別紙

(事前照会に係る取引等の事実関係)

  • 1 A社は、子会社を含めたA社グループ全体の事業再生を効率的に行うため、次の(1)から(3)までの組織再編成計画を実施することとした。
    • (1) 自社(A社)のみが株式移転完全子法人となる株式移転により株式移転完全親法人として設立したX社の子会社となり、当該株式移転後にA社が保有していた100%子会社であるB社、C社及びD社の株式のすべてをX社に譲渡する(X社を持株会社とするX社グループの組成)。
    • (2) X社は、上記(1)によりX社の100%子会社となったA社等のうち、同一事業(バス事業)を営む子会社3社の株式をX社が金銭出資により設立する中間持株会社に譲渡する(X社グループのバス事業に係る中間持株会社を設置)。
    • (3) A社を合併法人とするB社との適格合併を行い、バス車両の有効活用による収益拡大を図る。

      ※ 結果として、A社(株式移転完全子法人)は、直接的なX社(株式移転完全親法人)の100%子会社から中間持株会社を介した間接的なX社の100%子会社となる。

  • 2 上記1の(1)を実施した時点において、中間持株会社の設置は有為な人員の分散につながることから当初の計画を変更し、中間持株会社を設立することなく、X社からA社に他のバス2社の株式を譲渡して、A社を事業会社兼中間持株会社とした(その後A社とB社の適格合併を実施)。

(事前照会の趣旨)

一の法人のみがその株式移転完全子法人となる場合には、その株式移転の適格判定において、株式移転後に株式移転完全子法人が株式移転完全親法人の直接又は間接の資本関係による100%子会社である関係が継続することが要件の一つ(以下この要件を「支配関係要件」という。)とされている(法令4の219)。
 また、本件のように株式移転後に適格合併が見込まれている場合にあっては、当該合併後に株式移転完全親法人(X社)が当該合併の直前の当該株式移転完全子法人(A社)の発行済株式の全部に相当する数の株式を直接に保有することが見込まれている場合には、支配関係要件を満たすこととされている(法令4の219かっこ書)。
 本件の株式移転の場合には、その後に合併が見込まれており、かつ、X社とA社の関係が間接的な資本関係になったときは、上記の「発行済株式の全部に相当する数の株式を直接に保有することが見込まれている場合」には該当しないが、X社にとってA社が上記の「直接又は間接の資本関係による100%子会社である関係」は継続していることから、支配関係要件を満たしていると解して差し支えないか。

(注) 支配関係要件は、株式移転の時点における見込みにより判定するものである。したがって、本件を上記また書きに当てはめた場合には、株式移転後の計画変更により、結果として、株式移転後及びその後の適格合併後においても株式移転完全親法人(X社)が株式移転完全子法人(A社)の発行済株式の全部を(直接)保有する関係が継続しているものの、株式移転の時点では適格合併後は中間持株会社を通じた間接的な保有関係が見込まれていたことから、支配関係要件を満たしたことにはならないこととなるのではないかとの疑問が生ずるため、本件照会を行ったところである。

(事実関係に対して事前照会者の求める見解となることの理由)

  • 1 一の法人のみがその株式移転完全子法人となる株式移転の場合における適格要件のうち、株式移転完全親法人と株式移転完全子法人との間の関係についての支配関係要件は、当該株式移転後に当該株式移転に係る株式移転完全親法人が当該株式移転完全子法人の発行済株式の全部を直接又は間接に保有する関係が継続することが見込まれていることとされている(法令4の219)。
  • 2 株式移転後に当該株式移転完全子法人を合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合において、当該株式移転後に当該株式移転完全親法人が当該株式移転完全子法人の発行済株式の全部を(直接)保有する関係が継続し、当該適格合併後に当該株式移転完全親法人が当該株式移転完全子法人の当該適格合併の直前の発行済株式の全部に相当する数の株式を継続して(直接)保有する関係が見込まれているときには、上記1にかかわらず当該株式移転は支配関係要件を満たすこととされている(法令4の219かっこ書)。
  • 3 本件の場合、当該株式移転後に当該株式移転完全子法人(A社)を合併法人とする適格合併を行うことが見込まれており、かつ、X社は金銭出資により中間持株会社を設立するとともに当該中間持株会社にA社株式を譲渡することから、結果として当該適格合併後に当該株式移転完全親法人(X社)が当該株式移転完全子法人(A社)の当該適格合併の直前の発行済株式の全部に相当する数の株式を継続して(直接)保有する関係が見込まれないこととなる。
     したがって、この関係を上記2に当てはめれば、文理上、本件の株式移転は支配関係要件を満たさないものであるとも考えられる。
  • 4 上記2の株式移転後に適格合併を行うことが見込まれている場合の支配関係要件の判定方法は、株式移転後において合併が行われ、株式移転完全親法人が株式移転完全子法人の発行済株式の全部を直接又は間接に保有する関係を有しないこととなった場合であっても、一定の株式保有関係を継続しているときには、支配関係要件を満たすものとする、いわば要件の緩和措置と考えられる。
     この点、本件の場合には、
    • 1 当該株式移転後のみならずその後の適格合併後においても当該株式移転に係る株式移転完全親法人が株式移転完全子法人の発行済株式の全部を間接に保有する関係が継続することが見込まれていること
    • 2 要件緩和措置であるにもかかわらず、これを形式的に当てはめることにより、本則を適用した場合に比べて厳しい要件となることは合理的とは認められないこと

    から、株式移転後に適格合併が見込まれていることをもって上記2により支配関係要件を一律に判定することなく、原則的な定めである上記1により支配関係要件を満たしていると解することが相当である。