国際化が進み、個人や企業が海外へ進出すると、日本と進出先国の双方から課税される「二重課税」が生じる場合があります。また、前述の移転価格により二重課税が生じる場合もあります。国税庁は、租税条約に基づく税務当局間の相互協議1を活用して、国際的な二重課税の問題に対応しています。
 相互協議の発生件数は近年増加傾向にあり、その9割以上が移転価格に関するものです。また、その中でも、世界的な移転価格課税の広がりを受けて移転価格問題についての予測可能性を確保するため、事前確認に係る協議が増加しています。平成19事務年度においては、153件の相互協議事案が発生し、うち移転価格に関するものは144件、そのうち事前確認に係るものは113件でした。これを10年前と比較しますと、相互協議件数で約3倍、事前確認に係る相互協議件数で約5倍になっています。 相互協議件数にあわせて相互協議相手国数も増加してきており、10年前には14か国でしたが、平成20年6月末では24か国に増加しています。同様に、相互協議を伴う事前確認については、昨今は、アジア諸国など、これまで事前確認の経験が乏しかった国との間でも増加してきています。
 国税庁では、これら相互協議事案の適切で迅速な解決に向け、担当者を増員して事前確認に重点を置いた体制の充実を図るとともに、各国税務当局間の協力関係を一層深め、より効率的に協議を進めるようにしています。

相互協議事案発生件数の推移のグラフ

注釈

  1. 1 「相互協議」とは、納税者が租税条約の規定に適合しない課税を受け、又は受けるに至ると認められる場合において、その条約に適合しない課税を排除するため、条約締結国の税務当局間で解決を図るための協議手続です。
我が国の租税条約ネットワークの図