町が町内の私立保育所に勤務する保育士等に対して支給する助成金の課税上の取扱いについて

1 事前照会の趣旨

A町は、子ども・子育て支援法第7条第4項に規定する保育所のうち町内に所在する私立保育所(以下「対象保育所」といいます。)に勤務する保育士、保育教諭及びその他の職員(以下「保育士等」といいます。)に対し、保育人材の確保、定着及び離職防止を図ることを目的として、保育士等が毎年3月1日に対象保育所に在籍し、一定の要件のもと継続して勤務しているときに、A町保育士等助成金(以下「本件助成金」といいます。)を支給する制度(以下「本件助成制度」といいます。)を設けています。
 この場合、本件助成金について、その所得区分及びA町における源泉徴収の要否について、それぞれ下記3のとおり解して差し支えないか、照会いたします。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

(1) 本件助成制度の目的

本件助成制度は、対象保育所に勤務する保育士等に対して、本件助成金を支給することにより、保育人材の確保、定着及び離職防止を図ることを目的としています。

(2) 本件助成制度の概要

イ 本件助成制度の実施期間
 本件助成制度の実施期間は、平成29年4月1日から令和2年3月31日までの3年間とし、支給対象期間は各年4月1日から翌年3月31日までの期間とします。

ロ 本件助成金の支給対象者
 本件助成金の支給対象となる保育士等は、次に掲げる要件の全てを満たす者です。

(イ) 本件助成制度の実施期間内の各年3月1日において、対象保育所に保育士等として在籍していること。

(ロ) 対象保育所において、1年以上の期間の労働契約を結んでおり、1日6時間以上かつ月20日以上常態的に継続して勤務していること。

(ハ) 対象保育所を適用事業所とする社会保険の被保険者であること。

ハ 本件助成金の額
 本件助成金の額は、年額3万円とします。
 ただし、年度途中で採用された者については採用された日が属する月から月割計算をするものとします。

(3) 本件助成金の支給申請手続等

A町は、本件助成金の支給に当たり、本件助成金の支給対象となる保育士等からA町保育士等助成金届出書に、上記(2)ロ(ロ)の要件が確認できる書類、社会保険の被保険者であることを証する書類及びその他A町が必要と認める書類を添付の上、提出させるものとします。
 そして、A町は、上記のA町保育士等助成金届出書等を受理したときは、速やかにその内容を確認のうえ、本件助成金を支給するものとします。

3 2の事実関係に対して事前照会者の求める見解となることの理由

(1) 本件助成金の所得区分

イ 給与所得について
 所得税法第28条《給与所得》第1項は、給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいうと規定しています。
 A町と保育士等との間に雇用関係及びこれに類する関係はないことから、本件助成金は給与所得には該当しないものと考えます。

ロ 一時所得について
 所得税法第34条《一時所得》第1項は、一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいうと規定しています。
 本件助成金は、本件助成制度に基づき、A町から保育士等に対し3年にわたって支給することが予定されていることからすれば、上記の「一時の所得」に該当しないものと考えられます。したがって、本件助成金は一時所得にも該当しないものと考えます。

ハ 雑所得について
 所得税法第35条《雑所得》第1項は、雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいうと規定しています。
 本件助成金は、上記の利子所得ないし一時所得のいずれにも該当しないことから、雑所得に該当するものと考えます。

(2) 源泉徴収の要否

源泉徴収が必要となる支払については、所得税法に限定的に列挙されているところ、本件助成金は、所得税法に規定されている源泉徴収を要する支払のいずれにも該当しないことから、A町は本件助成金の支払の際に、源泉徴収を要しないと考えます。