(1) 開発途上国に対する協力

 国際協力機構(JICA)の技術協力の枠組みなどの下、我が国と相手国の経済的結び付きなどの関係も踏まえ、アジア諸国を中心に開発途上国に対する技術協力に国税庁は積極的に取り組んでいます。
 これは、開発途上国の税務行政の改善、日本の税務行政に対する理解者を育成することなどを目的とし、1開発途上国などへ職員を派遣し、現地で講義などを行うもの(派遣型)、2開発途上国の税務職員などを対象とした国内で実施される研修において講義などを行うもの(受入型)の2つの形があります。

[技術協力の概要]

1 開発途上国への職員派遣(派遣型)

 開発途上国で実施される研修に税務当局のニーズを踏まえ、税務調査、国際課税、職員研修などの分野について、職員を講師として派遣しています。平成20年度は、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナムなどへ派遣し、我が国の税務行政に関する講義等を行いました。
 また、開発途上国の税務行政に対して継続的なアドバイスを提供することを目的として、JICAの「長期専門家」としても職員を派遣しています。平成20年度においては、マレーシア、インドネシア、ベトナムに職員が常駐しています。

2 国内における研修の実施

  1. (1) 「国際税務行政セミナー(ISTAX)」
     開発途上国の税務職員を対象とした研修であり、そこで日本の税制・税務行政全般について講義などを行っています。このセミナーには、中堅職員を対象とした一般コースと幹部職員を対象とした上級コースがあり、平成20年度には、両コースあわせて計30名が参加しました。
  2. (2) 「国別税務行政研修」、「カウンターパート研修」
     特定の開発途上国の税務職員を対象とした研修であり、各国からの要望に沿った講義などを行っています。平成20年度は、中国、インドネシア、モンゴル、フィリピン、タイ、ベトナムなどの税務職員を対象に行われました。
  3. (3) 「アジア国際課税研修」
     複数のアジア諸国(中国、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)の税務職員を対象とした研修で、「国際課税」に関する講義などを行っています。平成20年度は6か国から12名が参加しました。
  4. (4) 「国税庁実務研修」
     世界銀行などの奨学金制度を利用し、我が国の大学院(修士課程)に留学している開発途上国の税務職員を対象とした研修です。研修では、日本の税制・税務行政全般に関する講義などを行い、平成20年度は、慶応義塾大学、横浜国立大学、政策研究大学院大学、一橋大学、早稲田大学の各大学院への留学生21名が参加しました。

(2) 税務当局間の国際会議への参加

 経済の国際化や高度情報化の進展により新たな取引形態が拡大する中で、各国の課税ルールが異なることなどにより生ずる二重課税リスクの問題や、租税回避行為などによりどこの国においても課税されない「課税の空白」といった問題が、各国税務当局が取り組むべき課題となっています。こうした諸問題の解決に向けて各国税務当局間で協力や経験の共有を図るために、国税庁は様々な多国間・二国間の国際会議に積極的に参加しています。
 OECD租税委員会は、OECD加盟国が、モデル租税条約、移転価格ガイドラインなどを整備し、また、各国税務当局の有する知見や経験の共有化を図る場となっています。また、近年では、OECD加盟国に主要な非加盟国・地域を加えた税務長官クラスの会合であるOECD税務長官会議(FTA)において、共通の課題について検討を進めており、最近では、世界金融危機が税務行政に与える影響について討議が行われたほか、タックスヘイブンを利用した租税回避行為への対応や金融機関や個人富裕層などのコンプライアンス(法令遵守)向上策などが議論されています。国税庁は、こうした租税委員会の活動に積極的に参加しています。詳しくは、国税庁ホームページの「OECD租税委員会(CFA)」http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/oecd/index.htmをご参照ください。
 更に、日本、アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリス、フランス、ドイツ、中国、韓国、インドの10か国で構成する主要国税務長官会合では、国際的な租税回避行為など各国が直面する喫緊の課題について議論を行っており、平成21年1月には、我が国の主催の下、京都で会議が開かれたところです。また、アジア地域における15か国・地域の税務当局が構成するアジア税務長官会合(SGATAR : Study Group on Asian Tax Administration and Research)では、域内の協力と知見の共有を図るための議論を行っています。