別紙

1 照会に係る取引等の事実関係

(1) 一般定期借地権契約の締結と一時金の支払について
 当医療法人は、介護老人福祉施設を開設するに当たり、その施設用地を確保する目的で一般定期借地権契約(以下「本契約」といいます。)を締結しました。
 本契約において、その施設用地は、介護老人福祉施設等の経営の用に供する建物を所有するために使用するものとされており、その借地期間は53年間とされています。
 また、賃料については月額○○○○円と定められていますが、借地期間の開始から87か月間(以下「前払期間」といいます。)の賃料である◇◇◇◇◇◇円(○○○○円の87か月分)については、本契約の締結に当たり一時金(以下「賃料一時金」といいます。)として前納することとされています。
 この賃料一時金については、仮に、前払期間の途中で本契約が解除されたことにより終了した場合には、賃料一時金のうち解除の日から前払期間の終了日までの未経過の期間(以下「未経過前払期間」といいます。)の賃料に相当する金額の返戻を受けることとなります。
 なお、この賃料一時金については、国税庁ホームページに掲載されている文書回答事例(平成17年1月7日回答「定期借地権の賃料の一部又は全部を前払いとして一括して授受した場合における税務上の取扱いについて」)により、いったん全額を前払金として資産に計上した上で、前払期間の経過に応じて前払金を取り崩し、損金の額に算入する予定です。

(2) 地方公共団体からの補助金について
 本契約の締結に当たっては、平成24年5月に、賃料一時金の支払に全額充当することを目的として、賃料一時金の金額に近い地方公共団体からの定期借地権利用による整備促進特別対策事業補助金(以下「一時金補助金」といいます。)が、◆◆◆◆◆◆円交付されました。
 この一時金補助金は、仮に、前払期間の途中で本契約が解除されたことにより終了した場合には、一時金補助金のうち未経過前払期間の賃料に充てるための部分に相当する金額を返還しなければなりません。なお、この契約解除の際の一時金補助金の返還額については、「厚生労働省所管一般会計補助金等に係る財産処分について」(平成20年4月17日老発第0417001号)の残存年数納付金額の計算方法に準じて行われることが明らかにされています。これらの点については、地方公共団体から補助対象事業者(当医療法人)に対して通知がなされています。

2 照会の趣旨(照会者の求める見解の内容)

一時金補助金については、平成24年5月末に受領したものではありますが、その交付の目的は賃料一時金の充当ですから、受領時においていったん全額を前受金として負債に計上した上で、前払の期間の経過に応じて前受金を取り崩し、益金の額に算入することとして差し支えありませんか。
 なお、各事業年度における一時金補助金に係る益金算入額の計算は、原則として、一時金補助金の金額(◆◆◆◆◆◆円)に、前払期間の日数に占めるその事業年度における前払期間の日数の割合を乗じて計算し、前払期間が終了する日を含む事業年度においては一時金補助金に係る前受金残高とすることを予定しています。

3 照会者の求める見解となることの理由等

(1) 照会者の求める見解となることの理由
 一時金補助金については、上記1(2)のとおり、仮に、前払期間の途中で本契約が解除されたことにより終了した場合には、一時金補助金のうち未経過前払期間の賃料に充てるための部分に相当する金額を返還しなければなりません。
 このことからすれば、一時金補助金のうち、前払期間が経過した期間に対応する部分の金額は地方公共団体への返還を要しないことが確定した益金の額ということができ、未経過前払期間に対応する部分の金額は地方公共団体への返還の可能性のある前受金ということとなります。
 したがって、上記2のとおり、一時金補助金については、受領時においていったん全額を前受金として負債に計上した上で、前払期間の経過に応じて前受金を取り崩し、益金の額に算入することが相当と考えられます。

(2) その他(既存の取扱いとの整合性)

イ 他の者から受ける経費補償金等
 法人が他の者から受ける経費補償金等については、法人税基本通達2−1−40(将来の逸失利益等の補てんに充てるための補償金等の帰属の時期)において、将来の経費等に充てることを目的とするものであっても、その受領時に益金の額に算入することが明らかにされています。
 このため、将来の賃料に充てることを目的とする一時金補助金についても、その受領時において益金の額に算入するのではないかとも考えられます。
 しかしながら、上記通達が前提としている経費補償金等は、将来の経費発生見込額について、一括して補償をするものであり、将来の経費等の発生の状況を踏まえて精算されるようなものではないと考えられます。
 これに対して、一時金補助金は、前払期間の途中で本契約が解除されたことにより終了した場合には、未経過前払期間の賃料に充てるための部分に相当する金額を返還しなければならないものであり(上記1(2)参照)、このように返還の可能性のある本件の一時金補助金に上記通達の取扱いを適用することは相当ではありません。

ロ 固定資産の取得のための国庫補助金等
 法人税法第42条(国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)に係る取扱いである法人税基本通達10−2−1(返還が確定しているかどうかの判定)においては、国庫補助金等が返還を要しないことが確定しているかどうかの判定において、その国庫補助金等が「交付の条件に違反した場合には返還しなければならないこと」とされている場合であっても、このことをもって返還を要する補助金とは言わないことが明らかにされています。
 したがって、「交付の条件に違反した場合には返還しなければならないこと」とされている国庫補助金等であっても、その全額を益金の額に算入した上で、同条の規定による圧縮損と相殺することとなります。
 このことからすれば、一時金補助金についても、前払期間の途中で本契約が解除されたことにより終了した場合に、一時金補助金のうち未経過前払期間の賃料に充てるための補助金に相当する金額を返還しなければならないことをもって返還を要する補助金とは言えず、その受領時において益金の額に算入するのではないかとも考えられます。
 しかしながら、上記通達による取扱いは、圧縮記帳の対象となる固定資産の取得等に充てるための国庫補助金等に該当するかどうかを判断する取扱い、換言すれば、既に取得した固定資産の取得代金等に充てるための国庫補助金等に係る取扱いであり、将来の賃料に充てるための補助金である本件の一時金補助金に上記通達の取扱いを適用することは相当ではありません。

(参考)

定期借地権利用による整備促進特別対策事業

1 概要
 定期借地権利用による整備促進特別対策事業とは、介護職員処遇改善等対策事業(注)の一つで、施設等用地の確保を容易にし、特別養護老人ホーム等の整備促進を図るため、用地確保のための定期借地権設定に際して土地所有者に支払われた一時金(賃料の前払いとして授受されたものに限る。)について、都道府県が補助する事業及び都道府県から交付された補助金を財源の全部又は一部として市町村が民間事業者に補助する事業をいう。

(注) 介護職員処遇改善等対策事業は、平成21年度介護職員処遇改善等臨時特例交付金交付要綱(平成21年7月1日厚生労働省発老0701第20号)及び介護職員処遇改善等臨時特例基金管理運営要領(平成21年8月3日付老発0803第1号)に基づき特別養護老人ホーム等の開設準備に要する経費の一部及び用地確保のための定期借地権設定に際して要する経費の一部を補助するものである。

2 内容

(1) 対象施設

イ 都道府県補助対象事業
 特別養護老人ホーム、老人保健施設、ケアハウス(特定施設入居者生活介護の指定を受けるもの)、養護老人ホーム

ロ 市町村補助対象事業
 小規模特別養護老人ホーム、小規模老人保健施設、小規模ケアハウス(特定施設入居者生活介護の指定を受けるもの)、認知症高齢者グループホーム、小規模多機能型居宅介護事業所

(2) 交付基準(上限)
 施設等を整備する用地に係る国税局長が定める路線価の2分の1

(3) 対象経費
 定期借地権設定に際して授受される一時金であって、借地代の前払いの性格を有するもの(当該一時金の授受により、定期借地権設定期間中の全期間又は一部の期間の地代の引下げが行われていると認められるもの)

(4) 補助金の返還
 補助対象事業者(借地権者)は、定期借地権契約が借地権の存続期間の満了前、かつ、賃料の前払いとしての一時金充当期間の終了前に解約された場合には、一時金のうち未充当期間相当額を都道府県に納付(返還)しなければならない。