国税庁は、発足以来、納税義務の履行を適切かつ円滑に実現するという使命を達成するため、税務行政を推進してまいりました。特に、平成13年(2001年)の中央省庁等改革を契機として、担当する事務について、事務の実施基準などのルールを定め、公表いたしました。また、併せて、国税庁が達成すべき目標を設定し、その目標に対する実績を評価して公表することになりました。
 こうした改革は、税務行政が納税者である国民の皆様から負託されたものであるという基本的認識に立って、

  1. 1 国税庁の使命、実績目標、施策等を国民の皆様に明らかにし、説明責任を果たすこと
  2. 2 事務全般について、客観的に実績を評価することにより、効率的で質が高く、時代の要請に合った行政を目指すこと
  3. 3 仕事の進め方を改善し、職員の意欲の向上、組織の活性化を図ること

を目的としたものです。
 現在、我が国は、かつてない速さで少子・高齢化が進んでおり、高齢化に伴い貯蓄率が著しく低下しています。また、経済のグローバル化により、個人や企業の国境を越えた活動が広がりを見せ、かつ、企業も家族もそのあり様が大きく変化しています。他方、財政状況が悪化するとともに、今後社会保障に要する費用の増大が見込まれる中で、国民一人一人が、我が国をどのように支えていくのか、公共サービスと負担をどのように選択するのかを含めて、税のあり方、国のあり様を真剣に考えていただく時期に来ていると思います。このような観点から昨年、30年間続いてきた「税を知る週間」を見直し、「税を考える週間」に改称・実施しました。
 また、私どもの執行する税務行政は、現在の厳しい定員事情の下で、年金課税の見直しや消費税の免税点の引下げなどに伴う申告者数の増加等、取り巻く環境はますます厳しくなっております。このような変化に的確に対応していくためには、善良な納税者には親切に対応する一方、悪質な納税者に対しては厳しく対処するとともに、税理士との関係では新書面添付制度の趣旨に沿った運用を行うなど、メリハリのある税務行政を行っていくことが肝要であると考えています。これにより適正・公平な税務行政を推進し、税務行政に対する国民の皆様の理解と信頼を得てまいりたいと思います。
 この「国税庁レポート2005」は、このような国税庁の取組みについて、納税者に分かりやすく説明するために作成したものです。編集にあたっては、

  1. 1 国税庁は今後どのような方針で税務行政を推進しようとしているのか
  2. 2 現在の税務行政で改善すべき点は何か

に重点を置いてご説明しています。
 申告納税制度の下で、納税者が自発的に、かつ適正に納税義務を履行していただけることが、国税庁の使命を達成することにつながります。この「国税庁レポート2005」が納税者の納税に対するご理解を深める一助になれば幸いです。
平成17年(2005年)6月

国税庁長官 大武健一郎

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