1 事前照会の趣旨

国立大学法人岡山大学(以下「大学」といいます。)では、大学に所属する職員が行った発明等の取扱いについて、発明者の権利を保障するとともに知的財産権の適正な管理を実現し、よって発明等の創作の促進、研究意欲の向上及び成果の普及を図ることを目的として、知的財産権にかかる職務発明等をした職員を対象に、丸1大学が知的財産権を承継し、出願したとき、丸2大学が承継した知的財産権について法令で定められた権利の設定登録を受けたとき、丸3大学が承継した知的財産権を運用又は処分により収入を得たときに、それぞれ出願補償金、登録補償金及び実施補償金を支給しているところです。
 上記の知的財産権(特許権、特許を受ける権利、実用新案権、実用新案登録を受ける権利、意匠権、意匠登録を受ける権利、育成者権、品種登録を受ける権利)に係る各補償金(以下「本件各補償金」という。)について、税務上、下記3のとおり取り扱って差し支えないか、お伺いします。


2 事前照会に係る取引等の事実関係について

1 定義
(1) 「知的財産権」とは、次に掲げるものをいいます。
  1. イ 特許法(昭和34年法律第121号)に規定する特許権、実用新案法(昭和34年法律第123号)に規定する実用新案権、意匠権(昭和34年法律125号)に規定する意匠権、種苗法(平成10年法律第83号)に規定する育成者権
  2. ロ 特許法に規定する特許を受ける権利、実用新案法に規定する実用新案登録を受ける権利、意匠法に規定する意匠登録を受ける権利、種苗法第3条に規定する品種登録を受ける権利
(2) 「職務発明等」とは、大学が費用その他の支援をして行う研究等、又は大学が管理する施設設備を利用して行う研究等に基づき、職員が行った発明等をいいます。
 これは、特許法第35条に規定する「職務発明」又は種苗法第8条に規定する「職務育成品種」に該当するものです。
2 職員が発明等を行ったときは大学に届出をし、大学は、職務発明等にかかる知的財産権の全部又は一部を承継すると決定した場合、これを保有するものとします。
3 職員からの届出による発明等について、大学が職務発明等に該当しないと決定した場合において、職員から当該発明等にかかる知的財産権を大学に譲渡する旨の申し出があったときは、学長は発明審査委員会の意見を徴したうえで、当該知的財産権の承継の可否を決定します。
4 大学は、当該知的財産権にかかる発明等をした職員に対し、次の補償金を支払います。
  1. (1) 大学が職務発明等にかかる特許を受ける権利を発明者から承継して特許出願をしたときに、大学が当該発明者に対して、「出願補償金」として、一出願に対して1,000円ないし3,000円を支払います。
  2. (2) 職務発明等にかかる特許権の登録がされた場合、「登録補償金」として、大学が当該発明者に対して、一権利に対して3,000円ないし9,000円を支払います。
  3. (3) 大学が職務発明にかかる特許を受ける権利若しくは特許権を承継し、特許を受ける権利若しくは特許権の運用又は処分により収入を得た場合には、「実施補償金」として、当該発明者に対し、その収益に応じた金額を支払います。
    ※ これは、他の知的財産権について準用します。
5 発明者は、大学が承継すると決定した職務発明等にかかる知的財産権について、別に定める様式による譲渡書を学長に提出します。
6 なお、上記4の補償金を受ける権利は、当該権利を有する職員が転職又は退職した後も存続し、権利を有する職員が死亡したときは、当該権利は、その相続人が承継します。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

1 所得区分について
  1. (1) 出願補償金
     出願補償金については、「特許を受ける権利」等の知的財産権を大学に承継する際に一時に支払を受けるものですから、譲渡所得に該当する。
     なお、「特許を受ける権利」等の知的財産権に係る譲渡所得は、所得税法施行令第82条に規定する「自己の研究の成果である特許権」の譲渡に準じ、長期譲渡所得に該当する。
  2. (2) 登録補償金及び実施補償金
     登録補償金及び実施補償金については、権利の移転によって一時に実現したものでないため税務上は譲渡所得に該当せず、職務発明の場合は特許法第35条3項、実用新案法第11条3項、意匠法第15条3項及び種苗法第8条第2項に定められた相当の対価請求権に基づいて支払うものであること、「特許を受ける権利」等の知的財産権を大学に移転した後に大学が当該権利を独占的に利用して得た利益の実績に基づいて算定され、使用料と同様の性格を有していること、また、発明職員が退職した場合や死亡した場合でも当該発明者や相続人へ継続して支払われることから、給与所得にも該当せず、雑所得に該当する。
2 源泉徴収について
出願補償金については、譲渡所得に該当するものですから、源泉徴収の必要はない。
また、登録補償金及び実施補償金については、経済的には、工業所有権の使用料的なものとも考えられますが、発明者が特許権等の工業所有権を有しない状態のもとで支払われる金銭であり、使用料とはいえませんので所得税法第204条第1項第1号に該当せず、源泉徴収を要しない。