日時: 平成14年10月15日 13:30〜14:55

場所: 国税庁第一会議室

出席者:

国税審査分科会委員  貝塚分科会長  北村分科会長代理
   岡野 委員  島上 委員
   平岩 委員  宮崎 委員
   宮島 委員  森   委員
   水野 臨時委員  
国税庁  渡辺国税庁長官  
   福田国税庁次長
   大西審議官
   村上課税部長
   立川徴収部長
   東調査査察部長
   岡本総務課長
国税不服審判所  成田国税不服審判所長
   富田国税不服審判所次長

分科会長
 それでは、時間になりましたので、第2回国税審査分科会を開催いたします。
 委員の皆様方には、大変お忙しいところを御出席いただきましてありがとうございます。
 まず初めに、国税審議会の委員の任命に関して御報告させていただきます。
 水野委員におかれましては、統合前の国税審査会委員に当初任命されてから、本年8月末で10年が経過することとなりました関係上、9月1日付で臨時委員に就任していただいております。今後ともよろしくお願いします。

水野臨時委員
 よろしくお願いいたします。

分科会長
 本日は9名の委員の方々に御出席いただいておりまして、過半数の方の御出席ということで、本会は有効に成立いたしております。なお、浜委員におかれましては御出席の予定でございましたが、急遽、御都合により御欠席とのことでございます。
 さて、7月には行政側に人事異動がございましたので、事務局から行政側出席者の御紹介をお願いします。
 それでは、総務課長。

総務課長
 国税庁総務課長の岡本でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、紹介させていただきます。
 渡辺国税庁長官でございます。
 成田国税不服審判所長でございます。
 福田国税庁次長は、国会の業務のため外出中でございますが、戻り次第出席することになっております。
続きまして、富田国税不服審判所次長でございます。
 それから次に、後ろの方の席になりますけれども、大西審議官でございます。
 村上課税部長でございます。
 立川徴収部長でございます。
 東調査査察部長でございます。
 なお、鹿戸審議官は海外出張のため、欠席でございます。
 以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 なお、マイクの方はボタンを押さなくても自動的に発言者の声を拾うようになってございますので、よろしくお願いいたします。
 以上です。

分科会長
 どうもありがとうございました。
 本日は法定審議事項はございませんが、国税審査分科会議事規則に規定されております国税不服審判所の裁決事例を研究するほか、最近の税務行政の現状を御説明いただくため、当分科会を開催させていただいております。
 本日の議題は、お手もとの議事次第にありますように、「税務行政に関するトピックス」といたしまして、「国際化への対応」、「事前照会に対する文書回答の事例」、「連結納税制度の概要」の3項目がございまして、「不服申立ての状況」、さらに「審判所の概要及び裁決事例」となっております。
 それでは、資料1でございます。本日はまず「税務行政に関するトピックス」から始めさせていただきますので、総務課長に進行をお任せしたいと思います。どうぞよろしく。

総務課長
 それでは、税務行政のトピックスとして三つの事項を準備してございますけれども、続けて御説明をさせていただいた後にまとめて質疑を行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 まず、「国際化への対応」ということで、従来から国税庁では様々な対応をとってきておりますが、これについて課税部長から御説明いたします。

課税部長
 課税部長の村上でございます。座って説明させていただきます。
 国際化への対応について、最初に動向を説明いたしまして、その後、具体的な事例について、東調査査察部長から配付した資料に従って説明したいと思います。
 最初に資料の1−1、国際化への対応であります。
 まず第一にこれまでの取り組みでありますが、この国際的タックスシェルター等々は、従来はどちらかというと国際的な事業展開をする大企業の中に確認されるということが主体であったわけでありますが、近年は、その動きが一層加速しております。
 これに対しまして、従来国税庁は、ここにありますように四つの対策を講じております。一つは主税局が税法を作りますが、それに対して税法の適正な執行、的確な調査を行うということです。タックス・ヘイヴン税制であるとか移転価格税制でございます。もう一つは、やはり研修をするなり、調査事例の蓄積が大事でございます。研修は国際租税セミナーという特別な研修コースがありまして、こういった国際課税に従事している職員の研修を行っておりますし、実際には専門の調査官がそういう事案を担当しているということであります。3番目はやはり組織とか人員の拡充という問題。それは詳しく後で説明いたします。それから、税制改正の要望。これは主税局に対していろいろお願いをしていくといった四つの柱で対応してきております。
 次に機構面でございますが、昭和61年以降、庁にあっては国税審議官を設置しております。本日は欠席いたしておりますが、鹿戸というのが国際担当審議官であります。その下の国際業務課は国際業務一般、PATA(環太平洋税務長官会議)とかそういったものを全部やっておりますし、また、このほかに相互協議室がございます。相互協議室は御案内のとおり租税条約に基づく相互協議、これは移転価格に限らず源泉等々ございますが、そういった直接各国政府との相互協議を担当いたしております。
 それから、国税局でありますが、国税局には調査部があり、資本金1億円以上の法人を所管いたしております。特に、その中にあって東京国税局がやはり中心になってまいります。東京国税局調査第一部には、国際監理官というポストがございますが、その下に100名程度、国際関係に従事させております。これは移転価格、事前確認、あるいはタックスプランニングであるとか、それから、最近非常に多いのは外国法人、そういったものを担当しております。その後、大阪、名古屋と順次小さくなりますが、そういった国際調査の専門家を配置しているところであります。
 最後の「また、」以降の部分でありますが、これは後ほど東調査査察部長が説明いたしますが、いわゆる不良債権問題は現下の我が国の非常に大きな問題であります。それに関係いたしまして、主として外資系が多いのですが、その不良債権ビジネス、そういうものが非常に活発化しています。ハゲタカファンドとかと言われておりますが、そういったものに対する調査をかなり充実させているところであります。
 2番目に書いてありますのは、今まで申し上げましたのは主として大法人のことでありますが、平成10年4月に外為法が改正になり、資本の自由化が一段と進展したのでありますが、このところ特徴的なのは、個人の投資家。大法人は当然でありますが、個人あるいは中小法人が、資産を海外に移転するとか、それから株式も海外で頻繁に取引されます。通常、株の場合は居住地課税であり、日本の居住者は日本で申告していただく。アメリカでナスダックの株をいくら売買されようとそういうふうになっております。
 そういったことで、所管上、課税部は個人と中小法人を所管しておりますが、課税部における国際化への取り組みがややどちらかというと大法人に比べて遅れておりましたので、近年、課税部の取り組みを強化しているところでございます。断片的には従来からもちろんいろいろなことをやっているのですが、明示的に13年7月から都市局を中心に海外資産の把握、これは相続税とかそういうのが念頭にあるわけですが、それから株式の国外取引、これは、今やもう国際的な株取引は当たり前でございますから、そういった問題。それから、種々の租税回避スキーム。そういったことについてのPTを主として東京局を中心にして運用してまいりました。また、特に14年7月に、東京国税局の資料調査課というところに、租税回避スキーム解明PTというのを発足させて専担的に取り組ませているところであります。これは、東京にどうしてもプロモーター等々が集中しますが、クライアントは全国的に当然いらっしゃるわけで、各国税局、それから事務系統─事務系統と申しますのは、要するに所得税とか法人税とか、区別なしに連携をとりながらやっていきたいということで、現在進めているところであります。
 それでは、事例については調査査察部長から説明いたします。

調査査察部長
 それでは、調査査察部長の東でございますが、私の方からは国際的な租税回避への取り組みの一例といたしまして、匿名組合契約を用いた不良債権買取事業のケースを御紹介したいと思います。お手もとの資料の次のページに、横長のイメージ図を掲げてございます。
 まず、このイメージ図に入る前提といたしまして、我が国の、匿名組合契約に係る法人税法上の取扱いについて御説明したいと思います。
 まず、匿名組合契約とは何ぞやということでございますが、これは商法上の契約でございまして、いわば明治時代の片仮名書きの極めて古い契約類型でございます。中身といたしましては、組合員が実際に事業活動を行う営業者に出資いたします。その経営の一切は挙げて営業者にゆだねまして組合員は経営に一切参加せず、その利益の分配のみにあずかるということでございます。対外的な取引関係、権利義務の主体といたしましては、すべて営業者が外部に表れまして匿名組合員は営業者の背後に隠れて対外的にはその存在を一切明らかにしない、いわばネームレス、ネームが一切表れないという契約の形でございます。
 片や、我が国の法人税法上のこの匿名組合契約に係る取り扱いでございますが、外国の法人、あるいは個人が組合員である匿名組合契約においてその組合員が10人以上の場合につきましては、匿名組合契約に基づく利益の分配額は、源泉徴収の対象となる国内源泉所得という位置づけになります。他方で組合員が10人未満、9人以下の場合につきましては、これは源泉徴収の対象とならない。国内源泉所得ではございますが、申告で対応すべき国内源泉所得という位置づけになります。
 さらにもう一点ポイントがございまして、このような法人税法上の取り扱いが適用される一方、我が国と外国との条約の内容がこれに影響するという点がございます。日蘭─日本とオランダの租税条約をはじめといたします多くの国と我が国との条約におきましては、事業所得とか不動産の運用・譲渡に係る所得とか、あるいは利子・配当とか、そういった形で具体的に列挙された所得以外の国内源泉所得につきましては、我が国に課税権限がないという条約の規定が設けられている場合が多ございます。
 かつ、もう一点ございますのは、先ほど申し上げました外国の匿名組合員に対する収益の分配が国内源泉所得として課税される。10人以上であれば源泉徴収、10人未満であれば申告納税ということでございますが、今申し上げましたように日本と外国との条約がございます場合には、法人税法上、国内源泉所得に係る規定については条約の規定の中身が優先するということに相成っております。したがいまして、法人税法上の規定に優先して条約が適用される結果、日本の課税権が及ばないといった現象が生ずるわけでございます。さらに一言申し上げますと、先ほどオランダをはじめとすると申し上げましたけれども、オランダの国内法ではオランダの法人が外国から得た投資収益については非課税となっております。
 そこで、このイメージ図を御覧いただきたいわけでございますが、A国に海外投資家がございます。例えばニューヨークに本店を置く有力証券会社が設置したファンドといったものがここでの海外投資家になります。この海外投資家がB国─例えばオランダでございますが、B国にペーパーカンパニーを設立いたします。そのペーパーカンパニーにA国から投資資金を送金いたします。次にB国のペーパーカンパニーは自らを先ほど申しました匿名組合員として、かつ日本にございますこの営業者、ある場合には外国の法人の支店でございますし、あるいはある場合にはその外国の法人が日本国内に設置した有限会社といったケースもございます。いずれにいたしましてもB国のペーパーカンパニーを匿名組合員とし、先ほど申しましたような支店あるいは有限会社を営業者とする匿名組合契約をここで締結いたします。
 そこで、次にこの営業者は日本の金融機関から簿価を大幅に下回る価格で不良債権を買い取ります。その上でこの営業者が相当程度の回収実績を上げて簿価買取価格との間で相当程度収益を上げます。巨額の収益を上げます。この巨額の収益を債務者から回収する形で上げるわけでございますが、この巨額の収益をB国のペーパーカンパニーに送金いたします。ここで、このB国と日本との間の条約によりまして、その他所得でございます匿名組合契約により生ずる収益の分配金が非課税となっております。そういたしますと、我が国の課税権は一切及ばない。さらに、先ほど申しましたようにこのB国が、例えばオランダのように外国から生ずる投資収益については非課税という国内規定を設けている場合には、これまた非課税となります。したがいまして、日本から生じた収益がすべてスルーになってA国まで行くといったスキームでございます。
 このイメージ図どおりの匿名組合契約でありますと、その契約が有効に成立している限りは、たとえB国の形式上の匿名組合員がペーパーカンパニーであったとしてもこのスキームどおりであれば課税権はありません。
 ところが、問題点は調査によっていかなる事実を認定するかでございます。例えばあるケースにおきましては、この調査によりまして、B国のこの契約上の匿名組合員が実は実質的な投資家ではないといったことが認定される場合があります。例えばでございますが、この債権者、「本邦法人」と書いてございます、先ほど日本の金融機関と申しましたけれども、通例この不良債権の買取事業と申しますのは、ロットで数百億円の極めて巨額の資金にかかるものでございます。したがいまして、日本の金融機関がその債権を他に譲渡いたしましたとしても、その見返りの回収金が売上金―対価がきちっと入らないと、これは非常なリスクがあるわけでございます。したがいまして、だれに対して売ったのか、最終的な投資家が一体だれなのかといったことは、日本の金融機関にとってのリスク管理上極めて大きなポイントになります。
 したがいまして、日本の金融機関のリスクマネジメントの観点からいうと、その匿名組合員がネームレスであると非常にリスキーである。勢い何がしかのネームを求めるといったことがございます。したがいまして、そのネームを示して行われるようなケースでは、これは実際上そのネーム、その介在するペーパーカンパニーではなくて、A国の投資家が実質的な所得者であると認定して、このA国と日本との租税条約に置き直して課税することが可能になるといったケースが一つございます。
 もう一つは、このA国の海外投資家が実際の日本の営業者に対して、重要な部分についてその行う事業活動遂行に当たって指揮監督・命令権を留保している、実際にきちっと指揮をするといった場合がございます。そのような場合につきましては、この日本の営業者は実際上はA国の海外投資家の設けている恒久的施設である、あるいは代理人であるという認定のもとで日本の課税権を及ぼすことが可能となります。このケースにつきましては、いわばA国の実際上の投資家にとって自らの数百億円に上るこの資金をこれまたリスクにさらすわけでございますから、この日本の営業者がきちっとリスク管理をするといったことは極めて大きなポイントになるわけでございます。
 そのような観点からA国の海外投資家が日本の営業者に対していろんなコントロールを及ぼすといったことも大いにあり得るわけでございます。いわば、先ほど来申し上げております匿名組合契約と申しますのは、契約類型としては非常に古い、片仮名書きの契約類型でございまして、時代的な感覚で言うと、今非常にロットの大きい、大きなビジネスを行っていく上ではリスク管理とか、あるいはコントロールとかいった形で様々な問題点がある。それをいかにカバーしていくかといった形で、そういう点を実態上認識していけば、先ほど申しましたような形式的な隘路を、いわば実態的な執行上の知恵の出し方によってこれを打破していくことも可能になるといったことでございます。
 ちなみに最後に申し上げますと、先ほど匿名組合員に対する課税関係、10人以上は源泉徴収、10人未満は申告納税というふうに申し上げましたけれども、この点につきましては、実は主税局にお願いいたしまして税制改正が実現いたしております。この4月1日以降は、匿名組合員の人数のいかんにかかわらずすべて源泉徴収の対象となる、と。
 ただし、先ほど来申しておりますように、日本の法人税法よりも国内源泉所得の定義に書かれている点につきましては条約が優先いたしますから、いったん源泉徴収にかかっても、例えば日蘭―日本とオランダのような場合には条約の規定によって非課税となります。その場合には、あらかじめ免除の届出をとるか、あるいは納付したものの還付を受けるかといった、また特段の手続が必要になりますから、その点につきましてそのような手ががりによって従来より一層実態により適格な把握、あるいは検討ができるといったような、いわばルートも開けているということでございます。
 以上でございます。

次ページへつづく→