(1) 自主納付態勢の確立

年度内に納付された税金は約46.3兆円(年度内収納割合は98.6%)

 申告された国税は、国庫に納付されて初めて歳入となります。平成24年度においては、税務署に申告された国税などの課税額(徴収決定済額)が約46兆9,000億円であったのに対し、このうち年度内に国庫に納付された税金(収納済額)が約46兆3,000億円となっており、その収納割合は98.6%でした。

納付手段の多様化により納税者の利便性を向上

 国税は、納税者が自ら申告し、その税額を自ら期限までに納付する申告納税制度を原則としているため、期限を失念して納付が遅れてしまうことがないよう広報に努めています。
 国税の納付手段としては、現金に納付書を添えて金融機関又は税務署の窓口で納付する方法の他に、インターネットバンキングなどを利用した電子納税、コンビニ納付、ダイレクト納付といった多様な納付手段を順次導入し、納税者サービスの向上を図っています。
 また、所得税や個人事業者の消費税については、預貯金口座からの振替納税が利用できます。

滞納を未然に防止するための取組

 前回、期限を過ぎて納付した納税者に、あらかじめ文書で期限をお知らせし、期限を過ぎても納付のない納税者には、督促状を発付する前に電話で連絡して納付を促すなど、滞納を未然に防止するための取組を行っています。

ダイレクト納付(国税ダイレクト方式電子納税)

 ダイレクト納付は、あらかじめ預貯金口座の情報を記載した利用届出書を提出することで、e-Taxを利用して電子申告等をした後、簡単な操作で預貯金口座からの振替により納付することができる手続です。
 なお、ダイレクト納付に対応した金融機関の預貯金口座でなければダイレクト納付の利用はできないため、国税庁では未対応の金融機関に対して対応を要請するなど、利用可能金融機関の拡大に向けた取組を行っており、平成26年3月末現在、377の金融機関で利用可能となっています。

国税のコンビニ納付

 国税については、金融機関や税務署の窓口が開いていない夜間や休日においても、コンビニエンスストア店舗での納付手続が可能となっており、平成24年度のコンビニ納付件数は、約135万件でした。
 なお、コンビニ納付を利用するためには、バーコード付納付書が必要であり、納付金額が30万円以下で、次のような場合に所轄の国税局・税務署で発行します。

  • まる1  確定した税額を期限前に通知する場合(所得税の予定納税など)
  • まる2  督促・催告を行う場合(全税目)
  • まる3  賦課課税方式による場合(各種加算税)
  • まる4  確定した税額について納税者から納付書の発行依頼があった場合(全税目)

(2) 滞納の整理促進への取組

滞納整理中のものの額はピーク時の45.1%に

 滞納とは、国税が納期限までに納付されず、督促状が発付されたものをいい、平成24年度末時点の滞納税額は約1兆2,702億円となっています。

全税目の滞納整理中のものの額の推移

平成24年度 主要税目別の租税滞納状況

 国税庁では、まず滞納が発生しないようにすることが重要であると考えており、国税の確実な徴収を図るため、国税組織全体として滞納の未然防止や早期徴収に取り組んでいます。
 その上で、滞納となった国税については、期限内に国税の納付を行っている大多数の納税者との間の公平性を確保する観点から、早期着手・早期保全に努めるとともに、以下の基本方針の下、滞納の整理促進に取り組んでいます。

滞納整理は滞納者個々の実情に即しつつ適切に対応

 滞納処分の執行は、滞納者の権利・利益に特に強い影響を及ぼすことから、滞納整理に当たっては、事実関係を正確に把握した上で、差押え、公売等の滞納処分を行う一方で、納税の猶予、換価の猶予等の納税緩和措置を講じるなど、滞納者個々の実情に即しつつ、法令等の規定に基づき適切に対応しています。

大口・悪質滞納事案に対する厳正かつ毅然とした対応

 大口・悪質滞納事案の滞納整理に当たっては、捜索、差押え、公売等の滞納処分を実施するなど、厳正かつ毅然とした対応を行っています。
 また、財産の隠蔽等により滞納処分の執行を免れようとする特に悪質な事案については、滞納処分免脱罪1の告発を行うなど、特に厳正に対処しています。

 注釈

  • 1 差押えなどの滞納処分を免れる目的で、財産の隠蔽などを行った場合は、3年以下の懲役又は250万円以下の罰金が科されます。

処理困難事案に対する組織的な対応等

 広範囲にわたって財産調査先が存在するなどの処理困難事案については、相当の事務量や処理の進展に高度な徴収技法の活用が必要なため、広域運営、適時のプロジェクトチームの編成による滞納処分の実施など、組織的な対応を行うとともに、詐害行為取消訴訟1等の原告訴訟を提起するなど、法的手段を積極的に活用した滞納整理に取り組んでいます。

 注釈

  • 1 詐害行為取消訴訟とは、滞納者と第三者との間における債権者(国)を害する法律行為(詐害行為)の効力を否定して、滞納者から離脱した財産をその第三者から取り戻して滞納者に復帰させるための訴訟をいいます(国税通則法第42条、民法第424条参照)。

消費税滞納事案の確実な処理

 消費税滞納については、国民の関心が高く、また、滞納全体に占める割合が年々高まっているため、国税局及び税務署を通じて消費税滞納を含む滞納事案の完結に向けて確実な処理を行い、消費税の滞納残高の圧縮に取り組んでいます。

消費税の滞納整理中のものの額の推移

猶予制度の改正

 平成26年度税制改正では、次のとおり、猶予制度の見直しに関する国税通則法及び国税徴収法の改正が行われました。
 1 納税者の負担の軽減を図るとともに、早期かつ的確な納税の履行を確保する観点から、これまでの税務署長の職権による換価の猶予に加え、納税者からの申請による換価の猶予の制度が新設されました。
 2 納税の猶予及び職権による換価の猶予について、制度を使いやすくするとともに、的確な納税の履行を確保するため、担保を要する基準額の引上げや分割納付の規定、申請書・添付書類の整備など手続面の整備が行われました。
 これらの改正は、平成27年4月1日に施行されることとなっています。

(3) 集中電話催告センター室

効果的・効率的な電話催告の実施

 新規滞納事案については、集中電話催告センター室(納税コールセンター)において幅広く所掌し、集中電話催告システムを活用した電話催告等を行うことにより、効果的・効率的な滞納整理を行っています。
 これにより、平成24年7月から平成25年6月末までの1年間で、催告対象約75万者のうち、約52万者(69.4%)が完結し、約9万者(12.6%)が納付誓約となっています。

集中電話催告センター室の滞納整理状況

(4) インターネット公売

インターネット公売で約900物件を売却

 国税庁では、平成19年6月から、民間のオークションサイトを利用したインターネット公売を実施しています。
 このインターネット公売は、公売の参加者が公売会場に出向く必要がなく、公売の期間中24時間インターネット上で買受申込みをすることができるなど利便性が高く、より多くの公売の参加者を募ることができるため、差し押さえた財産の高価・有利な売却に役立っています。
 平成25年度は、4回のインターネット公売を実施しました。その結果、延べ約6千人の方の参加があり、美術品、貴金属、自動車、不動産など約900物件が売却され、その売却総額は約9億円となっています。

(5) 的確かつ効率的な債権債務の管理

システムの高度活用で的確かつ迅速な処理を実施

 納税申告や還付申告によって、国税の債権債務の管理業務が大量に発生します。この債権債務の管理業務を、税務署ではKSKシステムを活用し、的確かつ効率的に行っています。
 また、税金の納付については、所得税を中心に年間約3,950万件あり、この大量に発生する納付を効率的に処理するため、日本銀行における納付書のOCR処理(光学式文字認識処理)1や、所得税と個人事業者の消費税における振替納税2に加え、インターネットバンキングなどを利用した電子納税やダイレクト納付を導入して事務作業の合理化を図っています。還付金の支払についても、かつては各税務署から書面で振込処理を行っていましたが、現在は振込処理をオンライン化することにより、効率的かつ迅速な処理を進めています。
 国税債権債務の管理は、課税と徴収の要となるものです。今後とも、システムの高度活用により、迅速かつ的確な処理を行い、納税者に対する還付金の早期処理を図るなど、サービス向上に努めていきます。

 注釈

  • 1 「OCR処理(光学式文字認識処理)」とは、納付書に記載された文字を電子データに変換することをいい、この電子データにより日本銀行と国税庁の間の連絡を行うことで、情報伝達の合理化・ペーパーレス化を図ることができます。
  • 2 振替納税は、納税者があらかじめ指定した金融機関に、税務署から納付書を送付して預貯金口座から引き落として納付するという方法によって行われます。納付書を大量に金融機関に送付する必要がある場合には、この事務を効率的に行うため、金融機関に口座振替のためのデータを記録した磁気テープを送付し、金融機関において口座振替の処理を行うとともに、送付した磁気テープにその結果を記録して返却してもらうという処理を行います。