日時: 平成21年3月11日 9:58〜11:19

場所: 国税庁第一会議室

出席者:

国税審議会委員 小林会長 井堀会長代理  
  青山委員 石井委員  
  さき委員 潮田委員  
  尾原委員 河村委員  
  須磨委員 たか橋委員  
  田嶼委員 辰馬委員  
  林委員 池田臨時委員  
説明者 国税庁 石井国税庁長官 国税不服審判所 金子国税不服審判所長
  岡本国税庁次長   戸田国税不服審判所次長
  井阪審議官    
  西村審議官    
  伊藤徴収部長    
  岡本調査査察部長    
  藤田総務課長    
  岡田人事課長    
  藤田課税総括課長    
  牧田酒税課長    

総務課長
 定刻前でございますけれども、御出席の方々が皆さんそろわれたようでございますので、第11回国税審議会を開催いたします。
 私は国税庁総務課長の藤田でございます。本日は、委員の皆様方には、大変お忙しいところを御出席いただきましてありがとうございます。
 本年1月6日付で当審議会委員の発令がございました関係上、後ほど、会長をお決めいただくまでの間、私が進行役を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 本日は、委員20名中14名の委員及び臨時委員の方々に御出席していただいております。
 国税審議会委員及び議事に関係のある臨時委員の過半数の方々が御出席でございますので、国税審議会令第8条第1項の規定に基づき、本会は有効に成立いたしております。
 まず、本日御出席いただいております委員及び臨時委員の方々を御紹介させていただきます。委員の皆様方には着席のままでお願いいたします。
 まず、青山理恵子委員でございます。
 石井宏尚委員でございます。
 井堀利宏委員でございます。
 岩さき政明委員でございます。
 潮田道夫委員でございます。
 尾原榮夫委員でございます。
 河村小百合委員でございます。
 小林逸太委員でございます。
 須磨佳津江委員でございます。
 たか橋滋委員でございます。
 田嶼尚子委員でございます。
 辰馬章夫委員でございます。
 林菜つみ委員でございます。
 池田隼啓臨時委員でございます。
 なお、本日は飯村穰委員、角田光代委員、~津十月委員、田中稔三委員、辻山栄子臨時委員、水野忠恒臨時委員におかれましては、御都合により御欠席でございます。
 続きまして、行政側の出席者につきまして紹介をさせていただきます。
 石井国税庁長官でございます。
 金子国税不服審判所長でございます。
 岡本国税庁次長でございます。
 戸田国税不服審判所次長でございます。
 井阪審議官でございます。
 西村審議官でございます。
 荒井課税部長ですけれども、国会の業務のため外出中でございまして、間に合うようであれば、戻り次第出席する予定でございます。
 伊藤徴収部長でございます。
 岡本調査査察部長でございます。
 岡田人事課長でございます。
 藤田課税総括課長でございます。
 牧田酒税課長でございます。
 よろしくお願いいたします。
 それでは、委員の皆様方で国税審議会会長の選任をお願いいたしたいと思います。国税審議会令第5条第1項によりまして、会長は委員の皆様の互選により選任していただくこととなっております。
 どなたか御推薦等ございますでしょうか。

さき委員
 小林逸太委員を御推薦したいと思います。小林委員は、審議会の委員を永年お務めになっておられますし、また、会長代理の御経験もございますので、適任であると思います。

総務課長
 ただいま、小林委員を会長にという御意見がございました。それでは、小林委員に会長をお願いするということでよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

総務課長
 それでは、会長席を用意してございますけれども、小林会長の隣でございますので、今お座りになっている席を会長席に代えさせていただきますが、よろしゅうございますでしょうか。

会長
 結構です。

総務課長
 では、会長から一言御挨拶をいただきまして、その後に、議事を取り進めていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

会長
 ただいま、御推薦いただきました小林でございます。
  国税庁のお仕事につきましては、主にお酒の業界の行政につきましてお手伝いをさせていただきました。当初はアルコール度数と税率との関係といったあたりから、いくつかの特別研究プロジェクトをお手伝いさせていただきまして、それから、審議会の統廃合がございまして、今はなくなりましたが、中央酒類審議会のお仕事もさせていただきました。それ以後、御承知のとおり、お酒のディスカウンターが台頭し、あるいは規制緩和の問題や免許制の問題、さらには未成年者飲酒の問題、これは自動販売機の問題でございましたが、これも大変に難しい問題でございましたけれども。さらに最近になりますと環境問題、容器のリサイクルとか、様々な問題を勉強させていただいております。長ければいいということではございませんし、その上、私の専門は経済学でございますので、たとえば税法についての詳しいところは存じ上げませんので、皆様に御指導いただきながら責務を果たしていきたいというふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 では、国税審議会令第5条第3項に従いまして、会長がその職務を代理する委員をあらかじめ指名するということになっておりますので、会長代理の指名を行いたいと思います。
 井堀委員にお願いしたいと思いますが、井堀委員、いかがでございましょうか。

井堀委員
 会長からの御指名ですので、皆様に御異存がなければお引き受けしたいと思います。

会長
 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の審議会の議題に入る前に、石井長官から一言、御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

国税庁長官
 新体制で初めての国税審議会でございますので、私から一言、御挨拶を申し上げたいと思います。
 本日は委員の皆様、大変お忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。また、今回の委員の就任につきまして、快くお引き受けをいただきまして、この点についても御礼を申し上げたいと思います。
 皆様方には、これからこの審議会におきまして、国税通則法などで定められました事項につきまして御審議をいただくことになります。御案内のとおり、これらはいずれも行政処分ですとか、不服審査ですとか、国民、納税者の方の権利に関する事項、あるいは酒類業の健全な発達に係る事項というような重要な事項でございますので、ぜひ忌憚のない御意見を賜りまして、十分な御議論をいただければと思っております。
 税務行政を取り巻く最近の環境をみますと、大きな流れといたしまして、我が国社会全体の少子高齢化の進展ですとか、グローバル化、あるいはIT化の急速な流れというものがございますが、これに加えまして直近では、内外の経済情勢が急激に変化をいたしまして、様々な新たな課題も生じております。
 私ども国税庁は、このような状況の中で引き続き国の活動を支える歳入を確保するために「適正・公平な賦課・徴収を実現する」という与えられた任務をしっかりと果たすことを通じまして、国民からの負託にこたえ、信頼を維持していきたいと考えております。
 このため、我々税務職員一人一人がモラルを維持して、適正・公平な課税、あるいは徴収を行うということを基本に、悪質な脱税、あるいは滞納には厳正な姿勢で臨むということが重要だと考えております。
 また、組織全体としても、経費の節減、あるいはIT化を進めるなどにより、簡素化・効率化に努める必要があると考えております。この後、岡本次長から最近の税務行政の動向につきお話をさせていただきたいと思いますが、以上のような点を基本として税務行政を運営していきたいと思っておりますので、皆様方の御指導をよろしくお願い申し上げます。

会長
 ありがとうございました。
 それでは、これから議事次第に従いまして進めさせていただきたいと思います。最近の税務行政の動向、それから国税審議会の概要、各分科会の最近の活動状況といったような順で進めさせていただきたいと思います。本日は初めてでございますので、まず、最近の税務行政の動向について、岡本次長から御説明をお願いいたします。

国税庁次長
 次長の岡本です。
 お配りいたしました資料1、最近の税務行政の動向というものに従いまして、ポイントだけですけれども国税庁の仕事の内容などについて、なるべく具体的に数字を挙げて御説明をさせていただきたいと思います。
 目次にありますように、大きく柱として税務行政を取り巻く環境、それから2番目に事務の効率化と納税者の利便性の向上、3番目に適正・公平な賦課・徴収と、分けて御説明をさせていただきたいと思います。
 まず最初の税務行政を取り巻く環境の変化ですけれども、1ページをおめくりいただきまして、最初のページでございます。申告件数の増加で、これは昭和42年からずっと、個人、法人、それから消費税も含めまして申告の件数を並べてみたものでございます。ここにも書いてございますように、特に直近のところでは、平成17年度に消費税の免税点の引き下げとか個人の公的年金控除の見直し等の税制改正がありましたので、ここで大幅に300万件程度増えたのですけれども、最近20年間で見ましても1.6倍の増加になっております。
 次のページを御覧いただきますと、特に所得税の確定申告の状況だけを取り出してみたものです。ちょうど来週の月曜日まで、今まさに確定申告の期間中でございまして、今週に入ってから各税務署へ来られる納税者の方々も大分増えていると思っております。これも確定申告、棒グラフで、全体として2,362万件というのが、去年19年分の数字でございますけれども、ここにありますように一番下の部分が還付の申告でございまして、これがどんどん増えてきている、半分を超えるまでになってきている様子がうかがえると思います。
 折れ線グラフの方は、その都度の申告納税額を表したものでございまして、これは大分さかのぼりますけれども、平成元年、2年、3年といったバブル期が、金額的には納税額としては多く出ております。こういう形で、来署される方、ないしは後ほど申し上げます電子申告をやっていただいている方も多くなっているのですけれども、こういう申告件数、来署者の方の増加に我々は対応していかなければいけないということでございます。
 そのほかには国際化、3ページを御覧いただきますと、経済取引が国際化・広域化・高度情報化しているということでございまして、そういうことに対して、我々は課税をいかに適正・公平に確保していくかというのが重要な問題になっているわけです。
 ここの例1には、国外送金等調書の提出枚数の推移が出ておりますけれども、国外への送金などにつきまして、200万円を超えるものについては金融機関から税務署に一定の法定調書が提出されます。その枚数を比べたものですけれども、制度導入の平成10年に比べて1.7倍に増えている、それだけ海外取引が増えている証拠だと思います。
 それからまた、例の2では外国の法人数も件数的に見まして、10年間で2.8倍にまで膨れ上がっていることがうかがえます。
 次のページ、4ページ目ですけれども、例の3としては連結納税に係る承認申請の推移で、連結グループ、連結納税の件数も制度創設から見ますと6.7倍に膨れ上がっているということがございます。
 例の4は電子商取引で、インターネット取引の市場規模、これは経産省の方の市場調査でございますけれども、10年前に比べて19倍、20倍といったような規模の拡大が見られると思います。こういう中で、我々は課税取引の把握なり、適正・公平な課税の実現に努めていかなければいけないということが大きな環境の変化の中での我々の課題として上げられているわけです。
 5ページ目を御覧いただきますと、実調率の低下と書いてありますけれども、これは実地調査の率で、我々が行います税務調査の割合を書いてございますけれども、対象法人数や税額のある申告を行った納税者数に対する実際に調査を行った割合ということで御理解いただければと思いますけれども、先ほど来御説明しているような業務量の増加、それからいろいろな取引の国際化・複雑化に対応して、調査の方も難しくなってきている、手間ひまがかかるようになってきている、相対的にこの調査率が法人にしても個人にしても、相当低いところまできているというのが現状でございます。最近、いろいろ工夫をして、少しまたこの改善が見られるという状況にはなっております。
 6ページ目は、我々の台所事情といいますか、予算と並んで我々の組織、5万6,000人のマンパワーで仕事をしておりますので、この定員の状況も長いスパンで見てみますと、昭和40年代に5万人ちょっとの時代はありましたけれども、一番最近のピークでは平成9年の5万7,200人、このころ、我々はKSKという電算システムの段階的な導入も行いました。そういうことも含めて10年間1,000人を超える定員の削減を行って合理化にも努めてまいりました。
 このところは、政府全体の閣議決定の中でも治安や徴税等、真に必要な部門には適切に定員を配置するというようなメリハリのある定員配置の考え方がございまして、平成19年、平成20年、今回の予算(案)も含めまして、若干の増加が見られるところではございます。ただ、こういった人数で先ほど来申し上げているような、調査にしても、納税者サービスにしても取り組んでいかなければいけないということでございます。
 次のページは我々が基本に出しております取組姿勢というか、基本的な方針になるものが国税庁の使命と、ここに掲げてございますけれども、納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現するという使命に基づいて、具体的に三つの実績目標を掲げまして、毎年、我々、各府省ともなのですが、実績評価を行っております。この三つの柱で、これは財務省の設置法に基づく国税庁の任務と軌を一にするわけですけれども、一つは内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収、2番目に酒類業の健全な発達の促進、3番目が税理士業務の適正な運営の確保になっております。
 この審議会におかれましても、分科会として酒類分科会や税理士分科会が置かれているのも、こういった国税庁の任務なり目標、取組みに沿った設置になっているわけです。
 特に一番大きなものは、やはりこの実績目標の1の適正・公平な賦課及び徴収でございまして、具体的にここに挙げておりますような業績目標を掲げて、具体的な指標も参考にしながら毎年、計画を立て実績評価を行っているということでございます。
 今日は特にこの実績目標1の適正・公平な賦課及び徴収のところを中心に、この後、お話を進めていきたいと思います。
 8ページ目をお開きいただきたいと思います。ここから事務の効率化と納税者の利便性の向上というところに入ります。2番目のグループのところに入りますが、そこで我々は具体的に、国税庁として合理化なり効率化を進めていくにあたって、業務・システムの最適化計画というものを作って、それに基づいて具体的な効率化を進めております。これは、18年3月にできた計画を20年5月に一部改定をいたしまして、22年度まで当面、この計画に則ってやっていくということで、大きな柱としてはここの括りにあります、1の「業務を的確に実施するための事務処理の簡素化・効率化」で、この後も説明いたします内部事務の一元化などが、この取組みの代表例です。
 2番目は「IT活用による納税者利便性の向上等」で、これも御説明させていただきますe-Tax、電子申告の機能・運用の改善、3番目以下はシステムの高度化とかセキュリティの確保、それから調達の経費の削減や調達の透明性の確保といった技術的な点についても、ここで基本理念として上げております。
 こうしたことを進めることによって、年間で平均、ここに掲げております経費では141億円、業務処理時間では延べ8万8,000人日程度のメリット、削減効果がこの計画期間中の平均として見込まれるという試算を我々としては出しております。
 具体的な例として、次のぺージ、9ぺージ目ですけれども、まずe-Taxから入っていきたいと思います。何回かこの言葉をお聞きになっておられる方もおられると思いますけれども、自宅からでもパソコンを通じて電子申告することで、税務署に行かずに各種の国税関係手続を行うことができるということで、納税者の利便性の向上が図られること。あわせて、行政の簡素化・効率化という点でも内務事務のペーパーレス化、入力事務の削減ということで、我々の行政サイドも大いに経費の節減が図れるというものでございます。
 10ページをお開きいただきますと、これまでの具体的な取組みでは、そもそもこの制度を導入しましたときには電子申告で、例えば確定申告の場合、申告書自体は電子で行えるのですけれども、添付書類、各種の領収書とか源泉徴収票とかを別送しなければいけなかったという手間がありました。そういったことも納税者の方々からの要望も踏まえて、随分見直しをし、簡素化をし、基本的に現在では添付書類は、各種の帳票類は御自宅に保管をしていただくことで、送っていただかなくて結構ですという仕組みに改善をいたしております。医療費などについても、具体的な内容を数字で記載して送信していただくことで、領収書自体は送っていただかなくても済むという手当てをいたしております。
 それから電子署名が、いわば電子的な印鑑ということで、本来、セキュリティ上必要であるのですけれども、税理士さんが納税者の依頼を受けて税務書類を作成し、電子申告を行っていただく場合には、納税者本人の電子署名の省略ができるように、これは一昨年から実施をいたしております。
 また、e-Taxを利用できるパソコンを税務署に設置をいたしておりまして、そこでe-Taxを具体的に、実際に体験していただこうと、今行っております確定申告期間中も、各税務署ではパソコンが随分並んでおりまして、そこで自然にe-Taxに親しんでもらえるように、簡単に申告がそれで終わるという施策を全国の税務署で採っているところでございます。これも大変、好評でございます。
 こうしたことに加えてインセンティブ措置としては、e-Taxを利用していただいた方には、例えば所得税ですと還付申告につきまして通常の半分くらいの日数で還付の処理が済む、還付金が具体的に返ってくるという施策も講じております。
 それから、19年分・20年分につきましては、電子署名を有する個人の電子申告について、所得税額の特別控除、最高5,000円ですけれども、これを制度として設けております。
 そのほか、運用上の改善、システムの改善などにつきましても、ユーザー、納税者の方々の要望に応じて、これまでいろいろな見直しとかサービスの改善を行ってきているところです。
 この点は省略をさせていただいて、次の11ページのところに、今後のe-Taxの目標ということで掲げておりますが、将来的には、25年度には実際の手続のうち65%程度利用がされるようにということを目標に、現在いろいろ取組みをしているところです。実績値として青の下の方に23.1%と書いてありますけれども、これは具体的に数字で言いますと720万件、もう既に今の時点で利用が、19年度の実績としてなされているところです。
 ただ、これが具体的に伸びていくにあたっては、幾つか条件がございます。前提条件として、この下に書いているところなのですけれども、一つがやはり電子認証基盤である住基カード等の大幅な拡大が大前提となるということです。将来的には1,000万枚を超える電子認証がないとこういう目標の達成も難しいことを我々としては試算をいたしております。平成20年度で200万件の前提となっているのですけれども、平成21年2月末の段階でこの認証の枚数は100万件をちょっと超えた104万件、このあたりがまだまだ問題として残っているところです。
 それから、地方税の導入、地方税におけるeLTAXの導入も大前提になろうかと思います。
 それから、さらにこの電子納税の証明の電子的な受け入れ、国とか地方公共団体、金融機関での受け入れがスムーズになされることが一般の慣行となっていることが大変重要な前提であろうと思っております。
 これにあわせて我々としては電子認証、将来的にはセキュリティの確保を図りながら、より簡素なID、パスワード方式による認証セキュリティの確保ができないかも検討をしていきたいと考えております。
 12ページ目でございます。納付手段の多様化ということで、ここではIT化の一つで利便性の向上を図る点から二つ上げております。コンビニ納付というのは、既に昨年の1月からコンビニで、一定のバーコード付の納付書をお持ちの場合には、コンビニで簡単に納付、納税ができるという仕組みを導入いたしました。手軽にできると好評で、21年2月末の時点で、去年の1月から累計で96万件の利用、約100万件の利用が既になされております。
 それから、さらに2番目は電子納税でもダイレクト方式ということで、この9月から納税者が事前に税務署と金融機関に届け出をしていただければ、e-Taxによる申告や計算書の送信の際に、クリックして選択するだけで、即時、または納期限に合わせた納付ができるような簡易な電子納税の仕組みも導入していこうと準備をしているところでございます。
 それから、次は内部の事務の簡素・合理化の話でございまして、内部事務の一元化について御説明をさせていただきます。ここに書いてございますように税務署内の複数の部署で行っている内部事務を一つの部門で一体的に処理することにより、事務の効率化を図る施策でございます。納税者の方から見てもワンストップサービス化で、利便性が高まることが期待されております。
 現在、審議中の21年度予算で、この施策の内容が盛り込まれておりますので、国会で成立いたしますと、この7月から我々としては全国524の税務署で実施をしようと、現在、体制の準備等を図っているところでございます。
 ワンストップサービスがなされますと、いろいろな内部事務のそれぞれの部門で、別々に行っていた業務を同じ新しい管理運営部門(仮称)というところで集中的に行えるということで効率化が図れる、また、納税者の方にとっても利便性が高まるというものでございます。
 14ページをお開きいただきます。同じような効率化、サービスの見直しということで税務相談の体制の見直し、税務相談の集中化にも取り組んでおりまして、これはもう既に昨年の11月に実施したものでございます。
 それまでは税務相談というのは、税務相談室、それから税務署、それぞれのところで電話や面接で応じていたわけなのですけれども、先ほど来、冒頭に御説明いたしましたような申告件数が増えていく、調査件数が減っている中で、限られた人員で効率的に相談も行っていくことで、見直しを行い、利便性の向上も図っていくというものでございますが、従来、ばらばらに対応していたものを、右の方でございますけれども20年11月4日から、基本的に電話相談で一本化をいたしました。今、税務署に電話を皆さん方がかけていただくと代表電話に掛かりまして、一般的な御質問なり御相談は1番を押してください、それから個別の相談なり、税務署の職員にお問い合わせがある場合、連絡をとりたい場合は2番を押してくださいという案内があります。1番の電話番号を押しますと、これが各国税局に一つずつ置かれた電話相談センターの方に回りまして、そこで相談官の人たちが一般的な税務相談を受けるということです。
 納税者の方々は個別の署に電話をされていることになっているのですけれども、受ける方はそういう形で、集中的に一箇所で受けているということになります。2番の方を押された場合には少々お待ちください、ということで具体的に個別相談などについて、署の方に掛かっていくことになります。
 特に現在は確定申告を行っておりますので、各局、それに加えて、0番は確定申告専用のお問い合わせですということで、確定申告用の電話センターを設けて、そちらの方に回るようになっております。そういうことで集中化を図り、効率化に努めているところであります。
 3番目に、適正・公平な賦課徴収の実現ということで、的確な調査・指導の実施を15ページにまとめております。具体的な数字を見ていただきますと、16ページの方で実地調査の件数になります。限られた調査事務量を有効に活用するためにメリハリのある調査体制を行っていこうということで、特に最近ではこの一般の調査に対しまして、個人で着眼調査、法人で重点項目調査という、ワンポイント調査のような短期間で調査を行う手法も取り入れておりまして、そういったことでメリハリのある調査を行っているところです。
 その結果といいますと、17、18ページを見ていただきますと、17ページの方は個人の調査1件あたりの申告漏れ所得金額の推移ですけれども、平成19事務年度、7月から6月で事務年度と言っておりますが、その個人の調査1件あたりの申告漏れ所得金額は、平成3事務年度と比べ1.7倍に増加いたしております。より問題の多いところに的を絞って調査を行っているということでございまして、法人についても同様な傾向が、18ページですけれども、うかがえるかと思います。
 19ページをめくっていただきます。国際化への取組み、それから富裕層に対する取組み、IT化への取組みで、時間がちょっと押していますので個別には割愛させていただきますけれども、いろいろな観点から新たな取組みで、適正・公平な課税の実現のためのいろいろ情報収集なり調査を行っているということを整理したものでございます。
 20ページは査察の取組みでございます。査察というのは、刑事的な手続で、一般の税務調査、行政調査に比べましても、非常に重たい意味のある、一罰百戒的なものであるのですけれども、ここに各10年間の税目別の告発件数を示してございます。件数トータルでは年間百五、六十件というところで大きな変動はないのですけれども、従来、所得税、法人税が中心だったこの査察調査も、最近におきましてはいろいろ国際化事案、金融証券関係事案、消費税事案、相続税事案、源泉所得税事案といった幅広い範囲で行ってきているということでございます。
 21ページは国際課税について少し触れております。その代表的な制度として移転価格税制について紹介してございます。移転価格税制とは御承知と思いますけれども、国外関連者との取引において、その価格が第三者間の取引と異なることによって、我が国の課税所得が減少しているような場合、その取引が独立企業間価格で行われたとみなして所得を計算し、課税する制度ということで、昭和61年度から導入されたものでございます。国際企業活動の国際化に伴いまして、こうした対象取引が増加してきております。また、複雑化もしてきているということでございまして、企業の側にとっても頭の痛い問題になっているわけです。
 我々としてもなるべくそういう問題が生じないように、事前に確認をして、その上で国際取引を進めていただこう、そういう体制をなるべく作っていこうと、22ページは移転価格税制に係る事前確認の申出件数及び処理件数の推移で、ここに過去10年ほどの数字を挙げておりますが、最近とみに増加をしてきております。中でも、この移転価格税制絡みで言いますと、相手国との2国間の当局間で相互協議を行う必要が出てくるものも多くございまして、実際、注にもありますように、事前確認のうち約9割は相互協議を伴うものになっております。
 次のページ、23ページですけれども、その相互協議の数字が出てきておりまして、ここでは最近5年間の数字しか挙げておりませんが、平成19事務年度でも153件、件数が発生しております。ちなみに、平成8年の段階ではまだ40件の発生にとどまっておりましたので、そのころから比べると、随分この2国間の租税条約に基づく相互協議も増えてきている、国際化が進展していることがうかがえると思います。
 24ページ以下では滞納の状況を整理させていただきました。滞納残高は依然、高水準で、平成19年度では約1.7兆円でございます。さらに滞納の累積・長期化が進展しておりまして、処理の困難化が増大しているということで、25ページを御覧いただきますと、新規発生滞納額の内訳を書いてございます。このうちの消費税につきましては、3,984億円、19年度の数字で見ますとそういう数字になっておりまして、18年度よりもわずかですけれども増加しております。20年度、今進行の年度におきましても、こういう経済情勢のもとで相当滞納の新規発生も増えることが想定されておりまして、我々も未然防止に一段の努力をしているところでございます。
 消費税だけを見たものが26ページでございます。消費税の滞納状況は、平成10年のピークに比べると大幅に減少はいたしておりますけれども、引き続き高水準にあるということでございます。我々はこうしたことも踏まえて、特に消費税の滞納の優先処理、それから大口、悪質・困難な滞納事案の重点的処理などに心がけております。さらに集中電話催告センターというものを設けまして、それを活用した少額滞納事案の効率的な処理などにも努めているところでございます。
 最後の2枚は訴訟への対応で、ここでは審判所関係は省略させていただきましたけれども、27ページにありますように経済社会の高度化・複雑化に伴い増加する訴訟に適切に対応していくため、まず文書回答などの課税処理の統一性、透明性を高めるための施策を充実させていこうということを行っております。20年3月にも手続の見直しを行いました。
 それから、的確な事実認定に基づいた法令面の検討もしっかりしていく必要があるということで、部内でも再認識を進めているところでございます。
 審理事務の充実を図っていくことが、また大変重要な課題として議論をされているところです。28ページ目、最後のところでは文書回答の件数として、過去5年の照会件数、具体的な回答件数を示してございます。照会後の当局とのやり取りの途中で、照会者が大体回答の内容が分かると文書で回答しなくても結構ですといって、取り下げられるケースもあるので、回答が大分少なくなっておりますけれども、そういう数字になっております。
 それから、実際に課税関係で訴訟に至ったケース、最後までいって敗訴したものも十数%に上っているということでございまして、我々としても常に審理の充実を引き続き、重点的にやっていかなければいけないという思いでございます。
 以上、駆け足ではございますけれども、ちょっと時間が超過して申しわけございませんでしたが、最近の税務行政の動向を御説明させていただきました。

会長
 ありがとうございました。ただ今の岡本次長の御説明については、御質問または御意見もおありかと思いますけれども、少し時間が押しておりますので、このまま事務局の方からの御説明を続けさせていただきまして、その後にまとめて御質問、御意見をいただきたいというふうに思いますので、よろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

会長
 では、そういうことにさせていただきます。
 それでは、藤田総務課長から、国税審議会の概要、国税審査分科会及び税理士分科会の活動状況についてお願いいたします。

総務課長
 それでは、簡単に御説明をさせていただきます。資料の2を御覧いただきたいと思います。
 1ページ目は国税審議会の概要でございます。平成13年に三つありました審議会が統合されまして国税審議会が発足しました。真ん中に、御覧いただいているように三つの分科会、国税審査分科会、税理士分科会、酒類分科会の三つの分科会から成り立っているということでございます。
 まず2ページ目、国税審査分科会の所掌ですけれども、この四角に囲んでありますが、国税庁長官通達による法令解釈と異なる解釈により裁決を行う場合、他の国税に係る処分を行う際における法令解釈の重要な先例となる裁決を行う場合におきまして、国税不服審判所長が意見を申し出ます。それについて、国税庁長官から国税審議会に意見を求めて、調査審議していただくということが国税通則法等に定められております。
 そのほか、裁決事例の研究などをするために開催するということとされています。
 最近の活動状況はこの2ページの一番下にございますが、大体年に1回くらい開催している状況でございます。昨年は3月19日に御覧のような議題で会議を開いてございます。
 それから3ページ目、税理士分科会でございます。税理士分科会の所掌事務は2番目に書いてございますが、大きく分けまして、税理士試験の執行と税理士の懲戒処分の審議、この二つでございます。税理士試験の関係では毎年2回ほど開催されておりまして、懲戒処分につきましては、随時、開催されているという状況でございます。
 1枚めくっていただきまして、4ページ目が最近の活動状況でございます。直近1年間で言いますと、第31回以降、5回開催されております。
 まず、税理士試験の関係の方から申し上げますと、まず第32回の5月30日に開かれたものでございます。ここでは8月の5日から7日に実施しました平成20年度の税理士試験の試験問題の審議等について御審議をいただきました。
 それから、一番下、第35回、12月9日ですけれども、ここで税理士試験の実施結果、指定研修の実施結果、あるいは21年度の税理士試験の実施に向けた試験委員の推薦等について御審議をいただいたところでございます。
 なお、御参考でございますが、この20年度の税理士試験の合格者は964人おられまして、12月12日に官報公告しているところでございます。
 それから、もう一つの所掌事務であります税理士の懲戒処分の審議の関係では、第31回、33回、34回と3回開いております。この中で3月19日が、「税理士・税理士法人に対する懲戒処分等の考え方」についてということで、懲戒処分の基準について御審議をいただきました。税理士分科会においては、この考え方は、それまでの税理士分科会における議論や委員の意見等を踏まえた内容となっていることから、この考え方に基づいて懲戒処分等を行うことが適当だということで、今、これに基づいて御審議いただいております。また、3月31日にこの考え方を財務省告示として公表いたしております。
 6月の第33回と、11月の第34回が実際の懲戒処分事案の審議でございます。6月の分科会のときには14名の税理士と1税理士法人、それから、11月の分科会におきましては15名の税理士、合計29名の税理士と1税理士法人の懲戒処分の可否、それから懲戒処分の内容について御審議をいただきました。
 御参考ですけれども、そのうち12名につきましては税理士業務の禁止処分、17名と1法人につきましては、それぞれ1月から1年の税理士業務の停止処分が相当であるという議決をいただいております。
 この分科会の審議結果ですけれども、国税審議会令あるいは国税審議会議事規則に基づきまして、分科会の議決をもって国税審議会の議決とすることが適当であるという審議会会長の御了解がございましたので、この分科会の議決をもって国税審議会の議決として、国税審議会会長から財務大臣への答申がなされ、それに基づいて財務大臣による懲戒処分が実施されているところでございます。駆け足でございますが、以上でございます。

会長
 ありがとうございました。
 引き続き牧田酒税課長から酒類分科会の活動状況についてお願いいたします。

酒税課長
 それでは、私からは酒類分科会の活動状況について、簡単に御説明させていただきます。
 まず、酒類分科会の概要でございますが、資料2の5ページでございます。酒類分科会では、「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」などの関係法令に従いまして、以下のページにございますように酒税の保全のための酒類業者に対する命令、酒類の表示基準の制定、エネルギーの使用の合理化計画に係る命令、あるいはリサイクルに係る表示事項の遵守命令などにつきまして御審議いただくということが、国税審議会令で定められているところでございます。
 続きまして、酒類分科会の活動状況でございますが、8ページでございます。御覧いただけますように、平成20年3月19日に開催されました第10回国税審議会以降では、御説明申し上げました審議事項等が特にございませんでしたので、酒類分科会は開催されておりません。
 なお、平成20年3月11日に開催されました第8回酒類分科会においては、「酒類における有機等の表示基準」の一部改正案について審議が行われまして、WTO通報等の所要の手続を経て、大幅な修正が必要ない場合は分科会長の御判断により、酒類分科会の議決とするということが了承されました。その後、所要の手続が終了いたしまして、大幅な修正が必要なかったということから、分科会長に御報告の上、当該一部改正案をもって酒類分科会の議決とされました。
 先ほど、総務課長からも御説明をいたしましたが、国税審議会においては、会長が適当と認めた場合に限り、分科会の議決をもって国税審議会の議決とすると定めておりますので、本改正案の議決につきましては、会長が適当と判断されたため、酒類分科会の議決をもって国税審議会の議決とされ、平成20年5月及び6月に国税庁長官に対して答申がされております。
 本答申を受けまして、平成20年6月及び7月に、「酒類における有機等の表示基準」の改正の告示を公布し、9月及び10月から施行されております。
 なお、本改正でございますが、農林水産省が「有機JAS規格」を改正したことを受け有機農畜産物加工酒類に使用できる食品添加物を整理するなどしたものでございます。
 簡単でございますが、以上でございます。

会長
 ありがとうございました。
 それでは、一通り御説明をいただきましたので、これから、御質問あるいは御意見につきまして、委員の皆様からお聞きしたいと思います。どなたでも結構でございますので、もし、御質問・御意見がございましたらお願いしたいと思います。
 いかがでしょうか。

青山委員
 すみません、初めて参加させていただきましたので、本当に稚拙な意見やら質問やらになるかと思います。先ほど来御説明いただいて、申告件数が1.6倍、しかしながらマンパワーはあまり増えていないのだというような、本当に内部努力をなさっている状況を理解をさせていただきました。ただ、そういうふうに努力をなさっているところを、なかなかオープンにPRできていない、そういうところはちょっと下手だなという感じがいたしまして、是非、今後はホームページ等々を使いながら、頑張って広報的なことをなさっていただければなと思います。
 それからもう一点、私たち仲間で、おもしろがってe-Taxをやってみましょうというようなことで、今チャレンジをしている最中です。「5,000円って結構、インセンティブあるよね」なんて言いながらやっているのですけれども、IDとパスワードを入力した後、どうも「ちょっと出来ないね」っていうようなことがあったりしているのですね。技術的な認識不足もあるのですけれど。そういったときに、e-Taxに関しての相談コーナー的なものがあるのでしょうか。税務署に電話すればどこかにきちんとつながるのでしょうか。その辺、教えていただければと思います。以上です。

国税庁次長
 後の方のe-Taxの電話相談というのは、ヘルプデスクというのがございます。例えば国税庁のホームページを御覧いただきますとe-Taxコーナーがありまして、そこでヘルプデスクの電話番号とかも書いてあります。特に、この確申期間中は24時間対応しておりますので、ぜひ御利用いただきたいというふうに思います。
 それから、一番目のPR不足という点は我々も、常々実感をしているところでございまして、行政としての対外説明責任をきちんと果たしていくということも、我々、大事な仕事だと思っております。これから一層取り組んでいきたいと思います。よろしくお願いいたします。

会長
 ありがとうございます。西村審議官から追加のご説明をお願いします。

西村審議官
 ちょっとe-Taxにつきまして、ヘルプデスクがございまして、e-Taxの受付自体は24時間やっておりますが、ヘルプデスクは夜8時までやっておりまして、あと国税庁以外に国税局にもヘルプデスクを設けておりますので、オペレーターに研修を受けさせまして対応させておりますので、御利用いただければと思います。

会長
 ありがとうございました。ほかに何か。

潮田委員
 納税者番号制度が、何と申しますか、党税調等でやろうよと言っているだけでなくて、与野党のPTなんかも多少動き始めたようで、以前に比べると少し前に動き出したのかなという気がいたしますけれども、納税者番号制度がもし導入された場合に、今まさにお話になったそのe-Taxについて、飛躍的に改善するというようなことがあるのでしょうか。それとも、やっぱり相変わらず多少面倒くさい部分が残って、どこかに足を運ばなければいけないとか、そういうことが結局のところは残るのでしょうか。

西村審議官
 納番につきましては、何分まだ具体的な話にはなっておりませんし、私どもは執行当局でございますので確たることは申し上げられないのでございます。恐らく、本人確認という話に絡んでくるのだろうかと思いますけれども、納番との絡みはどうなるかというのはちょっと申し上げられないのでございますが、現在の話といたしましては、e-Taxの本人確認手段といたしまして電子署名ということでやっておりますが、e-Taxの本人確認手段としてどういった形で納番が絡んでくるのかというのは、今後の検討課題ではないかなと思っているところでございます。

会長
 よろしいですか。
 ジャーナリズムでは、今、大分e-Taxの問題を取り上げていらっしゃいますけれども。

潮田委員
 非常に結構なことなのではないかと思いますね。どんどんやるべきではないかと思います。

会長
 ありがとうございました。はい、須磨委員どうぞ。

須磨委員
 e-Taxの問題なのですが、利便性の高いものはリスクもつきものだというふうに聞いておりまして、何となく不安に思っている方が数多くいらっしゃるような気もいたします。そのあたりの不安を解消するための対策、またはまだ不安はやはり残っているのではないかと、幾分、私自身も不安に思っている部分があるのですが、犯罪に結びつくのではないかとかセキュリティの問題とか、そのあたりはどのあたりまで対処できていて、今後どのように進んでいくかお教えいただけますでしょうか。

西村審議官
 情報セキュリティの話だと思いますけれども、基本的に、納税ということが申告納税でございますので、権利義務に係るということで、要するにその本人確認は非常に大事であると、e-Taxで本人確認をどうやっておるかということでございますけれども、一番危ないパターンが他人がなりすまして不正還付を行うという場合でございます。
 したがいまして、本人確認がいるわけでございます。実はe-Taxでは電子証明法に基づく電子署名を付しております。これはどういうことかというと、二つ意味がありまして、一つは電子署名を付すと、電子署名を付したデータは本人のものと推定される、つまり、紙の場合は民事訴訟法で本人のものであるとの推定規定があるのですが、電子の場合は電子署名法で本人のものと推定されるというのがあります。それが一つと、あと紙の場合は改ざんいたしますと痕跡が残るわけでございますが、電子の場合は残りませんので、それで電子署名を使いまして、電子署名を付した後改ざんされた場合には、改ざんの痕跡が残るという二つの意味で、e-Taxでは電子署名法に基づく電子署名をつけるということで、原則はなりすまし等は防止できるような仕組みとしております。
 ただし、電子署名を付すことはある意味で非常に不便なところもございますので、いわゆる本人確認ができる場合、今は二つの場合を考えておりまして、一つは税理士に本人だと確認していただける場合、代理送信の場合でございます。もう一つは、本人に税務署に来署していただきまして、そこで確認できる場合、これが税務署にいわゆる作成コーナー用パソコンを置きまして、添付書類等により本人確認ができる場合、この二つの場合につきましては電子署名を外した形で、やっておるところでございます。
 それで、今後どうなるのだということなのです。実は政府全体でいわゆる電子署名に変わる情報セキュリティの確保手段がないかというのを検討しております。ただ、むやみやたらとID、パスワードにしたらいいというわけではなくて、法的な根拠、今は電子署名法による根拠はあるわけでございますが、法的な根拠を踏まえた形で何かできないかと、より利便性が確保できる形でですね、そういったことで今現在、内閣官房におきまして全省庁の問題として検討しておるところでございます。それが進めば、私どもといたしましても採用できる余地があるのかどうかも含めて、検討していきたいと思っております。現状は以上です。

須磨委員
 もう一点よろしいですか。

会長
 はい、どうぞ。

須磨委員
 もう一点なのですけれども、いわゆる添付書類もなしということで自宅保管ということは性善説による徴収方法ではないかと私は思っております。性善説は大変結構なのですが、悪い人も結構世の中には多くいるようですので、そのあたりのことはどのような対策をとっていらっしゃるかお聞きしたいと思います。

西村審議官
 法律上は、例えば医療費控除なんかですと領収証はどうしているのかというと、原則3年間提示又は提出を求めることができます。それで、一定の考え方に基づきまして、事後的に領収書の提示又は提出を求めております。課税当局から領収書を提出してくださいと。e-Taxで医療費控除を行う場合、医療費の明細を電子申告で書くことになっておりまして、その明細は出ていまして、その後一定の考え方のもとに、それに見合う、領収書の提示又は提出を求めて事後的に確認をさせていただいております。もしそれで確認できない場合、いわゆる医療費控除を否認するという場合もあるわけでございますけれども、そういった意味でサーベイをやっているところでございます。

須磨委員
 それはすべてではないですよね。

西村審議官
 はい、もちろん。

須磨委員
 ピックアップでということですか。

西村審議官
 はい。

須磨委員
 それが、どなたをピックアップするのかなとちょっと思ったのですが。それはアトランダムにピックアップしてやるのですか。

西村審議官
 それはちょっと調査手法の問題になりますので、答えは差し控えさせていただきたいと思います。

須磨委員
 怪しいなというのはわかるわけですか、電子上で。

西村審議官
 それについても、申しわけございません。

国税庁長官
 今の点ですけれども、実は私、主税局長のときに添付書類の省略を税制上手当てをしたところです。もちろん、そのときにも今おっしゃったような懸念が強くあった一方、電子申告の普及のためにはインセンティブをつけないといけないという声も非常に強く、先ほど御説明したような還付を早期にやることが必要だとか、添付書類が面倒くさくて、幾ら本体を電子申告しても添付書類を送らなくてはいけないのでは普通の申告と同じことではないかというような御議論がありました。それで結局、添付書類については、必要な時に提示を求めることができるようにしておき、税務署が、アトランダムになるのかどういう基準かは別にして、事後的なチェックをするということで、スタートしているわけです。まだスタートして日が浅くて、事後的チェックについてどういう運用をしていくか考えなければなりませんが、これが社会的な傾向として大きな問題になっているとしますと、当然、運用上も厳しいチェックしていかざるを得なくなると思います。まだスタートしたばかりなので、様子をよく見ながら対応を考えるという段階だと思います。
 いずれにしても御懸念のような問題点があることは、一番我々としても心配しています。

会長
 よろしゅうございますか。ほかに何か御質問、御意見がございましたらどうぞ。

田嶼委員
 私も一番お伺いしたかったのは、e-Taxの情報セキュリティの問題だったのですけれども、国税庁の方で十分な考えをお持ちであるということがあって安心いたしました。
 ただ、世間には、特にITをよくわかっている方もいらっしゃると思うので、是非、そのお考えをわかりやすい形でインターネット上にお示しいただければ、安心度が増すのではないかというふう考えました。
 e-Tax以外のことでもよろしゅうございますか。

会長
 はい、どうぞ。

田嶼委員
 私の分野は医学なんでありますけれども、最近は製薬会社の統合などが非常に目立っております。特に大きな外国の製薬会社が日本の製薬会社と合併するということが多く出てきております。
 私は、それが正しいかどうかは分からないのですけれども、外資系の製薬会社の場合はどんなに売り上げを上げても、日本では税金を払っていらっしゃらないとかそのようなお話を聞いたことがあるのです。つまり本社に行ってしまう、本国に行ってしまう、それが確かかどうかということですね。と言いますのは、私の専門は糖尿病なのですけれど、糖尿病にしてもそれから高血圧にしても、同じ種類の薬剤がたくさん出ている、もしも外資系の製薬会社が造った薬を幾ら使っても、税金が全部ほかの国に行ってしまうのならば、日本の製薬会社の薬を使った方がいいのではないかと思ったりもするのですが、そのような情報が全然ないので、教えていただけたらと思います。教えていただける範囲で結構なのですけれども。

調査査察部長
 調査査察部長の岡本でございますけれども、今の御質問に正確にお答えすることになるかわかりませんけれども、いずれにしても外資系の企業でありましても、例えば日本に法人を持っていれば、当然国内での申告の義務というのが出てまいりますし、それから先ほどの統計で外国法人という言葉を使いましたけれども、支店とか事務所とか国内にそういうふうな営業形態を持っている場合には、それはそれで課税対象となります。
 恐らく、委員御懸念の点は、そのときにこの資料の中にありました移転価格という制度がございまして、いろいろ製薬会社の場合には、御専門でいらっしゃるので私から申し上げるまでもないかもしれませんけれども、薬の開発に非常にコストをかけていて、それのノウハウを持って日本国内で利益を上げている、そのときに適正な利益配分が外国と日本の間でできているかどうか、そういったことの御懸念なのだろうと思います。これはなかなか難しい調査になるのですけれども、その案件ごとに、いわゆる第三者間の独立企業としての取引価格で行われているかどうか、要するに親会社と子会社だから特別の価格の操作が行われていないか、その点のチェックを通じまして、国内で行われた営業活動等々にふさわしい税金は国内で払ってもらう、そういうふうな形で調査を進めているということでございます。

田嶼委員
 分かりました。では、その点についてはあまり心配することはないというふうに理解してよろしいでしょうか。

調査査察部長
 御心配いただかないように努力していきます。

田嶼委員
 どうぞよろしくお願いいたします。

会長
 ありがとうございました。はい、河村委員どうぞ。

河村委員
 この会議に初めて出席させていただきました。先ほど来出ていますe-Taxのところで、ちょっと一つ意見を申し上げさせていただければと思います。
 これまでも当局の方の御検討の経緯等もお話しいただいてよくわかったのですけれども、やはりその領収書云々の提出する義務がある、ないといったあたりのところで、非常にいろいろな難しいバランスの判断がおありになって、今こういうe-Taxの制度の導入に伴って、こういう制度になっていることはよく分かったのですが、やはり非常に難しい問題がありまして、もう私ごときが申し上げる話でもないのですが、やはり社会の一員として納める税について、これはどうも適当にやっておいても何とかなるらしいぞということが、世の中、結構、口コミでも広がると思います、特にその医療費還付などの場合にはですね。
 ですから、それが広まって、何となくみんながやり出して、結果的に何年たっても何となくみんな大丈夫だねということに、まさか、万一なってしまうとやはり非常にまずいと思いますので、当然、いろんな実地調査とか一定の割合でチェックもなさっているとは思うのですけれども、実際にこの制度、運用してこれから何年かたっていかれる間において、いろいろな地域ごとであるとか、一定のやはりサンプリング調査になるのかもわかりませんけれども、チェックをしていただいて、保管をしておけといった領収書が本当に出てくるのかどうか。それこそ普通の薬局に行ってもらった風邪薬とかでも、これは医療費の還付を受けられると思いますけれども、そういうところが本当にいいいかげんになってないかどうかというところを、ぜひ、現在進行形で当局の方で確かめていただいて、やはり必要な場合には世間の方にそういう認識が先に広まってしまうとまずいことになると思いますので、ぜひ建設的な制度改正も含めて、御検討をお願いできればと思います。以上でございます。

会長
 ありがとうございます。

西村審議官
 制度的な枠組みにつきましては、御説明したとおりでございますけれども、今後とも御意見等も踏まえまして適切に対処してまいりたいと思っています。

国税庁長官
 今の御懸念は、私どもも十分認識しておりますので、よくウオッチしながら対応したいと思います。

会長
 ありがとうございました。それでは少し時間が、きょうは20分まででございますので、残りがございません。もう一つ議題がございますので、そちらに進ませていただきますが、よろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

会長
 最後の議題は、試験委員の推薦についてでございます。岡田人事課長の方からお話をいただければと思います。

人事課長
 このたび、税理士試験の試験委員のうち1名の方が都合によって退任されることとなりました。このため、国税審議会令第3条に基づきまして、後任となる試験委員1名を選んで財務大臣へ推薦を行っていただく必要がございます。よろしくお願いをいたします。

会長
 ただいま、事務局から御説明がございました試験委員の推薦でございますが、国税審議会議事規則第3条において、会長が分科会に調査審議させることが適当と認めた事項について、これを分科会に付託することができると規定されております。さらに税理士分科会議事規則第2条第1項でございますが、財務大臣への試験委員及び懲戒審査委員の推薦は、分科会の議決により行う、こういうふうに定められております。
 従いまして、本件を税理士分科会へ付託し、審議していただくこととしたいと思います。
 なお、今回はこの後、引き続き開催されます税理士分科会で審査していただく、このために分科会への付託をこの場において行いましたけれども、今後、分科会に調査審議させることが適当と認めた事項につきましては、分科会へ付託を行うわけでございますが、そのときはこれまでと同様に委員の皆様に文書でその旨を通知させていただくことにいたします。よろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

会長
 本日の議題は以上となりますが、ほかに何か特段の御意見がございましたら、ここでお聞きしたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

会長
 本日の議事要旨及び議事録の公開につきましては、国税審議会議事規則第5条第2項に則りまして、まず簡潔な形で、議事の要旨を公表いたします。それから、議事録の方は完成次第、公表させていただきますけれども、その前に委員の皆様の御発言内容に誤りがないかどうか、事前に確認させていただくという手続をとります。つまり簡単な議事録の方はすぐ公開いたしますが、詳しい方は、委員の皆様方の御了解を得てから公表するという手続をとります。
 議事要旨の内容につきましては、一応、私、会長に一任させていただきますと助かりますが、いかがでございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

会長
 ありがとうございます。
 では、これをもちまして、第11回国税審議会を閉会とさせていただきたいと思います。
 皆様、ありがとうございました。

―― 了 ――