「異議申立て」「審査請求」「訴訟」。納税者の正当な権利・利益を救済するための制度です

 税務調査により更正処分などを受けた場合に、税務署と納税者との見解が対立し、納税者がその処分に 不服がある時は、直接裁判所に訴訟を提起する前に、行政部内でこれを再審理する制度があります。この制度は納税者の正当な権利や利益を簡易に、かつ迅速に救済するための手続きで、「異議申立て」と「審査請求」があります。
 処分に対して不服がある納税者は、まず異議申立てを税務署長などに起こすことを原則としています。 一方、審査請求は、税務署長などからは独立した専門機関である国税不服審判所長に対して行うものです。
 更に、国税不服審判所長の裁決を経た後の処分に納税者が不服がある時は、一般の行政事件の場合と同様、裁判所に対して訴訟を起こすことができます。

●異議申立て

 異議申立ては、税務署長などが更正・決定や差押えなどの処分をした場合に、その処分に不服がある納税者が、行政庁である税務署長などに対して、その処分の取消しや変更を求める手続きであり、国税に関する処分の行政争訟の第一段階です。
 近年、経済取引の広域化、国際化などによる異議申立事案の複雑化に伴い、異議申立てに関する事実や法令解釈の困難なものが増加しています。このような状況に対応するため、国税庁は各国税局に審理課・審理官を設置し、また各種研修を通じて、調査能力に加え審理にも精通した職員を養成するなど、納税者からの異議申立てを適正かつ迅速に処理できる体制づくりに努めています。
 国税庁は、このような異議事務を的確に行うことに努め、調査段階において、全国各地の納税者が適正・公平な課税の適用を受けられるよう、税法の正確な解釈に基づく全国均一的な執行に取り組んでいます。

図14 異議申立ての3か月以内の処理件数割合及び異議申立処理件数異議申立ての3か月以内の処理件数割合及び異議申立処理件数のグラフ

●審査請求

 次に、上記の異議申立てに対する税務署長などの決定になお不服がある納税者は、国税不服審判所長に対し「審査請求」を行うことができます。

 国税不服審判所は、国税局や税務署から独立した第三者的な立場で納税者の正当な権利や利益を救済する機関です。そこでは専門的な知識と豊富な経験を持った国税審判官、国税副審判官、国税審査官が公正な立場で調査、審理に当たっています。なお、国税不服審判所長、東京と大阪支部の首席国税審判官などには、裁判官、検察官が就任しています。

 国税不服審判所は、審査請求人や税務署などと早期に接触し、双方の主張を十分把握した上で、当事者双方の主張を整理した「争点整理表」を作成して早期に争点を明確化します。その上で、争点について、双方の意見・主張を十分に聞き、必要に応じて自ら調査を行って、納税者の正当な権利・利益を簡易かつ迅速に救済するように努めています。

 なお、国税不服審判所長の裁決は、税務署長などの行った処分以上に納税者に不利益になることはありません。また、裁決は、国税庁としての最終判断であるため、税務署長などは、仮にこれに不服があっても訴訟を起こすことはできません。

図15 審査請求の1年以内の処理件数割合及び審査請求処理件数
審査請求の1年以内の処理件数割合及び審査請求処理件数のグラフ

●訴訟

 納税者は、国税不服審判所長の裁決を経た後、なお不服がある時は、裁判所に対して訴訟を起こすことができます。国税庁としても、日々変化する社会経済情勢の中で生じるさまざまな税務上の問題について、裁判所から示された判断を受け止め、税務執行に反映させています。

●権利救済の状況

 異議申立てについては、3か月以内の処理を目指しており、その処理件数割合は近年8割前後で推移しています。平成16年度(2004年度)における課税関係の異議申立処理件数は4,124件で、このうち新たな事実が把握されたことなどにより納税者の主張の全部または一部が認められた割合は約14.8%です。審査請求の裁決は、現在、原則一年以内に終えるよう努めています。平成16年度における課税関係の審査請求は3,146件で、このうち請求の全部または一部が認められた割合は約15.5%です。
 課税関係の訴訟について、平成16年度における提起件数は457件です。また、訴訟終結件数は387件であり、このうち納税者の主張の全部または一部が認められた割合は、約14.0%となっています。
 なお、国税庁や国税不服審判所は、権利救済制度に関する納税者からの理解を得るため、裁決事例などの情報をホームページを通じて提供しています。

図16 不服申立制度と訴訟の関係
不服申立制度と訴訟の関係の図

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