開催日及び場所 平成28年6月16日(木) 福岡合同庁舎5階 共用第2会議室
委員 委員 屋宮 憲夫(福岡大学 法学部教授)
委員 堺  祥子(井口・堺法律事務所 弁護士)
委員 横山 研治(立命館アジア太平洋大学 副学長)
審議対象期間 平成28年1月1日(金)から 平成28年3月31日(木)
契約締結分の概要説明 審議対象期間に係る契約締結分及び契約実績状況調書の概要を説明
抽出事案 4件 (備考)
  競争入札(公共工事) 1件
契約件名 国有建物解体撤去等工事(長崎市上小島2丁目
 外1件)
契約相手方 大村M・T建設株式会社(法人番号 4310001009393)
契約金額 2,484,000円(税込)
契約締結日 平成28年2月17日
担当部局 福岡財務支局
随意契約(公共工事) −件 -
競争入札(物品役務等) 2件
契約件名 携帯型ラマン分光計の調達
契約相手方 福岡理研工業株式会社(法人番号 8290801009393)
契約金額 6,264,000円(税込)
契約締結日 平成28年1月29日
担当部局 門司税関
契約件名 窓口用番号発券機の購入
契約相手方 株式会社福助屋(法人番号 3290001016237)
契約金額 11,161,800円(税込)
契約締結日 平成28年1月15日
担当部局 福岡国税局
随意契約(物品役務等) 1件
契約件名 パソコン等の購入契約
契約相手方 エヌ・ティ・ティ・データ・カスタマー
 サービス株式会社(法人番号 6010601032609)
契約金額 2,259,792円(税込)
契約締結日 平成28年1月27日
担当部局 長崎税関
うち応札(応募)業者数
 1者関連
3件
契約件名 携帯型ラマン分光計の調達
契約相手方 福岡理研工業株式会社(法人番号 8290801009393)
契約金額 6,264,000円(税込)
契約締結日 平成28年1月29日
担当部局 門司税関
契約件名 パソコン等の購入契約
契約相手方 エヌ・ティ・ティ・データ・カスタマー
 サービス株式会社(法人番号 6010601032609)
契約金額 2,259,792円(税込)
契約締結日 平成28年1月27日
担当部局 長崎税関
契約件名 窓口用番号発券機の購入
契約相手方 株式会社福助屋(法人番号 3290001016237)
契約金額 11,161,800円(税込)
契約締結日 平成28年1月15日
担当部局 福岡国税局
委員からの意見・質問、それに対する回答等 次ページ以降のとおり
委員会による意見の具申又は勧告の内容 なし
意見・質問 回答
【事案 1】
契約件名 国有建物解体撤去等工事(長崎市上小島2丁目外1件)
契約相手方 大村M・T建設株式会社(法人番号 4310001009393)
契約金額 2,484,000円
契約締結日 平成28年2月17日
担当部局 福岡財務支局
 
 国有建物解体撤去等工事と同日付で、長崎財務事務所屋外書庫等解体撤去工事が契約されているが、当該工事も同じく10者の入札参加者数であり、かつ落札者も同一である。
 落札者が同一となった経緯、2件の入札状況、予定価格の算定方法等について確認したい。
 
 予定価格を算定する際に意見価格を業者より徴取されているが、入札に参加した業者の中に当該業者は入っているのか。  意見価格を徴した業者は、本体工事である解体工事には参加できない条件となっている。
 本件2件の入札状況を見ると落札業者の応札価格以外は、予定価格から僅差又は上回っている者が多数であるが、予定価格の基礎となる意見価格が低かったことが要因か、それとも落札業者が積極的に応札したことが要因か。  本件工事の工期が年度末であったことから一般的に業者が手持工事がある状況、更に今回手作業での解体工事であるため、高めの金額での応札になったものと思われる。
 年度末の時期は、人手不足などの要因で応札価格を高く設定しなければならないとの説明であるが、季節的な要因を予定価格に反映させることがあるのか。  特にない。本件は、落札業者が積極的に応札したことにより低落札となっているが、予定価格は適正なものと考える。
 解体撤去工事において、産業廃棄物の処理が重要と思われるが、今回、低価格での落札となったことから、不適切な処理がなされるおそれがあるのか。  産業廃棄物の処理に関し、関連する法律を遵守するよう仕様書に明記しており、今回工事においても監督職員がマニュフェスト(伝票)を確認し最終処分まで適切な処理を行っている。
 一般的に年度末は工事量が増え、応札価格も高めに設定されるとなれば、工事の時期を年度末以外の時期に実施するなどの工夫は考えられないか。  本件工事は、他の工事や業務の兼ね合いから年度末の工期となったものの、特に無理な工期は設定していないが、今後は早期に発注できるように検討することとしたい。
 入札状況を見ると落札金額と他の応札者の金額とにかなりの差が生じているが、過去の解体工事も含めこういった状況はよくあるのか。また、意見価格を徴取している業者は、長崎県の同業の会社であるが、情報が流れないような保護措置は講じているのか。  入札において、落札金額と他の応札者の金額とに差が生じているが、今回年度末の工事であったことから、手持工事の状況や本件解体工事が手作業が多い工事であったことなどから作業員も多く必要であり、これらの要因により差が生じたものと考える。  また、意見価格の徴取は、解体工事費算定業務として有償で契約しているが、契約額が低額であるため契約書の締結は省略しており、情報の流出に係る保護措置は特段講じていない。
意見・質問 回答
【事案 2】
契約件名 携帯型ラマン分光計の調達
契約相手方 福岡理研工業株式会社(法人番号 8290801009393)
契約金額 6,264,000円(税込)
契約締結日 平成28年1月29日
担当部局 門司税関
 
 同様の契約を他税関でも行っているが、契約業者は別業者であるにも関わらず、契約単価はいずれも同額となっている。
 ラマン分光計は複数メーカーの製品があると考えるが、特定メーカーの製品に限定される仕様となっているのか、また、同一の金額となる理由があるのか。
 金額が同一となる理由がある場合には、予定価格が当該金額と同額にならない理由は何かについて確認したい。
 
 緊急性を要するために納品した機器であるということであるが、このような特殊な機器は、今回、納品した機器のみか。  ラマン分光計は、複数のメーカーが製造しているが、今回、当関が必要としたのは、爆発物の検知、薬物等の検知の両方の機能を備えた機器であり、適合する機器は、今回、契約した機器のみと理解している。
 予定価格を作成する際、機器を取り扱う複数の者に金額を聴取するということであるが、他関も同様か。
 また、他関についても、金額を聴取した相手は同一だったのか。
 特殊な検査機器であり、カタログやインターネット等で価格調査を行えないことから、他関についても、参考価格を聴取して予定価格を算出する方法を取ると考える。
 また、特殊な機器であることから、取り扱える業者が限定されるため、聴き取り先は同一となると考える。
 メーカー側は、各税関が金額等を聞いてくれば、調達を考えていると予想できると思うが、どう考えるか。  予想は立つと考える。
 今回、予定価格を作成する際に参考価格を聴取した2者が入札に参加しなかった理由は何か。  1者は、入札参加資格等級により除外され、もう1者は、入札参加資格を有していなかったためである。
 他税関の入札ではメーカーが応札している場合もあるが、全て同額での入札となっている。
 このことから、金額等の指示が出ていたのではないかと予想できるが、どう考えるか。
 応札金額については、入札参加者である代理店等に決定権があると理解しているところであるが、各関の契約単価が同額であるという結果から、メーカー側から指示が出ていた可能性も考えられる。
意見・質問 回答
【事案 3】
契約件名 パソコン等の購入契約
契約相手方 エヌ・ティ・ティ・データ・
 カスタマーサービス株式会社(法人番号 6010601032609)
契約金額 2,259,792円(税込)
契約締結日 平成28年1月27日
担当部局 長崎税関
 
 パソコンの調達で応札者がないのは珍しいと考えるが、通常の業者では取り扱えないような特別な仕様となっているのか。入札参加がなかった経緯について確認したい。また、随意契約による契約にしては、落札率が低いと考えるが、その理由は何か。このように低い金額で契約できる業者が、そもそも入札に参加してこなかった理由は何か。競争入札を避けたのではないかとも受け取れるため、入札実施までの経緯を確認したい。  
 入札の説明を受けに来て、入札しなかった業者は1者か。  1者である。
 その業者が、入札に参加してこなかった理由は分かるのか。  入札説明に来た者に聞き取りを行った限りでは、他者が落とすだろうと思っていたということである。
 随意契約した業者は、これは随意契約であるという事実はわかっているのか。  わかっている。
 この随意契約の中で、できるだけ安い金額を出してもらうといった値段の交渉をする余地はなかったのか。  値段交渉の余地はなかった。
 入札の説明を聞きに来た業者は、1回目が応札者がなかったことから、2回目の入札が行われることはわかっていたのか。  公告を見ていればわかったと思う。
 それでも、応札してこなかった理由は何か。  入札説明に来た者に聞いた限りでは、年度末で業者が輻輳しており、入札する余裕がなかった。また、他者も同じ状況ではないか、とのことであった。
 応札者がゼロになった場合の随意契約の仕方として、通常は見積書をいくつか出させると思うが、見積書が資料では1者となっている。これは他の業者に見積もりを出すということはしなかったのか。あるいは、しないような仕組みになっているのか。  長崎税関ではパソコン等の購入実績が少なくとも直近5年間でなかったので、長崎市内で調達可能な業者を把握できておらず、税関LANの運用委託をしている業者に見積もりを依頼するほかなかったところである。
意見・質問 回答
【事案 4】
契約件名 窓口用番号発券機の購入
契約相手方 株式会社福助屋(法人番号 3290001016237)
契約金額 11,161,800円(税込)
契約締結日 平成28年1月15日
担当部局 福岡国税局
 
 本件は、1者応札であり事務用機器としては高落札率である。平成23年度第4回の抽出案件で、その際は3者応札であった。
 本件のほか「両面印刷機の購入」についても平成22年度第3回の抽出案件であり、その際は9者に説明し、5者辞退し4者応札であったが、今回は1者応札でこちらも高落札率となっている。
 また、「文書裁断機の購入」については、今回は4者応札であるが、平成22年度は7者に説明し、5者が辞退し2者応札であった。
 経年的にみると辞退者が多く、落札業者が特定の1者に集中している。
 本件及び「両面印刷機の購入」が1者応札となった経緯、競争者数の推移、応札者数の減少理由、予定価格の算定方法、同一業者が多く落札している経緯などについて確認したい。
 
 オフィス関連物品の入札では、落札業者がかなり努力されていることが伺えるが、入札金額がかなり低価格という印象もない。参加を辞退している業者から辞退理由等を聴取しているのか。  仕様書を交付したが入札を辞退する業者には、任意で理由を聴取しているが、仕様を満たす物品を準備できない、又は調達数量を確保できない等の理由が多い。
 25、26、27年となぜ毎年調達しているのか。業者は毎年調達があると認識できるのか。調達時期も毎年同じか。  管内に31税務署あるが、必要な税務署に順次導入している。すべての税務署に導入するわけではないので、当局がどこまで拡大するのか想像するしかない。調達時期は、確定申告期に合わせて12月から1月にかけて契約している。
 予定価格は、メーカーの小売価格、インターネット等の市場価格、業者からの聴き取りなどを参考に積算しているが、聴き取りはどのような業者からしているのか。  仕様の中で当局が想定している商品のメーカーから聴取している。
 メーカーは特定されるのか。  当局が想定しているメーカーはあるが、仕様書の中ではメーカーは特定しておらず、同等品であればよいこととしている。入札業者は、仕様に適合する商品の中で、自社の得意メーカーの商品で応札できる。
 事務機器の調達が特定の業者に集中した結果、入札参加業者が減少し、競争がうまく働いていないのではないか。競争者の減少を想定し、入札単価を引上げているのではないかとも思われる。落札率が上昇しているようだが、入札金額が上昇しているのか、予定価格が下がっているのか。  過去の落札率を考慮し、予定価格を低く設定している。
 抽出案件以外においても調達業者が特定の1者にかなり偏っている。1案件のみ他の業者が落札しているが、これは仲間内で仕事の配分をしているのではないかとの疑義が残る。このような傾向が続いているのか。  特定の業者が多く落札しているのは事実であるが、これは落札業者の企業努力の結果であると認識している。当局としては電子入札システムを使用するなど公平性、透明性の確保に努めている。
【委員会の審議結果】  
 今回抽出した4つの事案については、いずれも適法、適正な調達手続きが取られていることを確認した。
 調達事案について全体的な意見を申し上げると、公共工事については、入札参加業者が増加傾向にあり、高落札率の案件もなく競争性が確保されていると評価できる。
 1者応札、随意契約については、競争性の確保が困難な調達に限られてきており、全体的に競争性の確保は改善されていると評価できる。
 ただし、少数ながら競争入札が成立しうる事案が見受けられるため、なお一層の競争性向上のため、1者応札の解消、競争者数の増加への取組みが重要である。
 競争性を確保するために、経年的、統計的分析を行い競争状況について把握し、また、他の地域の部局との情報交換を行い、調達価格の比較や競争制限的行為が全国的に行われていないかなどの問題点の発見、是正など検討することが望ましいと考える。
 
(第1事案について)
 予定価格算定のための意見価格聴取においては、他の者に情報が流出しないような措置を講ずることを検討されてはどうか。
 また、本件において、落札金額と他の者の応札金額とに大きな差があることから、今後、解体工事については、入札状況について注意する必要がある。
 
(第2事案について)
 各税関とも応札した者が違うにも関わらず、契約単価が同額であるという事実から、メーカー等から、何らかの指示が行われていると考えても、おかしくない事案である。
 今回、緊急性を要しての納品ということであるが、今後、このような事象が起こらないよう、特殊機器を調達する際には、門司税関に限らず、全国税関にて対策等、検討する必要があると考える。
 
(第3事案について)
 ゼロ者応札については、業者が、競争性をなくすため競争入札を避けて随意契約に移行させるという危険性がありうるので、十分に注意が必要である。
 このようなゼロ者応札になると、随意契約に移った場合の業者の限定はないので、複数の者から見積書を徴取し最も安い業者と契約することが適切と思われる。
 
(第4事案について)
 契約業者が特定の業者に集中し、入札参加者が減少していることは競争性の確保という点からは好ましくない。多くの販売業者が存在する案件で、入札参加者の減少や多くの辞退者が続いており、国税局との取引に力を入れている業者が他の業者を排除するような方策が取られていないか注視する必要がある。
 また、応札者が1者となり競争があまり働いていない状況下における調達価格への影響について、他官庁での同一物品の調達価格と比較するなど継続的に調査していくことが望ましい。