第1節 情報公開

1 概要

 行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的として、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(以下この章において「情報公開法」という。)が平成13年4月から施行されている。
 情報公開法では、何人も、行政機関の長に対し、当該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができ、行政機関の長は、開示請求があったときは、個人に関する情報や事務の適正な遂行に支障を及ぼすような情報などの不開示情報が含まれている場合を除き、開示請求に係る行政文書を開示しなければならないとされている。
 国税庁では、情報公開法施行時より国税庁本庁、各国税局、沖縄国税事務所、税務署、税務大学校及び国税不服審判所(以下この章において「国税庁」という。)に情報公開窓口を設け、情報公開法に基づく開示請求に対応している。
 開示請求に対する開示決定等に不服がある場合には、行政不服審査法に基づく不服申立てをすることができ(審査請求を経ずに行政事件訴訟法に基づき訴訟を提起することも可能)、国税庁においては、国税庁本庁以外の各機関が行った開示決定等に対する不服申立ては、全て国税庁本庁が裁決すべき行政機関となっている。また、開示決定等に対する不服申立てについて第三者的立場から調査審議を行う諮問機関として、総務省に情報公開・個人情報保護審査会(以下この章において「審査会」という。)が設置されており、不服申立てがあったときは、その裁決又は決定すべき行政機関の長は、原則として審査会に諮問しなければならないこととされている。
 諮問に対し審査会が行った答申については、審査会制度が設けられた趣旨に鑑み、当然に尊重されるべきものとして答申の内容に沿った裁決を行っているところである。

2 施行状況

(1) 開示請求の受付状況
 情報公開法施行直後の平成13年度の国税庁に対する開示請求件数は約2万件であり、国(全省庁)への開示請求件数の約4割を占め、その後、平成17年度までは約3万件から5万件で推移し、国(全省庁)への開示請求件数の約5割以上を占めていた。しかし、平成18年4月に所得税法等の規定に基づく公示制度が廃止されたことに伴い、それまで開示請求件数の大部分を占めていた公示関係書類の開示請求が減少したため、平成18年度以降は3,000件台を推移した。平成21年度から平成30年度の国税庁に対する開示請求件数の推移は、表「開示請求件数の推移」のとおりであり、国(全省庁)への開示請求件数に占める割合は減少傾向にあるものの、国税庁に対する開示請求件数は、平成23年度以降は増加傾向にある。

開示請求件数の推移

  国税庁(A) 全省庁(B) (A)/(B)
平成21年度 3,007 72,390 4.2
平成22年度 3,813 86,034 4.4
平成23年度 3,265 96,677 3.4
平成24年度 3,523 100,286 3.5
平成25年度 3,612 103,457 3.5
平成26年度 3,635 104,939 3.5
平成27年度 3,790 111,415 3.4
平成28年度 3,748 126,502 3.0
平成29年度 3,931 141,159 2.8
平成30年度 3,940 152,641 2.6

(2) 開示決定等の内訳
 情報公開法施行直後の平成13年度の国税庁に対する開示請求件数は約2万件であり、国(全省庁)への開示請求件数の約4割を占め、その後、平成17年度までは約3万件から5万件で推移し、国(全省庁)への開示請求件数の約5割以上を占めていた。しかし、平成18年4月に所得税法等の規定に基づく公示制度が廃止されたことに伴い、それまで開示請求件数の大部分を占めていた公示関係書類の開示請求が減少したため、平成18年度以降は3,000件台を推移した。平成21年度から平成30年度の国税庁に対する開示請求件数の推移は、表「開示請求件数の推移」のとおりであり、国(全省庁)への開示請求件数に占める割合は減少傾向にあるものの、国税庁に対する開示請求件数は、平成23年度以降は増加傾向にある。

開示決定等の件数及びその内訳

  開示決定等件数
  全部開示   部分開示   不開示  
割合 割合 割合
平成21年度 国税庁 2,924 620 21.2 2,185 74.7 119 4.1
全省庁 62,916 24,104 38.3 36,797 58.5 2,015 3.2
平成22年度 国税庁 3,839 562 14.7 3,180 82.8 97 2.5
全省庁 73,345 30,341 41.4 41,128 56.1 1,876 2.5
平成23年度 国税庁 3,238 426 13.1 2,525 78.0 287 8.9
全省庁 83,712 42,983 51.4 38,688 46.2 2,041 2.4
平成24年度 国税庁 3,568 744 20.9 2,712 76.0 112 3.1
全省庁 94,113 47,627 50.6 44,465 47.2 2,041 2.2
平成25年度 国税庁 3,592 557 15.5 2,906 80.9 129 3.6
全省庁 95,464 39,398 41.3 53,801 56.4 2,265 2.4
平成26年度 国税庁 3,592 503 14.0 2,973 82.8 116 3.2
全省庁 97,544 37,532 38.5 57,654 59.1 2,358 2.4
平成27年度 国税庁 3,840 569 14.8 3,100 80.7 171 4.5
全省庁 100,271 38,090 38.0 59,004 58.8 3,177 3.2
平成28年度 国税庁 3,657 523 14.3 2,975 81.4 159 4.3
全省庁 112,236 41,639 37.1 68,111 60.7 2,486 2.2
平成29年度 国税庁 3,959 671 17.0 3,113 78.6 175 4.4
全省庁 128,591 43,482 33.8 82,233 64.0 2,876 2.2
平成30年度 国税庁 3,961 547 13.8 3,311 83.6 103 2.6
全省庁 138,852 40,626 29.3 95,169 68.5 3,057 2.2

(注)「割合」欄は開示決定等件数に占める「全部開示」、「部分開示」及び「不開示」の割合である。

(3) 不開示決定等に対する不服申立ての状況
 情報公開法に基づく不開示決定等に対する不服申立ての処理状況は、表「不服申立ての処理状況の推移」のとおりである。
 不服申立てを受けた事案については、簡易迅速な手続により、権利利益の救済を図ることが重要であるとの観点から、各省庁で構成する情報公開に関する連絡会議における申合せにより、特段の事情がない限り、不服申立てがあった日から90日以内に、審査会に諮問することとされている。
 また、審査会への諮問及び国税庁における裁決の状況は、表「情報公開・個人情報保護審査会への諮問及び国税庁における裁決の状況」のとおりである。
 情報公開制度が定着するにつれて、国税庁の保有する行政文書に係る審査会の答申も数多く示され、答申の考え方を基準に開示・不開示の判断を行っており、情報公開法の適切な運用が図られているところである。

不服申立ての処理状況の推移

  不服申立件数
(新規受付)
処理件数 翌年度への繰越し件数
  取下げ 裁決・決定
平成21年度 26 52 2 50 34
平成22年度 85 37 3 34 82
平成23年度 181 69 1 68 194
平成24年度 44 205 3 202 33
平成25年度 57 58 1 57 32
平成26年度 46 29 1 28 49
平成27年度 52 52 2 50 49
平成28年度 40 56 1 55 33
平成29年度 25 38 1 37 20
平成30年度 44 30 2 28 34

情報公開・個人情報保護審査会への諮問及び国税庁における裁決の状況

  諮問 裁決件数
  棄却 認容 一部認容 却下 その他
平成21年度 13 50 19 0 7 24 0
平成22年度 31 34 15 5 5 9 0
平成23年度 22 68 14 2 9 43 0
平成24年度 169 202 154 2 20 26 0
平成25年度 34 57 18 3 8 28 0
平成26年度 46 28 9 4 15 0 0
平成27年度 36 50 21 10 15 4 0
平成28年度 29 55 40 4 7 4 0
平成29年度 30 37 23 1 9 4 0
平成30年度 21 28 11 2 4 11 0

第2節 個人情報保護

1 概要

(1) 個人情報の保護
 行政機関において個人情報の利用が拡大していることに鑑み、行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護すること等を目的として、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」(以下この章において「行政機関個人情報保護法」という。)が平成17年4月から施行されている。
 平成28年1月からは、行政運営の効率化及び行政分野におけるより公正な給付と負担の確保を図ること等を目的として、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(以下この章において「番号法」という。)に基づき、個人番号の利用が開始され、個人番号及び特定個人情報(個人番号をその内容に含む個人情報をいう。)を安全かつ適正に取り扱うことが求められている。
 こうした法律を踏まえ、「行政機関の保有する個人情報の適切な管理のための措置に関する指針」(総務省)及び「特定個人情報の適切な取扱いに関するガイドライン」(個人情報保護委員会)において、個人情報や特定個人情報の取扱いに関する基本的事項等が定められている。
 国税庁においても、納税者に関する個人情報の適切な取扱いを徹底するため、「国税庁の保有する個人情報の適切な管理に関する訓令」(平成17年国税庁訓令第3号)及び「特定個人情報等の適切な取扱いのための措置について(事務運営指針)」を定め、職員研修や個人情報の管理状況についての監査・点検の実施など必要な措置を講じている。また、特定個人情報の漏えい等の事態を発生させるリスクを分析し、これを軽減させるための措置を講じ、個人のプライバシー等の権利利益の保護のため、番号法第28条に基づく特定個人情報保護評価書を作成し公表している。
(2) 開示請求等
 行政機関個人情報保護法では、行政機関が保有する自己に関する個人情報の正確性や取扱いの適正性を確認するため、何人も、行政機関の長に対し、当該行政機関の保有する自己を本人とする保有個人情報の開示を請求することができ、行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求者以外の個人に関する情報や事務の適正な遂行に支障を及ぼすような情報などの不開示情報が含まれている場合を除き、保有個人情報を開示しなければならないとされている。
 国税庁では、税務署等の各機関の個人情報保護窓口において、行政機関個人情報保護法に基づく開示請求等に対応している。
 開示請求に対する開示決定等に不服がある場合には、行政不服審査法に基づく不服申立てをすることができ(審査請求を経ずに行政事件訴訟法に基づき訴訟を提起することも可能)、不服申立てがあったときは、その裁決又は決定すべき行政機関の長(国税庁においては、国税庁本庁)は、情報公開法と同様に、原則として審査会に諮問しなければならないこととされている。また、諮問に対し審査会が行った答申を尊重し、答申の内容に沿った裁決を行っているところである。

2 施行状況

(1) 開示請求の受付状況
 平成21年度から平成30年度の国税庁に対する開示請求件数は、表「開示請求件数の推移」のとおりであり、平成30年度においては約5.7万件となっている。また、国(全省庁計)への開示請求件数に占める国税庁の割合は、平成30年度では約6割となっている。
 なお、国税庁に対する開示請求のうち約9割は納税者が税務署に提出した所得税確定申告書やその添付書類に係るものとなっている。

開示請求件数の推移

  国税庁(A) 全省庁(B) (A)/(B)
平成21年度 63,827 74,328 85.9
平成22年度 60,534 70,751 85.6
平成23年度 64,542 76,154 84.8
平成24年度 66,207 109,210 60.6
平成25年度 63,109 116,253 54.3
平成26年度 59,106 96,271 61.4
平成27年度 56,914 94,320 60.3
平成28年度 58,464 94,549 61.8
平成29年度 56,541 97,344 58.1
平成30年度 56,540 98,946 57.1

(2) 開示請求の処理状況
 平成21年度から平成30年度の開示決定等の件数及びその内訳は、表「開示決定等の件数及びその内訳」のとおりである。開示請求の大部分を占めている所得税確定申告書について、一部不開示とすべき部分があるため、部分開示の割合が平成30年度では約7割となっている。

開示決定等の件数及びその内訳

  開示決定等件数
合計 全部開示   部分開示   不開示  
    割合   割合   割合
平成21年度 国税庁 63,591 9,494 14.9 53,237 83.7 860 13.5
全省庁 73,505 16,219 22.1 16,219 22.1 1,263 1.7
平成22年度 国税庁 60,424 9,479 15.7 50,152 83.0 793 1.3
全省庁 70,732 15,883 22.5 53,395 75.5 1,454 2.1
平成23年度 国税庁 64,277 10,037 15.6 53,505 83.2 735 1.1
全省庁 75,806 17,565 23.2 56,790 74.9 1,451 1.9
平成24年度 国税庁 66,152 10,073 15.2 55,243 83.5 836 1.3
全省庁 106,916 45,315 42.4 59,376 55.5 2,225 2.1
平成25年度 国税庁 62,836 10,019 15.9 52,039 82.8 778 1.2
全省庁 119,417 58,496 49.0 57,062 47.8 3,859 3.2
平成26年度 国税庁 58,631 9,929 16.9 47,966 81.8 736 1.3
全省庁 97,112 39,331 40.5 54,312 55.9 3,469 3.6
平成27年度 国税庁 55,978 9,962 17.8 45,387 81.1 629 1.1
全省庁 94,065 38,597 41.0 52,818 56.2 2,650 2.8
平成28年度 国税庁 58,489 10,374 17.7 47,536 81.3 579 1.0
全省庁 94,205 36,700 39.0 55,436 58.8 2,069 2.2
平成29年度 国税庁 56,683 15,037 26.5 41,173 72.6 473 0.8
全省庁 97,634 44,854 45.9 50,212 51.4 2,568 2.6
平成30年度 国税庁 56,136 18,019 32.1 37,624 67.0 493 0.9
全省庁 97,531 46,499 47.7 48,867 50.1 2,165 2.2

(注)「割合」欄は開示決定等件数に占める「全部開示」、「部分開示」及び「不開示」の割合である。

(3) 不開示決定等に対する不服申立ての状況
 行政機関個人情報保護法に基づく不開示決定等に対する不服申立ての処理状況は、表「不服申立ての処理状況の推移」のとおりである。不服申立てを受けた事案については、情報公開法と同様に、特段の事情がない限り、不服申立てがあった日から90日以内に、審査会に諮問することとされている。
 審査会への諮問及び国税庁における裁決の状況は、表「情報公開・個人情報保護審査会への諮問及び国税庁における裁決の状況」のとおりである。行政機関個人情報保護法が施行されて既に10年以上が経過し、保有個人情報の該当性や開示・不開示の判断に係る審査会の答申も数多く示され、答申の考え方を基準に開示・不開示の判断を行っており、行政機関個人情報保護法の適切な運用が図られているところである。

不服申立ての処理状況の推移

  不服申立件数
(新規受付)
処理件数 翌年度への繰越し件数
  取下げ 裁決・決定
平成21年度 17 12 0 12 22
平成22年度 19 25 2 23 16
平成23年度 24 14 1 13 26
平成24年度 46 31 0 31 41
平成25年度 18 44 0 44 15
平成26年度 19 7 1 6 27
平成27年度 18 24 2 22 21
平成28年度 8 21 1 20 8
平成29年度 27 25 1 24 10
平成30年度 26 9 0 9 27

情報公開・個人情報保護審査会への諮問及び国税庁における裁決の状況

  諮問 裁決件数
  棄却 認容 一部認容 却下 その他
平成21年度 17 12 6 3 0 3 0
平成22年度 11 23 11 8 0 4 0
平成23年度 19 13 5 3 4 1 0
平成24年度 39 31 4 5 11 9 2
平成25年度 14 44 17 6 20 1 0
平成26年度 14 6 0 2 2 2 0
平成27年度 19 22 13 0 9 0 0
平成28年度 12 20 7 0 10 2 1
平成29年度 17 24 11 1 4 8 0
平成30年度 29 9 7 0 2 0 0