納税者の自発的な納税義務の履行を、適正かつ円滑に実現します。

国や地方公共団体は、国民の生活に欠かすことのできない公共サービスを提供するため、さまざまな行政活動を行っています。そして、その活動のために必要な経費を賄う財源が税金です。公共サービスが税金によって円滑に提供されるよう、日本国憲法は国民の義務の一つとして納税の義務を定め、国税庁には税金を徴収する権限が与えられています。
国税庁の使命は、納税者の自発的な納税義務の履行を、適正かつ円滑に実現することにあります。国税庁では、国民から負託された責務を果たすために、租税教育や広報活動など納税者が納税義務を理解し実行することを支援する活動(納税者サービス)や、善良な納税者が課税の不公平感を持つことがないよう、納税義務が適正に果たされていないと認められる納税者に対し、的確な指導や調査を実施することによって誤りを確実に是正する活動(適正・公平な税務行政の推進)により、内国税の適正かつ公平な課税の実現を図っています。併せて、酒類業の健全な発達ならびに税理士業務の適正な運営の確保に努めています。
国税庁は、これらの取組に当たっては、その責務について納税者である国民の理解と信頼を得ることが重要であると考えています。このため、これらを分かりやすく取りまとめた「国税庁の使命」1を職員に示して事務の遂行を図り、さらに、国民に対して公表しています。


1 「国税庁の使命」とは、「国税庁の事務の実施基準及び準則に関する訓令」に職員が事務を遂行するための行動規範を加えたものです。


国税庁の使命

使命:納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する。

任務

● 上記使命を達成するため国税庁は、財務省設置法第19条に定められた任務を、透明性と効率性に配意しつつ、遂行する。

  1. 1 内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収の実現
    1. (1) 納税環境の整備
      1. 1 申告・納税に関する法令解釈や事務手続などについて、分かりやすく的確に周知・広報を行う。
      2. 2 納税者からの問い合わせや相談に対して、迅速かつ的確に対応する。
      3. 3 租税の役割や税務行政について幅広い理解や協力を得るため、関係省庁等及び国民各層からの幅広い協力や参加の確保に努める。
    2. (2) 適正・公平な税務行政の推進
      1. 1 適正・公平な課税を実現するため、
        1. イ 関係法令を適正に適用する。
        2. ロ 適正申告の実現に努めるとともに、申告が適正でないと認められる納税者に対しては的確な調査・指導を実施することにより誤りを確実に是正する。
        3. ハ 期限内収納の実現に努めるとともに、期限内に納付を行わない納税者に対して滞納処分を執行するなどにより確実に徴収する。
      2. 2 納税者の正当な権利利益の救済を図るため、不服申立て等に適正・迅速に対応する。
  2. 2 酒類業の健全な発達
    1. 1 酒類業の経営基盤の安定を図るとともに、醸造技術の研究・開発や酒類の品質・安全性の確保を図る。
    2. 2 酒類に係る資源の有効な利用の確保を図る。
  3. 3 税理士業務の適正な運営の確保
    • 税理士がその使命を踏まえ、申告納税制度の適正かつ円滑な運営に重要な役割を果たすよう、その業務の適正な運営の確保に努める。

行動規範

● 上記任務は以下の行動規範に則って遂行する。

  1. (1) 任務遂行に当たっての行動規範
    1. 1 納税者が申告・納税に関する法令解釈や事務手続などについて知ることができるよう、税務行政の透明性の確保に努める。
    2. 2 納税者が申告・納税する際の利便性の向上に努める。
    3. 3 税務行政の効率性を向上するため事務運営の改善に努める。
    4. 4 調査・滞納処分事務を的確に実施するため、資料・情報の積極的な収集・活用に努める。
    5. 5 悪質な脱税・滞納を行っている納税者には厳正に対応する。
  2. (2) 職員の行動規範
    1. 1 納税者に対して誠実に対応する。
    2. 2 職務上知り得た秘密を守るとともに、綱紀を厳正に保持する。
    3. 3 職務の遂行に必要とされる専門知識の習得に努める。

今後の取り組み

● 高度情報化・国際化等の経済社会の変化に的確かつ柔軟に対応し、また、納税者のニーズに応えるため、税務行政組織及び税務行政運営につき、不断に見直し・改善を行っていく。

国の収入と税

※ 公債金は、公共事業費などを賄うために発行された建設公債と歳入の不足を埋め合わせるために発行された特例公債による収入であり、すべてが将来返さなければならない借金です。

平成19年度の国の収入(一般会計歳入予算)は年間82兆9,088億円です。そのうち53兆4,670億円が租税及び印紙収入で、そこから税関からの税収分や日本郵政公社からの印紙収入分を除くと、国税組織の税収分は47兆2,539億円(約88%)となります。
また、所得税、法人税、消費税で税収分の約8割を占めています。

国税庁の予算と定員

平成19年度の国税庁予算額は7,245億円で、その大半を人件費が占めています。近年は、特に事務の効率化や納税者サービスの向上に重点を置いており、国税総合管理(KSK)システムをはじめ、IT関連費の比率が高まっています。
国税庁の定員は、昭和40年代後半から昭和50年代は5万2,000人台で推移しました。その後、平成元年に消費税が導入されたことなどに伴い定員が増加しましたが、平成9年度をピークに減少し、平成19年度では5万6,185人となっています。

  昭和50年度 平成9年度 平成19年度 (参考)
平成19年度/昭和50年度
予算(億円) 2,360 6,548 7,245 307.0 %
定員(人) 52,440 57,202 56,185 107.1 %
1 所得税確定申告数(千件) 7,327 20,023 23,494 320.6 %
2 法人数(千件) 1,482 2,793 2,977 200.9 %
3 物品税課税場数(千件) 117
4消費税課税事業者数(千件) 2,521 3,766
1234(千件) 8,926 25,337 30,237 338.8%

(注1) 平成19年度の1所得税確定申告数は、平成18年分の計数です。

(注2) 平成19年度の2法人数は、平成18年6月末の計数です。

(注3) 4は、消費税課税事業者等届出書提出件数です。なお、平成19年度は、平成19年3月末の計数です。

(注4) (参考)は、昭和50年度を100としたときの平成19年度の割合です。

国税組織の機構

 国税事務を行う組織として、国税庁の下に、全国12の国税局(沖縄国税事務所)と全国524の税務署があります(注1)

地方支分部局

(注1) 各部署の人数、%は、平成19年度の定員、国税庁全体の定員に占める割合を示しています。

(注2) 国税審議会では、1国税不服審判所長が国税庁長官通達と異なる法令解釈により裁決を行うなどの場合において、国税庁長官が意見を求めた事項の調査審議、2税理士試験の執行と税理士の懲戒処分の審議、3酒類の表示基準などの制定などを審議しています。

主要な取組事項

 国税庁では、高度情報化の急速な進展、経済社会の国際化などに対応するため、さまざまな取組を行っています。
平成18年度においては、特に、電子申告などITを利用した申告・納税の推進や、国際化への対応に向けた取組を行うとともに、行政コスト削減のため、事務の簡素化・効率化を推進してきました。

1 電子申告などITを利用した申告・納税の推進

国税庁では、申告・納税の際の納税者の負担を軽減するため、国税電子申告・納税システム(e-Tax)や国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」など、情報通信技術(IT)の活用を推進しています。
e-Taxについては、平成18年3月に決定した国税関係手続の「オンライン利用促進のための行動計画」(平成19年3月改定)に基づき、行動計画に盛り込んだ目標の達成に向けて、普及のための各種施策を実施しました。
また、確定申告書等作成コーナーについては、納税者のニーズを踏まえ、より利用しやすいものとなるよう、このコーナーから直接e-Taxに送信することを可能にするとともに、土地などの譲渡所得に係る計算機能や贈与税申告書作成機能の追加を行いました。

2 国際化への対応

国際的な取引にかかわる納税者のコンプライアンス1〈法令遵守〉の維持・向上を図るには、各国間の課税ルールの違いによる二重課税リスクを排除するなどの対応が必要ですので、国際取引について各国共通のルールの整備、各国税務当局間の協力や経験の共有を図ることが重要です。
このため、1租税条約に基づく情報交換、2租税条約に基づく相互協議事案の適切・迅速な処理、3税務当局間の国際会議への参加、4開発途上国への知的支援に積極的に取り組んでいます。
また、各国の税制の差異や租税条約の違いを巧みに利用して租税負担を軽減する国際的租税回避スキームが問題となっています。こうした国際取引を利用した脱税や租税回避に対しては、あらゆる機会を通じて取引の実態把握を図り、課税上問題があると認められる場合には、綿密な税務調査を行い、厳正に対処しています。
さらに、海外に所在する関連企業との取引価格を通じた移転価格の問題についても、積極的に取り組んでいます。

3 事務の簡素化・効率化の推進

「簡素で効率的な政府」を実現するため、各府省において、「行政効率化計画」や「業務・システム最適化計画」などを定め、行政の効率化を一層徹底していくこととしています。
国税庁においても、税務行政を取り巻く環境が変化する中で、新たな課題にも積極的に取り組みながら、変化に柔軟に対応した効率的な事務運営を行うため、事務処理や関係システムを不断に見直していく必要があります。このため、事務の効率化・合理化、経費削減などのさらなる最適化を図る観点から、平成18年3月に「国税関係業務の業務・システム最適化計画」(平成19年5月改定)を決定しました。
具体的には、内部事務の一元化2、税務相談の集中化、システム関係経費の削減、公共調達の透明性を確保するため、国税総合管理(KSK)システムのオープンシステム化3の推進などの施策を進めており、行政コストの削減を図っています。
そのほか、業務の一部をアウトソーシングするなどさまざまな取組を行い、事務の簡素化・効率化を推進しています。


1 「コンプライアンス」とは、納税者が高い納税意識を持ち、法律に定められた納税義務を自発的にかつ適正に履行すること(法令遵守)です。

2 「内部事務の一元化」とは、これまで個人、法人、管理・徴収といった事務系統別に行っていた内部事務を、事務系統や税目といった垣根を取り払い、各税目の事務を標準化・共通化し、同種の事務作業を統合して、事務を横断的に一元処理することをいいます。

3 「オープンシステム化」とは、個々のメーカーが独自に開発してきたシステムに対して、広く公開された規格や仕様に従ってシステムを構築することをいいます。

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