田中座長代理
 それでは、続きまして、警察庁生活安全局少年保護対策室長の保住正保様から、「未成年者飲酒防止に関する取組み状況等について」というテーマでお話をいただきたいと思います。
 すみませんが15分程度を目処にお話をいただきまして、また御質疑に入りたいと思います。よろしくお願いします。


保住室長
 警察庁の保住です。よろしくお願いします。本日の懇談会に、警察庁から未成年者の飲酒防止対策などにつきまして御説明する機会をいただきまして、感謝申し上げたいと思います。
 本日は、お手元にレジュメの1枚紙とこの「少年からのシグナル」というパンフレット及び統計集が配付されておられるかと思います。基本的にこのレジュメに沿って、この3項目について御説明をさせていただければと思っております。
 少年による飲酒に対する警察庁としての基本的な認識につきましては、未成年者の飲酒というのは、重大な非行の前兆ともなり得る不良行為であるとともに、未成年者に酒類を提供する行為は、その健全育成を阻害する悪質な行為であると、こういう認識のもとに、第1に、関連法規に基づく未成年者に対する酒類の販売供与の禁止行為等の厳正な取り締まり、2点目として、関係機関との連携による酒類の販売店に対する未成年者飲酒防止に向けた働きかけ及び広報啓発活動、3点目に、街頭におけます補導活動の際の少年に対する注意・助言、非行防止教室、少年相談活動等々を総合的に関係省庁とも連携して、推進をしていくという状況にございます。
 本日の説明は、今申し上げたような次第について御説明することになるわけですが、詳細に立ち入る前に、まず、少年を非行や犯罪被害から守るという、これを「少年警察活動」と呼んでおりますけれども、その概況につきまして御説明申し上げまして、未成年者の飲酒防止対策が少年警察活動においてどのような位置付けとなっているかということを説明したいと思います。
 恐縮ですけれども、パンフレットの1ページを見ていただければと思うんですが、「少年非行の情勢」でございます。我が国におきます全刑法犯の検挙人員というのは、成人を含めて約38万人おりまして、うち14万4千人、全体の約38%を14歳から19歳までの少年が占めております。「犯罪時計」と言いますけれども、大体3分40秒に1人の頻度で、少年が刑法犯として検挙されております。本日の懇談会は約2時間と聞いていますけれども、2時間に置き直しますと、大体33名の少年が刑法犯のみで検挙される、こういう頻度になっています。成人と比較してみますと、成人が検挙される率よりも、少年は8倍高いという状況にあります。我が国全体の刑法犯の認知件数は、平成14年まで7年連続して戦後最多を記録するという厳しい状況にありまして、中でも路上での強盗、ひったくりなどの街頭で行われる街頭犯罪、侵入強盗というのは、我々市民が最も身近に危険あるいは不安を感じる犯罪であるということで、その取り締まりを我が国警察の最重点の1つとして取り組んでおります。このうち、街頭犯罪につきましては、パンフレットの5ページに書いてございますが、「路上強盗」、「自動販売機荒し」、「物品盗」の63%から76%が少年によるものと、こういう状況になっているわけです。少年は当然被害者になるということもあるわけですが、ここには載っていませんけれども、犯罪被害者というのも1年間に38万6千人と、このような数字になっておるようです。特に最近は、強制わいせつ、強姦という性犯罪の被害が急増しています。このように深刻な状況にあります少年非行情勢でございまして、少年警察活動というのは、我が国の警察行政においても最重要課題の1つとなっております。昨年12月、犯罪対策閣僚会議におきまして、犯罪に強い社会の実現のための行動計画というものを策定しております。外国人の犯罪対策、暴力団などの組織犯罪対策と並びまして、少年犯罪の抑止対策というのが、5つの重点課題の1つに位置付けられておるわけでございます。
 さて、警察庁では、このような少年の非行の防止、少年の保護を通じて、少年の健全な育成を図るための活動を少年警察活動と定義しておりますが、まず、「少年の保護」という活動領域から、未成年者の飲酒防止対策について見てみたいと思います。少年の心身に重大な影響を与える行為をさせる犯罪、その他少年の福祉を害する犯罪を「福祉犯」と呼んでおります。
 レジュメの方に入りますが、レジュメの1の方に記載されております関連法令違反者が、この福祉犯に該当します。未成年者飲酒禁止法でございますけれども、大正11年に成立された片仮名表記の法律でございまして、「営業者ニシテ其ノ業態上酒類ヲ販売又ハ供与スル者ハ満二十年ニ至ラサル者ノ飲用ニ供スルコトヲ知リテ酒類ヲ販売又ハ供スルコトヲ得ス」とされ、この規定に反した者は50万円以下の罰金に処する、と規定されておるわけです。御案内のとおり、平成12年12月に罰則が従前の科料から、50万円以下の罰金に引き上げられており、こういう改正を踏まえまして、警察庁から各都道府県警察に対して厳正な取り締まりを要請したこともございまして、平成13年以降、この法律に基づく検挙人員が従前の2倍というふうに増加しております。
 検挙事例につきまして、警察庁ですべてを把握しているわけではございません。都道府県警察から、特異事例ということで報告が上がってくるようになっております。
 その中の一部を御紹介申し上げますと、まず捜査をするには、「端緒」と言っておりますが、きっかけが必要でございます。どういう場合が多いかといいますと、例えば、国道の高架下で、あるいは学校の校庭で、あるいは居酒屋で、未成年者が酒を飲んでいる、騒いでいるというので、一般住民から警察に通報が入るわけです。そこで、警察官が出動して少年を補導する。その上で、どこで酒を買ったか、居酒屋の場合は明確なんでしょうけれども、といったことを聞いて、その販売事業者を検挙するという事例があります。また、警察官自身が通常の警ら活動をして少年を補導して、未成年者による飲酒を認知するという事例もあります。ある事例では、自転車で3人乗りをしていた少年を補導したところ、自転車のかごに缶酎ハイが山積みになっていたと、こういうような事例もございます。また、これは沖縄での事例ですが、平成14年10月、高校2年生が泥酔状態でアパートの3階から転落して、死亡したという事件がございまして、だれが少年に酒を提供したか、だれが飲酒の場所を提供したかということで、その販売事業者ですとか、自宅を飲酒場所として提供した少年の友人の保護者が検挙されたという事例もございます。同じ沖縄で、これは平成14年の新聞報道でございますけれども、公園で酒を飲んで騒いでいた7人の少年がいて、うち1人が高校2年生で、その少年が急性アルコール中毒で病院に運ばれました。それで事件が発覚したわけです。この事例では、泡盛の一升瓶2本を販売した酒店の経営者と店長に対して、罰金刑10万円を命じるという判決が言い渡されております。ちなみに、この経営者でございますけれども、那覇卸売酒販組合の前理事長というふうに報じられております。
 未成年者飲酒禁止法違反の事例については、販売事業者の業態についての統計をとっておりませんが、特異事例として報告のあったものについて見てみますと、都市部では、違反のあった販売業態としてやはりコンビニが多くなっています。次いでカラオケですとか、居酒屋というのがあります。19歳の少年が17歳の少年に販売したとか、後で申し上げますが、41歳の店長が16歳のコンビニの店員に酒を売ったとか、そういう事例もあります。15歳の女子中学生に売ったというようなものもございます。地方ですと、食品店ですとか酒類専門店、やはりコンビニなどがございます。
 未成年者であることを認識していたかどうか、また年齢確認の措置については、これは検挙した事例ですので、大概ひどい状況なんですけれども、先ほど申し上げたような、コンビニの店長が店員に酒を販売したという事例もあれば、これは居酒屋の場合ですけれども、従業員が女子高生だったうえ、お客、お酒の提供相手も同じ高校の同級生だったという事例もあります。あるいは、販売を断ることによって何かされるのではないかという恐ろしさが先立って販売してしまったとか、声をかけて文句を言われるのが嫌だった、実際に買いに来たお客に年齢を確認するのは失礼だ、店の売り上げが優先であり、今までお酒を買いに来たお客の年齢を確認したことなど1度もないといった話も聞かれます。
 次に、購入した側ですけれども、高校1年生、15歳の女子児童がコンビニに2回行って、2回目に店に行ったときは、既に酔っぱらっていて顔を赤らめていたけれども、男性店員は年齢を確認することなく簡単に売ってくれたと、こういう悲惨な状況となっているわけでございます。
 風営法違反については、ちょっと割愛いたします。
 補導について少し説明をしたいと思いますが、少年の非行防止及び健全な育成を図るということで、少年の非行防止という活動について併せて御説明をしたいと思います。お手元の統計集の31ページの数字等をあわせ参照しながら聞いていただければと思います。警察庁では、飲酒・喫煙・深夜徘徊・その他事故または他人の徳性を害する行為を「不良行為」と定義付けておりまして、不良行為少年を発見したときは注意を行い、その後の非行を防止するための助言または指導等の補導活動を行い、保護者に、特に必要な場合には学校や職場にも連絡することとしております。先ほど未成年者の飲酒というのは、重大な非行の前兆ともなり得る不良行為と申し上げましたが、不良行為と非行の関係につきましては、先ほど先生の方からも御説明があったとおりでございまして、いろいろと相関関係については調査をされておるところでございます。
 愛知県で平成13年に5千人の少年を一般少年と非行少年に分けて行ったアンケート調査によりますと、喫煙の経験があると回答した少年は、少年全体では平均10人中3人の割合だったんですが、一般少年では10人中2人、非行少年では10人中7人ということで、際立った差異が出ております。飲酒についても、これは中学生についてですが、一般少年が14.2%に対して、非行少年は36.9%と際立った差異があるというふうになっております。未成年者飲酒禁止法の第1条第1項では、「満二十年ニ至ラサル者ハ酒類ヲ飲用スルコトヲ得ス」という規定がございます。ただし、罰則はございません。いわゆる訓示規定ではありますが、未成年者による飲酒というのは、広い意味では違法行為ということでございまして、このような違法行為というのは、ほとんどの場合、法規範に対する遵守意識の低下傾向を示すということもあろうかと思います。
 元の話に戻りますが、昨年1年間で約130万人の少年を補導しております。この数字は平成6年の1.9倍の増加となっております。「130万人」といってもぴんとこないと思うんですが、これは24秒に1人の頻度で補導されていることになります。この懇談会は所要2時間ですので、この間に約300人補導されると、こういう頻度でございます。その内訳ですが、「喫煙」と「深夜徘徊」が各々4割ずつでございまして、全体の8割を占めております。「飲酒」は全体の中で見ると、2.8%のシェアとなっておりますが、伸び率で見ると、平成6年から比べて27.2%の増加となっておるわけでございます。
 飲酒により補導した人員について、学職別に見てみますと、高校生47.2%、中学生10.1%、大学生3.5%、無職少年22.1%、有職少年14.1%となっています。また、ここには書いてありませんけれども、年齢別に見たものがございまして、最少年齢は「10歳」、これは女子児童で1名でした。「17歳」がピークでして、全体の28.3%、以下順に「16歳」24%、「18歳」20%、「15歳」13%、「19歳」9%、「14歳」5%と、こういうふうに続いています。
 どこで飲酒をするかというのは先ほど先生から説明がありましたので割愛しますが、どこで飲酒により補導されたかということに関する統計がございまして、直近の平成15年の数字ですが、「路上や公園」が全体の6割を占めております。以下、「学校」、「コンビニ」の順番となっております。なぜ学校で補導されるんだと、私は疑問に思ったんですが、聞いてみると、校庭で集まって飲酒をしているということもございまして、それが近所の住民から通報されたというケースもあります。ひどい事例になりますと、学校が閉まっている週末の夕方ですが、小学校の校舎の屋上に卒業生の中学生が侵入して酒盛りをして騒いだというのがございました。近隣住民が警察に通報して補導に至ったわけですが、どこで酒を買ったのかというと、この場合はコンビニでした。それから、どこで補導したかという場所の中に「コンビニ」というのがあるわけですが、まさかコンビニの店内で補導されることはないと思いますので、おそらく店舗前や駐車場なんでしょうが、果たしてどこでこの酒は買ったのかということになると、疑問を抱かざるを得ないというところでございます。
 次に、「未成年者による飲酒の実態と低下する規範意識」でございます。飲酒経験につきましては、先ほど先生から御説明があったので割愛させていただきます。酒類の入手先ですが、平成13年に愛知県警が警察と教育委員会の協力を得て、5千人を対象に行ったアンケート調査では、これは重複回答になりますが、ここに書いてあるような数字となっております。「親・家」というのは、親からもらうとか、家にあるという意味でございます。ちなみに、「親・家」に続いて「自動販売機」が21.1%となっております。警察庁でも、ちょっと古い資料になりますが、平成12年3月から1カ月間、飲酒で補導した2,830名の少年を対象に調査したことがございまして、「コンビニ」が3割、「自動販売機」が25%、「居酒屋」が10%と、このような結果が出ております。
 現在は、飲酒に対する規範意識の低下というのを憂慮するべき時代でございます。ここに記載させていただいているのは、科学警察研究所が平成11年にまとめました「少年規範意識に関する研究」、警察白書の13年度版にも載っておりますが、そこからの数字でございまして、「家での飲酒は絶対にしてはいけない」と回答した少年の割合が、非行群では平成元年が72%であるのに対し、平成11年には59.1%と、約13ポイント低下しています。ちなみに、一般群で見てみると、83%から78%ということで、5ポイントだけ低下しているということであります。
 御案内のとおり、非行というのは時代を映す鏡と言われております。時代ごとの社会構造ですとか、大人社会の変化の影響を少年はまともに受けて育っていきます。少年の規範意識の希薄化というのは、ある意味大人にも原因があると思われます。不良行為をしている少年を発見しても、大人の2人に1人は見て見ぬふりをしております。
 第一線で補導活動に当たっている警察職員から話を聞く機会がございましたが、補導を通じて、少年たちから「真剣に自分たちのことを思ってくれているのはだれなんだ」と、こういう孤立感にあふれた叫び声が聞こえてくるようだというふうに感じると言っております。凶悪な少年事件などがマスコミなどによって報道されまして、大人は少年に対する声掛けを躊躇している。一方で少年は本当に自分のことを考えて関わってくれる大人がいないと感じている。孤立感を深めるこのような構図が見られるわけでございます。
 次に「警察庁における取組」でございますが、警察庁としても、各都道府県警察を通じまして、関連法規に基づく厳正な取り締まり、関係機関との連携によります街頭補導活動などを行っております。啓発活動としては、警察官や職員が学校に赴いて、薬物乱用防止教室・犯罪防止教室などの各種イベントを実施する機会を通じまして、未成年者の飲酒防止をこれらのイベントの内容に盛り込むようにといったことを指導し、実施に努めておるところでございます。非行防止教室の開催状況ですが、学校単位で見た場合で、昨年1年間で全国の小学校の約2割、中学校の約4割で開催しております。薬物乱用防止教室は、警察以外の組織、関係者も行っておりますが、平成13年度には約390万人の小・中・高校生が参加しているという数字がございます。
 また、関係業界に対しまして、未成年者飲酒禁止法の改正の機会を捉えて、財務省・厚生労働省との連名で通達を発出しているということは、皆さん御承知のことと存じます。酒類の販売の業界団体の皆さんが、自動販売機の撤去方針を策定するなど、未成年の飲酒防止に大変な御尽力をされているということは、承知しておるところでございます。しかしながら、今申し上げたとおり、一般市民が少年による街頭犯罪におびえているなど、少年非行対策が我が国治安上の最重要課題の1つとなっているという状況において、未成年者の飲酒、あるいはその対策の実態を見ますと、残念ながらその改善状況を示す指標というのは、私が今説明した中には1つもございません。未成年者飲酒禁止法による検挙人員は、法改正前の平成12年と比べて2倍に増加しております。補導人員は平成6年の1.9倍に増加しています。少年の規範意識も低下しております。中学生の半数、高校生の7割が飲酒を経験しております。このような実態を踏まえ、我々大人社会は真剣に反省すべきではないでしょうか。子供は「未来から来た客人」と言われております。将来の日本を担うことになる客人は、我々現在の大人が大切にもてなす必要があるのではないでしょうか。このような深刻な少年の不良行為、非行情勢を踏まえますと、未成年者の飲酒防止対策において、少年の健全な育成を促す上で、酒類の販売事業者ですとか関係機関が果たすべき役割は非常に大きいと思います。どうか、このような深刻な我が国におけます少年非行の現状、未成年者の飲酒の実態とその対策の状況を踏まえまして、酒類と青少年問題に関して、この懇談会各メンバーにおきまして精力的に御議論され、酒類業をめぐる制度のあり方に関しまして、有効な対応策を検討されることを祈念しまして、私の説明を終わりたいと思います。
 以上でございます。

田中座長代理
 どうもありがとうございます。
 それでは、早速ですが、御質問なり御意見なりがありましたら、この件に関して御発言をお願いします。
 水谷先生。

水谷氏
 警察の御厄介になるなんてとんでもない話だと思いましたが、警察だって人員は少ないでしょうから、徹底的に取り締まるなんてことはできないので、目に余る者を取り締まっているというふうに考えてよろしいでしょうか。

保住室長
 飲酒の検挙件数のことでございますか。

水谷氏
 検挙件数といいますか、実際に取り組んでいらっしゃること全体についてなんですけれどもね。どういう意図で、どれぐらいおやりになっているのかということでございます。それはまあ、軽微なものまで全部対応するなんてことは、とてもじゃないができるはずがない。ですので、結局やるべきことは親の教育だろうと、最後におっしゃいました。ただ、大人自身の規範意識がなくなっているということが根底にあるのではないかと、私は思うんですよ。それは酒だけではないという感じですけれど。ですから、親の教育ということについて、警察の立場から見て、もうちょっとこうした方がいいんじゃないかという具体的な方法は何かございませんか。

保住室長
 御質問のお答えになってないかもしれませんが、不良行為に関して申し上げますと、警察としては「相談活動」、あるいは非行をしたとか不良行為をしたというような少年を対象に「継続的な補導活動」ということをやっております。この場合、相談をする側、あるいは継続的な指導を受ける側の立場に対する理解がないとできないところがございますので、やはりそういう指導をするような場合には、親御さんも一緒に来ていただいて、話をさせていただくといったこともございます。補導活動では、通常親御さんには必ず、こういうことで今から帰しますから迎えに来てくださいというような形で連絡をしております。ただし、こういう非行ですとか不良行為をする少年の家庭は、なかなか教育が難しい現状にあるというのが感覚的にあります。これは児童虐待のケースでも使用される表現、おそらく学術用語だと思いますけれども、「欠損家庭」という表現、英語の直訳だと思いますが、通常我々が想定する一般の家庭を前提にアプローチを考えるのは難しいと思います。もちろん、家庭へのアプローチは重要ではございますが、そういう家庭の実態につきましては、なかなか統計的には出てこないところもございます。ただ、感触的なものというか、第一線での経験から考えると、やはりこれら少年問題を議論をするには、少年自身の問題もあるけれども、その前に親の問題というのは必ず出てくる議論でございまして、そこは重々認識しつつ、できるところを対応しているというのが現状かと思います。

田中座長代理
 ほかの御意見、いかがでしょうか。
 私たちも実際に高校生が飲酒をしているところを見る機会があるわけですが、今の若い者は凶暴ですから、そんな場合に声をかけて注意して殴られて、こっちがけがでもしたら損だみたいな気持ちも、大変申し訳ないけれどもあるわけですね。また、もう一方では、警察もいろんな凶悪犯罪で追われていて、少年が酒を飲んでいる程度のことで通報して御迷惑をかけてもいけないんじゃないかなという気持ち、警察も忙しくて大変だろうというそういう思いも一方ではあるんですよね。しかし、その辺のところはむしろ積極的にどんどん、少年非行問題は重要課題でもあるし、報告してほしいという体制で臨んでいるというふうに考えてよろしいんですね。

保住室長
 47都道府県の警察を全部把握しているというわけではございませんが、恐らく各警察によって、対応について若干の温度差というのはあろうかと思います。地方ですとか、あるいは都市部の警察によっては、少年の犯罪実態ですとか非行実態というのがかなり違っておりますので、そういう地域差といったものはあろうかと思います。ただ、やはり少年非行の問題については基本的に重要視をしております。
 先ほど申し上げたとおり、警察官は全国に約27万人おりますが、刑法犯の4割は少年が被疑者ということになっていますから、ここを抑えないことには、刑法犯全体の総数に対応が追いつかないわけです。そういう意味で、街頭犯罪とかに目をつけて重点的に取り組んでいるというのは、やはり今街頭犯罪が盛んに行われていて、社会の不安が大きいわけですから、ここを抑えると全体の件数的に大分違ってくるんじゃないかということでございます。平成15年は、総数で7万件ほど件数が減っておりますけれども、そういう効果が出たのではないかという見方もございます。少年の飲酒を見つけたときにどうされるかというのは、地域性や現場の状況によってもいろいろかと思いますが、私の方から今事例で申し上げたとおり、補導や検挙のほとんどは、やはり通報に基づくものでございます。少年の喫煙はすぐ人目につきますし、お酒は飲んで騒ぐ、特に外で騒いで住民が通報されて補導されるケースが多いという認識を持っております。

田中座長代理
 どうぞ。

矢島氏
 ちょっとよろしいですか。
 私たちがまだ青少年というか少年のころは、酒にしろたばこにしろ、やばいもので、大人に隠れてやっているといったようなことがほとんどだったわけですが、これ結果を見ますと、「路上」が40.5%となっております。路上ですから通行人もいるし、周囲にも人がいるしということですから、別に大人に見られても関係ないというような感じで今は飲酒もやっている、そんな印象を受けるんですけど、それはいかがでしょうか。

保住室長
 「路上」というと具体的にどういったところかというのは、この統計からは細かいことは分かりませんが、事例では、街灯の下で飲酒して騒いでいるといったことで通報があるようです。少年ですから、街灯の下、ひとりで手酌をするというのはあまり考えられないわけでして、やはり6、7人で飲酒をして騒いでいるということかと思います。それだけ人数が多いと、やはり補導することになりますが、それはやはり通報をいただいているということが多いと思います。

田中座長代理
 罪の意識の無い者には、やはり罰を与える必要があるという発想があると思いますが、そういう点で、現在、未成年者の飲酒に対して未成年者自身への罰則規定はないわけですけれども、何かもう少し効き目のあるようなやり方だとか、あるいは国税庁でこんなことをやってくれればいいなみたいな、何か御要望がありますか。

保住室長
 いや、今回こういう機会を与えていただいて、いろいろ勉強させていただきました。帝国議会の過去の議事録を少し読ませていただいて、未成年者飲酒禁止法は大正の法律だということですが、その規定に、子供が酒を飲むことを親が制しなかった場合は、「科料」というのがあるんですね。我々の感覚では、おそらく法律的にも、親の監督不行き届きということに対する「科料」だと思っていたのですが、大正時代の議論の中に、「子供がお酒を飲むのを親が制止しなかったという際に親が罰せられるということになると、子供はもはや酒を飲まなくなるだろうという趣旨、そういうことを子供に期待してこの規定は入れた。」というような説明がございまして、大正時代は古き良き時代なのかなという思いをしたわけでございます。ちょっと本論から外れますが、御案内のとおり、未成年者飲酒禁止法違反者は「福祉犯」という定義がされておりますが、福祉を害する犯罪というのは、子供が被害者、あるいは子供の人権の侵害という構成に基本的にはなっておりまして、こういう子供の人権侵害に対して、被害者たる子供を処罰するということは基本的に困難であるということになります。個人益ではなくて社会益であるなど、いろんな別の法目的があれば、子供を含めて何人も処罰される場合というのは当然あり得るわけですが、基本的には福祉犯として子供を罰するというのは難しいと考えております。

小森課長補佐
 よろしいですか。そうなりますと、先ほど岡本先生のお話にありましたように、どうしても業者の側を縛っていく、それによって親も含めて規範意識を再建していくというような道しかないのかなというふうにも思うわけですが。そういうふうに見ていきますと、近年検挙件数が非常に増えてきているわけですけれども、私どもの方では、なかなか最終的に罰金刑までいくという形が非常に少ないというふうに承知しております。
 これは本来警察庁にお尋ねするようなこととは若干違うのかもしれませんが、私ども国税庁におきましては、コンビニ等に対しては具体的に、IDの確認をするよう行政指導ではやっておりますが、先ほどお話がありましたように、そもそも年齢確認をしたことなど一度も無いというような確信犯的事業者というのが少なからずいるという現状がございます。そういった場合に、酒税法の世界では、未成年者飲酒禁止法に違反し罰金刑に処せられた者については免許を取り消すことができる、との法的な処分ツールも備えているわけでございますが、いかんせん、検挙件数がこれだけ増えてきている中ではありますけれども、最終的に罰金刑にまで至る事案が非常に限定的だというふうに承知しております。
 こういった中で何がネックになっているのかということですが、思いつくものを挙げますと、1つは、「未成年者が飲用に供することを知り得て」お酒を提供した場合に初めて罰金刑が課せられるような法的構造になっている点。先ほどのように、今まで一度も年齢確認をしたことがないというようなところまで供述調書がとれれば、これについては簡単にクリアできるのかもしれませんが、未成年者が飲用に供することを知っていたか知らなかったのか、なかなか微妙な場合というのがございます。この場合、検察に送致するかしないか、あるいは検察の方で取り上げるか取り上げないかの判断においても引っ掛かってくるのかなという点が1点あります。
 それからもう一つは、先ほどもお話にありましたように未飲法違反については、福祉犯として家裁の管轄ということになっているため、略式命令が出せない。そこら辺は、まさに検察側のお話になってくるのかもしれませんが、こういったことも、機動的な運営・処罰を制約する要因になっているのかなという気がしているわけでございますが、いかがでございましょうか。

保住室長
 立場上なかなかコメントしづらいところがあるんですが、御指摘の点は私も思うところでございます。平成15年には170件検挙していますが、平成15年中に免許を取り消された業者さんというのは、果たして何事業者おられるのでしょうか。

小森課長補佐
 私どもが承知している限りで申し上げますと、酒類販売業に絡んで罰金刑に処された事案というのは4件、これは、未成年者飲酒禁止法の平成12年12月の改正以降を合計して4件あると承知しております。そのうち両罰規定が適用された事案、実際にお酒を未成年者に売った販売員だけでなくて、その酒類販売業者まで罰金刑に処された事案というのは2件、4件のうち2件であると承知しております。その2件のうちの1件につきましては、先ほど室長からもお話のありました沖縄の事案でございまして、それについては免許の取消しを行っております。
 それから残りの1件につきましては、本年に入ってから罰金刑が確定したところでございまして、まだ罰金刑が確定して一、二カ月の事案でございます。今後公判記録等をもとに聴聞等も行い、厳正な処分を行っていくということを予定しておりますが、いかんせん、今までに4件程度というような適用状況であると承知しております。

保住室長
 我々一線の警察官の感覚としては、平成13年以降、これだけの数検挙して、地検に送致しているわけです。しかし、そこから先はもう地検と裁判所の問題ですから、その結果に基づいて、国税庁さんがどういう処分を下すかというのは、酒税法とか、そちらの行政法の管轄になると認識しております。我々一線の警察官は、違反者を認知した場合には送致をする。少年犯罪では他でも、処分に付されないとか不開始とか、いろいろあるんですけれども、それはそれとして、我々は法の執行機関として、法に委ねられた権限を適正に行使をするということまでしかできません。それ以降の問題については、関係省庁ですとか、関係機関での御検討が必要かと思っておるところでございます。

小森課長補佐
 170件のほとんどについて検察へ送致が行われているというような理解でよろしいでしょうか、そこは。

保住室長
 いや、これは検挙ですから、全件検事に送致しているわけです。検事がそれを起訴するか起訴猶予にするか判断して、それを家庭裁判所が、これは少年法で家裁の管轄になっていますから、どうするか、有罪、無罪、いろいろございますでしょうが、判決を下すことになります。

田中座長代理
 どうもありがとうございます。
 福祉犯ということで、子供がやはり親の犠牲になっている。親がどうしようもないとなれば、やはり販売者が販売する時点において厳格な運用をしていかざるを得ない。そこには、ある程度の厳しい罰則といったものも多少つけ加えざるを得ないというようなショッキングなデータ等が、やはり矢島先生のお話からも出てきているという感じをいただきました。
 もう時間になってしまいましたので、今回はこれでお話を終わりにさせていただきます。
 本日は、矢島先生及び内閣府、警察庁の方からお話をいただきましたけれども、あと時間はほとんどありませんけれども、次回以降にはこんなことについてもどうかというふうな御意見がありましたら、出していただければと思います。

(発言なし)

田中座長代理
 それでは、今日は保住室長はじめ3人のゲストの方、どうもありがとうございました。
 それから、次回の会合で、「酒類と健康」あるいは「疾病問題」というテーマで、田嶼先生ほか、事務局から依頼しております独立行政法人国立病院機構久里浜アルコール症センター副院長の樋口様及び厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室の大江様からヒアリングをお願いすることとしております。今日、田嶼先生はお見えになられていませんけれども、ぜひ、またよろしくお願いするつもりであります。
 最後に1点御紹介させていただきますけれども、前回会合のときに本間先生から、「西欧の研究機関では、家族が一緒に食事をすることの教育的効果が注目されており、家族で食卓を囲むことは未成年者の麻薬・飲酒などの予防に大きな効果がある。」という、インターナショナル・ヘラルド・トリビューン社の記事の御紹介をいただきました。今回それを配付しております。フランスに学べということで、アメリカ人はどうも食事がだめじゃないかといった内容のようでございますが、日本でも食育というのはテーマとして今大変注目されています。このようなことが記事に載っておりますので、御参考にしていただければと思います。
 では、本日の会合については締めくくりたいと思います。次回は、4月21日の水曜日、15時から17時ということで、この場所で予定しております。
 事務局からの連絡事項はありますか。

初谷課長補佐
 3点、連絡事項がございます。
 1点は、日程調整の件でございます。既に5月の会合の日程は、5月12日水曜日、10時から12時、19日水曜日の10時から12時、31日月曜日の15時から17時ということで連絡をさせていただいておりますが、6月以降の日程を調整させていただきたいと思います。6月は中旬、下旬と2回の会合をお願いしたいと考えております。本日お配りしております日程調整表に御都合を記入いただいて、事務局の方に提出をお願いできればと思います。
 なお、今分からないという方は、後日ファックスでいただいても結構でございます。
 2点目ですが、机上に前回の懇談会の議事録をお配りしておりますが、近日中に国税庁のホームページに掲載して、公開する予定です。お持ちいただきたいと思います。
 それから、3点目ですが、前回の会合で紹介させていただきました未成年者飲酒防止中学生・高校生用のパンフットが、また『お酒について知っておきたいこと』というパンフレットが関係民間団体の研修会用の教材として出来上がっております。これもお持ち帰りいただければと思っております。

若尾酒税企画官
 もう一点、次回の懇談会ですけれども、4月21日水曜日の15時から17時までということですが、ヒアリングの内容が健康問題ということで、十分そのお話をしたいという先生の意向もありまして、若干、10分から15分程度になるかと思いますけれども、時間をオーバーするかもしれませんという点をお含みおきいただければというふうに思います。
 以上でございます。

田中座長代理
 はい。それでは、今日は散会させていただきます。
 どうも御苦労さまでした。

―― 了 ――

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