奥村座長
どうも、貴重な報告をありがとうございました。
15分ぐらいお時間がございますので、委員の方々からご自由にご発言いただけますでしょうか。
先ほどの未成年の方への影響で、もし続きがございましらどうぞ。

御船氏
特に未成年の女性で急性アルコール中毒の認定が高いということなんですけども、これはホルモンとの関係なんでしょうか。ちょっと教えていただけますか。

丸山院長
 いろいろ言われております。確定的なものはないんです。だからいろんなものがミックスされて起きているんだろうと思います。まず最初に、よく言われているのは、体の大きさ、それと同時に肝臓の大きさですね。これが男性よりも小さいということから、同じ量のアルコールを飲めば、それに対して影響が大きいだろうということ。
それからもう一つは、アルコールというのは飲んで胃の粘膜、あるいは小腸粘膜から吸収されます。胃を空にしているとアルコールは腸にすぐに流れるわけですけれども、何か物を食べていますと、飲んだアルコールは胃の中にとどまります。そして、その胃からのアルコールの吸収に対して、男性と女性の違いがある。その理由として胃粘膜にあるアルコール代謝酵素が女性の場合は男性よりも弱いので、胃からの吸収が多くなりその結果女性の方が血液中のアルコールの濃度が高くなるだろうという、そういう一つの成績があります。
 それからもう一つは、これも確証されてはいないんですけれども、女性ホルモンがアルコールの代謝を弱くするということで、特にエストロジェンなんですけども、エストロジェンがある状態ではお酒を飲むと血中濃度もすごくアルコールが上がってくる。よく言われているのが、女性の生理前と生理の後での酔い方の違いですけども、生理、排卵の頃ですよね、そのころは非常に酔いやすいという、そういうことを訴える方もいます。当院でも看護婦さんを使って、5例ほどしかいないんですけども、それを調べたら、明らかにそういう傾向が出ているんです。そんなような、いろんな複雑な要因が絡み合っているんではないかなと思います。

御船氏
特に未成年がそういう、つまり成人の女性と男性との比較よりも、未成年の男性と女性の比較でやるとより大きく差が出てくるということなんですか。

丸山院長
それはまた違う因子でございます。先ほど言いましたように、肝臓の方ですと代謝酵素がまだ未熟だというところもありますね。

御船氏
ありがとうございました。

奥村座長
本間先生、どうぞ。

本間氏
うろ覚えの聞きかじりなのでございますが、未成年の場合、やはりアルコールが脳細胞にダメージを与えるということを昔聞いて、そのダメージを受けたということは破壊されるということなんですか。そうすると、脳細胞というのは一度破壊されたものは回復するすべがないということと解釈してよろしいんでしょうか。

丸山院長
一般的にはそう言われております。ただ、最近の文献ですと、破壊されたのがもとへ戻るという、そういう報告もあるんですね。ただ、アルコールできちっと示されたものはありません。当院で、子供ではございませんけれども、アルコール依存症の40歳代の男性が3年間断酒しておりました ら、CT像で脳の萎縮が少し改善しているというのが見られているんですよ。ただ、これが本当に脳細胞が復活しているのか、あるいは水分ですか、いわゆるむくみ的なものが関係してそういうふうに示されているのか分かりません。そんなことで、これも今後の課題になるのではないかなと思っ ています。

矢島氏
よろしいでしょうか。2つほど質問させていただきます。
1つは簡単なんですが、まず6ページでございます。ラットの生後日数とアルコール代謝というところの下でございますけれども、生後1日から60日まででございますけれども、これは特に生後30日、60日というのは、人間ですと何歳ぐらいが相当になるんでしょうか。

丸山院長
ちょっと私、そこのところは存じませんけれども、多分ラットの場合ですと、週にしますと8週から12週ぐらいだと一応成人的に近いところなんですね。そうすると、60日ぐらいでやっと成人になるのかなという、そんな感じですけれども。

矢島氏
分かりました。
 それから、もう一つはちょっとひねくれた見方かもしれないんですが、16ページで14歳から年齢がございまして、酒を飲み始めるのが早ければ早いほど将来アルコール依存症になるとか、その人は事故に巻き込まれるというデータでございますけれども、これを見ると、一番この問題性が多いのは17歳までで、18、19歳になると20歳とそれほど変わらないように、データとして、アルコール依存症の場合も事故の場もそのように見ることができるんですけれども、そういたしますと、若いころにアルコールを摂取するというのはもちろん問題なんですけれども、ただし日本では20歳というふうに限定されているんですが、20歳である理由性というのはここからは出てこないように、むしろちょっと年齢を早めてもいいというような、そういうデータとして読めるんですが、これはどうなんでしょうか。

丸山院長
そうですね。このようなデータが示されることにより、国によってそれぞれお酒を飲んでいい年齢というのは違っているんじゃないかなと思うんですね。ですから、日本で飲酒年齢を早くすべきであるというのであれば、同じような研究をまずしないといけないと思うんですね。これはあくまでも外国のデータでありまして、先ほど言いましたように日本の場合には約半数の方が顔が赤くなる、すなわち余り飲めないタイプの方なんですね。また飲酒をしたときに酔い方の違いも私ども調べておりますけれども、飲めない方が飲んだときには、飲める方が同じ量を飲んだときよりも酔い方が明らかに違うんですね。最近、道路交通法で酒気帯び運転の基準値がかなり低く抑えられましたけれども、私が考えるには日本では妥当であるというふうに考えています。というのは、約半数の方が赤くなるタイプで、本当にビール350mlを1缶飲んだだけで、飲んだ後に呼気中のアルコール 濃度が、酒気帯び運転の基準値に一致しますし、なおかつ酔い加減として、平衡バランス等とかあるいは針の穴に糸を通すとか、その辺がもう全く、赤くならない方と違いが出ております。このように日本人は人種の違いから、100%がお酒の飲めるタイプである欧米人とはアルコールに対する感受性が異なるわけであり、日本でも同じようなデータをとらないといけない。それから、20歳からなのか18歳からなのかということを決めるべきであろうと思います。

本間氏
醸造酒と蒸留酒を比べてみたときに、実感として、醸造酒の方が非常にとろんと、いい気持ちになる。それで、蒸留酒はすかっとしてむしろ酔わないというような感じがありますけれども、先生、アルコール度に関係して、そのどちらがより致酔性があるということがありましょうか。

丸山院長
 私どものデータでは、そういう違いはないですね。ただ、確かにメーカーさんでやったデータではそういう報告も見られますね。ちょっとその辺の理由は分かりません。昔の日本酒の場合に、逆に悪酔いというのを言われていましたよね。あれは防腐剤の影響だというふうに言われていまして、ところがもう、今はほとんど使っていないわけですよね。
ちょっとすみません。分かりません。

奥村座長
どうぞ。

須磨氏
いいですか。すみません、今回青少年の脳と飲酒の関係について、今日は期待して来ているんですけれども、何だかあと一つ分からない部分がありまして、7ページの未成年者急性アルコール中毒の危険性が高い。クエスチョンマークはもちろんついていますけど、分解速度が遅いとは言い切れないわけですよね。つまり、根拠があと一つ明確でないのと、脳がアルコールになれていないというのも根拠がはっきり分からなかったわけですね。全な飲み方が身についていないというのはよく常識的に言われていることであって、医学的見地、つまり体の構造から来る未成年者のアルコールの危険度というのが、医学的に何とかもうちょっと言えないものかなと思っているんですが、このあたりは今後解明されそうですか。

丸山院長
 アルコールの分解速度を人体実験でできないんですよね。これが一番の問題です。ただし、7ページのこれは全然計画性も何も立っていなくて、たまたまこういうのを見たということなので、我々が言う実験のプロトコール(方法論)がきちっとしていないので、これをそのまま信用できないというのが一般的だと思うんですよ。それよりも、やはり動物実験の方がデータとしてしっかりしているんじゃないかということで、疑問に感じながら、一応分解速度が遅いというふうには考えております。
 それから、脳がアルコールになれていないというところなんですけれども、この辺のところは、飲んだときに大人ともう完璧に酔い方が違うというところがあるので、それでなれていないという言い方をしているんではないかなと思うんですけれども。

須磨氏
 それは見た印象ということですか。

丸山院長
 いわゆる、そうですね、酔い方の感じですね。

須磨氏
 あと、幾つかすみません。12ページの子供と成人の脳は違うというところがございますよね。これ、サルの実験だそうですけれど、今脳の構造で前頭前野、つまり前頭葉がかなり注目されていまして、例えばゲームをやっていると前頭葉部分はワーキングしなくなって、それは人とのコミュニ ケーション能力を落とすとか、あと感動しなくなるとか、今の若者のいろんな事件の特徴を表しているというふうに聞いておりますけれども、それは飲酒とも関係あるのかどうかというのに関心を持っております。その点はどうなんでしょうか。

丸山院長
 はい。アルコールの依存症の方を調べますと、本当に脳の萎縮が著明に出てまいります。それがやっぱり前頭葉が非常に著明なんですね。ですから、この前頭前野だけではないですけども、全体の大脳前頭部が減ってくると。それとあと、特徴なのは小脳の萎縮なんですけども、そういったところから考えると、ここに書いていることも当たっているんではないかなというふうには考えられますけども。

須磨氏
 あと一つ分からないんですけれども、シナプス数を減らすことによって脳の効率化が進んでいくという、これと前頭葉がワーキングしないというのはどう関連しているんですか。

丸山院長
 そこは私もちょっと難しいなと思っているんですけども、シナプス数を減らすということが、非常に小さい量で狭い領域になってくる。それがアルコールによってさらにダメージを受ければ、もっと小さくなってくるんじゃないかという、そういう考え方ができますよね。シナプスの領域が、ただでさえ小さくなってくるのにもかかわらず、アルコールの影響を受けると、もっと小さくなってくると。

須磨氏
 そうすると、シナプス数を減らすという効率化がもっと落ちると。

丸山院長
 はい。落ちるということで考えたら一番いいんじゃないかなと思うんですけれども。

須磨氏
 それは、若いときほどその影響は受けやすいというのは……。

丸山院長
 はい。そういうふうに考えます。

須磨氏
 次のページに少し出ているんですけれど、実験結果などで分かるんですか。つまり、その実証性、根拠の部分なんですけど。

丸山院長
 実験的にはちょっと、ここのところまでは書いていなかったですね。すみません。

須磨氏
 いえ。そういうのは、やはり若い人は今飲酒しちゃいけないということですけれども、なかなか報告例がない。

丸山院長
 はい。結局、さっきも言いましたように、人体実験というのはなかなかそこまではできないですからね。すべて動物実験でやってということなので、その動物実験を細かくやればだんだん分かってくると思いますけども、やってもやはり人間とは違うんだということがありますので、それが本当に当たるのかどうか分かりません。

須磨氏
 あと一つ、実際にアルコール依存症の若者にお目にかかると思うんですけども、その場合にどういった説得が一番若者に有効ですか。
 アルコールは体によくないということを説得するに当たって、若者の心に一番響く説得の仕方は何でしょうか。

丸山院長
 これも成人と非常に同じで、体の障害をお話しすると非常によく理解するというか、それによってアルコールは怖いものだなというふうなところに行きますね。特に脳と性の問題ですね。生殖器の問題。あと、骨もあるんですけれども。そのお話をすると、みんな乗ってきますね。

須磨氏
 骨の話ですか。

丸山院長
 骨の成長も非常に成長期に当たるわけですね。そこにもアルコールの影響で成長を遅くするとか、そういうことも起こり得るということです。

奥村座長
 丸山院長にお尋ねしたいんですが、今アルコールで苦しんでいらっしゃる方々の立場から見て、どういう政策的な措置がとられればアルコール依存症にならなくて済んだのにというような、何かありますでしょうか。お酒の売り方だとか教育の仕方だとか。

丸山院長
 私は内科医なので、田嶼先生と同じように、やはり第二次予防と言いまして、早期発見、早期治療が現段階では一番いいんではないかと。もちろん、第一次予防の教育というのも重要なことはわかりますけども、現段階でさっき言った227万人の大量飲酒者がいて、その数万人しか治療を受けていないとすれば、すなわちアルコール依存症の再生産というのを我々医師が加担しているという、そういうふうに私は思っているんですね。ですから、そこを何とかストップするような方向性に持っていったらいいんじゃないかなというふうに思っています。なかなかそこのところが、医師の中でも認識がないのも現状だと思います。

小森課長補佐
 ついでによろしいでしょうか?
 妊産婦の方の飲酒の問題なんですが、妊娠期間中継続して飲酒されている方の場合には非常に深刻な顕著な影響が出る。他方で、単発といいますか、継続されていない方においても、やはり明らかな影響が認められる。特に34ページの具体的なその飲酒状況、その1、その2という患者さんの事例のところで拝見いたしますと、妊娠2カ月目まででやめたはずなのにというような事例というのも見受けられるんですが、特に継続されている方はずっと飲んでいらっしゃるんですけども、単発で飲んでいらっしゃるような方について、妊娠の初期あるいは中期、後期でこういう影響に差があるですとか、あるいはその初期の段階でも、これはもう明らかに顕著な影響が見受けられるというのはございますでしょうか。特にその初期の段階でもこれは重大な影響を与えるんだということになりますと、やはり相当その事前の教育ですとか、あるいは一般的な警告表示的なものがどうしても必要かなというふうにも思うんですけれども。

丸山院長
 いろいろな研究がなされていますけれども、1つ明らかなのはかえって後半の方が脳の障害が出やすいというところだけが明らかにされていますけども、それ以外のところは何も分かっていないと思います。

奥村座長
 まだ尽きないと思いますが、時間と次のご報告をいただくこともございますので、丸山先生のセッションを終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

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