調査に際しては、納税者の都合をうかがうため、原則として、調査日時などをあらかじめ電話により通知しています。ただし、ありのままの事業実態等の確認を行う必要がある場合には、事前に通知は行っていません。なお、事前通知は、所得税の調査で約8割、法人税の調査で約9割について実施しています。
税務調査のため、職員が納税者の住居や事務所にうかがう際には、写真入りの身分証明書などを提示して職員の身分と氏名を明らかにしています。その際、調査担当者に日々の取引を記帳している帳簿書類を提示していただき、申告内容や帳簿などに関する質問に対して正確に説明していただければ、税務調査は迅速かつ円滑に進みます。
また、調査を開始した場合は、納税者にかかる負担を少なくするため、できるだけ迅速に進めるよう努めています。
税務調査は、原則として、納税者本人の立会いの下に行います。なお、納税者は、税務代理を委嘱した税理士を税務調査に立ち会わせることができます。
税務調査において申告内容に誤りが認められた場合は、納税者に申告の誤りの内容と納付すべき税額を説明し、修正申告や期限後申告をすすめています。修正申告等をした場合、その修正申告等に係る異議申立てや審査請求(「6.権利救済」参照)をすることはできません。また、納付すべき税額のほかに延滞税がかかります。更に過少申告加算税、無申告加算税または重加算税がかかる場合があります。修正申告等を勧める際には、「修正申告等について」という書面を用いて、これらのことについて説明を行っています。なお、納税者が修正申告等の勧めに応じない場合には、税務署長が更正等を行い、納税者のもとに更正通知書や決定通知書を送付しています。
税務調査の結果、申告内容に誤りが認められなかった場合、次のような対応をとっています。
税金の計算においては、収入や売上、経費の支払いなど納税者のプライバシーに触れる情報が必要となります。また、税務調査では、取引先に関する情報なども必要となる場合があります。こうした納税者のプライバシーや情報が簡単に漏れるようでは、納税者の国税庁への協力は期待できなくなり、円滑な調査に支障が生じかねません。
このため、税務職員が税務調査などで知った秘密を漏らした場合には、国家公務員法上の刑事罰(1年以下の懲役または3万円以下の罰金)よりも重い税法上の刑事罰(2年以下の懲役または30万円以下の罰金)が課されることとなっています。こうした罰則規定の趣旨を徹底するため、定期的に職員に対する研修を行っています。また、お話をうかがう場所についても、プライバシーを配慮し、店舗先や玄関先はなるべく避けるようにしています。
なお、平成17年(2005年)4月1日に「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」等が施行されたことを踏まえ、国税庁の保有する納税者情報の厳正な管理についても一層の徹底を行っています。
適正な申告や納税を確保するため、期限内に正しい申告や納付をしていない場合、延滞税がかかります。更に、過少申告加算税、無申告加算税、重加算税のいずれかがかかる場合があります。
表5 加算税の取扱い及び延滞税の免除
●延滞税
納期限の翌日から2か月を経過する日まで | 年4.1%(平成17年〈2005年〉の場合)
※金融情勢により変動することがあります。 |
---|---|
納期限の翌日から2か月を経過した日以後 | 年14.6% |
●加算税
期限内の申告の有無等 | 通常の場合 | 仮装等があった場合 |
---|---|---|
期限内に申告したが税額が少なかった場合 | 過少申告加算税(10%または15%) | 重加算税(35%) |
期限内の申告がない場合 | 無申告加算税(15%) | 重加算税(40%) |
なお、納税者に帰すべき事由のない、正当な理由があると認められる場合は、過少申告加算税、無申告加算税または重加算税は課されません。
また、災害による納税の猶予を受けた場合や国税職員の誤った申告指導などによって、納税者が申告または納付することができなかったなど一定の要件に該当する場合には、その猶予期間に対応する延滞税の全部または一部を免除しています。
国税庁では、こうした加算税等が課されない場合の取扱いを定め、国税庁ホームページで公表しています1。
我が国の企業の経営環境が大きく変化する中で、企業の競争力を確保し、企業活力が十分発揮できるよう、商法等において柔軟な企業再編を可能とするための法制等の整備が進められてきました。法人税法でも、平成13年度(2001年度)の税制改正で会社分割・合併等に関する税制の整備が行われました。更に、企業がグループとしての事業活動を展開し、企業開示が連結財務諸表を中心として行われる中で、平成14年度(2002年度)の税制改正で、連結納税制度が創設されました。
平成14年(2002年)8月から導入された連結納税制度は、企業グループをあたかも一つの法人として捉えて法人税を課税する新たな制度です。国税庁は、承認申請や連結申告などが適正に行われるように、事前照会への対応、承認申請の審査に係る事務処理体制を整備しています。また、連結グループに対する調査に当たっては、親法人所轄部署と子法人所轄部署、国税局の調査部と税務署の間で緊密な連絡、協調体制を確立して一体的な調査に努め、平成15事務年度(2003事務年度)においては79グループに調査を実施しました。
表6 連結納税に関する申告状況
(平成15事務年度〈2003事務年度〉)
連結申告の状況 | 申告件数 | 239件 |
---|---|---|
黒字申告割合 | 20.1% | |
申告所得金額 | 657億円 | |
参考 |
個別所得金額 | 12,024億円 |
国際的租税回避スキームには、個々の企業や個人がその活動に合わせてスキームを組むオーダーメイド型スキームと、スキームを開発した者が不特定多数の企業や個人に販売する商品型スキームがあります。
オーダーメイド型スキームには、外国企業が我が国で事業活動や投資活動をするに当たり、租税条約の濫用目的で設立したペーパーカンパニーを通じて投資するなど、我が国の課税を免れようとする事例があります。
また、商品型スキームには、収入に比べて多額の減価償却費を先行計上することが可能な航空機リース取引を組合事業として行い、「節税商品」と称して高収益の中小企業や個人の富裕層に対して組合出資を募り、計算上の損失を分配する、という事例があります。