1. これまでの取組等

 わが国では、各国における税制の様々な差異や租税条約の恩典規定等を利用して不当に税負担を逃れようとする国際的タックスシェルターの存在が、主として国際的に事業展開を図る大企業の中に従来から確認されているところであるが、近年の急速な資本移動のグローバル化やIT革命による企業活動の可動性の高まり等により、その一層の増加が見込まれる現状にある。
 これに対し、国税庁は、1980年代から、1タックス・ヘイヴン税制、移転価格税制等の適正な執行と的確な調査の実施、2調査技法の向上のための調査事例の蓄積と各種研修の実施、3海外取引調査のための体制の整備・人員の拡充、及び4税制改正の要望等により、わが国の租税を不当に回避する企業の動きに的確に対処すべく努力を続けている。
 機構面においても、昭和61年以降、国税審議官、国際業務室(現、国際業務課)、国際企画官及び相互協議室を、また、国税局には昭和57年以降、東京・大阪及び名古屋の国税局への国際調査専門官(現、国際税務専門官)をはじめ、国際調査課、国際情報課を順次設置してきた。
 また、近年は、バブル経済の崩壊後低迷を続ける我が国の経済情勢の下、外資系法人を主体とした不良債権ビジネスにおける租税の負担軽減事例などへの対応も進めてきたところである。

2. 国際的租税回避スキーム解明PTの設置等

 平成10年4月の外為法改正に伴う金融分野における規制緩和、いわゆる金融ビッグバン以降、国際的な資本移動の自由化等を背景に、個人投資家の海外投資等が活発化し、資産の海外移転や株式の国外取引等が容易に行われるようになったほか、個人投資家が海外投資等を利用して多額の損失を発生させることにより租税の負担軽減を図っている事例なども増加している。
 このように、大規模法人のみならず、中小法人や個人投資家の国際課税に関する実態把握及び情報収集等も急務となってきたため、平成13年7月から、東京、大阪、名古屋、関東信越の4つの国税局に、1海外資産把握PT、2株式の国外取引事案解明PT、3租税回避スキーム解明PTを順次発足させ、各事務系統の連携により、海外投資等事案の実態把握など国際取引に関する諸問題の情報収集及び分析・検討を積極的に行い、平成14年7月には、上記4つの国税局のPTに専担者を配置した。
 中でも、東京局においては、国際的租税回避スキーム(海外取引を利用した課税逃れ商品や仕組み)の事例が増加傾向にあること、また、その解明に当たっては、
 1 外国の租税法、租税条約、金融取引等の専門的知識が必要であること
 2 スキームに関わる法人・個人を通じた総合的な課税関係を分析・検討する必要があること から、各事務の精通者13名を配置した「国際的租税回避スキーム解明PT」を設けて専門的に租税回避スキームの把握・実態解明等に取り組むとともに、その情報やノウハウを組織横断的に提供していくこととした。

3. 今後の方針

 こうした先端分野は進展が著しく、取引等の態様も常に変化していることから、今後とも、各事務系統間及び各国税局間の垣根を越えた一体的な取組を更に推進し、個々の事案対応ではなく組織横断的な対応によって、調査による是正はもとより、税制改正要望等についても必要に応じて行っていくことにより課税の公平性を確保していくこととしている。

匿名組合契約利用のイメージ図