田嶼氏
 今日のお話を伺いまして、これまでの日本におけるアルコール、特に青少年に対するアルコールの問題について、大変比較において参考になる、勉強になることが多くて、大変興味深く伺わせていただきました。ありがとうございました。
 二つお伺いしたいことがあるのですが、一つは、酒類の販売や提供を禁止する年齢ですね。EU諸国では18歳未満というのが一つの基準になっていることを今回確認していただいたと思います。日本は20歳未満です。医学的な立場から考えますと、アルコールの慣習はできるだけ遅い方がいいに決まっています。特にアルコポップスという甘いお酒が若い人にポピュラーになってくるということは、単糖類である果糖の摂取が多くなり、若い人に増えている生活習慣病をますます助長することになってしまうからです。以前、インターナショナルには、あるいはヨーロッパでは18歳未満であるから、日本も18歳未満にした方がいいのではないかという意見や、また、大学生になるとアルコールを飲む人たちが増えてくるので、20歳というのは実際的でなくいかがなものかという意見がこの会で出たと思いますけれども、アルコールを禁止する年齢を下げる必要はないのではないかなというのが私の考えです。
 今回訪問された国で、18歳未満という年齢を引き上げる必要はないのかどうかという、そういうディスカッションがなかったのかという点をまずお伺いしたいと思います。
 それから第2点目。ドイツにおける酒類の管理についての22ページ、23ページにおまとめいただいたこのようなことが、日本においては、これは私の考えかもしれませんけれども、参考になるのではないかと思いました。というのは、自動販売機の問題が出てまいりましたし、また年齢確認のことも出てまいりました。しかし、このお話、この懇談会の中では、自動販売機についても年齢確認についても、施行していくのは少し無理があるのではないかというふうな意見が出たと思います。しかしドイツではそれをやろうとしているわけですね。一体これがどのぐらい現実的なものであり、もしも現実的なものであるとすると、これまでにどのぐらいの障害があったのかということについて、第2点目としてお伺いしたいと思います。

田中氏
 アルコール年齢については、私の方で質問したのですが、まず一つは、なぜ16歳、18歳なのかという質問をしましたけれども、何か首をかしげていまして、歴史的にそうなってしまったということをおっしゃっていました。一つは、選挙権も18歳からだからということで、そこからが大人という考え方のようでして、引き上げることについては全然考えていないようです。つまり長い歴史で、なぜ日本では20歳かというと、やっぱり選挙権があるから大人だろうということになるわけで、向こうも18歳は大人だという感じで選挙権と結びついているようでありました。年齢確認は国によって違うようです。

山下氏
 健康政策の担当者などの話では、今まさに先生がおっしゃるように、飲み始めるのは遅ければ遅いほどいいというふうな考え方は言っておられましたけれども、具体的にこれを今から引き上げようというようなことは全く考えられていないですね。

田嶼氏
 つまりヨーロッパの文化と選挙権を獲得する年齢ということと絡んでいるので、そのようなことをトータルして決められたということですね。そうすると、日本は何もヨーロッパのまねをする必要はないということにもなるわけですね。
 それともう一つは、ドイツではいろいろな規制をしていて、「アルコポップス」に対して課税強化の動きがあるというふうにお書きいただいてあります。こういうことを決定するまでには、恐らく、いろいろな業界の方の反対があったりして、しかしそれを乗り越えてこのような状況にたどり着いたのではないかなと思うのですが、いかがでしょう。

山下氏
 各国共通で相当深刻な問題のようですね。この「アルコポップス」系の飲料というのは1990年代の半ばごろから各国で、「プレミックス」と言われていた先駆形態のようなものがあって、ソーダでアルコールを割ったようなそういうものについて、税金や何かを使って抑えようとすると、また次のものを考え出してくるなどのことがあり、大変深刻な問題で、今のところは税を使って抑制するというのが割とあちらでは有効な手段だというふうに考えられているようです。ただ、やっぱり子供が買えなくするということだろうと思います。多分、日本の子供ほどは小遣いを持っていないというような面があるからではないでしょうか。ただ、23ページのところにあるように、これはドイツで撮った写真ですが、1ユーロがだいたい130円くらいですから、これに40%ぐらい税金をかけても200円足らずにしかなりませんので、相当に質が変わるわけではないのでしょうけれども、イギリスでは一時実施した課税強化は有効性があったというふうなことは言っておりました。

奥村座長
 国税庁の方に確認します。日本では自動販売機は撤去していると、業界の方がここでおっしゃっていましたが、自動販売機による酒の販売は、もうほとんどない状況と考えていいですか。

前田課長補佐
 18万5千台あったのが、今30%を切っているという状況で、まだ自動販売機が完全に撤去されたわけではありません。

奥村座長
 それは7割残っているということですか。3割残っているということですか。

前田課長補佐
 現在の残台数は25%以下になっています。

奥村座長
 これはゼロを目指しているということですか。

前田課長補佐
 そうですね。業界の方も、だれでも買える自動販売機については撤去。それから、年齢確認ができる改良型といわれているものへの移行を進めていただいています。

奥村座長
 現状はそういうことのようです。それから、「アルコポップス」というのは日本ではどういう状況なのでしょうか。

前田課長補佐
 これは多分、いわゆる缶入りチューハイみたいなものと同じようなものではないのかなと思います。アルコールにジュースを混ぜたというようなものですね。確かに今伸びてきております。

奥村座長
 課税上は何かなされているのですか。

前田課長補佐
 酒税法上はリキュール類に分類され酒税が課されています。

奥村座長
 特に高いというわけではないのですか。

土屋課長補佐
 リキュール類、スピリッツ類につきましては蒸留酒と一緒で、1キロリットル中のアルコール分1度当たり、おおむね9,924円となるのですが、仕組みとして下限が設けられており、8度未満のものでも8度と同じ課税をしております。つまり1キロリットル当たり7万9,000円というのが最低税率となります。これを350ミリリットル缶に換算しますと、大体27円ぐらいの税金で下げ止まりとなっておりますので、アルコール分が4%であっても7%であっても、1本当たり27円という形になっております。

奥村座長
 山下先生や田中先生から、ヨーロッパでは「アルコポップス」の問題がかなり深刻化してきているというお話がありましたが、日本では問題というのはあまり感じられないとか、変わっていないとかという状況ですか。

前田課長補佐
 その部分は、今缶入りチューハイで、缶の図柄が清涼飲料と見間違うのではないか、ジュースと間違って缶入りチューハイを取ってしまうというふうなことで、一つはアルコール分とかリキュール類という表示を大きくする。それからお酒であるというお酒マークがあるのですが、そのお酒マークを付けることを業界が自主的にやっております。

本間氏
 若い人たちが飲むのは断然缶入りチューハイが多いんです。それで気持ちが悪くなる。焼酎だからいいだろうとか、焼酎は健康というような、そういうことを言う人たちが多い。それがイメージとして入っていますから、彼らは何を飲んでいるのか、その辺、私は本当に不安なんです。これが、税率がビールの本当に半分でしょう。ですから、私はせめて、この前も申しましたが、缶入りチューハイもビール並みに税率を上げたらいかがでしょうか。

井岸氏
 それに関連してちょっとお尋ねしたいのですが、課税というのを強化するというのですが、各国が課税する税率とか、そういったことについてある種の足並みをそろえるという考え方はないのでしょうか。要するに、この税を担っている担税物資に対してどういうふうに課税しているのか、また、担税物資であれば課税している当局というのは、免許制度のないこの販売姿勢に対して何らかの関与といいますか、日本の場合にはまさに国税庁がこういったことまで議論しているわけですね。そういったようなことは、このお尋ねになった国というのはどんな感じなのでしょうか。

山下氏
 まず一般的な話としては、EUの中で税法というのは一番調整が難しい分野だと思います。これはやはり依然として各国の独自の政策が可能になっていて、あまりある商品だけねらい撃ちにする、ビールだけねらい撃ちにするとか、そういうことをやるとほかの加盟国から輸出をしにくくなるのでクレームがつく。それはEU全体で調整するような問題はあるかと思いますが、基本的には各国の判断でやっていることではないでしょうか。
 日本と違って、こういう未成年者の飲酒問題を担当しているようなところと税務当局というのは全く違った当局になっているはずなんですね。結局先ほどから出ているように、税というものを使って一定の政策目的を達成するということが、恐らく国の機関全体の中で調整されて法改正がされていくという仕組みになっているのではないかと思います。だから権限が違うところにあっても、そこが調整をして、税を使うということについて一応コンセンサスがあるのではないかなと思いました。

井岸氏
 基本的にEUでは、蔵出し課税なんでしょうか。

井澤氏
 先ほどのEUでの税制の調和について補足させていただきます。税制については、EUでは全加盟国の一致をもって指令を出せることになっていまして、ほかの分野と比べてなかなか税制の統合が進まないという現状にございます。付加価値税につきましては、EU共通の財源ということでございますので、かなり細かいところまでEU各国内で最低税率を15%以上にするとか、細かいことが指令で決まっております。ただ、個別間接税は、先ほど先生からの御説明にもありましたように、なかなか統合が進まない現状がございます。例えば、アルコールにつきましては、1992年に「税率の接近に関する指令」というのが出ておりまして、ただこれは最低税率を定めているものでございますけれども、非常に低い水準の税率で定められております。例えばワインにつきましてはゼロパーセント以上となっておりまして、事実上基準がないという状況に近いということで、各国の実務レベルでもほとんどそういったEUでの税制の調和の動きというのが意識されないままに、各国それぞれの制度が置かれているというような現状にあろうかと思います。

井岸氏
 その課税体制と免許とは全く無関係と考えた方がいいんですか。

山下氏
 フランスの免許は多少両面が絡んでいるようなことのようでありますが、ほかの国はどうもそうではないんですね。

寺沢氏
 私はアメリカで、今回いろいろ話を聞きまして、法律はあっても実際に取り締まりとか管理するのが非常に難しいという実態をやっぱり聞かされました。今、ヨーロッパの話を聞いても、やっぱりそういう実体にありそうだという感じがしました。アメリカの場合ですと、ここ4、5年その役割を果たすのにNPOがかなり積極的に動き出したという話を聞きましたけれども、今ヨーロッパの話を聞いていると、やっぱり同じような状況かなという気はします。その場合に、例えば消費者団体であるとか、業界が後押ししてとか、いろんなスタイルがあると田中先生からお話ありましたけれども、今ヨーロッパの各国でやっぱりそんなような状況で動き始めているのでしょうか。

田中氏
 例えば消費者団体が、積極的にそういう違反的な広告とか、紛らわしいものを売ったりしていることについて禁止させたりしています。最近では戦略的に巧妙になってきて、マスコミを抱き込んでキャンペーンを展開していて、業界団体としても消費者団体が非常に手ごわくなってきているというふうな発言をしていました。特にいろんなマスコミの活用の仕方なんかは非常に上手になってきたということです。それからもう一つは、訴訟型とか告発型とかありますが、有識者団体と業界で、この辺が妥当な線じゃないかというグループをつくって、そのグループが青少年にアイデアを出してきちんとしていこうというふうな、そういう組織団体もあるようです。業界で非営利的な有識者団体を組織したり、告発型のところもあったり、おっしゃるとおりかなりそういう仕組みづくりが行われて動き出してきたという状況だと思います。

寺沢氏
 聞いている限り、国ごとに細かい点で違いはあるのでしょうが、かなり似たような動きがあるというふうに受け取りましたけれども、そういうふうに認識してよろしいのでしょうか。

田中氏
 やはり実際問題、法で規制して取り締まっていくというのは大変コストもかかる。現場の警察官もいちいち親に、お前の息子がどうのこうのとか、なかなか現実には面倒くさいし、もっと麻薬とかいろんなやらなければいけないこともある。たばこは1本目から悪いけれども酒は1杯ならいいんだとか、そこはたばこと酒は違うんだとか、いろんな状況があるから、その辺は弾力的にして、やっぱり啓蒙PRの方にもっと力を入れてやっていくべきじゃないかという話は出ていました。

田嶼氏
 広告の規制についてお伺いしたいのですが、英国では法的規制はないけれども、「英国広告規約」に基づく自主規制を実施していると、7ページにございますが、これには政府などは関連しているのでしょうか。それとも全く別の組織がなさっているものなのでしょうか。

田中氏
 ある程度政府が支援して、そういう規約をつくって、そしてそれに基づいて民間の非営利団体が実践しているというふうな感じですね。

田嶼氏
 そうすると、ドイツやフランスや、今先生からお話があったアメリカとは少し違うんですね。もう少し政府の介入があるというふうに理解してよろしいんですか。

田中氏
 イギリスの場合はそうですね。ドイツの場合は全く業界団体が自主規制している。フランスは業界団体も自主規制をやっていますけれども、「エヴァン法」みたいな強い法律があって、それで結構動かされているところがあります。イギリスでは多少官僚主導的なところがあるのかなという印象です。

田嶼氏
 日本の状態というのはどのあたりに入るのでしょう。

前田課長補佐
 酒類の広告宣伝に関しては、業界の方で自主基準というようなものをつくっております。これは製造、卸、小売の流通も含めたところのものです。飲酒に関する連絡協議会という、業界の協議の場に、国税庁からも出席しましていろいろアドバイスをしております。ただ、どういうふうに具体的に決めていくかというふうなものについては、業界主導になっています。ここの中で、例えば未成年者を対象としたテレビ番組には広告を出さないとか、未成年者向けの新聞、雑誌には広告を行わない。ほかにも「未成年者の飲酒は法律で禁じられています」というふうな文字をCMの中に必ず何秒以内に入れる、というふうなものもそこで決めております。

田嶼氏
 そうすると、これはかなり守られていると考えてよろしいですね。

前田課長補佐
 罰則はありませんけれど、かなり守られています。

山下氏
 今の日本の自主規制というのは、お酒に関する事業者さんの団体がやっているものですが、ヨーロッパはそれだけではなくて、広告業界からメディア業界まで全体が加わって自主規制団体を作っている。フランスの例で挙げたのはお酒だけに特定化していた団体ですが、イギリスとかドイツはお酒だけに限らない、より広い範囲の広告についての自主規制を行っていて、その中にお酒の広告の規制も入っていると、そんな感じではないでしょうか。

本間氏
 今、「アルコポップス」の若年層化と、飲酒に起因するドメスティック・バイオレンスの問題、それとEU加盟国に共通の問題点として、「ビンヂ・ドリンキング」というのがあるわけですが、これは世代的には一部重なっているものなのでしょうか。それともドメスティック・バイオレンスだけはばらばらなのでしょうか。

山下氏
 ドメスティック・バイオレンスは、ヒアリングしている頭の枕の辺で一言出てきただけなので、詳しい内容は伺いませんでした。「ビンヂ・ドリンキング」というのは、別にどうも未成年者とか若年者に限ることではなくて、大人もみんなやっているというイメージではなかったかと思います。

奥村座長
 12時までお時間いただいていまして、大体時間になってまいりました。
 次回はアメリカのこともお教えいただきますので、残った御質問は次回も活用してください。
 田中先生、山下先生には重ねて御礼申し上げます。大変実り多い会合を持つことができましてありがたく思います。先ほど御紹介させていただきましたが、岡本先生、寺沢先生中心に、10月13日午前の会合では、アメリカ、カナダの状況について検討させていただくということにしたいと思います。
 本日の内容につきましても、いつもの会合と同様に公開するということでございまして、まもなく議事要旨、議事録等で世の中の方には活用していただこうかと思います。
 それでは、今日はこれで終了したいと思います。どうもありがとうございました。

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