○酒類の表示の基準

 財務大臣は、酒類の取引の円滑な運行及び消費者の利益に資するため酒類の表示の適正化を図る必要があると認めるときは、次の事項の表示につき、酒類製造業者又は酒類販売業者が遵守すべき必要な基準を定めることができる。

  1. 1 酒類の製法、品質その他これらに類する事項
  2. 2 未成年者の飲酒防止に関する事項
    (酒類業組合法第86条の6第1項、酒類業組合法施行令第8条の4)

 なお、酒類の表示基準を遵守していない者に対しては、その基準を遵守すべき旨の指示をすることができる。更に指示に従わない者に対しては、その旨を公表することができることとされている。(酒類業組合法第86条の6第3項、第4項)

《現在定めている酒類の表示の基準》

  1. 清酒の製法品質表示基準(平成元年11月22日国税庁告示第8号)
     1特定名称(吟醸酒、純米酒、本醸造)を表示する場合の基準、2原材料名など容器等に表示しなければならない事項の基準、3原料米の品種名など容器等に任意に表示する場合の基準、4最高級の用語など容器等に表示してはならない禁止事項の基準を定めている。
  2. 酒類における有機等の表示基準(平成12年12月26日国税庁告示第7号)
     JAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)に基づく「有機農産物の日本農林規格」及び「有機農産物加工食品の日本農林規格」等に準拠し、1有機農産物加工酒類における有機等の表示の基準、2有機農産物加工酒類の製造方法等の基準、3有機農産物加工酒類の名称等の表示の基準、4輸入酒類の取扱い、5有機農産物等を原材料に使用した酒類の有機農産物等の使用表示の基準、6酒類における遺伝子組換えに関する表示の基準を定めている。
  3. 未成年者の飲酒防止に関する表示基準(平成元年11月22日国税庁告示第9号)
     未成年者の飲酒防止に関して、1酒類の容器又は包装に対する表示の基準、2酒類の陳列場所における表示の基準、3酒類の自動販売機に対する表示の基準、4酒類の通信販売における表示の基準を定めている。
  4. 地理的表示に関する表示基準(平成6年12月28日国税庁告示第4号)
     TRIPS協定(世界貿易機関を設立するマケラシュ協定附属書1-C知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)に基づき、「ぶどう酒」又は「蒸留酒」について、保護すべき地理的表示を定めその使用を禁止する規定を定めている。

○重要基準

 重要基準は、現在定めている酒類の表示の基準のうち、酒類の取引の円滑な運行及び消費者の利益に資するため特に表示の適正化を図る必要があるものとして財務大臣が定めるものである。(酒類業組合法第86条の7)

 なお、酒類の表示の基準を遵守すべき旨の指示を受けた者がその指示に従わなかった場合において、その遵守しなかった表示の基準が、重要基準に該当するものであるときは、重要基準を遵守すべきことを命令することができる。更にその命令に従わない場合には罰則(10万円以下の罰金)を課すこととなる。(酒類業組合法第86条の7、第98条第2号)

(注) 酒類業組合法第86条の7(酒類の表示に関する命令)の規定は、「酒税法及び酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律」(平成15年法律第33号)により改正され、本年9月1日から施行されている。

○重要基準を定めるに当たっての基本的考え方

 重要基準を定めるに当たっては、今後の酒類業界の発展を図り、適正な酒類行政を行っていくとの観点を踏まえ、現行の酒類の表示の基準のうち、

  1. 1 近年特に高まりつつある食品の安全性等への関心に応え、消費者の商品選択に資するべく酒類の適正表示・製法品質を確保するために必要があるもの
  2. 2 酒類の致酔性を踏まえた社会的要請に対応するために必要があるもの
  3. 3 酒類の表示について国際的に調和のとれた対応を図る必要があるもの

を基本的に重要基準として定めることとしたい。

酒類の適正表示・製法品質を確保するために必要な基準

○清酒の製法品質表示基準

【基本的考え方】

 「清酒の製法品質表示基準」は、一般消費者の商品選択を保護し、ひいては、清酒の安定的な取引の確保に資するという観点から定めている。
 このため、誤った表示等をすることは、消費者に不利益を与え、清酒の表示や製法又は品質の信頼を損ないかねないものであることから、1特定名称(吟醸酒など)を表示する場合の基準、2原材料名など容器等に表示しなければならない事項の基準、3最高級の用語など容器等に表示してはならない禁止事項の基準について重要基準として定めることとしたい。

○酒類における有機等の表示基準

【基本的考え方】

 「酒類における有機等の表示基準」は、JAS法に基づく「有機農産物の日本農林規格」及び「有機農産物加工食品の日本農林規格」等に準拠して定めている。JAS法においては、表示基準に遵守していない場合には、指示・命令又は除去命令をすることができることとされており、当該命令に従わなかった場合には、罰則により是正させることとされている。
 このため、JAS法との整合性を図る必要があり、また、食品の安全性の確保に適切に対応し、消費者の商品選択に資するため、1有機農産物加工酒類における有機等の表示の基準、2有機農産物加工酒類の製造方法等の基準、3有機農産物加工酒類の名称等の表示の基準、4有機農産物等を原材料に使用した酒類の有機農産物等の使用表示の基準、5酒類における遺伝子組換えに関する表示の基準について重要基準として定めることとしたい。

酒類の致酔性を踏まえた社会的要請に対応するために必要な基準

○未成年者の飲酒防止に関する表示基準

【基本的考え方】

 酒類は、致酔性・依存性を有する飲料であることから、未成年者の飲用が禁止されているなど、適正な管理が求められる商品である。
 酒造技術の進展、消費者ニーズの多様化等に伴い多種多様な酒類の供給がなされる中で、注意しなければ酒類以外の他の飲料と混同しかねないような外観の商品も普及してきており、また、規制緩和により消費者の酒類へのアクセス機会が増加する中で、未成年者飲酒の防止や飲酒運転の防止等への実効性ある対応が求められてきており、酒類の特性を踏まえた適正な販売管理についての社会的要請が高まってきている。
 「未成年者の飲酒防止に関する表示基準」は、こうした観点から、酒類の1容器又は包装、2陳列場所、3自動販売機、4通信販売における表示について、「未成年者の飲酒は法律で禁止されている」旨や「酒類の売場である」旨の表示を求めるなど、いずれも、酒を製造、販売する上で最低限必要な事項を義務化しているものである。特に、今後の酒類業を取り巻く環境の変化の中で、社会的要請に的確に対応するためには、広く製造、流通のそれぞれの段階で酒類業者にその遵守を義務付ける「未成年者の飲酒防止に関する表示基準」のすべての表示事項を重要基準として定めることとしたい。

酒類の表示について国際的に調和のとれた対応を図る必要がある基準

○地理的表示に関する表示基準

【基本的考え方】

 「ぶどう酒」及び「蒸留酒」に係る地理的表示に関しては、TRIPS協定第23条によりその使用を禁止し保護を図っている。
 我が国においては、TRIPS協定に基づき、酒類業組合法第86条の6の規定により「地理的表示に関する表示基準」を定めて地理的表示の保護を図っているが、今後とも適切に対応していくことが国際的に必要であることから、地理的表示の保護に関する事項について重要基準として定めることとしたい。