日時: 平成26年4月8日 10:00〜11:10
場所: 国税庁第一会議室
出席者:
国税審議会委員 井堀会長 さき会長代理
  青山委員 飯村委員
  潮田委員 尾原委員
  角田委員 木村委員
  こう津委員 篠原委員
  須磨委員 田嶼委員
  つじ山委員 中村委員
  山田委員 吉村委員
臨時委員 池田委員
説明者 国税庁 稲垣国税庁長官
  藤田国税庁次長
  上田審議官
  上羅審議官
  岡田課税部長
  伊藤徴収部長
  藤田調査査察部長
  安居総務課長
  川嶋人事課長
  星屋酒税課長
  山崎国税企画官
国税不服審判所 畠山国税不服審判所長
  はま田国税不服審判所次長

会長
 それでは、定刻になりましたので、第15回国税審議会を開催いたします。
 本日は、委員の皆様方には、大変お忙しいところ御出席いただきまして、ありがとうございます。
 本日は委員の過半数の方々が御出席でございますので、国税審議会令第8条第1項の規定に基づき、本会は有効に成立いたしております。
 まず、最初に本日御出席いただいております委員の方々を、私のほうから順に御紹介させていただきます。
 まず、会長代理及び税理士分科会長の岩さき政明委員です。
 次に、酒類分科会長の飯村穰委員です。
 それから、青山理恵子委員です。
 潮田道夫委員です。
 尾原榮夫委員です。
 角田光代委員です。
 木村光雄委員です。
 こう津十月委員です。
 篠原成行委員です。
 須磨佳津江委員です。
 田嶼尚子委員です。
 つじ山栄子委員です。
 中村豊明委員です。
 山田洋委員です。
 吉村典久委員です。
 池田隼啓委員です。
 なお、河村小百合委員、林菜つみ委員、三村優美子委員におかれましては、御都合により御欠席でございます。
 続いて、安居総務課長から行政側出席者の御紹介をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

総務課長
 それでは、紹介させていただきます。
 稲垣国税庁長官でございます。
 畠山国税不服審判所長でございます。
 藤田国税庁次長でございます。
 はま田国税不服審判所次長でございます。
 上田審議官でございます。
 上羅審議官でございます。
 岡田課税部長でございます。
 伊藤徴収部長でございます。
 藤田調査査察部長でございます。
 川嶋人事課長でございます。
 星屋酒税課長でございます。
 山崎国税企画官でございます。
 私が総務課長の安居でございます。よろしくお願いします。

会長
 ありがとうございます。よろしくお願いします。
 それでは、本日の議題に入る前に、稲垣長官より一言御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

国税庁長官
 国税審議会の開催に当たりまして、一言御挨拶申し上げたいと思います。
 本日は委員の皆様方、大変お忙しい中御参集いただきまして、誠にありがとうございました。また、この機会に、常日頃より私どもの税務行政に関しまして、皆様方から賜っております御理解と御協力に対し、改めて御礼申し上げたいと思います。
 さて、本日の審議に関してでございますが、去る3月20日、平成26年度税制改正を実行に移します所得税法等の一部を改正する法律が、国会で成立いたしました。その中身でございますが、当審議会に関係いたします税理士法の改正といったような内容が含まれております。本日はその内容につきまして、御説明させていただきたいと存じます。
 また、御存じのように、先日、平成25年分の確定申告期が終わりました。今データ等を収集しまして、まだ最終的な評価をするには至っておりませんけれども、私どもとしては、各相談会場におきまして、万全な相談体制を構築させていただくとともに、e−TaxなどICTを活用して、納税者にとって利便性の高い申告納付手段の充実を図るなど、納税者サービスの向上に引き続き努めた結果、おおむね今のところ、円滑に終了することができたものと考えております。
 また、これも大きな話でございますけれども、今月1日から消費税率が5%から8%に上がったところでございます。
 これは社会的には非常に大きな影響があるということで、我々も報道で見聞きしているところですけれども、総体としては比較的円滑に移行が図られたのではないかと思っております。私ども国税当局にとりましては、これからまいります申告と納付が正に本番でございまして、事業者の皆様が自ら適正な申告を行っていただけるように、広報、相談、指導などに取り組んでおります。
 また、転嫁拒否等の相談等につきましても、これは政府全体で行っているものでございますが、引き続き関係省庁と連携して適切に対応致しますとともに、特に私どもはお酒の所管官庁でございますので、こういった所管の業界でも円滑かつ適正な転嫁が確保できるように万全の対応を図ってまいりたいと考えております。
 さらに、これも大きな話でございますけれども、番号制度の導入といったことがありまして、今後急速にシステムの構築等を図っていかなければならないということでございます。国税庁は番号を活用させていただくという一方で、実は法人番号については国税庁から企業の皆様方にお知らせするということでございまして、これも、決して間違いがあってはならんということでございますので、緊張感を持って適切に対応してまいりたいと思っております。
 いずれにしましても、国税庁といたしましては、質の高い税務行政を進めることによって、税務行政に寄せられております国民の信頼に応え、更に揺るぎのないものにしていきたいと考えております。
 委員の皆様方におかれましては、広い御見地からいろいろと貴重な御意見、御指導を賜りますようよろしくお願い申し上げまして、甚だ簡単でございますが、私の挨拶とさせていただきます。
 よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

会長
 どうもありがとうございました。
 それでは、本日の議事に入らせていただきます。本日の議題はお手元の議事次第にございますように、「国税審議会の概要及び各分科会の最近の活動状況」、「税務行政の現状と課題」、「平成26年度税制改正(税理士制度の見直し)の概要」及び「国税審議会令の一部改正」となっております。
 それでは、最初の議題に入らせていただきます。
 まず、「国税審議会の概要及び各分科会の最近の活動状況」についてですが、国税審査分科会と酒類分科会につきましては、昨年2月26日の国税審議会以降開催しておりませんので、税理士分科会からの報告のみとなります。
 それでは、税理士分科会につきまして、岩さき分科会長から報告をお願いします。

さき委員
 税理士分科会長の岩さき政明でございます。私から、税理士分科会の活動状況につきまして御報告をさせていただきます。
 税理士分科会は、税理士試験の執行と税理士に対する懲戒処分等の審議を行うこととされております。税理士分科会の最近の活動でございますが、お手元の資料2という冊子の中の4ページに一覧表になっております。御覧いただければお分かりと思いますが、昨年2月26日の国税審議会以降、5回の分科会を開催しております。税理士試験関係で3回、懲戒処分の関係で2回開催しております。税理士試験の関係では、試験問題それから試験の実施結果、指定研修の実施結果などについて審議をいたしました。また、懲戒処分につきましては、懲戒処分等の可否及びその量定について審議をし、かつ処分をいたしました。
 以上が私からの報告でございます。どうもありがとうございました。

会長
 ありがとうございました。引き続きまして、次の議題であります「税務行政の現状と課題」に入らせていただきます。
 では、事務局から説明をお願いします。

総務課長
 それでは、私から税務行政の現状と課題につきまして、御説明をさせていただきます。
 お手元に資料3、A4横の「税務行政の現状と課題」とあります資料に沿って、国税組織が置かれている現状と、それから先ほど長官からも一部説明がありました課題について、簡単に御説明いたします。
 資料を2枚おめくりいただきますと、税務行政の現状につきまして、国税庁の定員の推移という表を付けております。
 御覧いただければお分かりのとおり、最近国税庁の定員事情は極めて厳しい状況にございます。全体として国家公務員の定員削減が進められております中で、国税庁の定員も削減される傾向にございまして、過去を振り返ってみますと平成9年がピークだったわけですけれども、そこから多少の上下はありますけれども、おおむね下がる傾向にありまして、平成26年度には5万5,790人と、3年連続の減少になっております。この5万5,790人というのは、この一番左側に5万5,679人とありますように、ほぼ平成3年の水準で、20年以上前の規模に戻っているような状況にございます。
 1枚おめくりいただきますと、今度は国税組織全体の年齢別、男女別の職員構成についてのグラフを示してございます。棒グラフが人数ですけれども、一番下に年齢構成が書いてあります。一見してお分かりのように、ちょうど40歳のところを境目に段差がついておりまして、40歳以下が全体としては少ない、3分の1ぐらいしかいないという状況にございます。そういう意味では今、ベテランがすごく多くて、組織としてはしっかりしているとも言えるのかもしれませんが、先々のことを考えますと今、中堅層や若手層が若干手薄な状況になっておりまして、今後組織がどうなっていくのかが非常に難しい問題であると考えております。
 40歳以上の人が多いという現状ですが、これは歴史的な経緯がございまして、一つは戦後、申告納税制度が入ったときに大量に採用した人たちが平成の初め頃に大量に退職をしたため、大量に採用せざるを得なかったとの事情があります。それから、平成元年には消費税の導入がありましたので、それに対応するために大量に人を採用しなければいけなかったという事情もありまして、どうしてもこういうこぶができてしまっております。こういう中で今後、この組織をどのように維持していくのかが、かなり差し迫った課題になっているというところでございます。
 一方、折れ線グラフは女性の割合でございまして、これも一目瞭然ですけれども、最近女性の割合が非常に高くなってきております。30歳以下を見ますと3割が女性でございまして、女性職員を更に活用していくことが、これも差し迫った課題になっていると考えております。
 1枚おめくりいただきますと、申告件数の推移を棒グラフで示しております。直近では若干減少の動きはございますけれども、全体として申し上げたいのは、申告件数が昔に比べて大分増えているということでございます。例えば平成16年から17年のところに一つ段差がございますけれども、これは消費税の免税点が引き下げられて消費税を申告される方が大量に増えたこと、あるいは、老年者控除が無くなって還付申告が非常に増えたことがあります。
 他方、最近、逆に年金所得者の申告は不要にする制度を設けたことにより少し減ってきておりますけれども、先ほど申し上げたとおり、職員の数というのは絞られていく中で、申告件数自体は全体としては以前よりも増えていることが見ていただけるのではないかと思います。
 1枚おめくりいただきますと、今度は実調率の推移、これは昨年もお見せしていると思いますけれども、どれくらい実際に調査を行っているかを示したものでございます。見ていただけるとおり、昔に比べて実調率はどんどん下がってきてございます。
 いろいろな原因があると思いますけれども、一つは1件当たりの調査日数が昔に比べて多くなっていることがございます。この原因も種々あろうかと思いますけれども、事案自体がクロスボーダーのものが増えるなど難しくなってきていることもあると思われます。また、特に最近、法人のグラフを見ていただきますと、平成23年から24年にかけて、大きく落ちているのが見ていただけると思いますけれども、平成25年1月から国税通則法が改正され、調査手続が法定化されたことにより、原則として事前通知を行わなければいけないとか、処分の理由附記の範囲が全ての不利益処分に拡大されたこともございまして、どうしても時間がかかるようになってしまっているということがございます。
 また、1件当たりの調査日数が増えているというだけではなく、総稼働日数、つまり定員削減の影響などもありまして、調査に使える実人員が減っているということもございます。現状、一番右を見ていただきますと、法人ですと3.1%、個人ですと1%強ということですので、法人については約30年に1回、個人に至っては100年に1回しか回ってこない状況です。もちろん重点的にやっていますので、実際にはそういうことはないのですけれども、おしなべてみればそういう状態になっているというのが現状でございます。
 次を見ていただきますと、そういう中にあっても頑張っているものの一つが、この租税滞納状況の推移でございます。これを見ていただきますと、平成10年度をピークとして、国税の滞納は大分圧縮されてきておりまして、平成24年度で見ますと、ピーク時の半分以下になっています。国税職員が一所懸命頑張って滞納を減らしてきていることが見ていただけるのではないかと思います。
 棒グラフの下にあります少し色の濃い部分は消費税の滞納額でございまして、折れ線グラフは消費税の滞納が全滞納に占める割合を示しております。これを見ていただきますと分かりますのは、消費税も滞納額自体は減らしているものの、全体の中で消費税の占める割合が増えてきておりまして、消費税についてどのように対応していくのかが、非常に重要な課題になっていると思っております。
 前回、消費税率が上がりましたのが平成9年でございまして、平成9年度から平成10年度にかけていろいろな影響が出ているのだろうと思いますけれども、全体として、消費税の滞納額を見ていただきますと若干増えています。こうした動きも見ながら今後、今回の引上げの影響がどのように出てくるのかについて、よく気を付けてやっていきたいと考えているところでございます。
 以上が、非常に雑駁ですけれども、マクロ的に見ました税務行政の現状でございまして、以下何点か、税務行政の課題について御説明をしたいと思います。
 おめくりいただきまして、右下9ページとあるところでございます。ここに、これからの税務行政の方向性をお示ししてございます。先ほど長官からもありましたけれども、税務行政を取り巻く環境は非常に大きく変化してございまして、一つは経済や社会がグローバル化してきているということ、それから、経済取引自体の電子化が相当進んできているということがあります。こうしたグローバル化やICT化にどう対応していくかが我々として目下直面している重要な課題でございます。それと合わせて、先ほどから御説明していますとおり、定員が非常に厳しくなってきていることも含めると、行政の効率化も非常に求められているという状況にございます。
 そうした中で、一番上の四角にあります税務行政の使命、納税者のコンプライアンスの維持・向上をどのようにしていくかにつきましても、これまでよりもより効果的、効率的にやっていかなければいけないという、差し迫った状況にございます。
 これをやっていく方法として、一つは左にあります調査がございます。調査についても、その左下にございますとおり、実地調査をより重点的に行っていく必要があるだろうと考えられますので、ハイリスクの分野、例えばクロスボーダーのもの、富裕層、無申告の者といった分野に調査を重点化していく必要があるでしょうし、より波及・牽制効果を狙っていく必要があると考えられます。
 ただ、コンプライアンスの維持・向上のためには、こうした調査を通した牽制効果というだけではなかなか難しい状況にございまして、右側にあります、むしろ納税者と積極的にコミュニケーションを行っていくことによって、右下にありますとおり、自発的な適正申告に導いていくというような手法も今後、幅広く活用していかなければならないのではないかと考えているところでございます。
 具体的には、右下にありますとおり、これは昨年も少し御説明しましたけれども、特に大規模企業に対しましては経営者と直接話をすることによって、コーポレートガバナンスを利かせてもらうといった方法でありますとか、自己点検、自主修正をより重視しようとか、税理士ないし関係民間団体との協働をしっかりしていくとか、調査による牽制だけではなくて、そういった、もう少し幅の広いコンプライアンス維持のための活動というのを重視していかざるを得ないのではないかと考えているところでございます。
 1ページおめくりいただきますと、その一つの例として、今回始まりました国外財産調書制度について説明しております。概要にありますとおり、国外財産調書制度というのは、年末時点において5,000万円を超える国外財産を保有する個人に対して調書の提出を求めるというものでございます。ちょうど昨年末時点から適用が開始されておりまして、この3月17日が初めての提出期限ということでございます。
 この制度、吹き出しに書いてありますけれども、インセンティブがついておりまして、下に提出促進策とありますけれども、国外財産に関する所得の申告漏れが仮に見つかった場合に、調書を提出されていると過少申告加算税または無申告加算税が5%軽減されるという仕組みになっています。逆に調書の提出がないとか、提出されていても記載がないといったような場合には5%加重するということで、この適正な調書が提出されることについてインセンティブが課されるような形になっております。このような仕組みを通じて、より正しい調書が提出されるような方向に誘導するような制度も入れられているというところでございます。
 次のページをおめくりいただきますと、先ほど長官からもありましたとおり、消費税の引上げ等への対応でございます。これはよく似たものを昨年も説明させていただいておりますけれども、昨年の10月1日に消費税転嫁対策特別措置法が施行され、それに伴いまして、転嫁対策がより具体的に展開されてきております。
 左側の囲みにありますのが政府全体の対応でございまして、それに伴う国税庁の対応が右の吹き出しに書いてあります。転嫁対策につきましては、新聞等でも報道されていますように転嫁対策Gメンといった人たちが取締りなどをしているわけですけれども、国税庁の関係でいいますと、左側の箱の中でUの二つ目の丸に「転嫁拒否等に関する相談体制の整備」とある中の二つ目のポツに「政府共通の相談窓口」とありますけれども、消費税価格転嫁等総合相談センターが内閣府に設置されています。これに対して、右側の吹き出しの2番目を見ていただきますと、国税庁の分室を東京国税局の神田庁舎に置いておりまして、そこで様々な相談対応を行っているということが大きなものでございます。
 政府の総合相談センターですけれども、実際に寄せられる相談は、経過措置なども含めた税の仕組みでありますとか、総額表示は一体どういうふうにしたらいいのかといった表示関係の相談が非常に多くございまして、かなりの部分を国税庁で対応しているという状況でございます。
 それから、その右側の吹き出しの上から三つ目、先ほど長官からもありましたけれども、国税庁は酒類業界の所管官庁でございますので、所管官庁として酒類業者による転嫁拒否の相談の受付や情報収集も併せて行っているところでございます。消費税につきましては、このような引上げに伴う課題もさることながら、先ほども申し上げましたように、これからの申告納付への対応を、より気を付けてやっていかなければいけないと考えているところでございます。
 1枚おめくりいただきますと、今度は番号制度でございます。
 社会保障・税番号制度への対応について簡単に御説明したいと思います。番号につきましては、昨年5月に番号法が成立しておりまして、ただいまその施行に向けての準備を行っているところでございます。制度についてはもう御承知かもしれませんけれども、個人番号と法人番号という二つのものがございまして、個人番号につきましては、市町村長が付番をして通知をするということになっておりますけれども、法人番号につきましては、右側にありますとおり国税庁長官が番号を指定して通知をするという仕組みになってございます。
 利用範囲につきましても、個人番号は社会保障、税、災害対策等の分野に限定して使うということになっておりますけれども、右側の法人番号の方を御覧いただきますと、広く一般に公開して、官民問わず様々な用途で利用可能ということで、むしろ閲覧や検索が可能なサービスをホームページ上でしなければいけないということになっておりますので、今、システムも含めて懸命に準備を進めているところでございます。
 その下に(2)として「導入スケジュール」とありますけれども、今のところ想定されておりますスケジュールは、平成27年の秋頃に個人番号、法人番号を通知して、28年1月以降に利用を開始するというものでございます。そうしますと、その下にありますとおり、納税申告書につきましては、例えば所得税ですと28年分の申告書からということになりますので、29年から実際には書き込まれることになるということでございます。ただ、その下にありますとおり、法定調書などは1月以降に提出するものというようなものもございますので、これに向けて準備が進められているところでございます。
 1枚おめくりいただきますと、内閣官房で作成されました導入までのロードマップでございます。今、スケジュールについてはざっと申し上げましたので繰り返しませんけれども、新しく書いてあるものとして、下段の真ん中辺りですけれども、個人情報保護とあります。今年の1月から、個人情報保護のための特定個人情報保護委員会が設置されておりまして、この委員会規則の制定などの動きが今進んでいるところでございます。
 1枚おめくりいただきますと、番号制度につきましては、制度導入によって様々なことが期待されておりまして、その点について簡単に書いたものでございます。一つは、一義的なものとして、所得把握について効率化、適正化が図られるだろうということがございます。各種の書類に番号が付されることによりまして名寄せが非常に効率的に行われることになりますので、所得把握がより適正、公正、効率的に行われることが期待されるわけでございます。
 これは、むしろ国税組織にとっての効果になるわけですけれども、一方で納税者利便の向上も重要な課題と認識されております。
 実は、もっといろいろなことができないかと今検討しているところですけれども、とりあえず今想定しているものとして三つ。
 一つは添付書類の省略をしていただけるだろうということ。例えば今いろいろなところで住民票を取って出さなければいけないことになっていますけれども、それが省略できるのではないか。
 それから今、源泉徴収票などを国と市町村など幾つかのところに出さなければいけないような事態についても、特に電子的に提出する場合には1カ所で済むようにならないか。それから、さらに、これは国税だけではないのでしょうが、マイ・ポータルというそれぞれが自分のページを持ち、そこにアクセスすることによって、各種の情報が一元的に手に入るようにならないかといったようなことが今検討されているところでございます。システム上の課題もいろいろございますので、全てがどこまで実現するのかまだ分からないところもありますが、できるだけ納税者利便にも資するような制度にしていきたいというふうに考えているところでございます。
 続きまして、1枚おめくりいただきますと、平成26年度税制改正について何点か御説明をしたいと思います。一番のメインは税理士法の改正だと思いますけれども、それにつきましては後で別途御説明をしたいと思いますので、それ以外の項目について、中でも税務当局に大きく影響するようなものを幾つか、御説明したいと思います。
 一つは、ここにありますとおり、納税の猶予及び換価の猶予の制度の見直しでございます。納税の猶予と換価の猶予の二つがありますけれども、どちらも税の納付を猶予するという制度です。
 下の表の左側にありますとおり、納税の猶予は、要件のところを御覧いただきますと、災害や病気といった事情によって納付が難しくなったという場合に、納税者の申請により納付を猶予するという制度でございます。
 一方、その下にあります換価の猶予は、納税者には納税について誠実な意思があるけれども納付することができないという場合に、通常は滞納処分をして財産を換価するところですが、それをすると事業がなかなか続けられないとか、生活が困難になってしまうというようなことが認定されますと、税務署長の職権で換価を待つことができるという制度でございます。
 今、二つの制度を申し上げましたが、今回は、その下に点線で囲ってありますように、換価の猶予の方につきまして、納税者からの申請でもできるようにするという新しい制度を入れようというものでございます。つまり、納税者が、病気をしたり災害に遭ったりしたわけではないけれども、なかなか納付するお金がない、ただ納付する意思はあるというときに、納税者からの申請によって納付の猶予を行えるようにしようというものでございます。
 そのほか、右下に点線で囲ってありますけれども、基本的には納付について猶予をする場合には担保を出してもらうことになっています。担保が不要となる場合については、今まで税額50万円以下の場合などだったわけですが、それを税額100万円以下ないしは3月以内の猶予とするなど担保が不要な場合の条件等を緩和したり、そのほか手続面の規定の整備をするという改正が今回行われております。上にありますとおり、平成27年4月1日から適用されることになっておりますので、今このための準備を進めているという状況にございます。
 1枚おめくりいただきますと、26年度の税制改正についてもう一点だけ。これは国税審議会に直接関係あるものでございますけれども、国税通則法第99条の改正がございます。四角囲いの中の二つ目の丸に書いてありますが、国税不服審判所は国税に関して不服申し立てがありますと、独立の立場でその審査をするわけですけれども、この国税不服審判所長が国税庁長官の法令解釈と異なる解釈によって裁決をする、ないしは重要な先例となるような裁決をするという場合には、国税全体の動きとも関係するものですから、その意見を国税庁長官に通知をすることになっています。
 そして、国税庁長官はその意見を相当と認めるなどの場合を除き、国税審議会に対して意見を伺って、その意見に基づいて裁決などをするようにするという調整の仕組みが今あるわけでございます。
 下の図を見ていただきますと、改正前におきましては、国税不服審判所長がそういう場合には国税庁長官に対して申し出をしまして、国税庁長官が国税審議会に対して諮問をするというような形で今まで制度が作られていたのですけれども、一部で行政不服審査制度をもっと強化していかなければいけない、不服審判体制を強化するためには、国税不服審判所長と国税庁長官の立場を対等にしなくてはいけないというような議論がございまして、右にありますとおり、国税不服審判所長と国税庁長官が共同で諮問をするというような形に制度を変えようということになったわけでございます。
 1枚おめくりいただきますと、参考として平成26年度税制改正の主な改正項目について列挙してございます。国税に影響するといって御説明したのが一番下の納税環境整備のところでございまして、そのほか実体法として様々な改正が行われているというところでございます。内容の説明は省略します。
 1枚おめくりいただきますと、東日本大震災の関連について一言だけ申し上げたいと思います。枠囲いの中にありますとおり、東日本大震災の発生を受けまして、もう3年前になりますけれども、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県につきまして、国税の申告納付の期限延長を行っております。その後、各地域の復興の状況を踏まえまして、その右のところに告示日、延長期日と書いてありますけれども、順次、期限延長措置を終了してまいりましたが、つい最近まで福島県下の12市町村につきましては、原発周辺に位置し、なかなか困難な状況にあるということで、期限延長措置を続けてまいりました。その福島県下の12市町村につきましても、今年の3月31日をもって期限延長措置を終了させていただいております。
 この12市町村につきましても、期限延長はしていたわけですけれども、税自体が全て免除されている訳ではないものですから、その間申告はしなくてもいいけれども、いずれ納税をしなければいけないものがどんどん膨らんでいるという状況にございました。
 これはどうにかしなければいけないと考えておりましたところ、実際は、期限は来ていないけれども自主的に申告してくださる方も結構出てきているという状況が分かりまして、今回、期限延長措置の終了に踏み切ったところでございます。ただ、複数年分の申告、納税を一気にしなければいけないという方も少なからずいらっしゃるだろうということを考慮しまして、1年間かけてやっていただくように1年間の手続期間を設けまして、来年の3月31日までに申告をしていただくことにして、期限延長措置の終了をしたというところでございます。
 いずれにしましても被災者は全国各地に散らばっていらっしゃいますので、全国各地で対応できるような体制を整えますとともに、被災者の心情に配慮して、丁寧な対応をしていきたいと考えているところでございます。
 1枚おめくりいただきまして、国際的な話を三点ほどさせていただきたいと思います。先ほどから申し上げていますとおり、経済社会の取引がどんどんクロスボーダーになっておりますので、国税当局としても海外当局との協力が不可欠な状況にございます。
 そうした中での動き、三点ほど御報告したいと思います。
 一つは国際的な情報交換でございます。今、国際的な情報交換をするために租税条約が既に60本ほど結ばれておりまして、全世界80の国、地域と租税条約ネットワークを作ってきております。
 この租税条約に基づきまして、様々な情報交換を行っているところでございます。
 情報交換は、そこにありますとおり三つのタイプがございまして、一つは、こういう情報ありませんかと、こちらから聞いて情報をもらう要請による情報の交換。二つ目はこちらが調査の段階で入手した他の国の納税者の情報をこちらから提供する自発的情報交換。三つ目は、非居住者の支払いについての情報などを自動的に交換するという仕組みでございます。
 今、特に盛り上がりつつありますのが、一番右の自動的情報交換でございまして、特に非居住者の金融口座に関する情報について、もっとやり取りをしましょうということが世界的に議論されておりまして、それについての基準作りが進んでいるところでございます。その下に書いてありますとおり、今年の2月に行われましたG20におきましても、下線が引いてありますけれども、税に関する情報の自動的な交換のための共通報告基準というのができてきておりまして、これに基づいて、三行目にありますとおり、2015年末まで、来年の末までにG20諸国間で自動交換が開始されることを期待するという具体的な合意もできているということでございます。
 1枚おめくりをいただきますと、共通報告基準による自動的情報交換のイメージがございます。ここにありますとおり、各金融機関からの情報を国税庁で吸い上げまして、それを外国の税務当局との間で交換しようというものでございます。どういった形でこれができるかということについては、まだ実は検討中でございまして、場合によっては法的な整備も含めて、これが実行できるような環境整備を行っていく必要があると考えているところでございます。
 1枚おめくりいただきますと、今申し上げましたのは税を逃れている人たちについての情報ということでございますけれども、一方で国際的な企業の税逃れということも話題になってございます。以前は二重課税をどうやって排除するかが議論の中心でしたけれども、今は、合法的に各国の制度の隙間を突いて行われる二重非課税をどうやって排除するかということが国際的に議論されております。BEPSという言葉をお聞きになったことがあるかもしれませんけれども、下にありますとおり、税源浸食と利益移転と訳されておりますが、これについて各国で協力して、税の穴を塞いでいこうという試みが進んでいるところでございます。
 1枚おめくりいただきますと、活動の中心はOECDの租税委員会というところでございまして、そこでBEPSの行動計画が作られておりまして、全部で15の分野について、今、様々な検討が行われているところであります。こういった動きに日本としても積極的に参画していくことによって、インターナショナルなスタンダードを牽引していきたいというふうに考えているところでございます。
 1枚おめくりいただきまして、最後のページ、最後の点が税務行政執行共助条約でございます。枠囲いの中の二つ目の四角にありますように、昨年の10月1日に我が国でも発効しておりまして、この条約に基づいて、様々な多国間での相互支援を行っていこうという動きがございます。
 この中でも特に注目されますのが、1、2、3とあります中で2の徴収共助でございます。左下にありますとおり、相互主義の下でほかの国に対して、自国の租税債権についての徴収を依頼する仕組みでございます。今まではほかの国ですと徴収権が及ばないものですから、財産がほかの国に行ってしまうと徴収できなかったわけですけれども、こうした枠組みの中で、ほかの国に財産が行っても追及していけるような仕組みが出来上がってきております。まだ始まったばかりで、これから運用していくという話ですけれども、こうした枠組みを使いながら、しっかり執行面でもやっていきたいと考えているところでございます。
 大変駆け足でしたけれども、税務行政の現状と課題について御報告しました。以上です。

会長
 どうもありがとうございました。
 ただいまの安居課長からの説明につきまして、御質問あるいは御意見もあろうかと思いますが、このまま事務局から次の議題の説明を続けさせていただきまして、その後にまとめて御質問、御意見等をいただければと思います。
 それでは、次の「平成26年度税制改正(税理士制度の見直し)の概要」及び「国税審議会令の一部改正」につきまして、事務局から説明をお願いします。

国税企画官
 それでは私から、まず税理士制度の見直しの概要について御説明いたします。資料4を見ていただけますでしょうか。1枚めくっていただきまして、一覧表がありますけれども、今回の税理士制度の見直しは、この上の二重囲いの中に趣旨が書いてございます。「申告納税制度の円滑かつ適正な運営に資するよう、税理士に対する信頼と納税者利便の向上を図る観点から」行いますということでございまして、納税環境整備の一環として税制改正法の中の一項目として行われております。
 その下にありますけれども、法律改正されたのは、このうち7つでございます。そのほか、省令、通達、告示で改正することとされて、合計で12項目の見直しということになっております。本日はその中で、国税審議会に直接関係のある項目、これは下線を引いておりますけれども、これに絞って説明したいと思います。
 次ページを見ていただけますでしょうか。これは26年度税制改正の大綱ということで、先ほどの12項目に少し解説が付いているものでございます。まず、税理士分科会で御審議いただいている懲戒処分の関係の見直しということでございますけれども、その(3)、これは一定の場合を除きまして、税理士業務と公職を兼業できるように、今は税理士業務の停止という規制が掛かっておりますけれども、そこを少し緩和しましょうという見直しでございます。そうしますと無資格者に名義を貸して自分は公職のほうをやり、税理士業務のほうはそのにせ税理士のほうに任せるというようなことが行われる可能性も高まるだろうということで、他の士業と同様に、名義貸しの禁止規定も設けることとしたということでございます。したがいまして、「併せて」以下の見直しのほうが国税審議会に関係するということでございます。
 従来、名義貸し行為というものは、税理士法第37条の信用失墜行為の一つとして懲戒処分をしてきたわけですけれども、今回の改正で禁止行為ということが規定上明確にされた、また罰則も設けられたということで、名義貸しは税理士法違反行為であるということが明確化されたということでございます。
 次のページを開いていただけますでしょうか。(7)でございます。税理士に係る懲戒処分の適正化です。現行の懲戒処分の種類というものは、戒告と1年以内の業務停止と業務の禁止でございました。これにつきまして、業務の禁止というのは3年間は再登録できないという規定でございますので、ざっくり申しますと3年間の業務停止と同じような効果がございます。業務停止の上限が1年で禁止だと3年といいますと隙間がかなり開いているということで、量定上いろいろ問題もあったということでございます。これを他の士業、弁護士とか公認会計士の業務停止期間と同じように2年以内にしましょうというものでございます。税理士法もそれらに並んだということでございます。
 次に下から2番目の(12)を見ていただけますでしょうか。これは税理士会費の滞納も税理士法上懲戒処分の対象となるということを告示で明確化しようというものでございます。
 以上の(3)、(7)、(12)の三つの見直しに伴いまして、財務省の告示で税理士等に対する懲戒処分等の考え方という告示があるんですけれども、この告示を見直す必要がございます。
 また、この機会を捉えまして、これまで税理士分科会の審査の中で先生方からいろいろ指摘されている項目の中で、告示の中に入れたほうがいいのではないかというようなものも、併せて御検討いただきたいと考えております。
 その告示でございますけれども、平成20年に告示を作ったときには、まず税理士分科会で御議論いただき原案を作っていただきまして、これをパブリックコメントに付して、その意見を踏まえたものを再度審議していただいて、決定していただいたという流れでございましたので、今回もそのような流れになるのかなというふうに考えております。
 懲戒処分の規定は、平成27年4月以後にした行為から適用ということになっておりますので、ただいま申し上げました分科会での審議は少なくとも本年中には終了して、来年の1月頃にはその改正告示を公表する必要があると考えております。そういう意味で、税理士分科会の先生の皆様には、従来以上に審議の機会が増えまして、御負担をお掛けすることになるかもしれませんけれども、よろしくお願いしたいと思います。
 ちょっと順番が前後しますけれども、このページの上のほうの(6)を見ていただけますでしょうか。公認会計士に係る資格付与の見直しでございます。この改正は税理士制度の信頼性向上に資するとともに、監査の信頼性確保にも配慮する観点から行うというものであると承知しております。これまでは、公認会計士は資格を取得しますと、自動的に税理士の資格が付与されるという制度となっておりました。この制度は、ちまたの言い方では自動資格付与制度と言われていたわけですけれども、この制度を改めまして、1に書いてありますように、公認会計士法に定める実務補習団体等の実施する研修のうち、税理士試験の税法科目の合格者と同程度の学識を習得できるものとして国税審議会が指定する研修を修了した公認会計士に税理士資格を付与するという形になります。
 現在、税理士分科会におきまして、税理士試験の執行のほか、税務職員が試験免除を受けるための研修の指定、またその検証を行っていただいておりますので、この新しい研修の指定の審議についても税理士分科会にお願いすることになると考えております。
 ただ、この規定は平成29年4月1日以後に公認会計士試験に合格した者について適用されるということでございますので、実際に適用されるのは平成29年11月頃に発表される合格者からということでございますので、研修指定の審議スケジュールもそれを踏まえて進めていただくことになると考えております。
 以上が税理士法の見直しに関しての説明でございます。
 次に、資料5を見ていただけますでしょうか。国税審議会令の一部改正ということでございます。1枚めくっていただきまして、縦の新旧対照表がございます。これを見ていただくと一目瞭然なんですけれども、国税審議会と酒類分科会の所掌事務を記載している箇所で、引用している法律名、エネルギーの使用の合理化に関する法律が、合理化「等」に関する法律に改正されたという技術的な改正でございまして、所掌事務の内容は変更されておりません。非常に簡単でございますけれども、御報告させていただきます。
 私からの説明は以上でございます。

会長
 どうもありがとうございました。
 それでは、これまでの事務局から説明いただきました事項につきまして御質問、御意見等がございましたら、御自由にお願いしたいと思います。どなたからでも、よろしくお願いします。
 では、どうぞ。

青山委員
 御丁寧な御説明をありがとうございました。
 私はちょっとここのところ、御説明を伺いながら何となく不安になっていました。実は、この国税庁の職員が漸減している、少なくなっている。しかしながら申告者増があったり、あるいは法律改正があって、納税の猶予や換価猶予の改正が27年4月から施行されるとか、結構事務量というのは膨大になっていらっしゃる御様子ですよね。それと同時に調査件数というのは少なくなっている。全体的にやはり国民の性善説にのっとってなされているからかなというふうにも思いますが、やはりそこでは絶対的な職員数が少ないのではないかなという気がします。非常に効率化を図って対応しているんだという御努力は分かるんですけれども、一方でやはりこれだけの人数必要なんだよというところの人員確保の要請というか、そういうものも一方でなさらなければいけないんじゃないかなという気がするので、その辺の政府に対する要請というか、そういうことはどうなっているのかお尋ねしたいと思います。
 以上です。

総務課長
 ありがとうございます。
 お答えするのは大変難しいんですけれども、全く同じ危機意識を我々も持っておりまして、毎年予算要求をやっているわけですけれども、もっと人数を増やして欲しいということを一所懸命お願いしております。ただ、そういう中で、政府全体として国家公務員の数を減らそうという動きがございます。国家公務員、ざっくり言いますと、大体、自衛官を除きますと今、全国で30万人しかいないと言うべきだと思いますけれども、その中で国税が5万人強ということですので、2割ぐらいを国税が占めています。このため、国家公務員全体の数を減らそうというと、どうしても国税だけ増やすというわけになかなかいかない状況でございます。
 今年の26年度予算で申し上げますと、政府全体で30万人という中で1,200人ぐらい減らしていますけれども、その中で2割を占める国税は60人ぐらい減らすということですから多少配慮はしてもらっているとは思います。しかし、もっと増やして欲しいというこちらの要請に対して、そういうわけにはいかないというのが全体的な情勢でございます。そうした中で、我々としてもICTなどを活用して、いかに業務の効率化をして必要な調査に人を割けるか、どうやって調査量を確保していこうかというのが今の課題でございます。それから、もう一つは、先ほども少し申し上げましたけれども、もはや調査だけには頼っていられないので、自主的な申告や納付をもう少しどうにかできないかと、そういう面での努力も今進めてきているところでございます。
 ただ、いずれにしても人数は少しでも増やしてもらいたいと思っておりまして、毎年お願いをしておりますけれども、なかなか今のところは難しい状況にあるということでございます。

会長
 ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ。

中村委員
 先ほどBEPS対応のお話がございましたが、グローバルに事業展開している企業がOECDのドラフト通りのBEPS対応を求められますと、企業の追加負担又は活動の制約などが出てくるのではないかと懸念しております。OECDで問題にされているのはグローバル展開している欧米企業の租税回避問題であると思います。真面目にやっている日本企業が事務だけ増えて何のメリットもないというようなことにならないよう十分な配慮が必要と思っております。移転価格文書化については、グループ全体を鳥観できるようなまとめ資料を親会社が作り、これを全ての海外子会社全部に持たせ、海外税務当局の資料提出要求に対応できるようにしなさいというのがOECDのドラフトの内容であると思いますが、このような資料を海外子会社に持たせる案では機密情報の漏えいリスクを払拭できないと思います。また、提出した情報を基に新興国などが安易に新たな課税を創出してくることも懸念しております。国税庁の方々には、いろいろとOECDの場で御活躍いただいていますので、本件につき、全体のコストパフォーマンスがきっちり合うような方向へ議論を導いていただき、日本の企業がもっと積極的に海外展開できるような方向へ引っ張っていっていただきたいと思っております。先ほどその点へのコメントがございませんでしたので、是非そちらのほうもよろしくお願いしたいと思っております。

上田審議官
 国際担当審議官の上田でございます。
 ただいまのお話は、安居総務課長が説明をいたしました資料の22ページ、ここにBEPSの行動計画ということで15にわたる行動計画があり、このうちの幾つかのものが今年の9月まで、その他のものが来年の9月までにOECDからG20に報告されるということになってございますが、今、中村委員がおっしゃられたのは、このうちの13の移転価格について、この透明性をもう少し高めるということで、必要な情報を企業からお出しいただくという案がOECDの中から出ている件についてではないかと思います。
 これにつきましては、私どもはビジネス界とのコミュニケーションを非常に重視してございます。また、OECD全体としても重視してございます。今おっしゃられた懸念されているという案がOECDから1月末に出たかと思いますが、それにつきましてはパブリックコメントということで、全世界の企業からコメントを頂戴して、今それをフィードバックしてOECD諸国内で再検討いたしておるところでございます。それに基づきまして、またビジネスの方々とパブリックな場で意見を聞く機会もOECDとして設ける予定でございます。その中で私ども国税庁といたしましても、経団連をはじめビジネス界とのコミュニケーションを重視してございまして、できるだけ、私どもは私どもの立場があるのですけれども、ビジネス界の無用な負担が増えないような形、あるいは今おっしゃられた子会社との情報のシェアの仕方につきましても御懸念がないような形になるように、私どもも働きかけを行っているところでございます。
 以上です。

中村委員
 ありがとうございます。

会長
 どうぞ。

田嶼委員
 御説明いただきましてありがとうございました。手元資料3の7ページ、租税滞納状況の推移というところについて一つお伺いしたいことがございます。この4月から消費税率が上がりまして、ここからの収入増が期待されるわけです。しかし、数年前の審議会のときのお話で伺ったのですけれども、この消費税は私たちが支払った後そのまま国に入るのではなくて、ステップを踏んで、それで最終的に国のほうに入るというお話を伺いました。そして、そのいろいろなステップにおいてなかなか税を回収できなかったり、多くのマンパワーを掛けなくてはならないというお話でした。
 このたび総務課長から人数が削減されるというお話を伺い、租税滞納状況における消費税滞納の比率について、このカーブがますます高くなってしまうのではないかということが懸念されます。
 そのシステムについて根本的に変えるとか、そういうようなお考えはあるのでしょうか。その点を伺いたいと思います。

徴収部長
 今の御質問は徴収のシステム、消費税の制度についてということでしょうか。それとも、人員が減っていることについてということでしょうか。

田嶼委員
 そうではなくて、マンパワーを使って消費税が国に入るまでのところがスムーズになるようにしていらっしゃるという話が前にあったと思いますけれども、違いますか。

徴収部長
 いろいろな努力をしていて、その中で職員の努力というのも、もちろんあります、この7ページの表で滞納残高が大きく減っている中には。これについては、滞納整理をする職員の数を、幸いなことにこの間は増やしていただいている時期があります。滞納残高が減り始めた原因の中には、一人一人の職員が頑張っただけではなく、全体的な徴収職員の数が増えているという事情もございました。最近の大きな流れとして、公務員全体の定員が減る中で、平成26年度の徴収定員も若干減少ということになりますけれども、そこは新たなICTの技術というようなものも使って、滞納者への電話催告を集中的に行えるシステムなども活用しています。以前は職員が、自分で電話番号を押して電話を架けていたものが自動的に行えるものであり、その際には滞納者の情報が自動的にパソコン上に表示されるようになっており、それを見ながら話ができるようにしています。同じ滞納者と話をするにしても、バックグラウンドのデータを少しでも見やすくするというような努力、予算も必要ですけれども、そういうようなこともしています。
 人が増えただけ滞納が減ったかというと、また別な要因もあって、こういう滞納者への働きかけをしたことによって納税者の方の意識も変わっているのかというところも、それは淡い期待かもしれませんけれども、以前に比べて納税への意識が高まっているのかなというような気もしています。税務職員が増えたから滞納者への接触が増えて滞納が減るというだけではなくて、こういうことを通じて国民の皆さんに自発的に納税していただくという意識を作っていく努力もしなければいけないのかなと思っています。

田嶼委員
 ごめんなさい。私の質問の仕方がクリアじゃなくて、大変失礼しました。
 そのようなマンパワーで税金を徴収するという、そのシステム自身が少し難しいのではないかと、人を増やせばいいということではないのではないかと、別のやり方がありはしないのかなということを伺いたかったんですけれども。

徴収部長
 まず、申告納税で自発的に納税していただける方の数を増やすという努力を続ける。それは租税教育というところもありますし、広報もあります。それから仕組みが難しいものはなるべく簡単にするとか、いろいろなアプローチをしていく。そうは言っても滞納になってしまう、経済的な事情でなってしまう方とは別に、納税意識が低い方が中にはいらっしゃるので、そこはしっかり納めた方とのバランスをとるためにマンパワーを掛けても、もっと言うとコストを無視してもというか、やらなければいけないからやるという部分も必要だと思っています。しかし、できる限りそんなことをしなくとも税金を納めていただける世の中になるよう、なるべく努力する一過程として、納税に誠意のない方には毅然とした態度でしっかり取り組んでいくマンパワーの掛け方も必要なのかなと思っています。
 ですから今、委員がおっしゃったように、そればかりにならないようにしたいというのは、我々も、そのことが全体の行政コストが下がれば、皆様方の負担というか、税負担も、我々としても税金が回ってお金を使っているわけですから、そういうことも減るということになるとは思いますけれども、その過程として一所懸命汗をかいている者がいるということは御理解いただいて、方向としてそればかりやりたいわけではないのですが、やらざるを得ないという状況ではあります。理想は、おっしゃるとおり、もっと自然に税収、納めるべきものを皆さんがきちんと納期限までに納めていただくようになればいいと思います。
 ただ、現状でも消費税で97%ぐらいは期限内に納付されています。残りの3%ぐらいが滞納になっておりますけれども、若干滞納になるというのは、期限があるので少し遅れても滞納だと言ってしまうというのもあって、そうした人も含めて3%の税額が滞納になっているのですけれども、1年経つと、その前の年に滞納になったもののほとんど、約99%が納付されるという状況にはなっています。ですから、何か、そんなに多くのものが滞納になっているわけではないということですが、あと少しのところを一所懸命働きかけているという状況です。

田嶼委員
 申し訳ありません。失礼いたしました。

総務課長
 田嶼委員のおっしゃっていることにうまく答えられるか分かりませんが、とにかくできるだけ自主的に納めていただくような努力というのがやはり一番だと思います。後で滞納になってから集めるのというのはすごく大変なものですから、できるだけ滞納にならないようにという努力が非常に大切でありまして、それは、例えば川上で言うと租税教育をしっかりしましょうというところも今非常に力を入れてやっておりますし、広報もやっております。
 また、制度面でいいましても、消費税という税は儲かってなくても納めなければいけないものですから、できるだけためずに納めてもらおうということで、何回かに分けて納付するといった制度面での工夫とかもしております。このように、できるだけ滞納になる前に納めてもらうようにするという面と、どうしても滞納になってしまった人にどのように対応するか、それもできるだけ早い段階からアプローチすることによって、できるだけ早く納めていただけるように努力はしているつもりでございます。
 ただ、どうしても最後はやはりマンパワーを掛けなければいけないところも残ってしまうということは、御理解いただけるのではないかと思います。

会長
 そろそろ予定の時間は来ていますが、あと御質問。
 どうぞ。

吉村委員
 今の点に関して、滞納状況が改善されているというのはとても喜ばしいことなのですけれども、実際に時効にかかったり滞納処分の停止が長期間継続したためにそういう債権が消滅したということで、本当の意味での取れない状況というのは、それも改善しているという理解でよろしいんでしょうか。

徴収部長
 滞納残高のピーク以降の一番厳しい時期に比べれば、これは経済状態にもよりますから、金融で言えば貸し倒れになっているというイメージですが、それは改善されてきています。全く無くなったわけではありませんが、それは事情によってやはり本当に納められない状態になっている滞納者の方がおられるときには、滞納処分の停止をすることはありますけれども、その状況はかなり改善されてきていると思います。

吉村委員
 その数値というのは有意的なものではないと。

徴収部長
 有意的と、それは個々の状況の積み重ねですから何とも一概に言えないですけれども、よくなってきているというような状況です。

吉村委員
 分かりました。どうも。

会長
 あと、特にございますか。なければそろそろ終わりにしたいのですが、もう一問ぐらいあればお受けしますが。
 よろしいですか。
 それでは、この辺りで質疑応答を終了させていただきます。
 先ほど事務局から説明がありました税理士法の改正に伴いまして、今後、懲戒処分の告示について審議を行う必要がございます。
 この審議についてですが、懲戒処分の審議は税理士分科会で行っているところであり、本件についても税理士分科会において審議することが適当と認められます。国税審議会議事規則第3条におきまして、「会長が分科会に調査、審議させることが適当と認めた事項について、これを分科会に付託することができる」と規定されておりますので、本件につきましても税理士分科会に付託し審議していただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

会長
 特に異議がないようでございますので、税理士分科会へ付託させていただきたいと思います。
 本日の議題は以上となります。
 本日の議事要旨及び議事録の公開につきましては、国税審議会議事規則第5条第2項に則りまして、まずは簡潔な内容のものを議事要旨として公表し、議事録は完成次第公表させていただきたいと思います。
なお、議事録につきましては、公表前に皆様の御発言内容に誤りがないかを確認させていただきたいと思います。
 議事要旨の内容につきましては、会長一任ということでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

会長
 では、これをもちまして、第15回国税審議会を閉会させていただきたいと思います。皆様、どうもありがとうございました。

――了――