に伴って排出される二酸化炭素をいいます(指針第3 1)。)の削減対策を実施して、実績排出削減量が排出削減目標量を超えた場合には、埼玉県からその超えている量に相当するクレジット(次表1に掲げる超過削減量(クレジット))の発行を受け、これを他の者に販売することができます。

また、実績排出削減量が排出削減目標量を下回っている場合には、大規模事業者は、他の者から超過削減量(クレジット)(次表1)のほか、県内中小クレジットなどのクレジット(次表24)やJ−VERなど他の制度で発行されたクレジット等を本制度の充当に利用できるクレジットに変換等したもの(次表56)(概要は「3 事実関係」のとおりです。以下これらを併せて「各クレジット」といいます(次表16)。)を取得し、排出削減目標量に充当することによって目標を達成することができます。なお、大規模事業者が保有する各クレジットは相対取引で自由に売却することができます(別添【グラフ1(PDF/176KB)】 【グラフ2(PDF/171KB)】 【取引図1(PDF/204KB)】参照)。

照会事項(1) 1 超過削減量(クレジット)
  1. 2 県内中小クレジット
  2. 3 県外クレジット
  3. 4 再生可能エネルギークレジット(環境価値換算量)
(2)
  1. 5 グリーン電力証書等及び新エネルギー等電気相当量を利用して発行を受ける再生可能エネルギークレジット(その他削減量)
(3)
  1. 6 J−VERクレジット等を利用して発行を受ける森林吸収クレジット(J−VER認証制度)

(注) 大規模事業所とは、原油換算で1,500kl以上のエネルギーを平成20年度以降の3か年度(年度の途中から当該事業所の使用が開始された場合にあっては、当該年度を除く3か年度)連続して使用する大規模な事業所をいいます(指針第3 1)。

また、平成20年度以降の全ての年度の年間原油換算エネルギー使用量が1,500kl未満の県内の事業所等(事業所又は大規模事業所以外の事業所内に設置する事務所、営業所等をいう。以下同じ。)及び直近の年間原油換算エネルギー使用量が1,500kl以上であった年度以降に、原油換算エネルギー使用量が1,000kl未満である年度又は原油換算エネルギー使用量が3か年度連続して1,500kl未満である期間がある県内の事業所等を「中小規模事業所」といいます(「目標設定型排出量取引制度における県内中小クレジット算定ガイドライン」第1部)。

2 照会事項

大規模事業者が行う次の排出量取引に係る法人税及び消費税の取扱いについて、次に掲げる取引の区分に応じ、それぞれ以下のとおりと解して差し支えないか、御照会申し上げます。

(1) 1超過削減量(クレジット)、2県内中小クレジット、3県外クレジット及び4再生可能エネルギークレジット(環境価値換算量)(以下これらを併せて「超過削減量(クレジット)等」といいます。)に係る取引(別添【取引図1(PDF/204KB)】参照)

区分 大規模事業者自らが埼玉県から発行を受ける場合 他の者から購入する場合
イ 超過削減量(クレジット)等を取得した時
【法人税】
処理なし(オフバランス)。
【消費税】
資産の譲渡等に該当しない(処理なし)。
【法人税】
取得に要した費用を無形固定資産等として計上する。
【消費税】
課税仕入れとなる。

(注) 個別対応方式を採用している場合、1自社使用のために取得する場合は、大規模事業所の業務・取引内容により用途区分を判定、2第三者への転売目的で取得する場合は、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に該当する。

ロ 自社使用(充当目的による知事の管理口座(充当口座)への超過削減量(クレジット)等の移転時)
-
【法人税】
「販売費及び一般管理費」等として損金の額に算入する。この場合の損金の額は、移転(充当)時の帳簿価額となる。
【消費税】
資産の譲渡等に該当しない(処理なし)。
ハ 第三者へ売却した時
【法人税】
無形固定資産等の売却として処理する。この場合の譲渡原価は、0(ゼロ)となる。
【消費税】
課税売上げとなる。
【法人税】
無形固定資産等の売却として処理する。この場合の譲渡原価は、売却時の帳簿価額となる。
【消費税】
課税売上げとなる。

(2)グリーン電力証書等及び新エネルギー等電気相当量を利用して発行を受ける再生可能エネルギークレジット(その他削減量)に係る取引(別添【取引図2(PDF/216KB)】 【取引図3(PDF/228KB)】参照)

区分 グリーン電力証書等及び新エネルギー等電気相当量を利用して再生可能エネルギークレジットの発行を受ける場合
イ グリーン電力証書等及び新エネルギー等電気相当量を取得等した時(金銭等の支出をした時)
【法人税】
グリーン電力証書等及び新エネルギー等電気相当量を取得等する際に支出する金銭等の額を仮払金として計上する。
【消費税】
処理なし。
ロ 再生可能エネルギークレジット(その他削減量)を取得した時(埼玉県で使用可能なクレジットに変換した時)
【法人税】
上記イにおける仮払金の額を無形固定資産等として計上する。
【消費税】
課税仕入れとなる。

(注) 個別対応方式を採用している場合、1自社使用のために取得する場合は、大規模事業所の業務・取引内容により用途区分を判定、2第三者への転売目的で取得する場合は、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に該当する。

ハ 自社使用(充当目的による知事の管理口座(充当口座)へ上記ロのクレジットを移転した時)
【法人税】
「販売費及び一般管理費」等として損金の額に算入する。この場合の損金の額は、移転(充当)時の帳簿価額となる。
【消費税】
資産の譲渡等に該当しない(処理なし)。
ニ 第三者へ売却した時
【法人税】
無形固定資産等の売却として処理する。この場合の譲渡原価は、売却時の帳簿価額となる。
【消費税】
課税売上げとなる。

(3)J−VERクレジット等を利用して発行を受ける森林吸収クレジット(J−VER認証制度)に係る取引(別添【取引図4(PDF/314KB)】参照)

区分 他者から購入したJ−VERクレジット等を、森林吸収クレジット(J−VER認証制度)に変換する場合
イ J−VERクレジット等を取得した時(金銭等の支出をした時)
【法人税】
取得に要した費用を無形固定資産等として計上する。
【消費税】
課税仕入れとなる。

(注) 個別対応方式を採用している場合、1自社使用のために取得する場合は、大規模事業所の業務・取引内容により用途区分を判定、2第三者への転売目的で取得する場合は、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に該当する。

ロ J−VERクレジット等を無効化口座に無償移転した時
【法人税】
上記イにおける無形固定資産等の額をクレジット仮勘定等として計上する。
【消費税】
資産の譲渡等に該当しない(処理なし)。
ハ 森林吸収クレジット(J−VER認証制度)を取得した時(埼玉県で使用可能なクレジットに変換した時)
【法人税】
上記ロにおけるクレジット仮勘定等を無形固定資産等として計上する。
【消費税】
資産の譲渡等に該当しない(処理なし)。
ニ 自社使用(充当目的による知事の管理口座(充当口座)へ上記ロのクレジットを移転した時)
【法人税】
「販売費及び一般管理費」等として損金の額に算入する。この場合の損金の額は、移転(充当)時の帳簿価額となる。
【消費税】
資産の譲渡等に該当しない(処理なし)。
ホ 第三者へ売却した時
【法人税】
無形固定資産等の売却として処理する。この場合の譲渡原価は、売却時の帳簿価額となる。
【消費税】
課税売上げとなる。

(注) 本件の排出量取引における取引価格は、第三者間の取引、大規模事業者自らが超過削減量(クレジット)等を創出するための費用その他経済事情を参酌した適正なものによっていることを前提とします。

なお、埼玉県は、クレジットの売却価格等に関して市場動向を示すことはあっても、取引価格の決定に関与することはありません。

別紙1-2 照会に係る取引等の事実関係

3 事実関係

(1) 目標設定型排出量取引制度について

イ 対象事業者
本制度により温室効果ガス排出量の削減目標が課せられる大規模事業者とは、大規模事業所を県内に設置している者となります(指針第3 1)。
ロ 指針に基づく温室効果ガス排出量の削減目標
指針では、大規模事業者に対して、平成14年度から平成19年度までの中から大規模事業者が選択する連続した3か年度の温室効果ガスの年度排出量の平均等を基準排出量とし(指針第3 1 別表第3)、これと比較して第一計画期間(平成23年度から平成26年度までの4年間)の温室効果ガスの平均排出量を、指針に定める区分に応じて6%又は8%削減するよう努めるものとされています(指針第3 1 別表第4)。大規模事業者を含む一定の事業者(特定事業者)には、削減計画期間(注)の各年度の基準排出量及び実績排出量を記載した地球温暖化対策計画及び地球温暖化対策実施状況報告書(以下「計画等」といいます。)の提出義務が課されています(条例第12条、第14条)。

(注) 削減計画期間とは、制度全体の区切りであって、削減期間の基となる各期間をいい、第一計画期間は平成23年度から平成26年度までの4か年度で、以降5か年度ごとの期間となり、次表に掲げる各期間をいいます(「目標設定型排出量取引制度における排出量取引運用ガイドライン」第3部第1章「用語定義集」(以下「用語集」といいます。)22、指針 別表第2)。

1 平成23年度から平成26年度までの期間
2 平成27年度から平成31年度までの期間
3 平成32年度以降の5か年度ごとの期間
ハ 目標達成の手段
目標達成の手段として、次の2つがあります(指針第3 2 別表第5)。
1 事業所の排出量の削減
大規模事業者が、自らの事業所において、高効率なエネルギー消費設備・機器への更新や運用対策の推進等を行うことにより、事業所の実際の温室効果ガスの排出量を減少させます。
2 排出量取引による目標削減量への充当
大規模事業者は、他の者から各クレジットを取得して、削減目標に充当することができます。
ニ 削減量口座簿による各クレジットの管理

埼玉県では、削減量口座簿により、大規模事業者による目標達成状況の確認や各クレジットの取得、保有、売却などの取引の管理等を行っています。

削減量口座簿とは、取引可能なクレジットやそのクレジットの取引の記録等を管理するための埼玉県が整備するシステムであり、1知事の管理口座(充当口座及び抹消口座)、2指定管理口座(大規模事業者が、対象事業所ごとに開設し、目標の達成状況の確認に用いる口座)、3一般管理口座(大規模事業者及び排出量取引を事業として行う者(取引参加者)が開設し、各クレジットの取得、保有、売却の際に利用する口座)に区分されています。

大規模事業者は、排出削減目標量以上に温室効果ガスを削減した場合には、指定管理口座においてその実績排出削減量に基づき超過削減量(クレジット)の発行を受け、一般管理口座に移転させた上で、他の者へ超過削減量(クレジット)を移転(販売)することができます。また、一般管理口座において、他の者から各クレジットを取得(購入)し、自己の事業所別の指定管理口座に移転させた上で、当該指定管理口座から知事の管理口座(充当口座)に移転させることにより、当該クレジットに係る排出削減量を自らの対象事業所の温室効果ガスの排出量から減少させることができます。

なお、一度、一般管理口座から指定管理口座に移転させたクレジットは、再度一般管理口座へ移転させることはできません。

削減量口座簿における各クレジットの移転の手続きについては、口座名義人(大規模事業者)からの振替申請に基づき、埼玉県が申請の内容に不備がないか確認の上、各クレジットの移転記録を行うこととしており、正確性・適正性が担保されています。

ホ 目標未達成の場合の措置

整理期間(注)において、指針に基づく温室効果ガス排出量の削減目標が達成できなかった場合は、その未達成分が翌削減計画期間における削減目標量に加算されます。

(注) 整理期間とは、削減計画期間の終了年度の翌々年度の9月末日までの期間をいい、当該削減計画期間中の排出量の確定及び削減目標達成状況の確認を行い、排出量取引による目標削減量への充当などの手続きを行う期間をいいます(指針 別表第5)。

へ 地球温暖化対策推進者の選任
特定事業者は、一定の権限を有する者の中から事業者としての責務を負う者を地球温暖化対策推進者として選任しなければならず(条例第16条)、本制度における削減目標を達成するための責任者を明らかにするとともに、計画等の作成担当者と埼玉県担当者との間の連絡体制等を整えることとしています。
ト 埼玉県による大規模事業者及び目標達成状況の把握・管理

埼玉県は、上記ロの計画等の提出義務の対象となる事業者について把握漏れが生じないように、登記情報などの各種公開情報等から計画等の提出義務があると思われる事業者を抽出して個別にエネルギー使用量を確認し、計画等の提出義務がある特定事業者を把握するための確認を行うなど、大規模事業者を適切に把握・管理して提出義務を確実に履行するよう指導しています。

また、埼玉県は、計画等の審査等により削減目標を達成できないおそれのある大規模事業者に対し、個別に事業所現地調査を実施するなどして当該大規模事業者の状況を確認の上、必要に応じて排出量取引を活用して削減目標を達成するよう指摘し、その旨を計画等に記載するよう指導するなど、大規模事業者の目標達成状況を適切に把握・管理しています。

チ 埼玉県ホームページにおける公表等

大規模事業者を含む一定の事業者(特定事業者)に提出義務がある計画等は、埼玉県ホームページにおいて、その内容が公表されます(条例第15条)。大規模事業者がこれら計画等を提出しない場合又は虚偽の記載をして提出した場合には、知事は、大規模事業者に対して勧告することができ、また、この勧告に従わなかったときは、その事業者名を公表することができます(条例第56条、第57条)。

条例に大規模事業者が目標を達成できなかった場合の罰金等の規定はないものの、埼玉県が公表する削減計画期間の各年度の基準排出量及び実績排出量から各大規模事業所の削減目標の達成度を推し量ることができることから、大規模事業者に対して業務の中で目標設定ガスの削減を計画的に実施するための大きな動機を与えています。

(2) 超過削減量(クレジット)等に係る取引(別添【取引図1(PDF/204KB)】

超過削減量(クレジット)等は、次の表の発行対象者に対し、埼玉県が発行するものであり、発行に際しては、埼玉県の登録を受けた検証機関による排出量等の審査、検証を受けています。

この検証機関は、例えば、検証主任者が一定の検証業務経験を有している必要があるなどの「埼玉県目標設定型排出量取引制度に係る検証機関登録等実施要綱」及び「目標設定型排出量取引制度における検証機関登録申請ガイドライン」によって求められている要件を満たす必要があり、また、埼玉県は、目標設定ガス排出量等が各種算定ガイドラインに従って正しく算定されているかについて検証を行うための手順、確認方法及び判断基準を「エネルギー起源CO2排出量検証ガイドライン」等として定めており、検証機関は、これに基づいて検証を実施することが要求されていることから、超過削減量(クレジット)等の正確性・適正性は担保されています。

クレジットの概要 発行対象者
1 超過削減量(クレジット)
目標設定ガスの実績排出削減量が排出削減目標量を超えた大規模事業者(削減目標達成者)が、埼玉県に対して超過削減量(クレジット)の発行申請を行うことにより、発行されるもの。
大規模事業者
2 県内中小クレジット
計画等を提出している事業所(大規模事業所以外で県内に設置された事業所のうち義務又は任意提出の対象となっている事業所)において、埼玉県があらかじめ提示する削減対策項目(高効率な設備機器への更新等)を実施し、建物単位又は営業所単位で基準排出量からの総量削減実績を達成した量がオフセット・クレジットとして発行されるもの。
中小規模事業所を有する事業者(大規模事業者を含む)
3 県外クレジット
県外の大規模事業所において、埼玉県内の対象事業所と同様の目標削減率が課せられているものとして算定した削減量がクレジットとして発行されるもの。
県外の大規模事業所を所有する者
4 再生可能エネルギークレジット(環境価値換算量)
再生可能エネルギー(太陽光、風力及び地熱並びに一定の要件を満たす場合の水力及びバイオマス)による国内の発電設備(県内外を問いません。)において発電した電力量(電気の環境価値)が、一定の要件のもとで目標設定ガスの削減量に換算して発行されるもの。
国内にある再エネ発電設備を所有する事業者

(注) 各クレジット化の詳細は、指針、「目標設定型排出量取引制度における排出量取引運用ガイドライン」、「目標設定型排出量取引制度における県内中小クレジット算定ガイドライン」、「目標設定型排出量取引制度における県外クレジット算定ガイドライン」及び「目標設定型排出量取引制度における再エネクレジット算定ガイドライン」第2部において定められています。

(3) 再生可能エネルギークレジット(その他削減量)に係る取引(別添【取引図2(PDF/216KB)】 【取引図3(PDF/228KB)】

再生可能エネルギークレジット(その他削減量)とは、一般財団法人日本エネルギー経済研究所グリーンエネルギー認証センター(以下「グリーンエネルギー認証機関」といいます。)が発行したグリーン電力証書等及び国(経済産業省)が管理する新エネルギー電気相当量を、埼玉県においてクレジット化するものです。

クレジット化の詳細は、「目標設定型排出量取引制度における排出量取引運用ガイドライン」及び「目標設定型排出量取引制度における再エネクレジット算定ガイドライン」(以下「再エネクレジット算定ガイドライン」といいます。)第3部において定められており、その概要は次のとおりです。

イ グリーン電力証書等

グリーン電力証書等とは、グリーンエネルギー認証機関により認証された再生可能エネルギーによって作られた電気又は熱の環境価値(注)を表示するグリーン電力証書及び太陽熱由来のグリーン熱証書をいいます。大規模事業者は、グリーン電力証書等の申請者兼発行事業者(以下「証書発行事業者」といいます。)からグリーン電力証書等を取得し、当該グリーン電力証書等を埼玉県で利用可能な再生可能エネルギークレジット(その他削減量)に変換することができます。クレジット化することができるグリーン電力証書等は、原則として、使用目的(用途)が「埼玉県目標設定型排出量取引制度への利用」として明確にされたものに限定されており、また、グリーン電力証書等は他の者に対して譲渡することはできません。なお、再生可能エネルギークレジット(その他削減量)を発行申請できる者は、本制度の対象事業者(大規模事業者)に限られます。

(注) 「環境価値」とは、再生可能エネルギーを変換して得られる電気又は熱が有する地球温暖化及びエネルギーの枯渇の防止に貢献する価値をいいます(再エネクレジット算定ガイドライン P2)。

ロ 新エネルギー等電気相当量
(イ) RPS法制度の概要

平成14年6月に公布された電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(以下「RPS法」といいます。)は、新エネルギー等の更なる普及のため、電気事業者に対して、一定量以上の新エネルギー等を利用して得られる電気の利用を義務付けることにより、新エネルギー等の利用を推進していくものです。

電気事業者は、義務を履行するため、自ら新エネルギー等電気を発電する、若しくは、他から新エネルギー等電気を購入する、又は、新エネルギー等電気相当量(注)(RPS法の規定に従い電気の利用に充てる、又は、基準利用量の減少に充てることができる量)を取得することになります。

(注) 新エネルギー等電気相当量とは、電気事業者による再生可能エネルギーの調達に関する特別措置法施行規則(平成24年経済産業省令第46号)附則第9条の規定によりなお効力を有するものとされた同法施行規則第8条の規定による廃止前のRPS法施行規則(平成14年経済産業省令第119号)第1条第2項に規定する新エネルギー等電気相当量(規模、方法等について知事が別に定める発電によるものに限ります。)をいいます(指針 別表第5 2(7)ア)。

(ロ) 新エネルギー等電気相当量の変換要請

新エネルギー等電気相当量はRPS法における電子口座に記録されますので、電気事業者及び新エネルギー等発電事業者以外の者は、RPS法における電子口座を開設できないことから、新エネルギー等電気相当量を取得できません。

このため、当該電子口座を開設できない大規模事業者は、新エネルギー等電気相当量を直接取得できないため、新エネルギー等電気相当量の保有者に対して、本制度における再生可能エネルギークレジット(その他削減量)の発行を受けるよう要請し、当該保有者からその発行されたクレジットを取得することとなります。

(ハ) 再生可能エネルギークレジット(その他削減量)の取得

新エネルギー等電気相当量の保有者(県内外を問いません。)は、当該新エネルギー等電気相当量を埼玉県で利用可能な再生可能エネルギークレジット(その他削減量)に変換することができます。クレジット化するためには、あらかじめ当該相当量分について減量手続き(RPSキャンセル)を行う必要があります。

また、本制度への利用であることが明らかでない場合、再生可能エネルギークレジット(その他削減量)を取得することができません。

(4) 森林吸収クレジット(J−VER認証制度)に係る取引(別添【取引図4(PDF/314KB)】

森林吸収クレジット(J−VER認証制度)とは、環境省が設置する認証委員会が認証し発行したオフセット・クレジット(J−VER)及び都道府県J−VERプロジェクト認証制度により都道府県が設置する認証委員会が認証し発行した都道府県J−VERクレジットのうち、次の13の方法論で実施されたプロジェクトにより発行されたもの(以下「J−VERクレジット等」といいます。)を、埼玉県において、本制度の充当に利用できるクレジットに変換するものです。

  1. 1 森林経営活動によるCO2吸収量の増大(間伐促進型プロジェクト)
  2. 2 森林経営活動によるCO2吸収量の増大(持続可能な森林経営促進型プロジェクト)(平成14年4月1日以降に開始するプロジェクトに限ります。)
  3. 3 植林活動によるCO2吸収量の増大

(注) 平成26年3月31日現在の都道府県J−VERプログラムとして、環境省のオフセット・クレジット(J−VER)認証委員会から認証されているのは、新潟県及び高知県の2県のみです。

イ J−VER認証制度の概要

カーボン・オフセット(注)の取組の推進のための施策の一環として、環境省は、国内における温室効果ガスの排出削減又は吸収に係るプロジェクトによる温室効果ガスの排出削減量及び吸収量をJ−VERとして、環境省が設置する専門家や学識経験者等から構成されるJ−VER制度認証委員会が認証し、当該J−VERをカーボン・オフセットに用いることができるJ−VER制度を設けています。

(注) カーボン・オフセットとは、「我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)」(平成20年2月環境省)において「市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府等の社会の構成員が、自らの温室効果ガスの排出量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等を購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により、その排出量の全部又は一部を埋め合わせること」と定められています。

ロ J−VERクレジット等の取得
大規模事業者は、J−VERクレジット等を、プロジェクト実施事業者等から相対取引により取得することができます。
ハ 森林吸収クレジット(J−VER認証制度)の取得

大規模事業者は、上記ロにより取得したJ−VERクレジット等をJ−VER登録簿における大規模事業者の保有口座から無効化口座に無償移転を行って環境省から無効化通知書を受領し、当該無効化通知書と本制度以外の制度で使用しない旨の誓約書(重複利用でないことがわかる根拠資料)を添付の上埼玉県に対して認証申請を行い、その後発行申請を行うという一連の手続きをとることにより、当該J−VERクレジット等を埼玉県で利用可能な森林吸収クレジット(J−VER認証制度)に変換することができます。

なお、J−VERクレジット等から森林吸収クレジット(J−VER認証制度)を発行するよう申請できる者は、J−VERクレジット等の最終所持者であって、かつ、本制度の対象事業者(大規模事業者)に限られます。

このため、埼玉県では申請者に対し、J−VERクレジット等の無効化申請書の「無効化の目的」欄に「埼玉県目標設定型排出量取引制度への利用」と記載し、これを無効化通知書に表示させることにより、本制度への利用を明確にするよう指導しています。

(注) クレジット化の詳細は、「目標設定型排出量取引制度における排出量取引運用ガイドライン」及び「目標設定型排出量取引制度における森林吸収クレジット算定ガイドライン」において定められています。

(5) 会計上の取扱い

企業会計基準委員会における排出量取引専門委員会の検討では、東京都の排出量取引制度で取り扱われるクレジットの取得及び売却については、当面、実務対応報告第15号「排出量取引の会計処理に関する当面の取扱い」で定められている試行排出量取引スキームの会計処理に準じて処理することで問題はないと考えられるとの意見が出されています(平成22年4月9日第199回企業会計基準委員会議事内容)。

ただし、企業会計基準委員会では、本制度で発生するすべての個別取引にまで踏み込んだ会計処理には言及されていませんので、埼玉県環境部では、本制度における大規模事業者の実務上の参考となるように「目標設定型排出量取引制度に係る会計処理に関する基本的考え方」(平成24年6月)を作成し、本制度における会計処理の基本的な考え方を示しています。

具体的に一例を申し上げますと、実務対応報告第15号においては、次の定めがなされていますが、上記基本的な考え方では、一度、一般管理口座から指定管理口座へ移転したクレジットについては、再度、一般管理口座へ移転することができない(他の者に売却できず、充当口座への移転のみ可能です。)ことから、一般管理口座から指定管理口座へ移転した時点で費用計上(「販売費及び一般管理費」など)を行うことなどを示しています。

【実務対応報告第15号 4(1)】
資産として計上された排出クレジットは、自社の排出量削減に充てられたときに、これを費用として計上する。具体的には、排出クレジットを国別登録簿(割当量口座簿)の政府保有口座に移転していなくても移転することが確実と見込まれる場合や第三者へ売却する可能性がないと見込まれる場合には費用とすることが適当である。

別紙1−3 照会者の求める見解となることの理由

4 検討内容

(1) 各クレジット及びJ−VERクレジット等の資産性の有無について

イ 先例
照会事項の排出量取引に係る法人税及び消費税の取扱いの検討に当たっては、本件の取引における、各クレジット及びJ−VERクレジット等に資産性があるかどうかが前提となります。排出権取引に係る各種クレジットの資産性については、平成21年2月24日国税庁文書回答「京都メカニズムを活用したクレジットの取引に係る税務上の取扱いについて」平成22年3月26日国税庁文書回答「国内クレジットの取引に係る法人税の取扱いについて」平成24年10月19日国税庁文書回答「オフセット・クレジット(J−VER)の取引に係る税務上の取扱いについて」(以下「J−VER文書回答」といいます。)において、法的安定性、流通性の確保、恣意性の排除(客観性の確保)、取引可能性といった観点から、資産性があるものと整理されているところです。
ロ 本件のあてはめ
各クレジット及びJ−VERクレジット等の資産性の有無について、先例における資産性の判断と同様の検討をすると、次のとおり、これらのクレジットは資産性を有するものと解されます。
(イ) 各クレジットの資産性について
A 法的安定性、流通性の確保について
大規模事業者が、各クレジットを削減目標の達成のために取得及び充当すること並びに第三者へ売却することができるよう埼玉県によって制度設計がされていること。また、大規模事業者等の申請等に基づき、埼玉県が電子システム(削減量口座簿)上で各種手続を処理し、各クレジットの取引の管理等を行っており、埼玉県によって口座が適正に管理・運営されていることから、その法的安定性及び流通性の確保がなされていると認められること。
B 恣意性の排除(客観性の確保)について
次の(A)及び(B)から、各クレジットの客観性が確保されていると認められること。
  • (A) 1超過削減量(クレジット)、2県内中小クレジット、3県外クレジット、4再生可能エネルギークレジット(環境価値換算量)は、排出量等を、一定の要件を満たした登録検証機関が、埼玉県の定める手順、確認方法及び判断基準により、審査、検証したものを埼玉県がクレジット化したものであり、正確性・適正性が担保されていること。
  • (B) 5グリーン電力証書等及び新エネルギー等電気相当量の変換による再生可能エネルギークレジット(その他削減量)、6森林吸収クレジット(J−VER認証制度)は、その基となる、グリーン電力証書等、新エネルギー等電気相当量及びJ−VERクレジット等を第三者機関が認証し、それを埼玉県がクレジット化するものであること。
C 取引可能性について
大規模事業者間で金銭等を介して取引の対象とされ、財産的価値を有するものとして移転することが可能であり、取引が可能なものであると認められること。
(ロ) J−VERクレジット等の資産性について

上記4(1)イのとおり、既にJ−VER文書回答において、オフセット・クレジット(J−VER)は資産性を有するものであるとされています。

また、都道府県J−VER制度は、J−VER制度に整合していると認められるものを、J−VER認証委員会が認証し、「都道府県J−VERプログラム」としてJ−VER制度におけるプログラム認証リストに掲載する仕組みであり、都道府県J−VERプログラムにより発行される都道府県J−VERクレジットは、J−VERと同列にJ−VER登録簿に登録されることから(環境省「オフセット・クレジット(J−VER)制度ホームページ」参照)、J−VERの取引と同様に法的安定性及び流通性が確保されており、資産性を有するものと認められます。

(2) 超過削減量(クレジット)等の取得等に係る取引について

イ 超過削減量(クレジット)等を取得した時
【法人税関係】
1 大規模事業者自らが埼玉県から発行を受けた超過削減量(クレジット)等
上記(1)ロ(イ)のとおり、超過削減量(クレジット)等については資産性を有するものの、大規模事業者自らが埼玉県から発行を受けた超過削減量(クレジット)等については、大規模事業者が一定の手続きを埼玉県に対して行い、埼玉県がこれを受けて発行するものであることから、当該超過削減量(クレジット)等は埼玉県が発行することにより初めてその効力が生じる(発生する)こととなります。すなわち、超過削減量(クレジット)等は埼玉県の発行により創出され、同時に大規模事業者に帰属する(付与される)ものであり、当該超過削減量(クレジット)等を取得するための具体的な対価の支払がないことから、処理を行わなくても差し支えありません。
2 他の者から取得する超過削減量(クレジット)等
大規模事業者が他の者から取得する超過削減量(クレジット)等については、上記(1)ロ(イ)のとおり資産性を有するものであるため、当該超過削減量(クレジット)等が自己の一般管理口座に記録された日(移転が完了した日)の属する事業年度において、当該超過削減量(クレジット)等の取得に要した費用を「無形固定資産(投資その他の資産)」又は「棚卸資産」として計上することとなります。
【消費税関係】
1 大規模事業者自らが埼玉県から発行を受けた超過削減量(クレジット)等
超過削減量(クレジット)等は、上記(1)ロ(イ)のとおり、資産性を有する権利その他これに類する無形固定資産等であると考えられることから、当該超過削減量(クレジット)等の取得(付与)は、大規模事業者における権利(財産権)の発生と取り扱うのが相当であり、資産の譲渡等には該当しません(消費税の課税の対象外ですから処理は不要です。)。
2 他の者から取得する超過削減量(クレジット)等

超過削減量(クレジット)等は、資産性を有するものであり、超過削減量(クレジット)等の取得に当たりその内容、性質は同一性を保持しつつ、他の者(前所有者)から大規模事業者(取得者)に移転し、その対価として大規模事業者(取得者)から他の者(前所有者)に金銭等が支払われるものです。すなわち、超過削減量(クレジット)等の取得は、事業者が、事業として他の者から資産を譲り受けるものですから、課税仕入れに該当し、超過削減量(クレジット)等が自己の一般管理口座に記録された日(移転が完了した日)が課税仕入れを行った日となります。

なお、大規模事業者(取得者)が仕入控除税額の計算に当たり個別対応方式を採用する場合の用途区分は、課税仕入れを行った日の状況により次のとおりとなります。

A 自己の削減目標の達成に使用する場合
大規模事業所における事業(当該事業所において行われる資産の譲渡等)の内容に応じた用途区分に判定
B 他の者に売却する場合
課税資産の譲渡等のみに要するもの
ロ 自社使用(充当目的による知事の管理口座(充当口座)への超過削減量(クレジット)等の移転時)
【法人税関係】

埼玉県の条例及び指針では、大規模事業者は温室効果ガスの排出抑制に必要な措置を講ずるよう努めなければならないこと、また削減目標を達成するよう努めるものとされ、大規模事業者が削減目標を達成できなかった場合の罰金等の規定は設けられていません。

しかしながら、本制度においては、上記3(1)ロ及びヘからチまでのとおり、条例に基づき大規模事業者に対して削減対策を含む計画等の提出義務を課した上で、埼玉県が、計画等の提出義務者を把握・管理して提出義務を確実に履行するよう指導するとともに、大規模事業者の目標達成状況についても適切に把握・管理をし、削減目標を達成できないおそれのある大規模事業者に対しては事業所現地調査による指導等を行っています。また、これらの指導等を円滑に行うため、条例に基づき地球温暖化対策推進者の選任義務を課して、事業者と埼玉県の間の本制度に係る連絡体制等を整備しています。さらに、条例に基づき、埼玉県ホームページ上に大規模事業者ごとの削減目標の達成度を公表することにより、大規模事業者が目標設定ガスの削減を計画的に行わない場合には、その旨が広く明らかになるなど、削減目標を達成しない場合の制裁の仕組みも設けられています。

これらの条例の定め及び本制度の適切な運用を図るための埼玉県の指導等を踏まえると、大規模事業者に対し削減目標を達成する実質的な義務が課せられているものと考えられます。

よって、大規模事業者は、任意にクレジットの無償移転を行うものではなく、条例及び指針に基づき課された削減目標を達成するため排出削減(超過削減量(クレジット)等の無償移転)を実施するものであることからすれば、大規模事業者が他の者から超過削減量(クレジット)等を取得し、充当口座に移転することは、自己の業務を実施するために必要な行為であると考えられます(業務関連性あり)。

したがって、大規模事業者が充当を目的として他の者から取得した超過削減量(クレジット)等を自己の指定管理口座から充当口座に移転した場合には、当該移転した日の属する事業年度において、移転(充当)時の帳簿価額を「販売費及び一般管理費」等として損金の額に算入することとなります。

【消費税関係】
大規模事業者が行う超過削減量(クレジット)等の充当は、上記【法人税関係】のとおり大規模事業者が超過削減量(クレジット)等を自己の指定管理口座から充当口座に移転させるものですが、当該移転は、大規模事業者が指針に基づく削減目標を達成するために行うものであり、大規模事業者においては、何ら反対給付を受けるものではないことから資産の譲渡等には該当しません(消費税の課税の対象外ですから処理は不要です。)。
ハ 第三者へ売却した時
【法人税関係】
1 大規模事業者自らが埼玉県から発行を受けた超過削減量(クレジット)等
大規模事業者自らが埼玉県から発行を受けた超過削減量(クレジット)等を他の者に売却(有償譲渡)をした場合には、「無形固定資産(投資その他の資産)」又は「棚卸資産」の譲渡として扱うことが相当であり、当該超過削減量(クレジット)等の売却により生じた損益については、その確定した日を含む事業年度の益金又は損金の額に算入することとなります。なお、この場合の譲渡原価は0(ゼロ)となります。
2 他の者から取得する超過削減量(クレジット)等
大規模事業者が他の者から取得した超過削減量(クレジット)等を他の者に売却(有償譲渡)した場合には、上記1と同様に取り扱うこととなります。ただし、この場合の譲渡原価は、売却時の帳簿価額となります。
【消費税関係】
大規模事業者が保有する超過削減量(クレジット)等の売却は、自己が発行を受けたものか、あるいは他の者から取得したものかにかかわらず、自己が所有する資産をその同一性を保持しつつ、他の者に移転させ、その対価として金銭等を収受するものですから資産の譲渡等に該当し、消費税の課税の対象となります。

(3) グリーン電力証書等の変換による再生可能エネルギークレジット(その他削減量)に係る取引について

上記3(3)イのとおり、大規模事業者は、目標設定ガスの削減目標を達成するため、金銭等を支出して、証書発行事業者からグリーン電力証書等を取得し、当該グリーン電力証書等を埼玉県に提出することにより、再生可能エネルギークレジット(その他削減量)を取得することができるものであるところ、

  1. 1 当該グリーン電力証書等は、使用目的(用途)が「埼玉県目標設定型排出量取引制度への利用」に限定されており、大規模事業者は、再生可能エネルギークレジット(その他削減量)の取得以外に使途がないこと、
  2. 2 再生可能エネルギークレジット(その他削減量)を発行申請することができる大規模事業者は、原則としてグリーンエネルギー認証機関に届け出たグリーン電力証書等の最終所有者に限られること、
  3. 3 グリーンエネルギー認証機関がグリーン電力証書等の転売を認めておらず、実質的に他の者に転売することができないこと(流通性の確保がなく、取引可能性が低い)、

からすれば、大規模事業者と証書発行事業者との取引は、グリーン電力証書等を大規模事業者が証書発行事業者から取得することを目的とするものではなく、大規模事業者は、当初から、証書発行事業者を通じてグリーン電力証書等を再生可能エネルギークレジット(その他削減量)に変換すること、すなわち、再生可能エネルギークレジット(その他削減量)を取得することを目的としているものであると認められます。
 したがって、大規模事業者が行う再生可能エネルギークレジット(その他削減量)の取得等に係る取引については、次の処理を行うこととなります。

イ グリーン電力証書等を取得した時(金銭等の支出をした時)
【法人税関係】
上記のとおり、大規模事業者と証書発行事業者との間における取引は、グリーン電力証書等の取得を目的とするものではなく、再生可能エネルギークレジット(その他削減量)の取得を目的とするものであるところ、金銭等の支出をした時においては再生可能エネルギークレジット(その他削減量)を譲り受けるものではないことから、大規模事業者は、その金銭等の支出をした日の属する事業年度において、その支出した金銭等の額、すなわち、再生可能エネルギークレジット(その他削減量)の取得に要する費用に相当する金額を仮払金として計上することとなります。
【消費税関係】
上記【法人税関係】のとおり、大規模事業者は、再生可能エネルギークレジット(その他削減量)を譲り受けるものではなく、金銭等を支出したに過ぎないことから、金銭等の支出した日の属する課税期間における課税仕入れの対象とはなりません。
ロ 再生可能エネルギークレジット(その他削減量)を取得した時(埼玉県で使用可能なクレジットに変換した時)
【法人税関係】
上記(1)ロ(イ)のとおり、再生可能エネルギークレジット(その他削減量)は資産性を有するものであるため、大規模事業者が、自己の一般管理口座に記録された日(再生可能エネルギークレジット(その他削減量)の発行を受けた日)の属する事業年度において、上記イにより仮払金として計上した金額を、「無形固定資産(投資その他の資産)」又は「棚卸資産」として計上することとなります。
【消費税関係】

再生可能エネルギークレジット(その他削減量)については、上記(1)ロ(イ)のとおり、消費税法上、資産に該当するものであり、大規模事業者が自己の一般管理口座に記録された日(再生可能エネルギークレジット(その他削減量)の発行を受けた日)が課税仕入れを行った日となります。
 なお、大規模事業者(他の者から再生可能エネルギークレジット(その他削減量)を取得する場合を含む。)が仕入控除税額の計算に当たり個別対応方式を採用する場合の用途区分は、上記(2)イ【消費税関係】2なお書と同様となります。

ハ 自社使用(充当目的による知事の管理口座(充当口座)へ再生可能エネルギークレジット(その他削減量)を移転した時)及び第三者へ売却した時
取得した再生可能エネルギークレジット(その他削減量)を充当又は売却した場合の法人税及び消費税の取扱いは、上記(2)ロ又はハと同様に取り扱うこととなります。

(4) 新エネルギー等電気相当量の変換による再生可能エネルギークレジット(その他削減量)に係る取引について

上記3(3)ロのとおり、大規模事業者は、目標設定ガスの削減目標を達成するため、新エネルギー等電気相当量の保有者に対して、金銭等を支出して新エネルギー等電気相当量を再生可能エネルギークレジット(その他削減量)に変換して移転するよう依頼して、再生可能エネルギークレジット(その他削減量)を取得することができるものであるところ、

  1. 1 当該新エネルギー等電気相当量は、RPS法における電子口座を開設できる電気事業者又は新エネルギー等発電事業者のみが直接取得することができるものであり、当該電子口座を開設できない大規模事業者は、直接取得することができないこと、
  2. 2 新エネルギー等電気相当量の保有者が経済産業大臣に提出する「新エネルギー等電気相当量の減量又は増量届出書」(RPS法規則様式第7)の備考欄に使用目的が本制度への利用である旨を記載することとされており、その保有者は、再生可能エネルギークレジット(その他削減量)の取得以外に使途がないこと、
  3. 3 形式的には、新エネルギー等電気相当量を保有する電気事業者又は新エネルギー等発電事業者が埼玉県から再生可能エネルギークレジット(その他削減量)を取得することとなるが、実質的には、大規模事業者が対価を支払い、その再生可能エネルギークレジット(その他削減量)を自らに移転させて取得するものであること、

からすれば、大規模事業者と新エネルギー等電気相当量の保有者との取引は、大規模事業者が新エネルギー等電気相当量をその保有者から取得することを目的とするものではなく、当初から、その保有者が新エネルギー等電気相当量を再生可能エネルギークレジット(その他削減量)に変換した上で、大規模事業者がその再生可能エネルギークレジット(その他削減量)を取得することを目的としているものと認められます。
 したがって、電気事業者等ではない大規模事業者が行う再生可能エネルギークレジット(その他削減量)の取得に係る取引については、次の処理を行うこととなります。

イ 新エネルギー等電気相当量の変換要請をした時(金銭等の支出をした時)
【法人税関係】
大規模事業者は、新エネルギー等電気相当量の取得を目的とするものではなく、再生可能エネルギークレジット(その他削減量)の取得を目的とするものであるところ、新エネルギー等電気相当量の保有者に対して金銭等の支出をした時においては、再生可能エネルギークレジット(その他削減量)を譲り受けるものではないことから、大規模事業者は、その金銭等の支出をした日の属する事業年度において、その支出した金銭等の額、すなわち、再生可能エネルギークレジット(その他削減量)の取得に要する費用に相当する金額を仮払金として計上することとなります。
【消費税関係】
上記【法人税関係】のとおり、大規模事業者は、再生可能エネルギークレジット(その他削減量)を譲り受けるものではなく、金銭等を支出したに過ぎないことから、金銭等の支出した日の属する課税期間における課税仕入れの対象とはなりません。
ロ 再生可能エネルギークレジット(その他削減量)を取得した時(埼玉県で使用可能なクレジットに変換した時)
【法人税関係】
上記(1)ロ(イ)のとおり、再生可能エネルギークレジット(その他削減量)は資産性を有するものであるため、大規模事業者が、自己の一般管理口座に記録された日(再生可能エネルギークレジット(その他削減量)の発行を受けた日)の属する事業年度において、上記イにより仮払金として計上した金額を、「無形固定資産(投資その他の資産)」又は「棚卸資産」として計上することとなります。
【消費税関係】

再生可能エネルギークレジット(その他削減量)については、上記(1)ロ(イ)のとおり、消費税法上、資産に該当するものであり、大規模事業者が自己の一般管理口座に記録された日(再生可能エネルギークレジット(その他削減量)の発行を受けた日)が課税仕入れを行った日となります。

なお、大規模事業者(他の者から再生可能エネルギークレジット(その他削減量)を取得する場合を含む。)が仕入控除税額の計算に当たり個別対応方式を採用する場合の用途区分は、上記(2)イ【消費税関係】2なお書と同様となります。

ハ 自社使用(充当目的による知事の管理口座(充当口座)へ再生可能エネルギークレジット(その他削減量)を移転した時)及び第三者へ売却した時
取得した再生可能エネルギークレジット(その他削減量)を充当又は売却した場合の法人税及び消費税の取扱いは、上記(2)ロ又はハと同様に取り扱うこととなります。

(5) 森林吸収クレジット(J−VER認証制度)に係る取引について

上記3(4)のとおり、大規模事業者は、目標設定ガスの削減目標を達成するため、金銭等を支出してJ−VERクレジット等の所有者からJ−VERクレジット等を取得し、当該J−VERクレジット等をJ−VER登録簿における大規模事業者の保有口座から無効化口座に無償移転したことを証する書類(無効化通知書)を埼玉県に提出することにより、森林吸収クレジット(J−VER認証制度)を取得することができるものであるところ、

  1. 1 森林吸収クレジット(J−VER認証制度)を認証申請することができる大規模事業者は、J−VERクレジット等の最終所有者に限られており、それを証する書類として無効化通知書が必要であること、
  2. 2 森林吸収クレジット(J−VER認証制度)の認証申請に当たっては、本制度以外の制度で使用しない旨の誓約書(重複利用でないことがわかる根拠資料)を提出すること、

からすれば、大規模事業者が行う当該J−VERクレジット等の無償移転は、J−VERクレジット等を無効化することを目的とするものではなく、大規模事業者は、国(環境省)を通じてJ−VERクレジット等を森林吸収クレジット(J−VER認証制度)に変換すること、すなわち、森林吸収クレジット(J−VER認証制度)を取得することを目的としているものであると認められます。

また、大規模事業者は、購入したJ−VERクレジット等を他のJ−VERクレジット等の需要者に転売することも可能であることから、大規模事業者が行う森林吸収クレジット(J−VER認証制度)の取得に係る取引については、次の処理を行うこととなります。

イ J−VERクレジット等を取得した時(金銭等の支出をした時)
【法人税関係】
上記(1)ロ(ロ)のとおり、大規模事業者が他の者から購入するJ−VERクレジット等は、資産性を有することから、これらを自己の保有する口座への移転の記録が完了した日の属する事業年度において、当該J−VERクレジット等の取得に要した費用を、「無形固定資産(投資その他の資産)」又は「棚卸資産」として計上することとなります。
【消費税関係】

上記【法人税関係】のとおり、J−VERクレジット等は、資産性を有するものであり、それらの取得に当たりその内容、性質は同一性を保持しつつ、他の者(前所有者)から大規模事業者(取得者)に移転し、その対価として大規模事業者(取得者)から他の者(前所有者)に金銭等が支払われるものであり、これらの取得は、事業者が、事業として他の者から資産を譲り受けるものですから、課税仕入れに該当します。そして、当該J−VERクレジット等を自己の保有する口座への移転の記録が完了した日が課税仕入れを行った日となります。

なお、大規模事業者(取得者)が仕入控除税額の計算に当たり個別対応方式を採用する場合の用途区分は、上記(2)イ【消費税関係】2なお書と同様となります。

ロ J−VERクレジット等を無効化口座に無償移転した時
【法人税関係】

上記のとおり、大規模事業者と国(環境省)との間における取引は、J−VERクレジット等を無効化することを目的とするものではなく、森林吸収クレジット(J−VER認証制度)の取得を目的とするものであるところ、J−VERクレジット等をJ−VER登録簿における大規模事業者の保有口座から無効化口座に無償移転した時においては国にJ−VERクレジット等の実質的価値を供与するものではなく、また、大規模事業者が国から森林吸収クレジット(J−VER認証制度)を譲り受けるものでもないことから、大規模事業者は、その無償移転をした日の属する事業年度において、その無償移転した無形固定資産等(J−VERクレジット等)の帳簿価額をクレジット仮勘定等に振替計上することとなります。

(注) J−VER文書回答において、J−VERクレジット等の無効化口座への無償移転は、原則、法人税法第37条第3項第1号に規定する「国等に対する寄附金」に該当するとされているところですが、埼玉県の森林吸収クレジット(J−VER認証制度)を取得する場合の取扱いが本照会のとおりとなることについては、環境省へ連絡しています。

【消費税関係】
上記【法人税関係】のとおり、J−VERクレジット等の無償移転は、大規模事業者におけるJ−VERクレジット等としての権利(財産権)の消滅と取り扱うのが相当であり、また、大規模事業者が、森林吸収クレジット(J−VER認証制度)を譲り受けるものでもないことから資産の譲渡等には該当しません(消費税の課税の対象外ですから処理は不要です。)。
ハ 森林吸収クレジット(J−VER認証制度)を取得したとき
【法人税関係】
上記(1)ロ(イ)のとおり、森林吸収クレジット(J−VER認証制度)は資産性を有するものであるところ、大規模事業者と埼玉県との間における取引は、J−VERクレジット等を同等の森林吸収クレジット(J−VER認証制度)として変換するものであり、大規模事業者が森林吸収クレジット(J−VER認証制度)の取得に伴い利益を受けるものではないため、大規模事業者が、自己の一般管理口座に記録された日(森林吸収クレジット(J−VER認証制度)の発行を受けた日)の属する事業年度において、上記ロによりクレジット仮勘定等として計上した金額を、「無形固定資産(投資その他の資産)」又は「棚卸資産」として計上することとなります。
【消費税関係】
森林吸収クレジット(J−VER認証制度)は、上記【法人税関係】のとおり、資産性を有する権利その他これに類する無形固定資産等であると考えられることから、当該森林吸収クレジット(J−VER認証制度)の取得(付与)は、大規模事業者における権利(財産権)の発生と取り扱うのが相当であり、資産の譲渡等には該当しません(消費税の課税の対象外ですから処理は不要です。)。
ニ 自社使用(充当目的による知事の管理口座(充当口座)へ森林吸収クレジット(J−VER認証制度)を移転した時)及び第三者へ売却した時
取得した森林吸収クレジット(J−VER認証制度)を充当又は売却した場合の法人税及び消費税の取扱いは、上記(2)ロ又はハと同様に取り扱うこととなります。