一般社団(財団)法人が分収造林契約による収益の分収を行った場合の非営利型法人への該当性について(照会)

1  事前照会の趣旨及び取引等の事実関係

 財団法人広島県農林振興センター(以下「センター」といいます。)は、農林業の振興や担い手の育成確保及び森林資源の整備等を総合的に実施するために広島県の出捐により設立された公益法人等(特例民法法人)ですが、これらの事業の一環として森林所有者による適正な整備が困難な森林について、分収方式(分収造林契約)による造林を推進しています。
 この分収造林契約とは、一般的に、森林所有者、造林者(センター)及び造林費負担者の三者(例えば、造林者と造林費負担者を一の者が兼ねる場合には二者)が当事者となって締結する契約で、契約の実施により植栽された樹木は各当事者の共有とすること、樹木の伐採及び販売による収益を各当事者が一定の割合により分け合うことなどを約定するものです(分収林特別措置法21)。
 ところで、法人税法上、一般社団(財団)法人のうち一定の要件に該当するものが非営利型法人と定義され(法法2九の二)、公益法人等として取り扱われることとされています。これにより非営利型法人については、収益事業を行う場合に限り法人税の納税義務が生ずる(法法41)とともに、収益事業から生じた所得に対して法人税が課されることになります(法法7)。
 この非営利型法人に該当するための一定の要件の一つとして「特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを決定し、又は与えたことがないこと」という規定が設けられています(法令31三、2六)。
 センターは、今後、一般社団(財団)法人に移行していくこととなりますが、その移行後において非営利型法人として公益法人等に該当するかどうかを判定する必要が生じてきます。
 その判定の際に、この分収林事業によりセンターが森林所有者などの契約当事者間で造林による収益を分収することは、「特定の個人又は団体に特別の利益を与えること」に該当しないものと解して差し支えないか照会申し上げます。
 なお、分収割合は、費用負担区分、近傍類似の土地の地代その他経済事情を参酌した適正なものによっていることを照会の前提とすることを申し添えます。
 

 (注) 本照会における関係法令について次の省略語を使用しています。

  • ・ 法法・・・・・・・・法人税法
  • ・ 法令・・・・・・・・法人税法施行令
  • ・ 平成20年改正法・・・所得税法等の一部を改正する法律(平成20年法律第23号)
  • ・ 整備法・・・・・・・一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成18年法律第50号)

2 事前照会者の求める見解となることの理由

(1) 非営利型法人について

公益法人制度改革による新たな公益法人制度が創設されたことに伴い、従来の社団法人・財団法人は、公益社団法人・公益財団法人又は一般社団法人・一般財団法人への移行の登記をしていないものについては特例民法法人として、法人税法上、公益法人等とみなされています(平成20年改正法附則10条)。
 この移行の登記については、5年間の移行期間が設けられており、一般社団法人・一般財団法人への移行の登記を行った場合には、法人税法上、特例民法法人から一般社団法人・一般財団法人に移行したこととなります(整備法44条、45条)。
 なお、法人税法上、一般社団法人・一般財団法人については、公益法人等に該当して収益事業課税の対象となる非営利型法人と、普通法人として全所得課税の対象となる非営利型法人以外の一般社団法人・一般財団法人に区分されています(法法2六、九、別表第二)。
 この非営利型法人には、次の1及び2の類型(法人)が設けられており、このうちセンターが該当する可能性のある1の類型に係る要件を合わせて説明すれば、次のとおりです(法法2九の二)。

  •  1 その行う事業により利益を得ること又はその得た利益を分配することを目的としない法人であってその事業を運営するための組織が適正であるもの(法法2九の二イ)
    [要件](法令31)
    • イ 剰余金の分配を行わないことを定款に定めていること。
    • ロ 解散したときは、残余財産を国・地方公共団体や一定の公益的な団体に贈与することを定款に定めていること。
    • ハ 上記イ及びロの定款の定めに違反する行為(上記イ、ロ及び下記ニの要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを含む。)を行うことを決定し、又は行ったことがないこと。
    • ニ 各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること。
  •  2 その会員から受け入れる会費により当該会員に共通する利益を図るための事業を行う法人であってその事業を運営するための組織が適正であるもの(法法2九の二ロ、法令32)

なお、本件の照会は、分収林事業により一般社団法人・一般財団法人が、分収造林契約に基づき、森林所有者などの契約当事者間で造林による収益を分収する行為が上記1のハの「特定の個人又は団体に特別の利益を与えること」に該当しないと解して差し支えないかというものであるため、以下においては上記1のハに絞って検討します。

(2) 特定の個人又は団体に特別の利益を与えること

上記(1)1のハの「特定の個人又は団体に特別の利益を与えること」については、国税庁ホームページに掲載されています平成20年7月2日付課法2-5ほか1課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)の趣旨説明において、次のとおりその意義が明らかにされています。

「特定の個人又は団体に特別の利益を与えること」とは、定款において剰余金の分配を行わないことを定めている法人がなす行為で、実質的な剰余金の分配や残余財産の分配又は引渡しといった利益移転に該当するものをいう。

(3) 本件への当てはめ

分収造林契約とは、森林所有者、造林者(センター)及び造林費負担者の三者(例えば、造林者と造林費負担者を一の者が兼ねる場合には二者)が当事者となって締結する契約で、契約の実施により植栽された樹木は各当事者の共有とすること、共同の成果としての樹木の伐採及び販売による収益を各当事者が一定の割合により分け合うことなどを約定するものであること(分収林特別措置法21)からすれば、センターの剰余金を分配したわけではなく、三者(又は二者)が共同して樹木の伐採、販売などの山林事業を営み、その事業から生じた共同の利益(販売収入)を契約に定められた割合により配分したものと認められ、各当事者が事業の実施主体であるといえます。
 したがって、センターが分収林事業により森林所有者などの契約当事者間で造林による収益を分収することは、非営利型法人に該当するための要件のうち、「特定の個人又は団体に特別の利益を与えること」(法令31三)に該当しないと解することが相当と考えます。

(4) 参考

国税庁ホームページに掲載されている平成17年8月22日付の文書回答「社団法人宮崎県林業公社が分収造林契約に基づき育成してきた立木を売払いした場合の収益事業の判定について」によれば、分収林特別措置法に基づく分収林事業は、個々の事業内容に応じて収益事業に該当するかどうか判断するものと理解しておりますので、本照会をもって、センターが行う分収林事業が、法人税法上の収益事業(法法2十三)に該当するか否かの判断に影響するものと考えてはいません。