税理士は、納税者が適正な申告と納税ができるよう援助することなどを職務とする、税務に関する専門家であり、税理士法において「税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図る」という公共的な使命が規定されています。平成21年3月末で、全国で71,177人の税理士が登録を受け、また1,750の税理士法人が設立されています。
 納税者は、税理士に申告書の作成を依頼したり、税理士の専門的な助言に基づいて申告を行ったりするなど、税理士が提供するサービスを利用することにより、適正に申告・納税することが可能であり、経済取引の複雑化や納税者数の大幅な増加などの状況の変化の中で、税理士の役割はますます重要になっています。
 また、企業や個人事業者は、帳簿の作成や決算などの会計業務についても税理士に依頼したり、助言を受けるケースが多く、税理士は申告の基礎となる正しい記帳の推進においても重要な役割を果たしています。
 このような税理士となるためには一定の資格要件が必要であり、1税務代理、2税務書類の作成、3税務相談の各業務は、たとえ無償であっても税理士でない者は行ってはならないこととされており、同時に、税理士に対しては種々の義務と責任が課されています。
 国税庁は、各税理士会や日本税理士会連合会とも協力しながら、税理士の業務の適正な運営と税理士制度に対する国民の信頼の確保に努めています。

(1) 書面添付制度の推進

 税理士法に定められている書面添付制度は、税理士が申告書の作成に関して果たした具体的な役割を明確にすることができるとともに、国税庁としてもそれを尊重しようとするものです。具体的に、税理士は、申告書の作成に関し、計算し、整理し又は相談に応じた事項を記載した書面を申告書に添付することができ、この書面が添付されている申告書を提出した納税者にあらかじめ日時、場所を通知して税務調査を実施しようとする場合には、その通知前に、税務代理権限証書を提出している税理士に対し、添付された書面に記載された事項に関して意見を述べる機会を与えなければならないというものです。
 この制度は、正確な申告書の作成・提出に資するとともに、税務行政の円滑化・簡素化が図られ、ひいては信頼される税理士制度の確立に結びつくものであることから、国税庁は、添付書類の記載内容の充実や添付割合の向上が図られるよう、税理士会等と協議を行うとともに、意見聴取の機会を積極的に活用するなど、この制度を尊重し、一層の普及・定着に努めています。

(2) e-Taxの利用促進

 e-Taxの普及においても、税理士の果たす役割が極めて大きいことを踏まえ、日本税理士会連合会においては、自主的な目標を掲げて、税理士のe-Tax利用の推進に取り組んでいます。
 国税庁も、税理士によるe-Tax利用が一層拡大するよう、平成19年1月から、税理士が納税者の依頼を受けて税務書類を作成し、e-Taxへ送信する場合の納税者本人の電子署名の省略を可能とするとともに、各税理士会と協力して、e-Taxなどの説明会の開催や講師派遣を行っています(e-Taxについては、30ページをご参照ください。)。

(3) 税理士などに対する指導監督

 税理士制度に対する国民の信頼を確保するため、国税庁は、税理士に対する指導監督を行っており、税理士会との間で協議会を設けるなど、あらゆる機会を活用して注意喚起を行い、税理士の非行の未然防止に努めています。また、各種情報の収集や調査を的確に実施し、税理士法に違反する行為をしている税理士やいわゆる「ニセ税理士」に対しては、懲戒処分や告発を行うなど厳正に対処しています。
 平成20年3月には、税理士に対する懲戒処分の透明性を確保するなどの観点から、その処分基準である「税理士・税理士法人に対する懲戒処分等の考え方」を公表し、懲戒処分の対象となった者について、官報公告に加えて国税庁ホームページにおいても公表しています。

[税理士会と日本税理士会連合会]

 税理士会は、税理士と税理士法人の義務の遵守、税理士業務の改善進歩に資するために、税理士会の支部と会員の指導、連絡や監督を行うことを目的とする、税理士法に定められた団体で、現在、全国に15の税理士会があり、税理士と税理士法人は、その事務所の所在地を管轄する税理士会の会員になっています。
 各税理士会では、1会員の資質の向上、業務の改善・進歩に資するための研修、2小・中・高校での租税教室への講師派遣を通じた社会貢献、3小規模納税者などに対する無料税務相談など、幅広い活動を行っています。
 また、日本税理士会連合会は、税理士会を会員とする、税理士法に定められた全国で一の団体であり、税理士会とその会員に対する指導、連絡や監督に関する事務のほか、税理士の登録に関する事務、税理士に関する制度についての調査研究などの活動を行っています。詳しくは、日本税理士会連合会のホームページhttp://www.nichizeiren.or.jp をご覧ください。