税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図るという公共的な使命を負っています。このため、税理士の業務である1税務代理、2税務書類の作成、3税務相談は、たとえ無償であっても税理士でない者は行ってはならないこととされており、同時に、税理士に対しては、脱税相談や税理士の信用又は品位を害する行為の禁止等、種々の義務と責任が課されています。なお、平成23年3月末現在で、全国で72,039人の税理士が登録を受け、また2,140の税理士法人が設立されています。
 納税者は、税理士が提供するサービス(申告書の作成や専門的な助言)を利用することにより、適正に申告・納税することができます。また、企業や個人事業者は、帳簿の作成や決算などの会計業務についても税理士に依頼したり、助言を受けるケースが多く、税理士は申告の基礎となる正しい記帳の推進においても重要な役割を果たしています。経済取引の複雑化や納税者数の大幅な増加などの状況の変化の中で、税理士の役割はますます高まっています。
 国税庁は、税理士会や日本税理士会連合会とも協力しながら、次のような施策を行うことにより、税理士の業務の適正な運営の確保に努めています。

(1)税理士などに対する指導監督

 税理士制度に対する国民の信頼を確保するため、国税庁は、税理士会との間で協議会を設けるなど、あらゆる機会を活用して注意喚起を行い、税理士の非行の未然防止に努めています。また、税理士などに対する調査を的確に実施し、税理士法に違反した税理士や、税理士でないにもかかわらず税理士業務を行ういわゆる「ニセ税理士」に対しては、懲戒処分や告発を行うなど厳正に対処しています。
 税理士に対する懲戒処分等については、官報公告に加えて国税庁ホームページにおいても懲戒処分内容等を公表しています。なお、平成22年度の税理士・税理士法人の懲戒処分等件数は37件となっています。
税理士・税理士法人に対する懲戒処分等件数のグラフ

(2)書面添付制度の推進

 税理士法に定められている書面添付制度は、税理士が申告書の作成に関して果たした具体的な役割を明確にすることができるとともに、国税庁としてもそれを尊重しようとするものです。具体的に、税理士は、申告書の作成に関し、計算し、整理し又は相談に応じた事項を記載した書面を申告書に添付することができ、この書面が添付されている申告書を提出した納税者にあらかじめ日時、場所を通知して税務調査を実施しようとする場合には、その通知前に税務代理権限証書を提出している税理士に対し、添付された書面に記載された事項に関して意見を述べる機会を与えなければならないというものです。
 この制度は、正確な申告書の作成・提出に資するとともに、税務行政の円滑化・簡素化が図られ、ひいては信頼される税理士制度の確立に結びつくものであることから、添付書面の記載内容の充実及び添付割合の向上が図られるよう、税理士会等との協議を積極的に行うとともに、この制度を尊重し、一層の普及・定着に努めています。

(3)e-Taxの利用促進

 e-Taxの普及においても、税理士の果たす役割が極めて大きいことを踏まえ、税理士会や日本税理士会連合会においては、税理士によるe-Taxの利用推進に取り組んでいます。
 国税庁も、税理士によるe-Tax利用が一層拡大するよう、関与先の法人税等の申告が集中する5月末の4日間(日曜日を除く)の受付時間を、午後10時30分まで延長(平常時は午後9時まで)して利便性の向上を図っているほか、各税理士会と協力して、e-Tax説明会の開催や講師派遣を行っています。

税理士会と日本税理士会連合会

 税理士会は、税理士業務の改善進歩等のために、税理士や税理士法人等の指導、連絡や監督を行う、税理士法に定められた団体です。現在、全国に15の税理士会があり、各税理士会では、1税理士の資質の向上のための研修、2小・中学校等での租税教室への講師派遣、3小規模納税者などに対する無料税務相談など、幅広い活動を行っています。
 また、日本税理士会連合会は、税理士会を会員とする、税理士法に定められた全国で唯一の団体です。税理士会とその会員に対する指導、連絡や監督に関する事務のほか、税理士の登録に関する事務、税理士に関する制度についての調査研究などの活動を行っています。詳しくは、日本税理士会連合会のホームページhttp://www.nichizeiren.or.jp/ をご覧ください。