(4)確実な税金の納付

●自主納付体制の確立

申告した税金は、国庫に確実に納付されて初めて歳入となります。平成15年度(2003年度)は、税務署に申告された国税の課税額約47兆円に対し、年度内に納められた税金は約46兆円であり、その割合は約97.4%でした。
 国税では、納税者が自ら申告し、その税額を自ら納付書に書き入れて申告期限までに納付することになっています。したがって、誤って納付期限を過ぎてしまうことがないよう広報に努めるほか、継続的に申告・納付を行う個人事業者の方には、預貯金口座からの振替納税が利用できることを案内しています。また、平成16年(2004年)からは、e-Taxによって自宅や事務所で国税の納付手続きができるようにするなど、納税者サービスの向上に努めています。
 また、前回、期限を過ぎて納付した納税者には、次回の納付期限を文書で呼び掛けたり、誤って期限を過ぎてしまった方には、督促前に電話で連絡するなど、収納の確保に努めています。

●滞納圧縮への取組み

 滞納とは、国税が期限までに納付されていないことをいいます。平成16年度(2004年度)末における滞納残高は約1兆8千7百万円(暫定値)となっています。滞納を放置することは、納期限内に国税の納付を行っている大多数の納税者との間に不公平をもたらし、申告納税制度が目指す自主申告・自主納付という原則を揺るがしかねないことから、納税者の個々の実情も踏まえた上で、厳正な滞納処分に努めています。
 国税が滞納となり、督促状による督促をしても、更に納付しょうようを行っても、なお納付されない時は、財産の差押えなどを行います。差押えの対象となる財産は、土地・建物といった不動産、預金や売掛金といった債権、あるいは動産、有価証券など、多様なものとなっています。しかし、納税者が災害や病気、あるいは経済的事情による休廃業など、一時的に納付が困難な場合には、納税を緩和する措置として、分割での納付を認めるなど、納税者の実情に即した対応を行います。
 国税庁は、平成11年(1999年)以降、滞納の圧縮を当面の最重要課題の一つと位置付け、組織を挙げて滞納発生の未然防止に取り組み、また、滞納整理に当たっては、預り金的性格を有する消費税の滞納と大口・悪質な滞納に対して優先的・重点的な取組みを行うとともに、新規に発生した少額滞納事案については、納税コールセンターを活用するなど、効率的に整理促進を図っています。
 また、滞納処分の執行を免れる目的で、財産を隠蔽したり処分するなどの特に悪質な滞納者については、捜査当局に対し、国税徴収法第187条の滞納処分免脱罪による告発を行っています。滞納処分免脱罪が適用されると、その行為者には3年以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられることとなります。平成8年(1996年)以降、5件告発しています。

図12 租税滞納額等の推移
租税滞納額等の推移のグラフ

●納税コールセンター

 納税コールセンターでは、最新のコンピュータシステムにより自動的に滞納者へ電話をかけ、税務職員が、端末機画面に表示された滞納者情報を参照しながら、納付の催告を行っています。これまでの文書による催告と比較して、完納に至る割合は4〜5倍に上がり、滞納整理の効率化に役立っています。納税コールセンターは、平成14年(2002年)に東京局に新たに設置、その後、順次、大阪局、関東信越局に設置し、平成16年(2004年)に全国に拡大しました。

●効率的な債権債務の管理

 納税申告や還付申告によって、国税の債権債務の管理業務が集中して発生します。この債権債務を、的確かつ効率的に管理するため、昭和41年(1966年)からシステム化を図ってきました。平成13年(2001年)にKSKシステムが全国の税務署に導入され、統一されたシステムで債権債務を管理しています。
 また、税金の収納については、所得税を中心に年間約4,000万件の納付があります。これまでは、その大半が金融機関の窓口で納付されていました。この大量に発生する収納を効率的に処理するため、申告所得税の磁気テープ交換による口座振替、いわゆる振替納税1を導入して事務作業の合理化を図るとともに、日本銀行による納付書のOCR処理2など金融機関や日本銀行との連携によって合理化を図ってきました。還付金の支払いについても、各税務署から書面で振込処理を行っていましたが、平成13年(2001年)に磁気テープによる還付金振込処理のペーパーレス化・集中化を開始し、効率的かつ迅速な処理を進めています。
 e-Taxの導入によって、これまで税務署や金融機関の窓口でしか納付ができなかった税目についても、パソコンやATM等を使って納付が行えるようになり、一層効率的な事務処理が可能になりました。今後は、金融機関とも連携しながら、電子納税をより多くの納税者に利用していただくよう努めていきたいと考えています。
 国税債権・債務の管理は、課税と徴収の要となるものです。今後とも、システムの高度活用により、迅速かつ的確な処理を行い、納税者に対する還付金の早期還付に努めるなど、サービス向上を図っていきます。


  1. 1 振替納税は、納税者が予め指定した金融機関に、税務署から納付書を送付して引き落とすという方法によって行われます。申告が一時に集中する申告所得税では、納付書を大量に金融機関に送付する必要があり、金融機関、税務署の双方で、その入出力事務に膨大な事務が必要となるので、この事務を効率的に行うため、金融機関に口座振替のためのデータを記録した磁気テープを送付し、口座振替の処理を行って、その結果を送付した磁気テープに記録して返却してもらうという処理を行います。
  2. 2 OCR処理(光学式文字認識処理)とは、納付書に記載された文字を電子データに変換することをいい、これによりペーパーレス化を図ることができます。

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