国税庁では、平成15年7月に決定された「電子政府構築計画」に基づき、1業務を的確に実施するための事務処理の簡素化・効率化、2IT活用による納税者利便性の向上等、3IT活用による調査・滞納整理に関するシステムの高度化、4システムの安定性・信頼性及び情報セキュリティの確保、5システム関係経費の削減及び調達の透明性の確保を図ることを基本理念として、平成18年3月に「国税関係業務の業務・システム最適化計画」(平成22年6月改定)を策定・公表し、国税関係業務・システムの最適化に取り組んでいます。
 この1年間の施策を見ると、事務処理の簡素化・効率化の観点では、平成21年7月から内部事務の一元化を全国の税務署で実施しているほか、e-Taxの普及に伴う事務処理の一層の効率化を推進しています。
 納税者の利便性の向上などの観点では、e-Taxの使い勝手の向上を進めたほか、新たな国税の納付手段であるダイレクト納付を導入しました。
 システムの高度化の観点では、調査・滞納整理の一層の充実を図るため、経済社会の国際化・高度情報化に対応するシステム改善を実施しています。
 システム関係経費の削減及び調達の透明性の確保の観点では、KSKシステムを互換性の高いシステムに移行するオープンシステム化1、採用するソフトウェアの汎用製品化、機器更新を行う際の機器の統合などを推進しています。
 厳しい行財政事情の下で、このような業務・システムの最適化に取り組むことにより、経費の節減、行政運営の簡素化、業務効率や納税者利便性の向上を図るとともに、適正かつ公平な課税の実現という国税庁の任務を的確に果たすため、税務調査や滞納整理の一層の充実を図っています。

注釈

  1. 1 オープンシステム化とは、特定のメーカーに依存することなく、広く複数のメーカーの製品を取り込める互換性の高いシステムへ移行することです。
「国税関係業務の業務・システム最適化計画」の実施内容(イメージ図)

[システムの安定性・信頼性と情報セキュリティの確保]

 国税関係業務は、国民の権利義務と密接にかかわっているため、そのシステムに障害が発生した場合には、国民に多大な影響を与え、税務行政に対する信頼を損なうことにもなりかねません。このため、システム機器の定期的な更新を実施するなど、国税関係システムの安定的な運用を図っています。
 また、国税関係システムは、大量の納税者情報を保有・蓄積することから、不正利用や漏えいの防止には細心の注意を払っています。このため、職員は職務上必要な情報しか利用できない仕組みにするほか、情報セキュリティに関する訓令を定めてその徹底を図り、さらには、外部専門家によるセキュリティ監査を定期的に実施し必要な対策を講ずるなど、情報セキュリティの確保に努めています。
 なお、e-Tax及びKSKシステムのデータを保有するコンピュータセンターについては、国際的標準規格に準拠した、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)1を構築し、平成19年にISMS適合性評価制度に基づく認証(ISO/IEC27001:2005・JISQ27001:20062に基づく認証)を取得しました。認証を取得したことにより、国税組織全体の情報セキュリティ管理体制の整備や強化につながっただけでなく、職員は情報セキュリティに対する意識が向上し、自覚と使命を持って、システムの運用に努めています。

注釈

  1. 1 情報セキュリティマネジメントシステムとは、保護すべき情報資産が機密性、完全性及び可用性において適切に管理された状態であることを維持するために必要な計画、運用、見直し及び改善を実施するための組織的取り組みのことです。
  2. 2 ISO/IEC27001:2005とは、国際標準化機構(International Organization for Standardization)の策定する標準化規格の1つです。情報セキュリティマネジメントシステムのグローバルスタンダードであり、2005年10月に国際規格として標準化されました。また、JISQ 27001:2006とは、ISO/IEC 27001に対応して、2006年5月に発行された国内規格です。

[参考] KSKシステム

 KSKシステムは、全国の国税局と税務署をネットワークで結び、申告・納税の事績や各種の情報を入力することにより、国税債権などを一元的に管理するとともに、これらを分析して税務調査や滞納整理に活用するなど、地域や税目を越えた情報の一元的な管理により、税務行政の根幹となる各種事務処理の高度化・効率化を図るために導入したコンピュータシステムです。
 平成2年から本格的な開発を開始し、平成7年以降、順次導入を進め、平成13年からは全国での運用を開始しています。

KSKシステム