(1)自主納付態勢の確立

 申告された国税は、国庫に納付されて初めて歳入となります。平成21年度においては、税務署に申告された国税などの課税額(徴収決定済額)が約44兆5,000億円であったのに対し、このうち年度内に国庫に納付された税金(収納済額)が約43兆6,000億円となっており、その収納割合は98.1%でした。
 国税は、納税者が自ら申告し、その税額を自ら期限までに納付する申告納税制度を原則としています。このため、期限を失念して納付が遅れてしまうことがないよう広報に努めるほか、継続的に申告・納付を行う申告所得税や個人事業者の消費税については、預貯金口座からの振替納税が利用できることを案内しています。さらに、コンビニ納付(平成20年1月導入)、インターネットバンキングなどを利用した電子納税(平成16年6月導入)、ダイレクト納付(平成21年9月導入)といった多様な納付手段を導入し、納税者サービスの更なる向上を図っています。
 また、前回、期限を過ぎて納付した納税者には、あらかじめ文書で期限をお知らせし、期限を過ぎても納付のない納税者には、督促状を発付する前に電話で連絡して納付を促すなど、滞納の未然防止を図っています。

ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)

 事前に税務署へ届出をすることで、e-Taxを利用して電子申告や納付情報登録などをした後に、金融機関のインターネットバンキングを経由することなく、簡単なクリック操作で、届出をした預貯金口座からの振替により、即時又は期日を指定して納付することができます。
 なお、ダイレクト納付は、納税者の利用する金融機関がダイレクト納付に対応している必要があるため、国税庁では、未対応の金融機関に対応を要請するなど利用可能金融機関の拡大に向けた取組を行っており、平成23年3月末現在では、66の金融機関で利用可能となっています。


国税のコンビニ納付

 国税については、金融機関や税務署の窓口が開いていない夜間や休日においても、コンビニエンスストア店舗で納付手続が可能となっており、平成22年1月から12月までのコンビニ納付件数は、約112万件でした。
 なお、コンビニ納付を利用するためには、バーコード付納付書が必要であり、納付金額が30万円以下で、次のような場合に所轄の国税局・税務署で発行します。

  1. 1  確定した税額を期限前に通知する場合(所得税の予定納税など)
  2. 2  督促・催告を行う場合(全税目)
  3. 3  賦課課税方式による場合(各種加算税)
  4. 4  確定した税額について納税者から納付書の発行依頼があった場合(全税目)

(2)滞納の整理促進への取組

 滞納とは、国税が納期限までに納付されず、督促状が発付されたものをいい、平成21年度末時点の滞納税額は約1兆4,955億円となっています。
 国税庁では、まず滞納が発生しないようにすることが重要であると考えており、国税の確実な徴収を図るため、国税組織全体として滞納の未然防止や早期徴収に取り組んでいます。
 その上で、滞納となった国税については、期限内に国税の納付を行っている大多数の納税者との間の公平性を確保する観点から、早期着手・早期保全に努めるとともに、以下の基本方針の下、滞納の整理促進に取り組んでいます。
 なお、滞納処分の執行は、納税者の権利・利益に特に強い影響を及ぼすことから、滞納整理に当たっては、事実関係を正確に把握した上で、差押え、公売等の滞納処分を行う一方で、納税の猶予、換価の猶予等の納税緩和措置を講じるなど、滞納者個々の実情を踏まえながら、法令の規定に基づき適切に対応しています。

  1. イ 大口・悪質滞納事案に対する厳正かつ毅然とした対応
     大口・悪質滞納事案の滞納整理に当たっては、捜索、差押え、公売等の滞納処分を実施するなど、厳正かつ毅然とした対応を行っています。
     また、財産の隠ぺい等により滞納処分の執行を免れようとする特に悪質な事案については、滞納処分免脱罪1の告発を行うなど、特に厳正に対処しています。
  2. ロ 処理困難事案に対する重点的な処理
     広範囲にわたって財産調査先が存在するなど、処理展開を図るために相当な事務量を要するなどの処理困難事案については、相当の事務量や処理の進展に高度な徴収技法の活用が必要なため、広域運営、適時のプロジェクトチームの編成による滞納処分の実施など、組織的な対応を行うとともに、詐害行為取消訴訟2等の原告訴訟を提起するなど、法的手段を積極的に活用した滞納整理に取り組んでいます。
  3. ハ 消費税滞納事案の確実な処理
     消費税滞納については、国民の関心が高く、また、滞納全体に占める割合が年々高まっているため、国税局及び税務署を通じて消費税滞納を含む滞納事案の完結に向けて確実な処理を行い、消費税の滞納残高の圧縮に取り組んでいます。

 注釈

  1. 1 差押えなどの滞納処分を免れる目的で、財産の隠ぺいなどを行った場合は、3年以下の懲役又は250万円以下の罰金が科されます。
  2. 2 詐害行為取消訴訟とは、滞納者と第三者との間における債権者(国)を害する法律行為(詐害行為)の効力を否定して、滞納者から離脱した財産をその第三者から取り戻して滞納者に復帰させるための訴訟をいいます(国税通則法第42条、民法第424条参照)。
全税目の滞納整理中のものの額の推移のグラフ 消費税の滞納整理中のものの額の推移のグラフ 消費税の占める割合の推移のグラフ

(3)集中電話催告センター室

 新規滞納事案については、集中電話催告センター室(納税コールセンター)において幅広く所掌し、集中電話催告システムを活用した電話催告等を行うことにより、効果的・効率的な滞納整理を行っています。
 これにより、平成21年7月から平成22年6月までの1年間で、催告対象約81万者のうち、約55万者(67.7%)が完納し、9万者(11.2%)が納付誓約となっています。

※ 集中電話催告センター室では、滞納者に対してコンピュータシステムが自動的に電話をかけ、職員が、端末機画面に表示された滞納者情報を参照しながら、効果的・効率的な納付の催告を行っています。

集中電話催告センター室の滞納整理状況のグラフ

(4)インターネット公売

 インターネット公売は、民間のオークションサイトを利用することにより、公売の参加者が公売会場に出向く必要がなく、公売の期間中24時間インターネット上で買受申込みをすることができます。国税庁では平成19年6月から実施しています。
 このインターネット公売は、利便性が高く、より多くの公売の参加者を募ることができるため、差し押さえた財産の高価・有利な売却に役立っています。
 平成22年度は、4回のインターネット公売を実施した結果、延べ約1万人の方が参加され、絵画、貴金属、自動車、不動産など約700物件が売却され、その売却総額は約4億円となっています。

(5)的確かつ効率的な債権債務の管理

 納税申告や還付申告によって、国税の債権債務の管理業務が大量に発生します。この債権債務を、的確かつ効率的に管理するため、税務署ではKSKシステムで債権債務を管理しています。
 また、税金の納付については、所得税を中心に年間約4,100万件あり、この大量に発生する納付を効率的に処理するため、日本銀行による納付書のOCR処理(光学式文字認識処理)1や、所得税と個人事業者の消費税における振替納税2に加え、平成16年にはインターネットバンキングなどを利用した電子納税を、平成21年にはインターネットバンキングを経由することなく電子納税ができるダイレクト納付を導入して事務作業の合理化を図っています。還付金の支払いについても、各税務署から書面で振込処理を行っていましたが、平成13年に振込処理を集中化して、磁気テープによりペーパーレスでの処理に移行し、さらに、平成18年9月からは、振込処理をオンライン化することにより、効率的かつ迅速な処理を進めています。
 国税債権債務の管理は、課税と徴収の要となるものです。今後とも、システムの高度活用により、迅速かつ的確な処理を行い、納税者に対する還付金の早期還付を図るなど、サービス向上を図っていきます。

 注釈

  1. 1 「OCR処理(光学式文字認識処理)」とは、納付書に記載された文字を電子データに変換することをいい、この電子データにより日本銀行と国税庁の間の連絡を行うことで、情報伝達の合理化・ペーパーレス化を図ることができます。
  2. 2 振替納税は、納税者があらかじめ指定した金融機関に、税務署から納付書を送付して預金口座から引き落として納付するという方法によって行われます。納付書を大量に金融機関に送付する必要がある場合には、この事務を効率的に行うため、金融機関に口座振替のためのデータを記録した磁気テープを送付し、金融機関において口座振替の処理を行うとともに、送付した磁気テープにその結果を記録して返却してもらうという処理を行います。