未定稿

1 日時

平成11年12月8日(水)10:00〜12:00

2 場所

国税庁第一会議室

3 議題

セキュリティの確保等

4 議事概要

  1. (1) メンバーの松本勉氏から、セキュリティの確保等に関して電子認証技術を中心に説明が行われた後、討議が行われた。
  2. (2) 松本勉氏の説明内容
    • ○ インターネットを利用する場合、セキュリティに関連する問題は大きく分けて二つある。一つは、ネットワークを使うという点で、認証と守秘、もう一つは、当局側のシステムにおける問題として、処理・保存・管理における一貫性(完全性)と守秘、及び可用性(耐障害性、耐侵入性)である。現在では、全て技術的には十分実用性のあるレベルに達していると考えられる。今後、環境や技術の変化に応じ、認証を含むセキュリティに対する要求が高度化してくることを見通して、適切な技術を採用していくことが求められる。
    • ○ 認証とは、情報が正当な利用者によって作成されたものであり、改ざんされていないことを確認する機能のことであり、インターネットを利用して行政サービスを行う上で重要かつ本質的な手続である。
    • ○ オープンなネットワーク上での認証技術として、公開鍵暗号方式によるデジタル署名がある。デジタル署名は、認証機関が「公開鍵証明書(認証書)」により本人確認する仕組みであるが、政府において商業登記に基礎を置く電子認証制度、電子署名・認証に関する法制度及び政府公開鍵基盤(GPKI)の整備がされつつあるとともに、民間においても認証サービスが実用化されており、デジタル署名を利用しうる社会的インフラが整いつつある。
    • ○ 現在では、広く普及している閲覧ソフトに予め組み込まれたSSLと呼ばれる暗号技術の機能により、暗号通信、国税庁のWEBページを納税者が確認するサーバー認証及び国税庁が納税者を確認するクライアント認証が可能である。国税庁が納税者を確認する方法としては、民間認証機関によるサービスを利用する方法や国税庁自身が認証機関となる方法などが考えられる。
    • ○ 電子申告を考える場合、紙では起こり得なかったようなこと、例えば大量のアクセスが集中するといったことが起こり得ることから、電子的な部分での特性というものを十分見極める必要がある。
    • ○ デジタル署名など電子署名や暗号化については、いろいろな方法が考えられるが、これらを利用する場合に、利用者にとって何か特別な作業が必要というわけではなく、インターネット等を使う人にとってはごく当たり前の、ソフトウェアのガイドに従ったキー操作によって処理することが可能である。
    • ○ 電子申告を考える場合、利用者がネットワークに容易にアクセスできるという意味で、インターネットの利用がよいと思う。暗号化の技術によって、インターネット上に安全なネットワークを作ることは可能である。その場合、現時点では認証機関がないので、取りあえず、国税庁が申告手続に関する業務にだけ通用する認証機関となることが考えられるのではないか。他の行政機関と技術的に同じ仕掛けにしておけば、将来、個人を対象にした共通の認証機関ができた場合に、それを国税庁が利用することは可能である。
  3. (3) 出席者(松本氏を含む)からの主な意見
    • ○ インターネット上のセキュリティにおいて、一般的に問題になっているのが、クレジットカード番号を盗まれるということであり、悪用されれば経済的な損失が発生することが明らかである。申告手続の場合には、申告情報自体を盗まれてプライバシーの最も重要な部分が侵されることや他人になりすまして申告することなどが考えられるのではないか。
    • ○ セキュリティの世界は、技術の追いかけっこ的な部分がある。安全対策が確立してからやろうするといつまでたっても出来ない。現時点でもかなりいい線でできていると考えられるのでそれを採用しておいて、本当に深刻な問題がでてこないように改良していくというアプローチの仕方がよいのではないか。
    • ○ 仮に国税庁が認証機関となり、公開鍵証明書を発行する場合、コストの点から見るとID・パスワード方式と基本的には変わらないと考えられる。
    • ○ 最近発生している個人情報の漏えいの多くが、データを受け取った側の内部から漏れているということを考えると、ネットワーク等のセキュリティのほか、受け取ったデータそのものを、行政がどのように管理するかが重要になってくるのではないか。
    • ○ データを受け取る行政側のシステムを誰か信頼できる人が監査し、システムを透明にすることで信頼感が増すのではないか。
    • ○ 電子申告の導入は納税者の利便を図るためのものだから、セキュリティをあまりに厳密に考えずに、ある程度のセキュリティの段階でその導入を進めていくべきではないか。
    • ○ 申告書に本人のほか税理士が署名するような形を電子的に実現することについては、多段階に電子署名することにより可能である。また、口座番号などその都度変えなくてもよい情報については、事前登録などの際に指定すれば、ネットワーク上にその情報を流さなくてよくなるのではないか。
    • ○ 国税と地方税の関係については、現在協力関係がうまくいっているので、電子申告においてもスタートラインのID番号付与のところから、うまく進めるなど工夫が必要ではないか。
    • ○ デジタルの世界において、本人であることをどこまで厳密に確認するかについては、手間とコストがかかることでもあり、どこかで妥協点を見いだす必要がある。いずれにしてもこの問題は、デジタル署名を利用する場合もID・パスワード方式と同じである。

以上    

 連絡先:国税庁長官官房企画課
 電話:03−3581−4161(内:3685)


(メンバー)

  • 座長 水野 忠恒 一橋大学法学部教授
  • 栗原 正明 東レ株式会社経理部主計課税務グループリーダー
  • 篠原 滋子 株式会社現代情報研究所代表取締役所長
  • 田中 一志 日本税理士会連合会情報システム委員会副委員長
  • 利根川 政明 利根川印刷株式会社代表取締役社長
  • 本庄 資 国士舘大学政経学部教授
  • 松本 勉 横浜国立大学大学院工学研究科助教授
  • 山根 一眞 ノンフィクション作家

(当局側)

国税審議官、企画課長、事務管理課長、法人税課長、課税企画官、国税企画官