11 地方税当局との協力

 国と地方団体との税務執行上の協力関係については、納税者利便の向上や国税及び地方税を通じた税務行政の効率化を図る観点から、各種税法の規定等に基づき、1所得税確定申告書の市町村における収受、2所得税確定申告書の共同発送や申告相談での協力、3資料情報の収集・交換、4納税に関する広報の協力など、現行制度の下において可能な限り協力を図ってきているところである。

 また、平成9年(1997年)4月から導入された地方消費税の賦課徴収等については、当分の間、国が消費税と併せて行うこととされているところ、地方消費税を円滑かつ適正に執行する観点から、税務署長は、その賦課徴収を行うため必要があるときは、都道府県知事及び市長村長に対し、資料又は情報の提供等を求めることができることとなっている。

12 税理士制度

 税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼に応え、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図るという公共的使命を有しており、申告納税制度の適正かつ円滑な運営に重要な役割を果たしている。

 税理士の業務、資格、権利及び義務等は、税理士法(昭26法律第237号)に規定されており、税理士業務は、印紙税、登録免許税などを除く租税に関し、税務代理、税務書類の作成及び税務相談を行うこととされている。

 税理士となる資格を有する者は、税理士試験に合格した者のほか、税理士法に定める一定の要件に該当する者として税理士試験を免除された者、弁護士(弁護士となる資格を有する者を含む。)及び公認会計士(公認会計士となる資格を有する者を含む。)である。これらの者が税理士となるには、日本税理士会連合会に備える税理士名簿に登録を受けなければならない。また、税理士は、税理士法人を設立することができ、税理士法人を設立した場合には、日本税理士会連合会に届け出なければならない。

 税理士又は税理士法人でない者は、税理士業務を行うことはできないこととなっており、これに違反すると罰則が適用される。ただし、国税局長に対して通知を行った弁護士及び弁護士法人、国税局長の許可を受けた公認会計士については、一定の条件の下で税理士業務を行うことができる。

 税理士登録者数は、平成15年(2003年)3月31日現在66,674人であり、このほか、国税局長に通知することにより税理士業務を行っている弁護士は1,236人、また、国税局長の許可を受けて税理士業務を行っている公認会計士は2,187人となっている。

 また、税理士の義務の遵守及び税理士業務の改善進歩に資するため、会員等に対する指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的として、税理士は地域ごとに税理士会を設立しており、全国に15の税理士会がある。これらの税理士会により、全国で一の税理士の自治的団体として、日本税理士会連合会が設立されている。

 国税庁は、税理士業務の適正な運営の確保を図ることを任務とし、税理士制度の運営に関する事務を行っており、国税庁に設置された国税審議会は、税理士試験の実施及び税理士に対する懲戒処分の審議を行っている。

 なお、税理士制度を取り巻く状況の変化を踏まえ、納税者利便の向上に資するとともに、信頼される税理士制度の確立を目指す観点から、平成13年(2001年)5月、税理士法が改正され、平成14年(2002年)4月1日から施行されている。(表35参照

13 事務処理の情報システム化

  1. (1) 概要

     国税庁においては、昭和41年(1966年)2月からコンピュータによる事務処理を開始し、事務の合理化を推進してきた。

     近年における経済取引の複雑化、広域化など税務行政を取り巻く環境が大きく変化する中、税務行政の高度化、効率化を図り、適正・公平な課税を目指していくために、国税総合管理(KSK)システムの開発を行った。KSKシステムは、平成7年(1995年)1月から試行を開始し、その後順次導入局署を拡大し、平成13年(2001年)11月に全国への導入を完了した。現在、全税務署においてKSKシステムによる事務が行われている。

     なお、KSKシステムは、平成15年7月に策定・公表された電子政府構築計画に基づき、KSKシステムの効率化に向けて、外部専門家による刷新可能性調査を実施しているところである。

     また、KSKシステムとは別に、「行政情報化推進基本計画の改定について」(平成9年12月20日閣議決定)に基づき、

    1. イ 地方支分部局等を含めた、パソコン1人1台の配備
    2. ロ 地方支分部局等を含めた、LANの設備
    3. ハ 本省庁、地方支分部局等のLANを接続する省庁内ネットワークの整備

     を行い、事務の効率化の推進を図ることとしており、これによって、国税庁及び国税局の職員にパソコンを1人1台配備し、国税庁と各国税局とを結ぶLAN・WANの整備を行った。現在は税務署を含めた国税庁のWANの構築を行っているところである。

  2. (2) KSKシステムの基本的機能

     KSKシステムは、地域や税目を越えた情報の一元的な管理により、税務行政の根幹となる各種事務処理の高度化・効率化を図るために導入したコンピュータシステムである。

     KSKシステムは、

    1. イ 入力した申告・納税の事績等をシステム内に蓄積し、それらの情報を有機的に結びつけることにより、国税債権等の一元的な管理が可能となる。
    2. ロ 決算事項や資料情報などの蓄積した情報を基に、多角的な分析を行うことで、税務調査対象の選定や滞納整理対象者の抽出の支援等各種施策の充実が図られる。
    3. ハ 納税証明書をシステムで作成することにより、発行の迅速化が図られる。また、随時の情報参照が可能となることにより、納税者からの問い合わせに対して、より的確かつ迅速に対応できる。

    など、税務行政の高度化・効率化や適正・公平な課税の実現及び納税者利便の向上に大きく寄与している。

     なお、KSKシステムは、政府が進めている電子政府の実現の一環である電子申告や電子納税等の税務行政のIT化に不可欠な情報通信基盤でもある。

14 電子申告等の導入に向けた取組

 国税庁においては、政府として進めている電子政府の実現の施策の一環として、納税者利便の向上の観点から、所得税、法人税及び消費税の申告、全税目の納税(手数料の納付も含む。)、税法に規定されている申請・届出等(電子納税証明書の請求及び発行を含む。)の手続について、インターネット等を利用して電子的に行うことができる「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」の開発を行っており、運用開始に当たっては、安定的な稼働を確認しつつ段階的に利用者や業務を拡大することとし、平成16年2月から名古屋国税局管内で運用を開始することとし、本年11月からそのための開始届出書の受付を開始した。平成16年6月からは全国に運用を拡大することとしている。

 また、e-Taxを利用するための手続等について、「国税電子申告・納税システム(e-Tax)ホームページ」(http://www.e-tax.nta.go.jp)において情報提供を行うとともに、ホームページに寄せられたご意見やe-Taxに関する電話での問い合わせに対応する「ヘルプデスク」(Tel 0570-015901)を平成15年8月から設置している。

15 事務の監察

 国税庁の所掌事務について、総合的、横断的な監察を行い、事務運営の現状を把握するとともに、その問題点及び改善策を検討し、税務行政の効率的かつ円滑な運営に資することを目的として事務の監察を実施している。

  1. イ 国税局総合視閲

     国税局総合視閲は、国税局及び税務署の現状を正確に把握して、事務運営の在り方を総合的に検討し、税務行政の刷新改善に資することを目的として実施するものである。

     平成15事務年度(平成15.7.1〜平成16.6.30)においては、沖縄国税事務所、金沢国税局、東京国税局及び熊本国税局について総合視閲を実施している。

  2. ロ 国税局総合視閲以外の事務監察

     特定事項に限定して国税局又は税務署の事務運営等を検討するための長官特命特別監督・局長要請特別監督のほか、日常の事務処理状況を点検するための署務視閲を実施している。

16 受付窓口の充実

 来署者に親しみやすく利用しやすい税務署を目指して、担当部門の案内や申告書等用紙の交付を行い、初めての来署者でもスムーズに用事を済ませるようサポートするための受付窓口を設置している(平成16年(2004年)1月現在、266署に設置)。

 また、一部の税務署では、文書収受及び納税証明書の発行手続も含めた幅広い事務を受付窓口に集約して、来署者が税務署内を行き来する必要がないようにする、「総合窓口」(いわゆるワンストップサービス)を設置するなど、事務の効率化の観点も踏まえた上で、納税者利便の向上に努めている。

17 情報公開

 国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開をはかり、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするため、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(情報公開法)が制定され、平成13年(2001年)4月1日から施行されている。

 国税庁においては、開示請求者の利便に配意し、国税庁本庁をはじめ、国税局(所)、税務署など全国563か所に情報公開窓口を設置している。

 平成14年度(2002年4月〜2003年3月)における国税庁の開示請求件数は、32,278件となっており、全省庁の53.9%を占めている。

 また、平成14年度(2002年4月〜2003年3月)における国税庁の開示決定等件数は、32,454件となっており、その内訳は、全部開示の割合93.8%、部分開示の割合5.1%、不開示の割合1.1%となっている。