開催日及び場所 | 平成22年12月16日(木)福岡合同庁舎8階共用第9会議室 | |
---|---|---|
委員 | 委員 屋宮 憲夫(福岡大学 法学部教授) 委員 林 桂一郎(西日本綜合法律事務所 弁護士) 委員 横山 研治(立命館アジア太平洋大学 国際経営学部長) |
|
審議対象期間 | 平成22年7月1日(木)から平成22年9月30日(木) | |
契約締結分の概要説明 | 審議対象期間に係る契約締結分及び契約実績状況調書の概要を説明 | |
抽出事案 | 4件 | (備考) |
競争入札(公共工事) | 2件 |
|
|
||
随意契約(公共工事) | -件 | − |
競争入札(物品役務等) | 2件 |
|
|
||
随意契約(物品役務等) | -件 | − |
応札(応募)業者数1者関連 | -件 | − |
委員からの意見・質問、それに対する回答等 | 別紙のとおり | |
委員会による意見の具申又は勧告の内容 | なし |
意見・質問 | 回答 |
---|---|
【事案1】
|
|
契約金額が大きい公共工事であることから抽出した。 応札状況を見ると、入札金額の最高額と最低額とで1.5倍ほど開きがある。 本件のような宿舎改修工事において、入札金額にばらつきが出る要素としては何が考えられるか。 |
本件工事の特徴として、5棟全64戸のうちの大半が入居中であり、入居者の日常生活に支障を来たさないような工期及び工程により実施することを仕様書で義務付けた。 入居者の生活に支障を来たさないよう工事を行うことは、熟練した優秀な技術者、同種工事の施工実績とノウハウが不可欠であると考えており、それを有する業者とそうでない業者とで工事金額の積算に差が出たのではないかと考える。 |
住民が入居したままの工事ということで、通常より余分に手間が掛かり、かつ技術が必要になるのであれば、そのような要因は本件の予定価格に反映されていると考えてよいか。 | 公共工事の予定価格の積算基準は、同じ工事内容であっても新築工事と改修工事とでは労務費の算定において工程数に差があり、改修工事の方が工程数が増える分だけ労務費は高くなる。 本件の予定価格も改修工事の基準で作成したが、更に入居中であるという理由での予定価格の加算調整は行っていない。 |
そうすると、予定価格が安すぎたということはないのか。入居者の日常生活に支障を来たさないという条件を仕様書で課したのであれば、その点も考慮して予定価格を算定すべきではなかったのか。 | 当局としては、予定価格は妥当なものと考えている。 本件工事はいわゆる低入札に該当したため、落札者から入札価格の見積書を徴して低入札価格調査を実施したが、直接工事費は予定価格と入札価格とであまり差はなかった。 予定価格と入札価格とで差が見られたのは現場管理費や一般管理費であり、この点については入札に向けた落札業者の姿勢、いわゆる企業努力が現れた結果であると考えている。 |
今回の入札参加業者は7社であり、そのうち当該工事の施行地域である佐賀市の業者は1社だけである。佐賀市以外に周辺にも参加資格を有する業者は多数存在すると思われるし、公共工事の発注が減少してきている中で、本件は入札参加者数が少ないように思われる。 ついては、本件の入札説明会の実施状況はどうだったのか。説明を受けた者のうち入札を辞退した業者はあったか。 |
入札説明会は実施しておらず、仕様書を取りに来た業者に対して個別に入札説明を行ったが、仕様書を取りに来て入札に参加したのは7社であった。 なお、委員のご指摘どおり、財務省北九州地区競争参加資格で「建築一式工事」のC等級の登録業者数は約380社であり、そのうち半数近くは佐賀県及び福岡県の業者である。 登録業者数が十分であるため、他の等級にまで参加資格を拡大しなくとも競争性は働くと予想したところ7社が参加したものであるが、当局としては競争性は確保されたと認識しており、7社をもって少ないとは考えていない。 |
仕様書を見ると工事日数を各戸4日以内と定め、その中で多様な改修工事を集中して行うという厳しい条件を課しているように思われる。 このような場合、落札者のみでは施工できず、下請業者の手を借りざるを得ないことが想定され、本件はそれが原因で応札者数が少なかったのではないか。 |
一般論として、建築工事業者はそれぞれ多年の経営で下請企業との協力関係を培っていることから、工事日数を含めた本件の仕様が厳しすぎて競争性を阻害したということは考えていない。 |
意見・質問 | 回答 |
---|---|
【事案2】
|
|
同時期に発注された同種の工事と比較して落札率が極めて高い点に着目して抽出した。 落札率が高い理由を福岡国税局はどう分析するか。 |
本件は、1回目の入札には9社が応札したが不落となり、再度入札を行ったところ最も入札価格の低かった2社のみが応札して落札にいたった。 再度入札で7社が応札しなかった状況から、予定価格が業者の積算価格より厳しかったものと推測している。 |
予定価格が厳しすぎた可能性があるとの回答だが、どのように積算したのか。 | 予定価格のうち、直接工事費は設計を委託した外部専門業者の積算資料を基本に、当局で市場価格や過去の入札状況等を勘案して積算した。 現場管理費等その他の費用については、「国土交通省建設工事積算基準」に基づき積算した。 |
同時期に発注した同種の工事と比べて、落札率に差が出た理由は何か。 | 理由として、浴室改修以外の工事内容が大きく異なる、それぞれの工事で、外注に出した割合が異なる、本件の場合、落札者の所在地と施工場所が離れているため費用が掛かる等が上げられる。 |
本件は電子入札を利用しているが、1回目で不落となった場合、入札参加者にはどの程度の情報がもたらされるのか。 | 電子入札システムで応札した業者には、1回目の最低入札金額だけを画面で開示する。 入札会場に来ている応札者にも、同様に最低入札金額を口頭で開示する。 なお、郵送で紙入札し、入札会場に来ない応札者には、1回目の開札結果について何らの情報も開示しないこととなる。 |
入札不落となり即日再度入札を行う場合は前回の最低入札金額を知らせるとのことだが、本件のように大半の者が2回目を辞退する結果となり、競争性を阻害するのではないか。 不落となった事実のみ開示したほうが、より競争性が高まり好ましいのではないか。 |
不落の場合に最低入札金額を開示するのは好ましくないとのご指摘であるが、最低入札金額を開示することが競争性を阻害することに繋がるかについては、当局は不知である。 なお、電子入札システムは財務省所管のすべての官庁で利用しているもので、当局のみで変更を加えられるものではないことをご理解願いたい。 |
意見・質問 | 回答 |
---|---|
【事案3】
|
|
複数年契約で契約金額が極めて大きい点に着目して抽出した。 本件で入札に参加した業者は2社とのことであるが、入札説明会は実施したか。 また、入札説明を受けた業者のうち、入札を辞退した業者はあったか。 |
入札説明会は実施しておらず、仕様書を取りに来た業者に対して個別に入札説明を行った。 6社が仕様書を取りに来たが、そのうち3社は入札を辞退し、1社は書面の技術審査で不合格となったため、結果として残る2社だけが入札に参加した。 なお、辞退した3社から理由を聴取したところ、2社が関連企業を応札者とするため、1社が機器を調達するための相手先メーカーが見つからなかった、との回答を得ている。 |
予定価格の算定に当たり、本件に応札した2社から参考見積書を徴しているが、応札者に予定価格を推測させることとなり好ましくないとの印象を受けるが、理由はなぜか。 | 当関では、日ごろから応札者に予定価格を推測させるような行為は厳に慎むよう十分注意を払っているところではあるが、賃借物件は専門性が極めて強く、製作に高度な技術を要する機器であること、既設の建物に据え付ける特別注文品であることから、当関で独自に予定価格を算定するのは極めて困難であった。 そのため、企業から参考見積金額を聴取することとし、聴取対象先として他税関分を含め国内で納入実績がある、本件に応札した2社が最適であると判断されたことから、2社へ協力を依頼して参考見積書の提出を受けたものである。 |
2社の参考見積金額には相当な開差があるにも関わらず、入札金額の差は小さくなっており、かつ、いずれも見積金額より相当安く入札してきている。 この理由について、門司税関ではどのように考えるか。 |
本件に限らず、一般的に参考見積金額は入札金額よりも高額となる傾向にある。 理由は、企業側が値引き等を一切考慮しない正規の金額で参考見積金額を積算するためである。 当関は、参考見積金額に対して市場価格や過去の値引率等の調査を行い予定価格を算定するのであり、応札する企業側としても入札する際は参考見積金額から値引きする場合が多いと理解している。 |
技術審査で不合格となった業者が1社あったとのことであるが、当該技術審査の基準は、誰がどのようにして作成したのか。 | 技術審査の基準は当関で作成している。 具体的には、当関を含む全国の税関で保有する同種機器の仕様及び性能と、各税関で実際に機器を使用する職員の意見等を参考にしながら、当関において必要な機器の仕様・性能を決定して作成したものである。 |
技術審査基準は事前に公表しているか。 また、不合格となった1社は技術力が低かったということか。 |
技術審査の基準は、予め配付する仕様書に記載して公表している。 なお、今回不合格となった企業は、技術力が低かったというわけではなく、書面で提出された資料を検討する限り、基準を満たしていなかったということである。 |
機器の調達に関しては競争性が働いても、後年度の保守では競争性が働かない場合がある。 ついては、本件の保守契約は具体的にどのような内容としているか。 |
委員のご指摘どおり、過去に調達した機器の保守契約に当たっては、一般競争入札を実施しても製作したメーカー系の保守業者のみによる一者応札となった事例が数多くある。 そのため、本件は複数年にわたる、いわゆるメンテナンス・フリーを目途とした契約を行っており、具体的には、定期保守点検費用は賃借料に含む、随時保守点検費用のうち技術者派遣費用、工具代及び1万円以下の部品代は落札者が負担、修復期間中は落札者が代替品を無償で提供、等の内容としている。 |
意見・質問 | 回答 |
---|---|
【事案4】
|
|
落札率が低い点と、同時期に実施した同じ監視艇「なんせい」の推進装置の中間検査工事が一者応札となっている点に着目して抽出した。 落札業者は山口県下関市の会社であり、長崎税関の管轄区域とは異なるようだが、貴関の監視艇の運航範囲か。 また、下関市までの往復の燃料費は契約上、落札業者と貴関のどちらが負担するのか。 |
山口県下関市は門司税関の管轄区域であり、当関監視艇の通常時の運航範囲ではないが、入札の競争性を確保するため履行地域に関する制限を削除した結果、新規の業者が落札したものである。 なお、往復の燃料費は本件契約に含めておらず当関で負担したが、競争性が確保されて契約金額が安くなったことのメリットの方が相当大きかったと考える。 |
競争性を確保するため、履行地域に関する制限を削除したとのことだが、それによって競争性は具体的にどの程度高まったのか。 | 履行地域の制限を設けていた当時は3社だったところ、履行地域の制限を削除したことによって、参加資格を有する業者は12社に増えた。 |
予定価格に比べ落札価格は大幅に安くなっているが、そもそも予定価格が高すぎたのではないのか。 | 当関は、予定価格には問題はなかったと考えている。 本件の予定価格は市販の物価資料等では算出できないため、複数の専門業者にヒアリングを実施し、作業項目ごとの平均値を調査の上、それらを積み上げて算出している。 また、本件は低価格入札調査を実施したが、落札業者が入札金額を安くできた理由として工事期間中にドックが空いており、稼働率を重視して採算の取れる範囲で価格を下げた、官公庁が保有する船舶の検査・整備は得意分野であり、工期を短縮するノウハウや協力会社から部品を安く調達できる等の条件が揃っていた等があげられる。 |
船体の検査を実施して部品の取替えが必要と判明した場合、新たな費用負担が発生することとなるが、その場合はどう処理するのか。 | 本件契約は、なるべく追加の費用が発生しないよう検査時に通常交換が必要となる部品の取替費用は予め含めているが、それ以外で作業中に交換が必要と判明した部品代等については変更契約を行って対処している。 |
抽出理由に示したとおり、本契約と同時期に実施した本船のウォータージェット推進装置の中間検査整備契約は一者応札となっているが、本件契約との関連性について説明されたい。 | 委員のご指摘どおり、ウォータージェット推進装置の中間検査・整備は船体の上架工事のタイミングに併せて実施すべき工事であり、両方の中間検査・整備を併せて一つの入札案件とすることも可能ではあった。 しかしながら、船体と推進装置の検査をまとめてしまうと、規模や能力の関係で入札に参加できない造船所が現れ、競争性が阻害されると思われたため、敢えて一つにまとめず別々の案件として入札を執り行った。 |
ウォータージェット推進装置の中間検査整備契約が一者応札となった理由はなぜか。 | 当関としては、メーカーの指定は行わず、参加資格の等級も拡大するなど入札可能な企業の数を増やす努力を行い、当初は3社から参加申込みを得たのであるが、うち2社が入札を辞退したため結果的に一者応札となったものである。 なお、辞退理由を聴取したところ、2社とも他案件の受注により余力がなくなったためとの回答を受けている。 |
【委員会の審議結果】 | |
---|---|
全体の契約状況を見ると、引き続き一者応札の解消が図られ競争性が高まっているとの印象を受けており、各部局の努力を当委員会は評価している。 本日の審議案件については、4件とも法令を遵守し、適正な手続で調達が行われたことを確認できた。 それでは、委員会として審議・検討した結果、参考意見を付させていただく。 |
|
第1事案の若楠(二)住宅床改修その他工事については、応札金額の上下に相当の較差が見られ、実際に競争性が働いたと言えるのは応札した7社のうちの更に数社であったとも取れることから、応札金額に較差が生じた要因を確認することが有益ではないか。 また、今後、同種の工事の入札で競争性を高める方策としては、仕様書の条件から下請への発注が想定される工事については、B等級にまで参加資格を拡大する等の工夫が必要であると考える。 |
|
第2事案の長崎税務署小ヶ倉寮浴室改修その他工事については、1回目に9社が参加して不落となった直後の2回目の入札は、7社が辞退等で入札に参加せず、結果的に2者応札となり、極めて高い落札率となっている。 落札率が高くなった一因として、当委員会は現行の電子入札システムに問題があるのではないか、1回目で不落となった場合に最低入札金額を開示しなかったならば、2回目にはより多くの業者が応札した可能性があるのではと考えている。 電子入札システムは全国の財務省所管官庁で統一されているとのことであるから、競争性確保の観点から、開示する情報を変更できないか組織的に検討されてはどうかと考える。 |
|
第3事案のコンテナ貨物大型X線検査装置賃貸借は、高度な技術を要する高価かつ大型の専門機器の調達案件であるが、競争性が働き予定価格に比べかなり安価に調達できたと思われ、その点は評価できる。 しかしながら、応札した2社から参考見積書を徴して予定価格算定の資料としている、当該2社の見積金額には大きな開きがあるのに入札金額は見積よりかなり安く、かつ、2社とも近い金額であった、など応札状況にはやや不自然な印象も受ける。 そこで、装置全体では難しいかも知れないが、部分的にでも第三者から意見も聴いて参考見積が適正かを検証するとともに、調達部局において独自で予定価格を積算できないか検討されてはどうかと考える。 |
|
第4事案の監視艇「なんせい」中間検査及び上架修繕工事については、従来、履行地域に制限をかけていた案件であるが、競争参加者数の拡大のため仕様書から制限を削除して新規業者の入札参加を成功させた点を大いに評価すべきである。 競争が働かない状態だとかなり高い落札率となるため、競争性を働かせることは非常に重要であり、今後とも、引き続き努力していただきたい。 |