開催日及び場所 平成23年6月16日(木) 福岡合同庁舎5階共用第2会議
委員 委員 屋宮 憲夫(福岡大学 法学部教授)
委員 林 桂一郎(西日本綜合法律事務所 弁護士)
委員 横山 研治(立命館アジア太平洋大学 国際経営学部長)
審議対象期間 平成23年1月1日(土) 〜 平成23年3月31日(木)
契約締結分の概要説明 審議対象期間に係る契約締結分の概要及び契約実績状況を説明
抽出事案 4件 (備考)
競争入札(公共工事) 1件
契約件名
:唐津市西城内所在外国有財産内樹木伐採工事
契約相手方
:おおつかガーデンサービス
代表者 大塚 誠
契約金額
:1,176,000円
契約締結日
:平成23年2月15日
担当部局
:福岡財務支局
随意契約(公共工事) -件  −
競争入札(物品役務等) 2件
契約件名
:監視艇「ありあけ」上架整備工事
契約相手方
:熊本ドック 株式会
契約金額
:2,520,000円
契約締結日
:平成23年2月14日
担当部局
:長崎税関
契約件名
:文書裁断機の購入
契約相手方
:株式会社 福助屋
契約金額
:15,490,545円
契約締結日
:平成23年1月27日
担当部局
:福岡国税局
随意契約(物品役務等) 1件
契約件名
:大分港湾合同庁舎外壁調査業務委託一式
契約相手方
:有限会社 プランニングオフイス
契約金額
:1,312,500円
契約締結日
:平成23年1月25日
担当部局
:門司税関
応札(応募)業者数1者関連 2件 ※ 競争入札(物品役務等)の「監視艇『ありあけ』上架整備工事」及び随意契約(物品役務等)の「大分港湾合同庁舎外壁調査業務委託一式」
委員からの意見・質問、それに対する回答等 別紙のとおり
委員会による意見の具申又は勧告の内容 なし
意見・質問 回答
【事案1】
契約件名
:唐津市西城内所在外国有財産
内樹木伐採工事
契約相手方
:おおつかガーデンサービス
代表者 大塚 誠
契約金額
:1,176,000円
契約締結日
:平成23年2月15日
担当部局
:福岡財務支局
 
 福岡地区における同種の調達案件と比較して落札率が極めて低いことから抽出した。
 予定価格の積算に当たり業者からヒアリングを実施したとのことであるが、過去に発注した同種の工事における入札価格等は参考にしなかったのか。
 同じ地域で同種の工事を発注した実績があれば予定価格積算の参考にできたが、佐賀地区においては近年同種の工事を発注した実績が全くなく、参考にできるものがなかった。
 そこで、業者から施工方法等についてヒアリングを行い、それに基づき予定価格を積算した。
 本件における落札率が極めて低かった理由をどう考えるか。  当局の予定価格よりかなり低い金額で落札されたことから、その理由を落札業者に聴取したところ、1当局が想定した施工方法ではなく、より費用のかからない施工方法で工事が可能と判断し入札価格を算定したこと、2新たに佐賀地区への進出を図る目的で諸経費部分を値引きしたことの2点が理由である旨の回答を得ている。
 諸経費部分は、採算性を度外視して不当に安く値引きされたようなことはなかったか。  細部まで確認したわけではないが、通常の営業努力の範囲での値引きを行ったと聞いている。
 本件の応札状況を見ると、落札業者と次点の業者は近い価格帯で応札しているが、それ以外の業者はかなり高い価格で応札しており、最低価格と最高価格では数倍の開きが見られる。
 同時期に発注した福岡地区の案件の応札状況はどうか。
 福岡地区で実施した入札案件においても、本件と同じ組み合わせの2社が低い価格で応札し、その他の業者はかなり高い価格で応札しているという本件と似たような状況であった。
 では、福岡地区の同種の案件の落札率が高くなったのはなぜか。  福岡地区の案件においては、過去に同種の工事を発注した実績があり、過去の施工方法等を参考にしてを予定価格に反映させることができたことから、当方の予定価格と応札金額とで乖離が生じなかったことが理由であると考える。
意見・質問 回答
【事案2】
契約件名
:大分港湾合同庁舎外壁調査
業務委託一式
契約相手方
:有限会社 プランニングオフイス
契約金額
:1,312,500円
契約締結日
:平成23年1月25日
担当部局
:門司税関
 
 一者応札で落札率が極めて高い点に着目して抽出した。一者応札となった理由はなぜか。  本件は、一般競争入札に3社が応札したが不落となり、再度入札を実施したが応札者がいなかったため、止む無く随意契約を結ぶこととしたもの。
 なお、随意契約に当たっては、入札参加者に対して同一条件で価格交渉を行ったが、値下げできる旨回答した者が1社であったことから、一者応札となったものである。
 そうすると、予定価格が低すぎたのではないのか。予定価格はどのようにして積算したのか。 【他の契約の予定価格を類推させるおそれがあるため公表しない。】
 日数の積算がやや厳しかったとの反省はある。
 不落に伴う随意契約の交渉は具体的にどのように実施したのか。  見積書の提出依頼を行った。
 一般競争入札で最低入札金額を開示していたことから、それを下回る価格で見積書が出せるかそれぞれの者に口頭で聴取し、可能ならば見積書を提出して欲しいと依頼した。
 ではなぜ、再度入札に応じなかった業者が、最低入札金額よりも低い価格で見積書を出せたのか。  一般競争入札には2社が電子で応札し、1社が紙で応札したが、3社とも入札会場には来ていなかった
 電子入札の者は会場にいなくても再度入札への参加は可能だが、紙入札の者は会場に来ていなければ再度入札には参加できないこととなっている。
 再度入札に参加が可能であった電子入札の2社は両方とも辞退したことから再度入札は成立しなかったが、紙入札の者は最低入札金額で応札しており、手続き上可能であれば再度入札にも応札する意思があった。
意見・質問 回答
【事案3】
契約件名
:監視艇「ありあけ」上架整備工事
契約相手方
:熊本ドック 株式会
契約金額
:2,520,000円
契約締結日
:平成23年2月14日
担当部局
:長崎税関
 
 一者応札で落札率がかなり高い点に着目して抽出した。一者応札となった理由は何か。  監視艇を上架して船体の整備を行う一般的工事であり、応札者数を増やす工夫も取り入れたが、結果として本船を建造した落札業者しか応札しなかった案件である。
 なお、応札しなかった業者に理由を聴取したところ、工事期間中ドックに空きがなかったためと回答する者が多かった。
 応札者数を増やす工夫とは、具体的にどうしたのか。  具体的には2点が上げられる。
 1点目は入札参加資格の拡大であり、本来の入札参加資格は工事金額基準に従えばB等級となるが、一般的な工事で小規模な造船所でも対応が可能なためC等級及びD等級にまで拡大したこと。
 2点目は入札参加地域の拡大であり、従来は監視艇の配備地区である熊本県内としていたが、長崎市及び島原市の造船所も参加可能とした。
 その結果、入札参加が可能な業者は6社あった。
 監視艇の上架整備工事は過去から一者応札が多いように思われるが、統計は取っているか。  過去の応札状況の統計は取っていないが、委員のご指摘どおり一者応札となる案件が多かったことの反省から、入札参加資格の拡大に加え、入札参加地域の拡大を試みた次第である。
 監視艇の上架整備工事の時期や回数はどうか。  長崎税関では3隻の監視艇を保有しているが、そのうち本件の「ありあけ」と鹿児島に配備している「なんせい」が年2回、長崎に配備している「さいかい」は年1回、定期的に上架して整備を行っている。
 上架の時期は、船底に付着物が付きやすい夏場と冬場に実施することが多い。
 予定価格はどのようにして積算したのか。  入札がある度ごとに、複数の業者にヒアリングを実施して予定価格を積算している。
 入札の都度、ヒアリングすることで、使用部材の価格の変動を予定価格に適切に反映できるものと考えている。
 上架整備工事は、監視艇を建造した造船所にしかできないか、又は建造した造船所に優位性が保たれる性格のものか。
 また、近隣の造船所と遠方の造船所とでは、発注者である税関において費用負担でどのような違いが生じるのか。
 一般的な船体の整備でどの造船所でも工事は可能であることから、建造した造船所が有利になるような工事ではない。
 また、費用負担の相違としては、遠方の方が近隣よりも往復の燃料費と船舶職員の出張旅費が高くなることが上げられるが、競争性が高まれば無視できる程度の相違に過ぎないと考える。
意見・質問 回答
【事案4】
契約件名
:文書裁断機の購入
契約相手方
:株式会社 福助屋
契約金額
:15,490,545円
契約締結日
:平成23年1月27日
担当部局
:福岡国税局
 
 複数応札だが落札率が高いこと、及び、前回の同種の調達案件においても同じ落札業者が落札している点に着目して抽出した。
 予定価格の積算はどのようにして行ったか。
 当局では、文書を廃棄する際に納税者個人情報の漏えいを防止する観点から、裁断寸法及び裁断方法に重点を置いて機種を選定した。
 機密性の保持に最適と判断された裁断寸法及び裁断方法を備えた機種は市場にも数が少なく、仕様に合致したのはメーカーが異なる2機種であった。
 予定価格の積算に当たっては、当局で過去に同種の文書裁断機を調達した実績が複数回あることから、それらの値引率等を参考にして算定した。
 落札率が高くなった理由はなぜか。  物品購入の入札案件においては、メーカーの希望小売価格より安い価格で応札されるケースが多いことから、過去の同種案件におけるメーカー希望小売価格と落札金額との比率、いわゆる値引率等を参考にして予定価格を作成している。
 今回落札率が高くなった理由は、当局が予定価格を算定するに当たり市場価格を適切に反映させたためであると考えており、仮に市場価格を反映させずに予定価格を算定していたならば、落札率は相当低いものとなっていた。
 今回の入札状況は前回以前と比較してどうだったか。  今回は、入札説明を聞きに来たのは7社で、そのうち2社が応札して1回で落札された。
 なお、前回はより多くの台数を調達したが、4社が応札し、委員のご指摘どおり今回と同じ落札業者が1回で落札している。
 今回、7社が入札説明を聞きに来たのに、2社しか応札しなかった理由は何か。  辞退した5社すべてに聴取はしていないが、前回応札して今回応札しなかった業者に理由を聴取したところ、商品の確保が困難であった、あるいは、前回の落札金額を見て価格競争で太刀打ちできない、といった回答を得ている。
 また、入札説明を聞きに来て応札しなかった業者に理由を聴取したところ、調達数量のすべてを同一機種で納品しなければならないと勘違いしたと回答したところもあった。
 「商品の確保が困難」という理由で辞退している業者がいる一方で、本件落札業者が商品を確保できるというのは、両者にどのような違いがあると考えるか。  落札業者とメーカーとの取引関係が、他の業者よりも優位にあるということが考えられる。
 当局は職員数及び事業所数で大企業並みの規模を有しているが、落札業者は多年にわたり当局が実施する事務用機器及び事務用消耗品の競争入札案件に必ず応札し、かつ、比較的高い割合で落札していることから、取引実績を積み上げてメーカーに対しても影響力や発言力といった点で優位な立場を確保できていることが想定される。
 福岡国税局の事務用機器及び事務用消耗品の入札案件については、確かに本件の落札業者が落札することが多い。
 メーカーとの取引関係で優位性があるにしてもやや不自然な印象を受けるが、応札状況に不自然な点は見られないか。
 委員からのご指摘を受けて以来、可能な限り辞退業者からその理由を聴取するよう努めながら競争性・公正性を確保するよう努力しているところであるが、本件落札業者が参加する入札案件について、応札状況に不自然な点は見受けられない。
【委員会の審議結果】  
 審議の結果、4案件とも適正かつ適法に契約が行われていることを確認した。
 なお、平成22年度の全体を振り返って、一者応札の比率や落札率が低下しており、随意契約も減少しているところから、各部局が競争性確保に努力していることの成果の現れであると評価している。
 一部に一者応札の解消が困難な案件も見受けられるが、今後ともより一層改善が図られるよう、各部局には更に努力を続けていただきたい。
 それでは、委員会として審議・検討した結果を報告させていただく。
 
 第1事案については、上位2社と3位以下とで応札金額の開きが大きく、実質的には2社だけの競争となっていること、また、予定価格と上位2社の応札価格を比べると予定価格が高いのではないかと推測される。
 なお、3位以下の業者に当初から落札する意思がなかったことも懸念されるところから、造園工事業者間において受注調整等が行われていないか注意する必要がある。
 おって、極端に低価格の業者が参入することは健全な市場の育成の観点で問題があることから、コスト割れとなる入札にも注意が必要である。
 
 第2事案については、第1事案とは逆に予定価格の積算が低すぎた結果不落となったものであり、今後の予定価格の積算に当たっては、過去の案件における入札価格を参考にするなど内容を再検討する必要がある。
 また、応札者数が3社と少ないことから、公告期間を長くするなど応札者数を増やす工夫をすることが望まれる。
 
 第3事案については、入札参加地域を拡大したことは評価するものの、結果として一者応札の解消には結びついていない。
 上架整備工事は毎年定期的に実施するものであるから、第2事案と同様、早めに入札を公告して業者がドックを確保しやすくなるよう準備期間を与えることが望まれるので、その点を改善して欲しい。
 
 第4事案については、辞退理由を聴取していることは評価するが、入札説明を聞きに来た業者の多くが入札に参加しないケースが続いているので、辞退理由に合理性があるか注意して欲しい。
 また、福岡国税局の事務用機器の入札案件については、近年同一業者が落札する傾向が続いていることから、過去数年間の応札状況等を調べるなどして、業者間で調整が行われているような疑いがないか、競争性が適切に確保されているか注視して欲しい。