開催日及び場所 平成23年9月22日(木) 福岡合同庁舎5階共用第2会議
委員 委員 屋宮 憲夫(福岡大学 法学部教授)
委員 林 桂一郎(西日本綜合法律事務所 弁護士)
委員 横山 研治(立命館アジア太平洋大学 国際経営学部長)
審議対象期間 平成23年4月1日(金)〜平成23年6月30日(木)
契約締結分の概要説明 審議対象期間に係る契約締結分及び契約実績状況調書の概要を説明
抽出事案 4件 (備考)
  競争入札(公共工事) -件 -
  随意契約(公共工事) -件 -
競争入札(物品役務等) 4件
契約件名
:普通財産の管理処分等に係る委託業務
(単価契約)(福岡地域)
契約相手方
:株式会社 九銀不動産鑑定所
契約金額
:52,637,166円
契約締結日
:平成23年4月1日
担当部局
:福岡財務支局
契約件名
:福岡港湾合同庁舎清掃業務委託
契約相手方
:キョウワプロテック 株式会社
契約金額
:1,866,690円
契約締結日
:平成23年4月1日
担当部局
:門司税関
契約件名
:スミスハイマン社製X線貨物検査装置の保守業務請負契約
契約相手方
:Smiths Heimann Gmbh
契約金額
:1,470,000円
契約締結日
:平成23年4月1日
担当部局
:長崎税関
契約件名
:シュレッダー車によるごみの裁断リサイクル業務 福岡ブロック
契約相手方
:株式会社 角商店
契約金額
:単価契約 裁断処理後引取方式
1キログラム当たり 15.75円
 単価契約 単純引取方式
1キログラム当たり 2.10円
契約締結日
:平成23年4月1日
担当部局
:福岡国税局
随意契約(物品役務等) -件  
応札(応募)業者数1者
関連
2件 ※ 競争入札(物品役務等)の「普通財産の管理処分等に係る委託業務(単価契約)(福岡地域)」、「スミスハイマン社製X線貨物検査装置の保守業務請負契約」
委員からの意見・質問、それに対する回答等 別紙のとおり
委員会による意見の具申又は勧告の内容 なし
意見・質問 回答
【事案1】
契約件名
:普通財産の管理処分等に係る委託業務
(単価契約)(福岡地域)
契約相手方
:株式会社 九銀不動産鑑定所
契約金額
:52,637,166円
契約締結日
:平成23年4月1日
担当部局
:福岡財務支局
 
 当該事案は総合評価方式で実施されているが、一者応札であり、落札率も高率となっていることから抽出した。
 
 普通財産とはどういった財産なのか。  普通財産とは、行政財産以外の一切の国有財産をいい、原則として特定の行政目的に供されることのない財産である。収益財産とも言われており、それを処分して国の収益をあげることができる財産である。
 総合評価方式における入札価格の占める役割とはどういったものなのか。  落札者の決定方法としては、入札参加資格をすべて満たし、評価の方法において必須とされた項目の要件を満たし、予定価格の制限の範囲内である者のうち、提案書の審査により得られた各評価項目の得点の合計点を入札価格で除して得られた数値の最も高い値の者を落札者として決定することとなっている。
 したがって、入札価格が予定価格の制限の範囲内であることが落札者決定要件であり、応札者が参加資格等を有した者一者のみであれば、入札価格が予定価格の範囲内であれば落札者として決定され、二者以上であれば提案書の評価点数を入札価格で除した値で落札者を決定することとなる。
 総合評価方式を採用しているのは、経験のある業者等を選別するためのものなのか。  本業務を委託するにあたっては、業務内容が多種多様であることもあり、提案書の提出を求め、当該業務の目的・趣旨に沿って実行可能なものであるか、また、効果的なものであるかについて評価を行っているところである。
 総合評価方式は、価格以外の要素を加味し業者を決定しようとするものである。
 業務内容に売払業務があり、売払いのための土地の鑑定評価も委託業務ということであるが、鑑定業者はかなりいると考えられるが、一者応札となったのはどうしてなのか。

 一般的に鑑定士に依頼する評価は、大規模な整形の土地を評価するような場合であるが、本業務委託で想定しているのは、主に不整形で小規模な土地の評価で、比較的簡便な方法で評価できるものであり、必ずしも鑑定士に依頼しなければならないという業務ではない。
 また、本委託業務は、土地の評価ばかりでなく、売払業務であれば、相手方に対して申請書の提出依頼や各種交渉等、場合によっては境界確定にかかる業務もあり、幅広い業務を委託することとなり、業種が特定できるようなものではないため、参加業者はどうしても少なくなっているのではないかと考えている。
 委託業者の行った業務についての監査、評価はどのように行っているのか。  委託している一連の業務を行うと、1件ごとに成果品の提出があり、内容等を精査し、最終的に当方で決裁を行うことで委託業務が適正に行われていることを確認している。

 業務委託にかかる手数料は、成功報酬という形をとられているのか。  手数料は成功報酬で行っている。
 ただし、本業務委託においては不整形で小規模な土地の売払いが多く、そうした場合売払価格も安くなり成功報酬額も低くなるため、最低報酬額を定めている。
 契約書には定額分と定率分として明示しており、最低報酬額を定めたものは定額分としており、それ以外のものは定率分としている。

意見・質問 回答
【事案2】
契約件名
:福岡港湾合同庁舎清掃業務委託
契約相手方
:キョウワプロテック 株式会社
契約金額
:1,866,690円
契約締結日
:平成23年4月1日
担当部局
:門司税関
 
 競争入札は成立しているが、落札率が他の同種の調達と比較してかなり低率であることに着目して抽出した。
 
 一般的に、人件費の割合が低い案件では、資機材を持っているところが実際に安くできるという側面があるが、人件費の占める割合が高い案件は、人件費自体を削減して、安い価格を出す傾向がある。
 本件は、この業界における厳しい競争が行われた結果であり、採算割れで行われているところもあることから、このような業者及びアルバイト等の実労働者は、気の毒な感じがするが、入札制度ではどうしようもない結果である。
 積極的な意見を申し上げれば、落札価格の上下を設定する等の方法もあるのかなと思っている。
 (他の委員)私も同意見で、労務型の案件は落札率が低く、叩きあいになっている。
 
 競争入札が行き渡ってきており、その結果、業界として弱いところはこのようになっているのではないか。
つまり、比較的労働者を簡単に雇い入れる業界というのはこのようにならざるを得なくなる。
 これは新たな全く別の問題として提起しないといけないと思う。
 
意見・質問 回答
【事案3】
契約件名
:スミスハイマン社製X線貨物検査装置の保守業務請負契約
契約相手方
:Smiths Heimann Gmbh
契約金額
:1,470,000円
契約締結日
:平成23年4月1日
担当部局
:長崎税関
 
 一者応札で、落札率が高い点に着目して抽出した。  
 他メーカーの部品調達が難しいとの理由で1者応札となるのであれば、予定価格を積算することに意味はあるのか。  予定価格は契約金額を決定するための基準となる価格であり必要である。
 X線貨物検査装置の購入時に保守点検の費用も含めた契約はできないのか。  X線貨物検査装置は性能が維持されれば、長期間使用することとしており、購入時に使用期間が定かではないことから予め保守契約も含めて契約することは難しいと考える。
 本件のX線貨物検査装置は買取りか賃貸借か。  買取りである。
 他のX線貨物検査装置の保守契約で本件の入札に比べ、落札率が低い入札があるが、その原因をどのように分析しているか。  予定価格のうち人件費についてはヒアリング結果も参考に積算しており業者間に大きな差は生じないと考えられることから、諸経費等の人件費以外の部分で差が生じ、落札率に開きが出たのではないかと考える。
意見・質問 回答
【事案4】
契約件名
:シュレッダー車によるごみの裁断リサイクル業務 福岡ブロック
契約相手方
:株式会社 角商店
契約金額
:単価契約 裁断処理後引取方式
1キログラム当たり 15.75円
 単価契約 単純引取方式
1キログラム当たり 2.10円
契約締結日
:平成23年4月1日
担当部局
:福岡国税局
 
 一般競争入札が成立しているが落札率がかなり低率であること、また、22年度に一者応札の長崎ブロックの同案件を検討したが、今回、この案件で競争入札が成立しており、落札率がかなり下がっていることなどから抽出した。  
 福岡ブロックの入札状況調書の1番、2番と3番の入札金額の差が大きい。これはどのように考えたらよいのか。単純にこの3番の入札調書だけ見れば、一応形だけ入札しておこうというような気もする。
 契約金額を見ると、長崎ブロックでは1キロ当たり31円50銭ですか。福岡ブロックは15円75銭。倍ぐらいである。どうしてこのような倍の差が出るのか。
 福岡、佐賀ブロックについては3者が応札しているが、そのうちの2者というのが、福岡市内の業者であり、もう1者が長崎の業者である。
 値段の構成要素として大きいのは人件費と考えるが、それ以外に各署に車を派遣する移動コストというのも1つ大きな要素になるかと考えている。
 福岡市内の業者が、福岡と佐賀のほうに車を派遣するという意味においては、当然距離的に近く、ある程度価格を安く設定できる。
 逆に長崎の業者が福岡に来る、特に北九州まで行くとなると、かなり移動距離もかかり、日当が倍近くかかる。地域的に本社があるところが強いのかと思われる。
 そういう状況下で、福岡ブロックの2者が金額面で競った結果でこうなったのかと思われる。
 長崎ブロックについては、どうしても1者はもともとそこ(地域的な)での競争性の優位があり、ある程度価格を高くしてもとれる自信があったのでこの価格に設定したと考えている。
 実質的な競争性は図られていると考えているのか。  全て一者応札であるとか、随意契約ということであれば、ほぼホームページ上の値段で相手の言い値になってしまう。入札をかけて、他の業者が入ってくるということによって、当然値段的には下がってくる。
 今回も現実昨年より長崎ブロックについては単価が下がったという意味では、競争性は働いていると考えている。

 予定価格調書を見ると、予定価格の算定は前年度までの入札価格を更に加味しているということであるが、その落札率は急激に下落しているということが伺える。
 1カ月に1回トラックが来て、そのトラックでシュレッダー処理をするということか。時間的にはどのくらいの時間で処理する作業なのか。
 小さい署では大体年に1回か2回で、大きい署でも年に3回行っている。
 来客用の駐車場のスペースにシュレッダー車を駐車して作業をしているため、基本的に1日で作業を終わらせている。大体朝8時半ぐらいに始まり、夕方5時過ぎに終わるという感じでやっている。
【委員会の審議結果】  
 本日、抽出した4件の事案については、適法かつ適正に調達の手続がなされていたことを確認させていただいた。
 委員会のほうから、本日の今期の調達に関して意見を付させていただく。
 全体の調達の状況については、一つ顕著な傾向として、公共工事の落札率がかなり適正な水準に、競争性が非常にうまく働いている水準になってきているように見受けられる。
 ただし、逆にこのような状況になると、落札率90数%の案件が散見されるというところが非常に明確になってきており、これらの案件について、同一の公示のような場合、特にその入札が高い落札率という案件については、その入札状況の確認とその状況に不自然な点がないかどうかということを注視していただくという点が重要かと思う。
 また、従来一者応札であるが、高率の落札であった案件について、競争性が確保され、落札率が非常に下がっている案件も見受けられる。
 先ほど抽出したものとしては、門司税関の福岡港湾合同庁舎の清掃業務があり、これなどはかなり下落している。福岡国税局のシュレッダー処理の長崎地区も同様であり、これも競争性が確保されて、落札率が非常に低下し、単価も下がっている。
 各部局の努力の成果が上がってきているという点が見受けられるかと思う。逆に一者応札の業務の案件の領域がかなり明確になってきているのではないかと思われる。その中で特に保守点検管理の部分がある。これがなお残っている領域かと思う。エレベーターの保守点検であるとか、複写機、空調、情報ネットワーク関係の保守点検なども、やはり一者応札をまだ多く見受けられるところであり、今回長崎税関で取り上げさせていただいたエックス線貨物装置も、あるいは門司税関の場合も、この装置については同じであるが、やはり一者応札が全件だという状態である。何か改善できるような、いわば要素がないのかどうか、あるいは、一者応札になる要素が本当に1者でしかできないのかという点も確認していただくという点が重要かと思われる。
 全体の調達につきましては、以上である。

 
(第1事案について)
 公共サービス改革法や制度の趣旨からすると、競争が成立しなければ、この制度の目的が十分には達成できないことにもなり、総合評価方式の運用の成果も十分に発揮できないと考えられるので、一者応札の解消が重要な課題ではないかと思われる。
 本業務委託において、福岡財務支局管内の5地域のうち1地域が競争が成り立っているので、この要因等を明確にし、他の地域でも競争が成り立つよう検討いただきたい。
 また、新規参入が困難となるような要素があるのではないかと考えられるので、参入するためのインセンティブを高めるような制度、例えば、業務処理がなされると収益があがるような方式が他に何かとれないかといった検討を行い、その方式を明確に業者に情報提供できるような仕組みを考える必要があるのではないかと思われる。そのために、通達によるシステムを見直すことも必要と考えられるので、一部局ではできないとは思われるが、検討いただきたい。
 業者はどのような仕組みであれば参加できるのか、参加しようとする意欲が出るのか、調査することも必要ではないかと思われる。
 
(第2事案について)
 本件については今後、実際の清掃業務の内容、業務の質について、1年間注視していくことと、低価格のために、何か弊害が生じていないか確認することが重要である。
入札に参加した各業者の積算根拠を調べて、今後の予定価格との開きを確認することが重要と考える。
 
(第3事案について)
 一者応札の理由が業者聞取りによれば「他メーカーの部品調達の難しさ」とのことであったが、メーカーが修理部品の調達に応じない場合、独占禁止法違反になる虞もある。業者が部品の調達をできないと思い込んでいるだけということもあるので、保守業務に安心して参入できる環境であることを説明できる状態を作っておけばよいかと思われる。
 参入が技術的に難しく、参入障壁を下げることができないのであれば、買取り又は賃貸借の契約の際に、保守点検の費用も含めた各メーカー間の競争とすることも検討してはどうかと考える。
 
(第4事案について) 
 かなり低価格受注の状況が継続しているかと思われる。実際に下がっていることは確かに良いことではあるが、逆に言うと、予定価格の積算のほうが少しオーバーぎみの積算ではないかということも考えられる。予定価格の算定方法が実態に合っているかどうかという点をご検討いただきたい。
 説明では実質上、北九州地区において競争者数は3者ということが確定している状況ではあるが、説明会に来た新たな1者のようになお新しくこういう事業に参入しようという関連事業者がいないかどうか検討していただきたい。
 入札価格の状況については、入札価格の開きが大き過ぎる。少数の応札者にかなり限定されており、今後注視する必要があるのではないか。
 低価格受注であり、コストがこの開いている価格差とどういう関係になっているのか、これは予定価格算定とも絡むと思うが、注意する必要があるかと思われる。 入札に参加した業者からのコストの詳細な積算の状況については、応札した業者3者には積算根拠を示すことはできるかと思うので、確認していただき、今後の予定価格の算定や応札価格の開きというものについても注意していただきたい。