開催日及び場所 平成22年3月18日(木) 福岡合同庁舎8階共用第9会議室
委員 委員 屋宮 憲夫(福岡大学 法学部教授)
委員 林 桂一郎(西日本綜合法律事務所 弁護士)
委員 横山 研治(立命館アジア太平洋大学 国際経営学部長)
審議対象期間 平成21年10月1日(木)〜平成21年12月31日(木)
契約締結分の概要説明 審議対象期間に係る契約締結分及び契約実績状況調書の概要を説明
抽出事案 4件 (備考)
競争入札(公共工事) 1件
契約件名
:小ヶ倉住宅(四)電気・排水設備改修工事
契約相手方
:有限会社 昭和電気商会
契約金額
:15,225,000円
契約締結日
:平成21年10月27日
担当部局
:福岡財務支局
随意契約(公共工事) -件
競争入札(物品役務等 3件
契約件名
:デジタルワイヤレスインターカムシステム購入
契約相手方
:NECネクサソリューションズ 株式会社
契約金額
:26,565,000円
契約締結日
:平成21年11月16日
担当部局
:門司税関
契約件名
:監視艇「なんせい」搭載監視カメラシステム更新
契約相手方
:海洋総合開発 株式会社
契約金額
:163,800,000円
契約締結日
:平成21年11月25日
担当部局
:長崎税関
契約件名
:確定申告期用パーソナルコンピュータの設定等業務
契約相手方
:東芝情報機器 株式会社
契約金額
:3,360,000円
契約締結日
:平成21年12月10日
担当部局
:福岡国税局
随意契約(物品役務等) -件  −
応札(応募)業者数1者関連 2件 ※ 競争入札(物品役務等)の「デジタルワイヤレスインターカムシステム購入」及び『監視艇「なんせい』搭載監視カメラシステム更新」
委員からの意見・質問、それに対する回答等 別紙のとおり
委員会による意見の具申又は勧告の内容 なし
意見・質問 回答
【事案1】
契約件名
:小ヶ倉住宅(四)電気・排水設備改修工事
契約相手方
:有限会社 昭和電気商会
契約金額
:15,225,000円
契約締結日
:平成21年10月27日
担当部局
:福岡財務支局
 
 落札価格が高率である点に着目して抽出した。
 公務員宿舎の改修工事というのは、例えば、長崎地区においていくつかの住宅を、時期をずらし少しずつ改修していくものか。
 また、長崎地区において、小ヶ倉住宅以外で同様の工事が予定されているものや既に工事が完了したものはあるのか。
 福岡財務支局管内(福岡県、佐賀県、長崎県)の中で、古い宿舎から順番に行うもの、あるいは施設に不具合が生じて緊急で行うものなど、それぞれの工事で5ヵ年程度の改修計画を立て、概算要求を行い、予算を確保し改修するものである。
 また、長崎地区においては、2〜3年の間に同様の工事は行っていないが、2年ほど前に北九州地区で実施したものがある。
 3回目の入札状況を見ても落札率が極めて高いのは予定価格の設定が低すぎたためではないかとも考えられるが、1回目及び2回目の応札状況はどうだったか。  当初は入札参加資格の等級をA及びBとして入札を実施した。
 1回目は8月10日、入札に参加した3社のうち途中1社が辞退して2社が最後まで応札したものの、入札金額の最低額が予定価格を上回ったため入札を取り止めた。
 2回目は9月14日、入札に参加した4社のうち途中3社が辞退して最後は1者応札となったものの、同様に入札金額の最低額が予定価格を上回ったため入札を取り止めた。
 以上の経緯を踏まえ、3回目の入札においては入札参加資格を等級Cにまで拡大したものである。
 6社の応札状況をみると、予定価格に近い価格帯で競争している3者と、それ以外の3者との間に金額の乖離がみられ、不自然な応札価格の状況ではないかとの疑念を挟む余地がないでははいが、乖離の要因についてどのように分析するか。  全ての応札業者から工事内容の詳細な見積書は取り寄せていないため分析はできないが、個々の業者の特徴、例えば在庫の状況や下請企業の協力関係等が応札価格に反映されたのではないかと推測する。
 なお、本件は談合を排除するため電子入札制度を利用しているものであり、他社の入札参加状況はわからない仕組みとなっている。
 受注した業者が、本件工事の全部又は一部を下請に出すことを排除できるか。  契約書上、落札者が工事の一部を下請に出すことは排除できない。
 本件であれば、排水工事や天井の張替え、足場の架設工事など、落札者は工事の一部を複数の業者へ下請に出しており、当局に下請業者の一覧表を提出している。
 一般的な工事内容であるのに対して応札者数が少ない印象を受けるが、長崎県内の電気工事業者は何社あるか。
 また、応札業者は長崎市及び周辺地域の企業のみで、大手の電設会社が参加していない理由をどう考えるか。
 北部九州の電気工事業者数は把握しているが、長崎県のみの数は把握していない。
 なお、大手が参加していない理由は、古い宿舎で施工内容が細々として面倒であるため敬遠したのではないかと考える。
意見・質問 回答
【事案2】
契約件名
:デジタルワイヤレスインターカムシステム購入
契約相手方
:NECネクサソリューションズ 株式会社
契約金額
:26,565,000円
契約締結日
:平成21年11月16日
担当部局
:門司税関
 
 1者入札で落札率が高い点に着目して抽出した。
 入札公告を官報に掲載したとのことであるが、業者が本件の調達情報を知る手段は官報以外にもあったのか。
 入札公告を官報以外に財務省及び門司税関のホームページの「調達情報」に掲載したほか、当関の調達情報は福岡財務支局、長崎税関及び福岡国税局のホームページにリンクしているため、それらで知ることもできる。
 同様のシステムは、他の空港税関でも導入していると思われるが、本件の調達に当たり、他の空港税関の入札状況等の情報を事前に入手したか。  本システムは、福岡空港税関支署が他の空港税関支署に先駆けて導入したものであることから、同様のシステムに関する他の空港税関の情報を入手できる状況にはなかった。
 各種システムを導入する場合、先行導入する税関があれば、入札状況等の情報は簡単に入手できるのか。
 また、今後そのような情報を事前に入手できる状況にある場合、調達手続に活用することを考えているか。
 先行導入している税関があれば情報の入手は比較的容易であり、当関においても、他関で導入済みの機器類を調達する場合は必ず事前に情報交換を行い、参考にしながら調達手続を進めている。
 入札説明に来たものの入札参加を辞退している業者があるが、ホームページの入札公告を見ただけでは、自社が扱えるシステムかどうか分からないのか。  ホームページは、入札参加資格など入札公告と同じ情報を掲載しており、詳細な情報については、入札説明に来ていただいて個別に説明することとしている。
 本システムは幅広く使われている一般的な機器との説明にもかかわらず、「仕様に見合った製品の取扱いがない」あるいは「メーカーの協力が得られない」との理由で他社が入札参加を辞退したため一者入札になったとの説明を受けたが、協力が得られないとは、メーカー側で何らかの調整を行ったり、協力を得るための要件等があったということか。  本件調達に際して現在使用中の機器のメーカーに問い合わせたところ、同社は既に同種製品の製造を止めており、一般的な機器ではあるが、30名以上で一斉同時通話が可能な製品は今回納入された製品しかなかった。
 なお、メーカーによる調整や協力要件等の存否については、当関は不知である。
 予定価格の算定に当たって、メーカーから業者への販売価格及び値引率を聴取したとの説明を受けたが、聴取したメーカーとは今回納入された機器のメーカーか。  ご推察のとおり、30名以上で一斉同時通話が可能な製品は今回納入された製品しかなかったため、同システムを製造しているメーカーから聴取を行ったものである。
意見・質問 回答
【事案3】
契約件名
:監視艇「なんせい」搭載監視カメラシステム更新
契約相手方
:海洋総合開発 株式会社
契約金額
:163,800,000円
契約締結日
:平成21年11月25日
担当部局
:長崎税関
 
 一者応札で、落札率が極めて高い点に着目して抽出した。
 予定価格や他業者の情報等の秘匿性は守られているか。また、落札者が自社のみの入札と知り得なかったか。
 予定価格はメーカーの参考見積やヒアリングに基づき算出しており、漏洩はない。
 なお、他社でも可能である仕様であるため、自社のみとは判断出来ない。
 また、入札会場に1社だけしかいない場合にも、電子入札でも行っているため、他社の応札の有無は知りえない。
 本案件の調達は特殊なもので、例えば、制御用ソフトウェアは大手メーカーから購入することとなるのか、それとも応札者でも製作可能なのか。
 また、このような案件は落札業者以外でも履行可能なのか。
 更に、長崎税関が保有する他の2隻の監視艇への設置状況はいかがか。
 機器自体の特殊性はあるが、他の税関でも導入していることから極端に特殊な調達では無いと考えており、落札者以外の業者でも十分履行は可能と考える。
 なお、ソフトウェアが製作可能かについては、当関は不知である。
 他の2隻は平成13年と16年に建造しており船舶全体の調達であって、カメラシステムのみの調達は現在までのところ行っていない。
 他税関の船舶についての情報収集は行ったか。  聴取を行っており、船体の大きさや航行海域が多種多様であること、監視カメラの安定台に2軸のものと5軸のものとがあること、当該落札業者の製品と他社製品とがあること等を把握した。
 情報はある程度参考にはなったが、結果的に一者応札の解消にはつながらなかった。
 参加資格が「船舶整備」の資格となっており、船舶整備業者が各機器を調達したうえで取付・整備等を行っていると思料されるが、監視カメラを調達する場合の一般的な方法なのか。  同時期に行われていた他税関の参加資格条件を参考にした。
意見・質問 回答
【事案4】
契約件名
:確定申告期用パーソナルコンピュータの設定等業務
契約相手方
:東芝情報機器 株式会社
契約金額
:3,360,000円
契約締結日
:平成21年12月10日
担当部局
:福岡国税局
 
 落札率が極めて低い点に着目して抽出した。
 本件業務は毎年継続して実施する性格のものか。また、昨年度の入札状況はどうか。
 本件は税務署の確定申告会場に設置される確定申告書作成用パソコンへのソフトインストール及び接続設定業務であり、同様の施策を継続する限り毎年実施する必要がある。
 なお、昨年度は2社が応札し、本年度と異なる業者が約1,200万円で落札している。
 予定価格と乖離しすぎており、価格設定に問題があったのではないか。  予定価格は市販されている積算資料等に基づいて行っており、価格設定に問題があったとは考えていない。
 具体的には、作業従事者ごとに最低必要と認められる技術者資格の単価を市販の積算資料に基づき採用し、付随費用についても各社の料金を比較して最も経済的な価格を採用していることから、予定価格との乖離は企業努力の結果が反映されたものと認識している。
 本件は低価格調査制度の対象事案となるが、調査結果はどうか。また、提供された業務の品質に問題はなかったか。  低価格調査は、落札業者への聴取り及び入札価格内訳の確認により実施した。
 低価格による入札が可能となった理由は、人件費の節約と運送業者からの協力を得られたためであり、落札すれば取引実績ができるメリットがある旨の回答を得ている。
 なお、提供された業務の品質に関しても、一切問題はなかった。
 昨年度の審議案件に、本件の関連業務である確定申告会場のLAN配線等工事があったが、そちらの前年度と本年度の入札状況はどうか。  LAN配線等工事は、昨年度が一者入札であり約1,130万円で落札されたものが、本年度は3社の応札があり約720万円で落札された。
 本件パソコン設定業務と確定申告会場LAN配線工事は、前年度と本年度で落札者は異なるが、いずれも同一業者が落札している。片方を落札した者が有利になるような仕様や条件等があるのか。  LAN配線工事とパソコン設定業務は作業期間及び作業従事者の資格が異なるため、片方を落札した者が有利になるとは考えていない。
 入札状況を見ても、LAN配線工事の応札者3社とパソコン設定業務4社のうち重複して応札したのは2社である。
 昨年度はうまく競争原理が働いていなかったが、本年度のように排他的な低価格による落札も、市場競争原理を歪めてしまい、市場の形成を阻害することとなるため問題がある。
 本年度の結果を見て、来年度は競争相手が応札を諦めて再び一者応札となる可能性があるので注視する必要がある。
 
【委員会の審議結果】  
 審議の結果、4案件ともに適正な手続のもと調達がなされていることが確認された。
 また、全体として一者入札、随意契約及び公募案件の比率がかなり低下しており、一者入札案件はやむを得ない事情でそうなったものがかなりの割合を占めている。
 今後とも、各部局におかれては、一者入札の解消を目標に努力していただきたい。
 それでは、委員会として審議・検討した結果を報告させていただく。
 
 第1事案の小ヶ倉住宅電気・排水設備改修工事については、落札した3回目の入札結果を見ると予定価格に近い3者と、予定価格よりかなり高額な3者とがあり、応札金額の分布に不自然なバラツキがみられる。
 同様の工事が今後も発注されると思うので、競争業者の数や業者の受注意欲等から見て不自然な応札となっていないか、競争状態が入札結果にうまく反映されるよう注視していただきたい。
 
 第2事案のデジタルワイヤレスインターカムシステム購入については、入札説明には7社来たが一者応札となっており、設定した仕様に見合う機器を製造しているメーカーが1社だけという市場に原因のあることが考えられる。
 インターカムは民間企業や公共施設でも広く導入されているので、今後同様のシステムを調達する際は、発注側で仕様を確定させるのではなく、使用目的に応じた機器の構成などトータルパッケージで業者に提案させる提案型の総合評価方式を採用することが可能か、入札方法を検討していただきたい。
 
 第3事案の監視艇搭載監視カメラシステムについては、機器が極めて特殊であることは理解できるが、他の税関にも導入されているものである。
 したがって、長崎税関が保有する他の2隻の監視カメラを更新する際は、他税関の入札状況や発注方法を参考にする等、一者応札の解消策を講じて競争性を確保するよう努めていただきたい。
 
 第4事案の確定申告期用パソコンの設定等業務については、応札者が格段に増えて価格が下がっており、競争性が非常に高まった結果と言える。
 しかしながら、落札金額が極めて低額であることには問題があるため、例えば、落札業者がコスト割れしていないか事後に経費内訳書を提出させたり、他案件における落札業者の入札状況を注視するなど、適正公平な競争市場の確保の点についても努力していただきたい。