6 行政サービスのデジタル化の推進

〜 デジタル・ガバメント1の実現に向けて 〜
 令和3(2021)年12月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和4(2022)年6月改定)に基づき、国税庁においても、国税に関する手続のデジタル化に取り組んでいます。具体的には、納税者の視点でUI・UXの改善に取り組むほか、「社会保険・税手続のワンストップ化・ワンスオンリー化」2や「公金受取口座の登録・利用」などの推進に取り組んでいます。
 さらに、令和2(2020)年7月に閣議決定された「規制改革実施計画」等において、行政手続における書面・押印・対面規制の抜本的な見直しを行うこととされたことを踏まえ、令和3(2021)年4月以降、ほとんどの税務関係書類3への押印を要しないことにするとともに、令和4(2022)年1月以降、全ての国税関係手続をe-Taxでオンライン提出可能にしました。

  •  1 「デジタル・ガバメント」とは、国民・事業者の利便性向上に重点を置き、行政の在り方そのものをデジタル前提で見直す政府全体の取組です。
  •  2 「社会保険・税手続のワンストップ化・ワンスオンリー化」については、従前雇用主が従業員のライフイベント(採用、退職等)に伴い、行政機関ごとに提出が必要だった社会保険・税手続を、マイナポータルを通じて、一度で完了できるサービスを、令和3(2021)年11月から開始しています。また、令和4(2022)年1月からは、法定調書の提出義務者は、通常業務で使用している認定クラウドサービス等を利用して法定調書が提出可能になりました。
  •  3 担保提供関係書類及び物納手続関係書類のうち、実印の押印及び印鑑証明書の添付を求めている書類、相続税及び贈与税の特例における添付書類のうち財産の分割の協議に関する書類を除いています。

システムの安定性・信頼性と情報セキュリティの確保

 国税関係業務は、国民の権利義務と密接に関わっており、大量の納税者情報を管理しているため、システムに障害が発生した場合には、国民に多大な影響を与え、税務行政に対する信頼を損なうことにもなりかねません。このため、システム機器の定期的な更新を実施するなど、システムの安定的な運用を図っています。
 また、職員は職務上必要な情報しか利用できない仕組みにするとともに、定期的なセキュリティ監査を実施するなど、不正利用や漏えいの防止には細心の注意を払っています。
 なお、データを保有するe-Tax及びKSKシステムの基幹システムは、平成19(2007)年に国際的標準規格に準拠した、ISMS4適合性評価制度に基づく認証(ISO/IEC27001・JISQ270015に基づく認証)を取得し、以降は定期的に更新しています。
 さらに、令和2(2020)年には、法人番号の指定などを行うシステムについても、同認証を取得しました。

  •  4 「ISMS」とは、情報セキュリティマネジメントシステムの略称であり、保護すべき情報資産が機密性、完全性及び可用性において適切に管理された状態であることを維持するために必要な計画、運用、見直し及び改善を実施するための組織的取組のことです。
  •  5 「ISO/IEC27001」とは、国際標準化機構(International Organization for Standardization)の策定する標準化規格の1つです。情報セキュリティマネジメントシステムのグローバルスタンダードであり、平成17(2005)年10月に国際規格として標準化されました。また、「JISQ27001」とは、ISO/IEC27001に対応して、平成18(2006)年5月に発行された国内規格です。

国税総合管理(KSK)システム

 KSKシステムは、全国の国税局と税務署をネットワークで結び、地域や税目を越えた情報の一元的な管理により、各種事務処理の高度化・効率化を図るために導入したコンピュータシステムです。

システムの高度化(新たなシステムの構築)

 国税庁においては、ICTの活用による「納税者の利便性の向上」と「課税・徴収の効率化・高度化」を目指していくこととしており、これを実現するためのインフラとして、令和8(2026)年度の本格導入に向けて、次世代システムの開発を進めています。

  • 次世代システムについては、
  • 1 データ中心の事務処理を実現するシステム(紙からデータ)
  • 2 現在、税目別となっているデータベース・アプリケーションの統合(縦割りシステムの解消)
  • 3 独自OSを使用する大型コンピュータを中心としたいわゆる「メインフレーム」から、市販の汎用的なOSを使用するいわゆる「オープンシステム」への刷新(メインフレームからの脱却)
  • といったことを開発コンセプトとしています。

情報の厳正な管理

 国税庁は、個人の所得情報など、様々な情報を保有しています。これらの情報は厳格に管理する必要があり、情報が漏れるようなことがあれば、納税者の協力は期待できなくなり、円滑な調査・徴収等に支障が生じかねません。
 このため、税務職員が税務調査などで知った秘密を漏らした場合には、国家公務員法上の刑事罰(1 年以下の懲役又は50万円以下の罰金)よりも重い税法上の刑事罰(2年以下の懲役又は100万円以下の罰金)が科されることとなっています。
 職員に対しては、定期的に情報セキュリティに関する研修を行っているほか、調査などに際し、質問する場所についても、プライバシーに配慮し、店舗先や玄関先はなるべく避けるようにしています。
 また、国税庁は特定個人情報(マイナンバーをその内容に含む個人情報)などを取り扱うことから、マイナンバー法などの関係法令の趣旨を踏まえ、行政文書の管理状況を定期的に点検するなどにより、国税庁の保有する納税者情報を厳正に管理するよう努めています。

《コラム4》内部事務のセンター化

 申告書の入力や審査、還付金の支払手続、行政指導に関する事務など、税務署の内部で行う事務を「内部事務」と呼んでいます。この内部事務を効率化することでマンパワーを創出できれば、納税者サービスの充実や税務調査・滞納整理といった外部事務の充実・高度化に繋がります。
 国税庁では、令和3(2021)年7月から国税局の組織として業務センター室を設置し、複数の税務署の内部事務を集約処理する「内部事務のセンター化」を実施しています。
 今後、段階的に対象となる税務署を拡大しながら、令和8(2026)年には全ての税務署を対象とすることを予定しています。

内部事務のセンター化のイメージ